※本記事は、リコーリースの有価証券報告書(第50期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. リコーリースってどんな会社?
リコーの持分法適用会社として、事務機器や医療機器等のリースや各種金融サービスを中核に展開する企業です。
■(1) 会社概要
1976年にリコークレジットとして設立され、事務用機器のクレジット販売等を開始しました。1977年にリース事業、1986年にファクタリング事業を開始し、1996年に東京証券取引所市場第二部に株式を上場しました。2001年の同市場第一部への指定を経て、2020年には監査等委員会設置会社への移行を実施しています。
同社グループの従業員数は連結で1686名、単体で1152名です。筆頭株主は事業会社のリコーで、第2位も同業の事業会社であるみずほリース、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| リコー | 33.57% |
| みずほリース | 19.92% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 6.07% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性4名の計13名で構成され、女性役員比率は30.8%です。代表取締役社長執行役員は中村徳晴です。社外取締役比率は高い割合を占めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中村徳晴 | 代表取締役 社長執行役員 | 1994年同社入社。総合戦略室長、関西支社長などを経て2019年取締役に就任。2020年より代表取締役および社長執行役員を務め、2025年よりサステナビリティ戦略総括として現職。 |
| 佐野弘純 | 取締役 専務執行役員 営業担当 | 1987年同社入社。関西支社長、業務本部長などを経て2019年に取締役就任。2023年より専務執行役員を務め、2025年より営業担当として現職。 |
| 大澤洋 | 取締役 専務執行役員 財務戦略担当 | 1988年リコー入社。同社監査役などを歴任後、2021年同社に入社し経営管理本部長等に就任。2025年より専務執行役員となり同年6月より取締役、財務戦略担当として現職。 |
社外取締役は、戎井真理(戎井会計コンサルティング代表)、原澤敦美(五十嵐・渡辺・江坂法律事務所パートナー)、一ノ瀬隆(デクセリアルズ元社長)、入佐孝宏(リコーコーポレート上席執行役員)、野地彦旬(横浜ゴム元社長)、内村裕也(みずほリースインベストメント本部長)、大森みどり(NOT A TOKYO代表)、川島時夫(三菱東京UFJ銀行元ドイツ総支配人)、中沢ひろみ(ニデック等を経て公認会計士)、深山徹(深山法律事務所代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、リースおよびファイナンス事業、サービス事業、インベストメント事業を展開しています。
■(1) リースおよびファイナンス事業
事務用機器、情報関連機器、医療機器、産業工作機械、車両などのファイナンス・リースやオペレーティング・リース、割賦販売を提供しています。また、法人向け融資や業界特化型融資、マンションローンなどの各種貸付サービスも顧客の設備投資や資金調達ニーズに応じて提供しています。
顧客からのリース料や割賦手数料、融資に対する利息を主な収益源としています。中核となるこれらの事業運営は、主に同社が担っており、幅広い顧客基盤に対してグループの販売支援力や業務ノウハウを活用した金融サービスを展開しています。
■(2) サービス事業
小口大量ビジネスの運営ノウハウを活かした請求書発行や売掛金回収などの集金代行サービスを提供しています。加えて、医療・介護報酬のファクタリングサービス、債権保証サービスのほか、リロケーションマネジメントや介護施設・老人ホームの運営なども幅広く展開しています。
顧客からの集金代行手数料やファクタリング手数料、施設の利用料などを主な収益源としています。同社がBPOサービスや債権保証を担うほか、子会社のエンプラスがリロケーション事業を、Welfareすずらんが介護施設の運営をそれぞれ担当しています。
■(3) インベストメント事業
再生可能エネルギー分野や不動産分野において、資金需要を背景とした事業投資や投融資を展開しています。太陽光発電事業における自社での発電所運営や、住宅賃貸、物流施設などの不動産関連事業への出資を通じて、社会課題の解決と環境対応を推進しています。
発電した電力の売電収入や、保有・出資する不動産からの賃貸収入および配当収益などを主な収益源としています。本事業の運営は同社が中心となって担っており、ポートフォリオの最適化によるリスク管理と資本収益性の向上を図りながら事業成長を目指しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、売上高は3000億円前後から直近で約3386億円へと順調に拡大傾向にあります。経常利益も概ね200億円台で安定して推移しており、底堅い収益基盤を構築しています。一方で、直近の利益率は微減しており、事業成長への投資拡大などが影響している状況がうかがえます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3039億円 | 2989億円 | 3083億円 | 3122億円 | 3386億円 |
| 経常利益 | 195億円 | 216億円 | 215億円 | 220億円 | 210億円 |
| 利益率(%) | 6.4% | 7.2% | 7.0% | 7.1% | 6.2% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 126億円 | 140億円 | 110億円 | 151億円 | 120億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、それに伴い売上総利益も拡大しています。しかし、事業基盤の強化に向けた人的資本やITなどへの投資が先行した影響により、営業利益は減少しました。結果として、売上総利益率および営業利益率はともに前期を下回る水準となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 3122億円 | 3386億円 |
| 売上総利益 | 485億円 | 502億円 |
| 売上総利益率(%) | 15.5% | 14.8% |
| 営業利益 | 217億円 | 206億円 |
| 営業利益率(%) | 7.0% | 6.1% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が77億円(構成比26%)、支払手数料が68億円(同23%)を占めています。売上原価(2884億円)については、ファイナンス・リース原価や固定資産税等を含むリース原価が2121億円(構成比74%)、支払利息などの資金原価が71億円(同2%)となっています。
■(3) セグメント収益
主力のリースおよびファイナンス事業は、パソコンの入替需要や企業の省力化を目的とした設備投資により新規契約実績が好調に推移し、増収を牽引しました。サービス事業も集金代行サービスの取扱件数増加などで順調に拡大しており、インベストメント事業も事業基盤の拡大により売上高を伸ばしています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| リースおよびファイナンス事業 | 2929億円 | 3164億円 |
| サービス事業 | 94億円 | 103億円 |
| インベストメント事業 | 99億円 | 119億円 |
| 連結(合計) | 3122億円 | 3386億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
なお、同社は金融・証券関連事業を主力としているため、営業CFのマイナスは主に賃貸資産等の営業資産の増加(事業拡大)によるものであり、直ちに業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -944億円 | -517億円 |
| 投資CF | -123億円 | -132億円 |
| 財務CF | 1031億円 | 708億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.4%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も16.5%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「私達らしい金融・サービスで豊かな未来への架け橋となります」という経営理念を掲げています。この理念のもと、事業を通じた社会課題の解決と企業の成長機会の創出を両立させ、ステークホルダーとともに持続可能な社会および経済の健全かつ安定的な発展に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、経営理念を支える基本姿勢として、「誠実な事業活動を通じて持続可能な地球社会の発展に貢献する」「想定を超えるサービスでお客さまと未来・社会をつなぐ」「一人ひとりが尊重しあい楽しくいきいきと働ける環境をつくる」「企業価値の増大によりステークホルダーの期待に応える」という4つの価値観を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2026年4月からスタートした3カ年の中期経営計画において、人的資本を起点とした付加価値の創出と成長投資・適正分配の好循環を重視しています。財務見通しとして、2029年3月期に以下の数値目標を掲げています。
* 売上総利益:551億円
* 営業利益:210億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:145億円
* ROA(総資産当期純利益率):0.93%
* ROE(自己資本利益率):5.7%
■(4) 成長戦略と重点施策
「リースの可能性を広げ、中小企業を支える基盤へ」という中長期ビジョンのもと、祖業であるベンダーリースを中核事業としてさらなる競争優位性の強化を図ります。また、BPOなどのサービス分野を収益拡張領域として拡大し、環境・不動産分野では再生可能エネルギーなどへの投融資を推進します。これらの実現のため、人財およびITへの戦略的な成長投資を実行し、生産性の向上とサービス品質の進化を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、持続的な成長に向けて人的資本を重要な価値創造の源泉と位置づけ、「Happiness at work(ハピネス アット ワーク)」を人事戦略の基盤に置いています。「誠実な異端人財」を求める人物像として定義し、リーダー層の強化と自律性向上を軸とした人財育成や配置への投資を行うことで、従業員が事業成長につながる挑戦をしやすい風土の醸成を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 41.5歳 | 13.5年 | 8,082,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 25.9% |
| 男性育児休業取得率 | 80.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 64.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用労働者) | 61.9% |
| 労働者の男女の賃金の差異(パート・契約社員) | 107.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、エンゲージメントスコア(年間平均)(72点)、一人当たり教育費(60,771円)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 大口顧客の貸倒リスク
主力のリースおよびファイナンス事業では信用供与が比較的長期間にわたるため、景気変動などによる顧客の倒産で貸倒損失が増加するリスクがあります。同社は大量の審査データの蓄積による独自のスコアリングシステムで与信判断を迅速化し、1契約あたりの単価を低く抑えて信用リスクの分散を図ることで対応しています。
■(2) サイバー攻撃やシステム障害のリスク
小口大量の業務処理において情報システムの安定稼働は不可欠であり、サイバー攻撃やシステムの障害が発生した場合、経営に重大な影響を及ぼす可能性があります。同社は専門の対応チームを組織してセキュリティ対策を強化するとともに、バックアップシステムの構築などによりリスク低減に努めています。
■(3) 金利変動や資金繰り悪化のリスク
同社は事業構造上有利子負債の割合が高く、金利の変動が業績に影響を与える可能性があります。また、市場環境の悪化による資金確保が困難になるリスクも存在します。これに対し、専門の委員会を設置して最適な資金調達と運用を目指すほか、企業体質の強化により高い格付を維持し、流動性リスクの管理を徹底しています。



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