ウィザス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ウィザス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、広域通信制高等学校「第一学院高等学校」や学習塾「第一ゼミナール」等の運営を行っています。当連結会計年度の業績は、売上高220億円で前期比6.3%増の増収となった一方、経常利益は16億円で16.4%減の減益となりました。


※本記事は、株式会社ウィザス の有価証券報告書(第49期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ウィザスってどんな会社?


広域通信制高校の運営や学習塾事業を中心に、グローバル人材育成やキャリア支援も展開する総合教育企業です。

(1) 会社概要


1976年に大阪府松原市で前身となる学習塾運営会社を設立し、2004年にジャスダック証券取引所へ株式を上場しました。2005年には広域通信制高校(現 第一学院高等学校)を開校し、高校・大学事業へ参入しました。2023年には社内カンパニー制を導入し、2024年には子会社間で吸収合併を行うなど組織再編を進めています。

連結従業員数は1,011名、単体では539名です。筆頭株主は外国法人のGLOBAL ESG STRATEGY DIRECTORで、第2位は大阪市に所在する株式会社ヒントアンドヒット、第3位は同じく外国法人のGLOBAL ESG STRATEGY DIRECTORとなっています。

氏名 持株比率
GLOBAL ESG STRATEGY DIRECTOR 8.75%
ヒントアンドヒット 7.22%
GLOBAL ESG STRATEGY DIRECTOR 6.01%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長は生駒富男氏です。取締役7名のうち3名が社外取締役であり、社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
生 駒 富 男 取締役社長(代表取締役) 1984年同社入社。教務指導室部長、第二教育本部長等を歴任し、2005年常務取締役を経て、2009年6月より現職。
竹 下 淳 司 常務取締役経営戦略本部長 1997年同社入社。第二教育本部長、高校大学事業本部長、能力開発・キャリア支援事業カンパニー長等を経て、2024年4月より現職。
赤 川 琢 志 常務取締役統括支援本部長 1994年同社入社。統括支援本部総務人事部部長、取締役統括支援本部長兼総務部長等を経て、2024年1月より現職。
阿 野 孝 取締役高校・大学事業カンパニー長 2003年同社入社。第二教育本部事業企画部長、執行役員第二教育本部副本部長等を歴任し、2023年4月より現職。


社外取締役は、大澤純子(元リコーリース常務執行役員)、鷹野正明(元新潟三越伊勢丹社長)、大山真未(元文部科学省科学技術・学術政策研究所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「高校・大学事業」「学習塾事業」「グローバル事業」「能力開発・キャリア支援事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 高校・大学事業


広域通信制単位制高等学校「第一学院高等学校」の運営や、ICTを活用した中学生向け学習機会の提供、高卒以上の社会人を対象とした資格・スキル取得支援を行っています。また、大学事業として「ネットの大学managara」のアライアンス構想も推進しています。

収益は主に生徒からの授業料等が源泉となります。運営は主に同社が担っています。

(2) 学習塾事業


幼児から高校生までを対象とする教科学習・受験指導、能力開発指導、および幼児・小学生向け英語教室の運営を行っています。「第一ゼミナール」や「個別指導まなび」などのブランドを展開しています。

収益は生徒からの授業料や講習料等が源泉となります。運営は、同社、株式会社佑学社、株式会社学習受験社、京大ゼミナール久保塾株式会社、株式会社Blue Sky FC、株式会社TIなどが行っています。

(3) グローバル事業


留学生や在留外国人への日本語教育、日本語講師の育成を行うほか、通訳・翻訳業務や語学人材の派遣サービスを提供しています。

収益は、日本語学校の授業料や、通訳・翻訳・人材派遣に対する対価が源泉となります。運営は、株式会社グローバルウィザスおよび株式会社吉香が行っています。

(4) 能力開発・キャリア支援事業


ICT教育ソリューションの提供や、法人向けの社員研修・営業研修オンラインサービス、アンガーマネジメントの講師育成・企業研修などを展開しています。広告事業もこのセグメントに含まれます。

収益は、ICT教材の利用料や研修サービスの受講料、広告代理業務の手数料等が源泉となります。運営は、株式会社SRJ、株式会社レビックグローバル、株式会社ブリーズ、株式会社第一プログレスなどが行っています。

(5) その他


上記報告セグメントに含まれない事業として、ヘルスケア事業等を展開しています。主にシニア向けの介護予防フィットネスやデイサービスを提供しています。

収益は利用者からのサービス利用料等が源泉となります。運営は同社グループ内で行われています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は直近5期間において増加傾向にあり、事業規模は拡大しています。一方、利益面では経常利益率が低下傾向にあり、第49期は7%台となっています。当期純利益については、第47期や第49期に減少が見られますが、黒字を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 163億円 176億円 199億円 207億円 220億円
経常利益 13億円 22億円 22億円 20億円 16億円
利益率(%) 8.2% 12.7% 10.9% 9.4% 7.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 4億円 11億円 6億円 9億円 4億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加しましたが、売上総利益率はほぼ横ばいから微減、営業利益率は低下しました。増収を確保しつつも、コスト増により利益率が圧迫されている状況がうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 207億円 220億円
売上総利益 73億円 75億円
売上総利益率(%) 35.2% 34.1%
営業利益 20億円 17億円
営業利益率(%) 9.5% 7.6%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が12億円(構成比20%)、広告宣伝費が11億円(同18%)を占めています。売上原価においては、人件費等の固定費が一定割合を占めているものと推測されますが、具体的な内訳数値は記載がありません。

(3) セグメント収益


全セグメントで増収となりました。特に能力開発・キャリア支援事業とグローバル事業の増収率が高くなっています。利益面では、学習塾事業とグローバル事業が増益となった一方、主力である高校・大学事業や能力開発・キャリア支援事業は減益となり、全体として営業減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
高校・大学事業 91億円 95億円 39億円 35億円 37.3%
学習塾事業 74億円 77億円 2億円 5億円 6.4%
グローバル事業 21億円 24億円 -0.1億円 0.6億円 2.4%
能力開発・キャリア支援事業 17億円 22億円 3億円 2億円 7.5%
その他 2億円 2億円 -2億円 -1億円 -
調整額 - - -22億円 -24億円 -
連結(合計) 207億円 220億円 20億円 17億円 7.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で現金を稼ぎつつ、投資活動による支出を上回る資金需要に対して借入金等で資金調達を行っている「積極型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 10億円 14億円
投資CF -19億円 -17億円
財務CF -12億円 15億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.9%でスタンダード市場平均(7.2%)をやや下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は28.9%でスタンダード市場平均(48.5%)を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「顧客への貢献」・「社員への貢献」・「社会への貢献」という3つの貢献を経営理念として掲げています。この理念に基づき、「社会で活躍できる人づくりを実現できる最高の教育機関をめざす」ことをコーポレートビジョンとし、生徒だけでなく社員やスタッフも含めた「人づくり」に全企業活動を集中させ、その実現を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「ウィザスグループ経営」を推進し、人と組織の「自己変革と自己成長」を重視する文化を持っています。独自のアメーバ経営(ウィザス経営)の実践や、「Study & Training for Own Development」(ST)と呼ばれる人材育成の取り組みを通じて、社員が自律的に考え学び、仕事を通じた自己成長とキャリア形成を図ることを推奨しています。

(3) 経営計画・目標


同社は創業50年の節目を迎え、新成長ビジョンを中核に据えた新中期経営計画を策定しています。「ユニバーサル共育」を通じた「人創り」事業会社への深化を目指し、新たな成長戦略に基づく積極的な投資期間と位置づけています。

* 2025年度売上高:231億円
* 2025年度営業利益:15億円
* 2025年度経常利益:15億円
* 2025年度親会社株主に帰属する当期純利益:8億円

(4) 成長戦略と重点施策


「ユニバーサル共育」を通じた「人創り」事業会社への深化を掲げ、顧客の人生軸に寄り添う「学びのプラットフォーム」構築を目指しています。具体的には、独自価値の深化、LTV(顧客生涯価値)プラットフォームによる生涯顧客化、M&Aやアライアンスによるシナジー最大化を推進します。

* 高校・大学事業:「第一学院managaraBASE」など新ブランド展開、アライアンスによる大学事業拡大。
* 学習塾事業:独自の「プラスサイクル学習法」深化、EdTech活用、ブランド転換や統廃合による最適化。
* グローバル・キャリア支援事業:外国人材の就労・生活支援や学びのプラットフォーム構築。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「社会で活躍できる人づくり」を実現するため、「人財育成」を最重要テーマとしています。「Study & Training for Own Development」(ST)という独自の育成プログラムを通じ、社員が仕事を通じて自律的に自己変革・自己成長することを支援しています。また、多様なキャリアを受容できる人事制度や、自己認識を促す仕組みの整備により、社員一人ひとりのキャリアビジョン実現を後押しする環境づくりを行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.2歳 12.1年 5,432,409円


※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 24.1%
男性育児休業取得率 86.7%
男女賃金差異(全労働者) 59.8%
男女賃金差異(正規雇用) 77.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 80.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、次世代マネジメント人財プログラム(ViViユニバーシティ)累計受講者数(65名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 業界の競合状況について


少子化による市場縮小に加え、業界再編や異業種からの参入により生徒獲得競争が激化しています。特定の展開地域での競合だけでなく、技術革新や業界動向の変化に迅速に対応できない場合、生徒数の減少等により業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 人材確保について


サービスの質的向上や新規校舎展開のためには、優秀な教員の継続的な確保と育成が不可欠です。しかし、採用環境の変化等により必要な人材を十分に確保できない場合、教育サービスの品質低下や事業展開の遅れが生じ、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 情報システムのリスクについて


多数の顧客の個人情報を保有しており、適切なセキュリティ対策を実施していますが、サイバー攻撃やシステム障害、災害等により情報の漏洩や消失、システムの停止が発生する可能性があります。これらが発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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