※本記事は、株式会社ダスキンの有価証券報告書(第61期、自 2022年4月1日 至 2023年3月31日、2023年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ダスキンってどんな会社?
清掃用具レンタル「ダスキン」を中心とする訪販事業と、「ミスタードーナツ」を展開するフード事業を両輪とするフランチャイズビジネスのパイオニアです。
■(1) 会社概要
1963年にサニクリーンとして設立され、水を使わない清掃用具のレンタルを開始しました。1971年にはミスタードーナツ事業を開始し、2006年に東証・大証一部に上場しました。その後も、化粧品販売、家事代行、高齢者支援など生活に密着したサービスを拡充し、アジアを中心とした海外展開も進めています。
連結従業員数は3,739名、単体では1,989名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行ですが、第3位にはミスタードーナツ事業のドーナツミックス粉等の製造委託先であり、技術提携関係にある製粉会社のニップンが名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 13.53% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 4.84% |
| ニップン | 3.67% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性4名の計14名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表者は代表取締役社長執行役員の大久保裕行氏が務めています。取締役14名のうち3名が社外取締役であり、社外取締役比率は21.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大久保 裕行 | 代表取締役社長執行役員 | 1985年入社。クリーン・ケアグループ北関東地域本部長、取締役執行役員経営企画部長等を経て2022年より現職。 |
| 山村 輝治 | 取締役会長 | 1982年入社。クリーンサービス事業本部副本部長、代表取締役社長、代表取締役社長執行役員を経て2023年より現職。 |
| 住本 和司 | 取締役COO 訪販グループ担当 | 1983年入社。レントオール事業部長、取締役常務執行役員経営企画部・生産本部管掌等を経て2020年より現職。 |
| 和田 哲也 | 取締役COO フードグループ担当兼ミスタードーナツ事業本部長 | 1986年入社。執行役員ミスタードーナツ事業本部長、取締役COOフードグループ担当等を経て2023年より現職。 |
| 宮田 直人 | 取締役CFO 本社管理グループ、法人営業本部担当 | 2018年入社(元三井住友銀行)。法人営業本部長、取締役CFO本社管理グループ担当等を経て2023年より現職。 |
| 上野 進一郎 | 取締役事業横断グループ担当執行役員 | 2000年入社。クリーンサービス販売企画部長、国際部長、取締役本社企画グループ担当執行役員を経て2023年より現職。 |
社外取締役は、関口暢子(元カプコン常務執行役員)、辻本由起子(shapes代表取締役)、武藏扶実(元蝶理(中国)商業有限公司董事長兼総経理)です。
2. 事業内容
同社グループは、「訪販グループ」、「フードグループ」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 訪販グループ
モップ・マット等の清掃用品レンタルを行うクリーンサービス事業を中核に、プロの清掃「サービスマスター」、家事代行「メリーメイド」、害虫駆除「ターミニックス」等のケアサービス事業を展開しています。また、化粧品、高齢者支援、イベント用品レンタル、ユニフォームレンタルなども手掛けています。
主にフランチャイズ加盟店に対するレンタル商品や資器材等の販売、および事業運営ノウハウの提供対価としてのロイヤルティが収益源です。運営は主にダスキンが行うほか、地域によっては連結子会社のダスキンサーヴ各社やダスキンプロダクト各社等が製造・販売・レンタル業務を担っています。
■(2) フードグループ
ドーナツ・飲茶等を販売する「ミスタードーナツ」を主体とし、とんかつレストラン「かつアンドかつ」なども展開しています。ミスタードーナツはフランチャイズ方式による店舗展開を基本としており、商品のテイクアウトやイートイン販売を行っています。
フランチャイズ加盟店に対するドーナツ等の原材料販売、および店舗運営ノウハウ提供の対価としてのロイヤルティが主な収益源です。一部地域ではダスキン直営店や、子会社のエムディフード各社が店舗運営を行っています。
■(3) その他
報告セグメントに含まれない事業として、国内でフランチャイズ展開を行っていない事業や海外事業などが含まれます。具体的には、加盟店向けの事務用機器・車両リース、保険代理業、病院マネジメントサービスなどです。
収益源は、リース料収入、保険手数料、マネジメントサービス料などです。運営はダスキン共益(リース・保険)、ダスキンヘルスケア(病院マネジメント)、および海外現地法人(楽清(上海)清潔用具租賃有限公司など)が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は新型コロナウイルス感染症の影響を受けた期もありましたが、直近では回復傾向にあり増収となりました。一方、利益面では、原材料価格の高騰や戦略的投資の実施などにより、変動が見られます。
| 項目 | 2019年3月期 | 2020年3月期 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,587億円 | 1,591億円 | 1,538億円 | 1,632億円 | 1,705億円 |
| 経常利益 | 100億円 | 79億円 | 66億円 | 122億円 | 114億円 |
| 利益率(%) | 6.3% | 5.0% | 4.3% | 7.5% | 6.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 52億円 | 56億円 | 26億円 | 74億円 | 69億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費の増加により、営業利益は減少しました。売上総利益率は微減傾向にあります。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,632億円 | 1,705億円 |
| 売上総利益 | 749億円 | 760億円 |
| 売上総利益率(%) | 45.9% | 44.6% |
| 営業利益 | 99億円 | 86億円 |
| 営業利益率(%) | 6.1% | 5.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が140億円(構成比21%)、賞与が56億円(同8%)を占めています。
■(3) セグメント収益
訪販グループは、クリーンサービス事業やレントオール事業などが伸長し増収となりましたが、原価・経費増により減益となりました。フードグループは、ミスタードーナツが好調を維持し大幅な増収増益を達成しました。その他セグメントも増収となりましたが、営業利益は減少しました。
| 区分 | 売上(2022年3月期) | 売上(2023年3月期) | 利益(2022年3月期) | 利益(2023年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 訪販グループ | 1,065億円 | 1,078億円 | - | - | - |
| フードグループ | 438億円 | 489億円 | - | - | - |
| その他 | 129億円 | 138億円 | - | - | - |
| 連結(合計) | 1,632億円 | 1,705億円 | - | - | - |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
ダスキンは、円安や海外事業の好調を背景に、営業活動によるキャッシュ・フローが大幅に増加しました。投資活動では、有価証券等の売却収入が取得支出を上回り、資金支出額は前期から減少しています。財務活動では、配当金支払いや自己株式取得により資金支出となりました。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 196億円 | 121億円 |
| 投資CF | △85億円 | △128億円 |
| 財務CF | △8億円 | △80億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
創業時からの企業理念である「祈りの経営」のもと、世の中の人に喜ばれる「喜びのタネまき」を実践することを掲げています。地域の人々と喜びを分かち合い、物も心も豊かな暮らしに貢献することを通じて、継続的な企業価値の向上を実現することを目指しています。
■(2) 企業文化
「世界一ひとにやさしいダスキン」を目指した取り組みを推進しています。長期戦略「ONE DUSKIN」のもと、グループの全事業が一つになってホスピタリティ溢れる対応を行い、多様な顧客ニーズに応える商品・サービスの開発に取り組む姿勢を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
長期戦略「ONE DUSKIN」の第3フェーズにあたる「中期経営方針2022」を策定し、2023年3月期から2025年3月期までの期間において、社会価値の向上と企業としての持続的な成長の両立を目指しています。また、資本コストや株価を意識した経営を行い、ROEやPBRの向上を重要課題としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
訪販グループでは「衛生領域」を最重要領域と定め、抗菌・抗ウイルス対応商品の開発やRFID(電子タグ)導入による業務効率化を進めています。フードグループでは、ミスタードーナツにおける他社との共同開発商品やネットオーダーの機能強化、海外展開などを推進しています。また、新たな成長機会として、住まいのトラブルに対応する企業との業務提携や、アジアを中心とした海外展開を加速させています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
あらゆるサービスの基本は「人」であると考え、知識と技術に心が伴った人材の育成に取り組んでいます。経営理念を理解し実践できる人材を育成するため、階層別研修やエリアマネジャー育成に注力しています。また、多様なキャリアや背景を持つ社員が能力を発揮できるよう、新人事制度の導入や健康経営の推進、ダイバーシティ&インクルージョンの推進を行っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 46.1歳 | 15.3年 | 7,280,147円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 13.1% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 44.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 71.4% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 62.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、意識調査「キャリア充実度」(77.5%)、社員一人当たり年間研修時間(18.6時間)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) ビジネスモデル(フランチャイズ方式)に関するリスク
事業展開の主軸であるフランチャイズ方式において、施策実行には加盟店の理解や協力が必要です。加盟店の理解が得られない場合、計画の中止や遅延が生じる可能性があります。また、加盟店とのトラブル、離脱、不祥事等が発生した場合、ブランドイメージや経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 経営環境の変動リスク
訪販グループのクリーンサービス事業では、家庭市場での使い捨て商品の普及や事業所市場での経費削減意識により市場規模が減少傾向にあります。フードグループでは、競合状況や消費者の嗜好変化、原材料価格の高騰などが経営成績に影響を与える可能性があります。
■(3) 製商品の安全性に関するリスク
レンタル商品や販売商品、提供する食品に品質上の問題や食中毒等が発生した場合、損害賠償や信用の低下を招き、経営成績に影響を与える可能性があります。特に食品衛生法等の規制違反が生じた場合、営業停止等の措置を受けるリスクがあります。
■(4) サービスの品質に関するリスク
ライフケア事業やケアサービス事業において、サービス提供中の事故や過失責任が問われる事態、あるいはサービス品質の低下により健康被害等が発生した場合、損害賠償請求や社会的信用の失墜につながる可能性があります。



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