福井コンピュータホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

福井コンピュータホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

福井コンピュータホールディングスは、東京証券取引所プライム市場に上場し、建築・測量・土木分野向けのソフトウエア開発および販売を主軸に事業を展開しています。直近の業績では、建築基準法改正や国策への対応に加えて製品の価格改定効果もあり、過去最高の売上高を記録して増収増益のトレンドを維持しています。


※本記事は、福井コンピュータホールディングス株式会社の有価証券報告書(第47期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 福井コンピュータホールディングスってどんな会社?


建築・測量・土木分野に特化したCADソフトウエアの開発および販売を主軸に展開する企業です。

(1) 会社概要


1979年に福井コンピューター販売として設立され、1985年に福井コンピューターに商号変更しました。1995年に店頭登録、2004年にジャスダック上場を経て、2006年に東証二部、2007年に東証一部に指定替えされました。2012年に会社分割により持株会社体制へ移行し、現在の商号となっています。

従業員数は連結で556名、単体で86名です。筆頭株主は子会社の経営管理を行うダイテックホールディングで、第2位は信託業務を手掛ける日本マスタートラスト信託銀行(信託口)、第3位は光通信KK投資事業有限責任組合となっています。

氏名 持株比率
ダイテックホールディング 47.14%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.16%
光通信KK投資事業有限責任組合 6.37%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役CEO 社長執行役員は佐藤浩一氏です。社外取締役比率は66.7%です。

氏名 役職 主な経歴
佐藤浩一 代表取締役CEO 社長執行役員 1998年同社入社。関西支社長、営業統括部長などを経て2017年に同社取締役、福井コンピュータアーキテクト代表取締役社長に就任。2022年に同社代表取締役社長となり、2025年4月より現職。
橋本彰 取締役CFO/CHRO 常務執行役員 経営管理本部長 1990年同社入社。販売企画部長を経て2013年に福井コンピュータスマート代表取締役社長に就任。2017年に同社取締役経営管理本部長となり、常務執行役員などを経て2026年4月より現職。
杉田直 取締役 1987年同社入社。九州支社長や営業本部長などを経て2012年に同社取締役、福井コンピュータ代表取締役社長に就任。2024年に福井コンピュータ代表取締役COO社長執行役員となり、2019年より現職。


社外取締役は、坂口賢司(プロフィットメイカーズ代表取締役)、東雲凛(明治大学商学部教授)、小笹文(日本工業大学大学院技術経営研究科准教授)、高橋勝(公認会計士高橋勝事務所代表)、神田輝生(神田法律事務所代表弁護士)、三橋明史(三橋明史公認会計士事務所代表)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建築システム事業」「測量土木システム事業」「ITソリューション事業」および「投資事業」を展開しています。

建築システム事業


建築設計事務所や工務店向けに、図面や見積書等の書類を迅速に自動作成するCADソフトを開発・販売しています。

主にパッケージソフトの販売と保守サービスから収益を得ており、運営は福井コンピュータアーキテクトや福井コンピュータスマートが行っています。

測量土木システム事業


測量会社や土木施工業者向けに、土地の図面作成や現場作業の効率性を高めるソフトウェアを開発・販売しています。

商品の販売や保守契約を通じて収益を上げており、主に福井コンピュータが運営しています。

ITソリューション事業


選挙の出口調査などに関わるモバイルアプリケーションやWEBアプリケーションの開発、各種ソリューションサービスを提供しています。

システムの提供による使用許諾料を受け取っており、福井コンピュータスマートが運営しています。

投資事業


同社の事業領域と関連性の高い国内外の建設テックスタートアップ等との技術共有やビジネスパートナーシップの構築を目的に投資を行っています。

出資を通じて持続的な成長を目指す事業モデルであり、運営はIFAC合同会社やIFAC投資事業有限責任組合が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


同社の業績推移を見ると、一時期わずかに減収となったものの、直近にかけて売上高は拡大傾向にあり、増収を達成しています。経常利益も売上成長に伴って増加しており、高い利益率を維持しながら安定した収益基盤を確立していることが伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 143億円 136億円 138億円 147億円 167億円
経常利益 64億円 56億円 57億円 62億円 75億円
利益率(%) 44.4% 41.4% 41.1% 42.2% 44.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 34億円 43億円 38億円 38億円 32億円

(2) 損益計算書


売上高の増加にともない、売上総利益や営業利益も堅調に伸びており、利益率の改善が進んでいます。価格改定効果などもあり、高い収益性を確保する構造が定着していることが見て取れます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 147億円 167億円
売上総利益 116億円 136億円
売上総利益率(%) 79.2% 81.8%
営業利益 61億円 73億円
営業利益率(%) 41.3% 43.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が19億円(構成比30%)、研究開発費が9億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


建築システム事業は法改正対応プログラムの販売が伸長し、測量土木システム事業では国策に対応した製品が順調に推移したことで各セグメントとも増収となっています。ITソリューション事業も選挙関連システムの需要を取り込み、売上を伸ばしています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
建築システム事業 69億円 80億円
測量土木システム事業 72億円 79億円
ITソリューション事業 6億円 8億円
連結(合計) 147億円 167億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のキャッシュ・フロー状況となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 57億円 61億円
投資CF -30億円 -43億円
財務CF -13億円 -14億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.1%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も81.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


経営理念に「全員経営」「商品開発の考え方」「販売のための考え方」を掲げています。いずれも「相手の立場に立ちきる」という共通の考え方を基盤とし、次代の夢をコンピュータソフトウェアとして実現させ、社会の進歩と発展に寄与することを会社の目的としています。

(2) 企業文化


社員のオープンでフラットな体制でプライドと人権を尊重する「全員経営」や、商品の良し悪しを決定できるのはお客様のみであるとする「商品開発の考え方」を重視しています。顧客や取引先に対して「相手の立場に立ちきる」姿勢を重んじる文化が形成されています。

(3) 経営計画・目標


2025年度から2027年度を対象とする中期経営計画において、リソースの最適な配分と収益の向上を目指し、ROEを客観的な指標として新たに定めています。バリューチェーンの見直しを通じて、資本効率の改善とさらなる売上の成長に努めています。

(4) 成長戦略と重点施策


コアビジネスであるCADシステムの漸進的成長に加え、データプラットフォーム機能の提供やアプリケーション拡充を推進しています。また、ユーザーに他社ソリューションも提供するサービスプラットフォームを展開し、共通データ環境の構築を通じて建設業界全体のDX化を支援する戦略を描いています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


中期経営計画を確実に遂行するため、人的資本への投資を重要視しています。イノベーティブな挑戦を実現できる優秀な人材の確保や社員教育に注力するとともに、公正で透明性の高い人事制度を構築し、社員が最大のパフォーマンスを発揮できる職場環境整備と企業風土の醸成に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 38.5歳 11.9年 8,179,891円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 25.0%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 73.1%
男女賃金差異(正規労働者) 78.6%
男女賃金差異(非正規労働者) 66.7%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 建築・測量・土木の各種CADソフトへの依存


売上の大半を同分野に特化したCADソフトおよび関連機器の販売が占めているため、建設業界の動向が業績に影響を及ぼす可能性があります。また、販売代理店を活用した営業網を展開しており、代理店との関係悪化がリスクとなります。

(2) 急速な情報技術革新への対応


Windows以外のOSやクラウド、ウェアラブル端末などの新たな技術への対応が求められています。BIMやCIM等の普及に伴う建設業界の業務体系の変化に対し、開発コストの増大や対応の遅れが生じた場合、業績に影響する可能性があります。

(3) 知的財産に関する問題


ソフトウェア業界特有の活発な特許出願状況において、他社の特許権を侵害する、または自社の特許権を侵害される懸念があります。第三者との間で知的財産権に関する問題が発生した場合、解決に時間と費用を要し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 個人情報保護


SaaSでのアプリケーション提供を通じて顧客の個人情報をクラウド上で保有しているため、情報セキュリティシステムを構築して厳重に管理していますが、万が一重要な情報が漏洩した場合には、業績や信用に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。