オービック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

オービック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の独立系SIer。企業の基幹業務システム「OBIC7」の開発・導入を行うシステムインテグレーション事業と、運用支援を行うシステムサポート事業が主力。直近決算では売上高1,212億円、経常利益898億円と増収増益を達成。営業利益率は64.6%と極めて高い収益性を誇る。(146文字)


※本記事は、株式会社オービック の有価証券報告書(第58期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. オービックってどんな会社?

独立系システムインテグレーターの代表格。「OBIC7」を中心とした自社開発システムの直販体制が特徴。

(1) 会社概要

1968年に設立され、1976年にオービックオフィスオートメーション、1980年にオービックビジネスコンサルタントを設立しました。2000年に東京証券取引所市場第一部へ指定され、2005年には東京新本社ビルが竣工しました。2022年の市場区分見直しに伴い、現在はプライム市場に上場しています。

連結従業員数は2,189名、単体では1,969名です。筆頭株主は資産管理業務を行う株式会社MNホールディングスで、第2位は信託銀行の信託口、第3位も同様に信託銀行の信託口となっています。

氏名 持株比率
MNホールディングス 19.21%
日本マスタートラスト信託銀行 15.13%
日本カストディ銀行 6.77%

(2) 経営陣

同社の役員は男性9名、女性1名、計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役会長は野田順弘氏、代表取締役社長は橘昇一氏です。社外取締役比率は30.0%です。

氏名 役職 主な経歴
野田 順弘 代表取締役会長 1968年同社設立代表取締役社長。2006年会長兼社長を経て、2013年より現職。
橘 昇一 代表取締役社長 1985年入社。ソリューション営業統括などを経て、2013年より現職。
藤本 隆夫 常務取締役関西事業本部長 1994年入社。首都圏事業本部長などを経て、2023年より現職。
岡田 雄 取締役首都圏事業部長 2005年入社。首都圏第1事業部長などを経て、2023年より現職。


社外取締役は、五味康昌(元三菱東京UFJ銀行副頭取)、江尻隆(弁護士・元あおぞら銀行監査役)、江上美芽(元シティバンク銀行等)です。

2. 事業内容

同社グループは、「システムインテグレーション」「システムサポート」「オフィスオートメーション」および「その他」事業を展開しています。

(1) システムインテグレーション事業
顧客企業の経営課題に対し、統合基幹業務システム「OBIC7」等のERPシステムの企画、開発、導入を行っています。製造・流通・サービス・金融など幅広い業種・業界の大手・中堅企業を主な顧客としています。

システムの導入に伴うハードウェアやソフトウェアの販売代金、システム構築費用を顧客から受け取ります。運営は主に同社が行い、関連会社のオービーシステムが一部製品の製造等を行っています。

(2) システムサポート事業
導入した統合基幹業務システムの安定稼働を支えるため、運用支援や保守サービスを提供しています。クラウドソリューションや法改正対応など、継続的なサポートを通じて顧客との長期的な関係を構築しています。

システム利用料や保守契約に基づく月額または年額のサービス料金を顧客から受け取ります。運営は主に同社が行っています。

(3) オフィスオートメーション事業
顧客企業のオフィス環境整備のため、PCやプリンターなどのOA機器全般およびサプライ用品を提供しています。

OA機器やサプライ用品の販売代金を顧客から受け取ります。運営は主に子会社のオービックオフィスオートメーションが行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間において、売上高は着実に右肩上がりで推移しており、収益規模が拡大しています。経常利益および当期利益も連続して増加しており、高い利益率を維持しながら成長を続けています。特に利益率は非常に高い水準で安定しており、効率的な経営が行われていることが読み取れます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 839億円 895億円 1,002億円 1,116億円 1,212億円
経常利益 526億円 602億円 702億円 812億円 898億円
利益率(%) 62.7% 67.3% 70.1% 72.7% 74.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 350億円 401億円 469億円 538億円 597億円

(2) 損益計算書

売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益も順調に伸長しています。売上総利益率は高い水準を維持しており、営業利益率も向上傾向にあります。コストコントロールが機能し、増収効果が利益に直結する収益構造となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,116億円 1,212億円
売上総利益 864億円 944億円
売上総利益率(%) 77.5% 77.9%
営業利益 709億円 784億円
営業利益率(%) 63.5% 64.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が73億円(構成比46%)、賞与引当金繰入額が11億円(同7%)を占めています。

(3) セグメント収益

システムインテグレーション事業は「OBIC7シリーズ」の新規顧客開拓が進み堅調に推移しました。システムサポート事業はクラウドソリューションを中心に運用支援等が好調で、大幅な増収となりました。オフィスオートメーション事業は減収となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
システムインテグレーション 473億円 503億円
システムサポート 561億円 630億円
オフィスオートメーション 82億円 79億円
連結(合計) 1,116億円 1,212億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

営業活動によるキャッシュ・フローはプラス、投資活動および財務活動によるキャッシュ・フローはマイナスで、本業で稼いだ資金を適切に投資と株主還元等の財務活動に回している「健全型」と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 558億円 628億円
投資CF -22億円 -39億円
財務CF -397億円 -290億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は86.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

「ユーザーオリエンテッド(顧客第一主義)」を経営姿勢とし、「人財の成長が会社の成長」「Innovation~破壊と創造~」を企業理念として掲げています。クラウドサービス等の技術革新により顧客企業のデジタル変革と新たな利益創造を支援し、社会に貢献することを基本方針としています。

(2) 企業文化

既成概念にとらわれない柔軟で「ふまじめ」な発想を持ち、社会貢献への気概とチャレンジ精神を持つ人材を重視しています。また、フラットでオープンな組織体制を採用し、職種の垣根を越えた連携や、社員の家族も参加する運動会の開催など、コミュニケーションを重視した風通しの良い企業風土があります。

(3) 経営計画・目標

中長期的に安定した企業の発展を目指し、顧客利益を意識した経営を重視しています。具体的な経営指標としては、以下の数値を維持・継続するよう努めています。

* 自己資本利益率(ROE):10%以上

(4) 成長戦略と重点施策

「ワンストップ・ソリューション・サービス」をキーワードに、自社開発製品の直接販売体制を強化しています。自社運営クラウドセンターによる安定的なサービス提供、AI等の新技術活用によるデータ活用促進、製販サービス一体体制の推進により、生産性向上と顧客満足度の向上に取り組んでいます。

* 製販サービス一体体制を推進する
* カスタマイズ性の高い「OBIC7シリーズ」によって、生産性の向上に取り組む
* 人材の育成と活性化に注力する

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「人財の成長が会社の成長」という理念のもと、新卒採用にこだわり、社員を中長期的な視点でじっくりと育成する方針です。ITスキルだけでなく、会計などの業務知識や業界ノウハウを習得させるため、職種を問わず全社員に対し充実した教育・研修プログラムを提供しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 35.9歳 13.0年 11,031,000円


※平均年間給与(税込み)は、基準外賃金及び賞与を含んでおります。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 12.8%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 76.1%
男女賃金差異(正規) 76.8%
男女賃金差異(非正規) 74.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(85.6%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 技術革新と製品開発に関するリスク

技術革新が急速に進展する中、対応が遅れた場合には製品開発の遅延による機会損失や開発コストの上昇が生じ、経営成績に影響を与える可能性があります。同社は広範な領域での研究開発活動に努めています。

(2) 人材流失とノウハウ喪失に関するリスク

労働集約的な側面がある情報サービス業界において、人材のモチベーションは業績に直結します。敵対的な買収等による混乱で優秀な人材やノウハウが失われた場合、企業の成長・発展に致命的な損失となり、経営成績に重大な影響を与える可能性があります。

(3) 情報セキュリティに関するリスク

クラウドサービス提供企業として厳格な情報管理を行っていますが、サイバー攻撃や人為的過失により顧客情報が漏洩した場合には、損害賠償請求や社会的信用の低下を招き、経営成績に影響を与える可能性があります。

(4) 環境・気候変動に関するリスク

気候変動に起因する大規模自然災害による業務影響や、温室効果ガス排出規制への適合コスト増加、適合遅れによるレピュテーション低下などが、経営成績に影響を与える可能性があります。同社はBCP対策や環境負荷低減に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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