ダスキン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ダスキン 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ダスキンは東証プライム市場に上場し、清掃用品のレンタルなどの訪販事業と「ミスタードーナツ」を展開するフード事業を主力とする企業です。直近の業績は、訪販グループでの新規顧客獲得やミスタードーナツの好調などにより、全てのセグメントで増収となり、連結全体でも増収増益を達成して順調に推移しています。


※本記事は、株式会社ダスキンの有価証券報告書(第64期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ダスキンってどんな会社?


清掃用品レンタルとミスタードーナツを展開し、暮らしに密着したサービスを提供する企業です。

(1) 会社概要


1963年に設立され、清掃用具のレンタルをフランチャイズ方式で開始しました。1971年には「ミスタードーナツ」事業をスタートし、事業を拡大しています。2006年に東証一部へ上場し、その後も海外展開や他社との資本業務提携を積極的に進め、2022年に東証プライム市場へと移行しました。

現在の従業員数は連結で3,750名、単体で1,964名です。大株主については、筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位にニップン、第3位に信託銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.51%
ニップン 3.81%
日本カストディ銀行(信託口) 3.31%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性3名の計14名で構成され、女性役員比率は21.4%です。代表取締役社長執行役員は大久保裕行氏が務めています。取締役9名のうち社外取締役は3名です。

氏名 役職 主な経歴
大久保裕行 代表取締役社長執行役員監査部、IT戦略統括本部担当 1985年同社入社。北関東地域本部長、経営企画部長等を歴任。2021年取締役執行役員を経て、2022年より現職。
和田哲也 取締役COO フードグループ担当 1986年同社入社。ミスタードーナツ事業本部長、フード開発事業部長等を歴任し、2020年より現職。
江村敬一 取締役COO 訪販グループ担当 1995年同社入社。ヘルスレント事業部長、訪販グループ事業本部長等を歴任し、2025年より現職。
飯田健司 取締役CFO 本社企画グループ担当 2002年同社入社。経営管理部長、訪販グループ運営本部管理部長等を歴任し、2025年より現職。
上野進一郎 取締役執行役員事業横断グループ担当 2000年同社入社。クリーンサービス販売企画部長、国際部長、生産本部長等を歴任し、2025年より現職。
根本誠之 取締役執行役員本社人的資本グループ担当兼新規事業開発部長 1990年同社入社。ミスタードーナツ事業本部長等を経て、2026年より現職。


社外取締役は、武藏扶実(元蝶理中国総代表補佐)、中川理惠(一般社団法人グラミン日本理事・COO)、関口暢子(元カプコン常務執行役員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「訪販グループ」「フードグループ」および「その他」の事業を展開しています。

(1) 訪販グループ


同グループは、清掃用品のレンタルを主体とするクリーンサービス事業や、プロの清掃、家事代行、害虫獣駆除などのケアサービス事業を展開し、一般家庭と事業所向けにサービスを提供しています。

収益は、フランチャイズ加盟店への資器材の販売やマット・モップ等のレンタル代金、店舗運営ノウハウに対するロイヤルティから得ています。運営は主にダスキンと全国のフランチャイズ加盟店が行っています。

(2) フードグループ


同グループは、「ミスタードーナツ」を主体に、とんかつレストランやイタリアンレストランなどの飲食店を展開し、幅広い顧客層に向けてドーナツや飲食物を提供しています。

収益は、フランチャイズ加盟店に対するドーナツ原材料の販売代金や、店舗運営・製造技術の提供によるロイヤルティから得ています。ミスタードーナツの運営はダスキンおよび加盟店が主に行い、一部の子会社も運営を担っています。

(3) その他


報告セグメントに含まれない事業として、事務用機器や車両のリース、保険代理業、病院のマネジメントサービス、および海外部門での事業を展開しています。

収益は、リース料やマネジメントサービスの提供に伴う対価、海外での商品販売などから得ています。運営はダスキン共益やダスキンヘルスケアなどの子会社が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の推移を見ると、売上高は着実に増加を続け、事業拡大が進んでいます。一方、経常利益や当期利益は期間によって増減があり、利益率も変動していますが、直近では増益に転じており、堅調な回復と成長の傾向が見られます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,632億円 1,705億円 1,788億円 1,888億円 1,946億円
経常利益 122億円 114億円 79億円 107億円 130億円
利益率(%) 7.5% 6.7% 4.4% 5.7% 6.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 74億円 69億円 50億円 83億円 79億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成は、売上高が順調に伸びるなかで、売上総利益も増加しています。売上総利益率および営業利益率ともに堅調に推移し、増収増益の状況が確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,888億円 1,946億円
売上総利益 835億円 858億円
売上総利益率(%) 44.3% 44.1%
営業利益 73億円 87億円
営業利益率(%) 3.8% 4.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が151億円(構成比20%)、雑給が87億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


訪販グループは、清掃サービスの好調などで増収となりました。フードグループもミスタードーナツの単価上昇や新規出店効果により増収となり、各事業が順調に推移しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
訪販グループ 1,078億円 1,106億円
フードグループ 667億円 689億円
その他 143億円 150億円
連結(合計) 1,888億円 1,946億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 167億円 138億円
投資CF -51億円 -56億円
財務CF -108億円 -50億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.9%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、企業理念である「祈りの経営」のもと、世の中の人に喜ばれる「喜びのタネまき」の実践を経営の基本としています。また、変わる時代の中でも変わらぬ価値を届けていく未来への想いを込め、「人に社会に寄り添い、安心と喜びのある豊かな明日を創造します。」というパーパスを掲げています。

(2) 企業文化


パーパス実現のために「人と人、人と社会、人と明日をつなぐ笑顔の環を届けます。」というビジョンを掲げています。そして、これを実現するためのバリュー(大切な価値観)として「想いを今、動かせ。」を定め、社員一人ひとりが自律的に学習し、思考・行動を通じて喜びのタネまきを実践する企業風土の醸成を重視しています。

(3) 経営計画・目標


長期戦略「Do-Connect」のもと、「中期経営方針2028」を策定し、社会価値と経済価値の両面において価値向上を目指しています。2028年3月期を最終年度とする具体的な数値目標として、連結売上高2,078億円、親会社株主に帰属する当期純利益106億円、ROE7.0%以上を掲げています。

* 連結売上高:2,078億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:106億円
* ROE:7.0%以上

(4) 成長戦略と重点施策


既存事業の進化に加え、新たな事業展開や経営基盤の強化に注力しています。訪販グループでは「ハウスメンテナンス領域」を強化し、フードグループではミスタードーナツのサービス向上や海外展開を進めます。また、デジタル技術を活用した業務改革や人材育成を通じた経営基盤の強化を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


全てのサービスの基本は「人」であるとの考えから、知識と技術に心が伴った人材の育成を重視しています。「祈りの経営」の理念を理解し実践できる人材を育てるため、階層別研修やエリアマネジャー育成、自己啓発の支援を行っています。また、多様な背景を持つ社員が能力を発揮できるよう、新人事制度の導入など環境整備も推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 46.1歳 18.2年 7,812,432円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 17.3%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 46.7%
男女賃金差異(正規) 77.2%
男女賃金差異(非正規) 68.4%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、一人当たり年間研修時間(19.8時間)、エンゲージメント「自己成長・キャリア感」(68.8%)、エンゲージメント「やりがい・仕事の満足度」(92.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) フランチャイズ方式に関するリスク


同社はフランチャイズ方式を中心に展開しており、新規出店や改装などの施策には加盟店の理解と協力が必要です。加盟店とのトラブルや法令違反が発生した場合、事業展開や業績に影響が及ぶ可能性があります。

(2) 経営環境の変動リスク


クリーンサービス事業は使い捨て商品の普及や企業の経費削減により市場が縮小傾向にあります。ミスタードーナツ事業も、消費者の嗜好変化や原材料の高騰などの市場環境の変化によって業績が影響を受ける可能性があります。

(3) 製商品の安全性に関するリスク


レンタルや販売を行う清掃関連商品、化粧品などの安全性確認に努めていますが、万一品質上の問題が発生した場合、信用の低下に繋がります。また、食品衛生管理を徹底していますが、食中毒などのトラブルが発生した場合も業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 人材の育成と確保に関するリスク


ホスピタリティを実践できる人材の育成と確保に努めていますが、今後の労働市場の逼迫により人材確保が困難になる、あるいは優秀な人材が流出した場合、サービスの競争力や効率性が低下し、業績に影響が及ぶ可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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