※本記事は、福井コンピュータホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第46期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 福井コンピュータホールディングスってどんな会社?
建築・測量・土木業界向けのCADソフトウェア開発・販売を主力とし、業界のICT化を支援する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1979年に福井県で設立され、コンピュータソフトウエアの開発・販売を開始しました。1995年に日本証券業協会へ店頭登録し、2004年にジャスダック証券取引所へ上場、2007年には東京証券取引所市場第一部銘柄に指定されました。2012年に持株会社体制へ移行し、現在の商号に変更しました。2023年には投資事業を行う子会社を設立するなど、事業領域を拡大しています。
現在の従業員数は連結で551名、単体で44名です。筆頭株主は子会社の経営管理を行うダイテックホールディングで、第2位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位はカストディ業務等を行うSTATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ダイテックホールディング | 47.14% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.06% |
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 | 6.35% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役CEOは佐藤浩一氏です。取締役9名のうち6名が社外取締役であり、社外取締役比率は66.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 佐藤 浩一 | 代表取締役CEO社長執行役員 | 1998年同社入社。関西支社長、営業統括部長などを経て、2017年福井コンピュータアーキテクト代表取締役社長。2022年同社代表取締役社長に就任し、2025年4月より現職。 |
| 橋本 彰 | 取締役CFO/CHRO常務執行役員経営企画本部長 | 1990年同社入社。販売企画部長、福井コンピュータスマート代表取締役社長などを歴任。2023年常務取締役グループCFO/CHROに就任し、2025年4月より現職。 |
| 杉田 直 | 取締役 | 1987年同社入社。九州支社長、営業本部長などを経て、2012年福井コンピュータ代表取締役社長。2019年同社取締役に就任。2024年6月より福井コンピュータ代表取締役COO。 |
社外取締役は、坂口賢司(プロフィットメイカーズ代表取締役)、東雲凛(明治大学商学部教授)、小笹文(合同会社カラフル代表社員)、高橋勝(公認会計士高橋勝事務所代表)、神田輝生(神田法律事務所代表弁護士)、三橋明史(三橋明史公認会計士事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「建築システム事業」「測量土木システム事業」「ITソリューション事業」および「投資事業」を展開しています。
■(1) 建築システム事業
建築設計事務所や工務店、ハウスビルダー、ゼネコンなどの建築関連業者に対し、建築図面や見積書、発注書などの書類作成を自動化・効率化するソフトウェアを提供しています。営業から設計、積算・見積までトータルサポートできるソリューションを提案・販売しています。
収益は、顧客である建築関連業者からの製品代金および保守サービス料などから得ています。運営は、福井コンピュータアーキテクト、福井コンピュータスマート、福井コンピュータシステムが行っています。
■(2) 測量土木システム事業
測量会社や土地家屋調査士向けに土地・建物の図面作成を効率化するソフトウェアを提供しています。また、土木業者向けには施工管理や電子納品に対応したソフトウェアを提供し、現場作業の効率性・安全性の向上や設計変更への迅速な対応を支援しています。
収益は、測量土木業者などからの製品代金および保守サービス料などから得ています。運営は、福井コンピュータ、福井コンピュータスマートが行っています。
■(3) ITソリューション事業
選挙の出口調査に関わるモバイルアプリケーションおよびWEBアプリケーションの開発を行っています。
収益は、顧客からのシステム開発費やアプリケーション利用料などから得ています。運営は、福井コンピュータスマートが行っています。
■(4) 投資事業
同社の事業領域と関連性の高い国内外の建設テックスタートアップやベンチャー企業との技術・ノウハウの共有、ビジネスパートナーシップの構築を目的として、投資を行っています。
収益は、投資先企業の成長に伴うキャピタルゲインなどを想定しています。運営は、IFAC合同会社、IFAC投資事業有限責任組合が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は130億円から140億円台で堅調に推移しています。経常利益率は40%を超える非常に高い水準を維持しており、収益性の高さが際立っています。2025年3月期は過去最高の売上高を記録し、利益面でも増益となりました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 128億円 | 143億円 | 136億円 | 138億円 | 147億円 |
| 経常利益 | 52億円 | 64億円 | 56億円 | 57億円 | 62億円 |
| 利益率(%) | 40.8% | 44.4% | 41.4% | 41.1% | 42.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 31億円 | 34億円 | 43億円 | 38億円 | 38億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上総利益率は79%前後と極めて高い水準を維持しています。営業利益率も40%を超えており、高収益体質であることがわかります。2025年3月期は増収効果により、各利益段階で前年を上回る結果となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 138億円 | 147億円 |
| 売上総利益 | 107億円 | 116億円 |
| 売上総利益率(%) | 77.8% | 79.2% |
| 営業利益 | 56億円 | 61億円 |
| 営業利益率(%) | 40.4% | 41.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が17億円(構成比31%)、研究開発費が8億円(同14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
建築システム事業は法改正対応製品の販売増により増収増益となりました。測量土木システム事業もi-Construction等の需要拡大により増収増益です。ITソリューション事業は選挙関連の売上が計上され大幅な増収増益となりました。投資事業は運営経費により営業損失となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 建築システム事業 | 65億円 | 69億円 | 21億円 | 25億円 | 36.5% |
| 測量土木システム事業 | 70億円 | 72億円 | 33億円 | 34億円 | 48.0% |
| ITソリューション事業 | 4億円 | 6億円 | 1億円 | 5億円 | 75.1% |
| 投資事業 | - | - | -0億円 | -0億円 | - |
| 調整額 | - | - | 0億円 | -4億円 | - |
| 連結(合計) | 138億円 | 147億円 | 56億円 | 61億円 | 41.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 49億円 | 57億円 |
| 投資CF | -18億円 | -30億円 |
| 財務CF | -12億円 | -13億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は82.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「全員経営」「商品開発の考え方」「販売のための考え方」を経営理念として掲げています。人類の叡知により築き上げられた科学的成果を発展・継承し、次代の夢をコンピュータのソフトウエアという商品として実現させ、社会に提供することで、社会の進歩と発展に寄与することを会社の目的としています。
■(2) 企業文化
経営理念の3つの考え方には、社員、顧客、取引先のいずれに対しても「相手の立場に立ちきる」という共通の考え方があります。社員のオープンでフラットな体制でプライドと人権を尊重する「全員経営」、商品の良し悪しを決定できるのは顧客のみとする「商品開発の考え方」、商品を使ってもらうようになるまでが販売とする「販売のための考え方」を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は2025年度から2027年度を対象とする中期経営計画を策定しています。経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、ROEを新たに定めています。リソースの最適な配分により、売上の増加と収益の向上を目指し、各事業においてバリューチェーンを見直すことで目標達成に努めるとしています。
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画に基づき、コアビジネスであるCADシステムの成長、サービスプラットフォームの展開による新たなビジネスモデルの構築、共通データ環境の構築による省力化支援を進めます。データドリブン経営の推進や営業機能の効率化によりイノベーションを加速させ、人的資本やR&Dへの積極的な投資も行います。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
中期経営計画の重点施策を遂行するため、マネジメント人材、イノベーティブ人材、実務推進人材の確保と教育が必要と考えています。社員一人ひとりが最大限にパフォーマンスを発揮できるよう、職場環境や組織風土の整備に注力し、人材採用、能力開発、人事評価・処遇の各施策の高度化に取り組むことで、人的資本投資の効果最大化を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 36.1歳 | 10.2年 | 7,127,146円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでいます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 16.7% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 74.1% |
| 男女賃金差異(正社員) | 78.4% |
| 男女賃金差異(非正規) | 60.2% |
※男性育児休業取得率については、提出会社のHTML表内で「-」と記載されています。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) CADソフトウエアへの依存
同社グループの売上の大部分は建築・測量・土木の各種CADソフトウエア関連が占めており、経営成績は建設業界の動向に影響を受ける可能性があります。また、販売代理店を活用した事業展開を行っているため、代理店との関係悪化などが業績に影響を与える可能性があります。
■(2) 情報技術革新への対応
同社製品はWindows OS中心ですが、iOSやAndroid等の普及、クラウドサービスの展開が進んでおり、これらへの対応やBIM・CIM等の普及に伴う技術革新への対応が必要です。対応の遅れや開発コストの増加が業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 知的財産について
ソフトウエア業界では特許権侵害等の問題が生じることがあり、同社も調査を行っていますが、他社の特許権を侵害する可能性や、同社の特許権が侵害される可能性があります。知的財産権に関する問題が発生した場合、解決に時間と費用を要し、業績に影響を与える可能性があります。
■(4) 個人情報保護について
SaaSでのアプリケーション提供等により個人データを保有しており、情報セキュリティシステムを構築していますが、重要な情報が漏洩した場合には、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。



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