オービック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

オービック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

オービックは東京証券取引所プライム市場に上場しており、主に企業情報システムのシステムインテグレーション事業やシステムサポート事業を展開しています。直近の業績では、売上高や経常利益が堅調に推移しており、増収増益のトレンドを維持しています。独自の直接販売体制と高い収益性を強みに成長を続けています。


※本記事は、オービックの有価証券報告書(第59期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. オービックってどんな会社?


企業情報システムの構築と運用を直接販売で支援する独立系システムインテグレーターです。

(1) 会社概要


1968年に会計機その他の事務機器等の国内販売を目的として設立されました。1998年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、2000年には同市場第一部銘柄に指定されています。2005年には東京新本社ビルが竣工して本店を移転したほか、2022年に東京証券取引所プライム市場への移行を行っています。

現在、同社グループの従業員数は連結で2,256名、単体で2,030名となっています。筆頭株主は資産管理業務を行うMNホールディングスで、第2位および第3位は信託業務を行う信託銀行が続いています。

氏名 持株比率
MNホールディングス 19.51%
日本マスタートラスト信託銀行 15.06%
日本カストディ銀行 5.23%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長は橘昇一氏が務めており、社外取締役比率は27.3%です。

氏名 役職 主な経歴
野田順弘 代表取締役会長 近畿日本鉄道等を経て1968年に同社を設立し代表取締役社長に就任。2006年に会長兼社長を経て2013年より現職。
橘昇一 代表取締役社長 1985年入社。営業部長や横浜支店長、専務、副社長等を歴任し、2013年より現職。
藤本隆夫 常務取締役関西事業本部長 1994年入社。ソリューション事業本部長等を歴任し、2022年に関西事業本部長、2023年より現職。
岡田雄 常務取締役首都圏本部長 2005年入社。首都圏事業部長等を歴任し、2023年に取締役、2025年より現職。
花田裕太 取締役中部名古屋事業部長 2005年入社。名古屋支店のグループ長や執行役員を経て、2025年より現職。


社外取締役は、五味康昌(元三菱UFJ証券会長)、江尻隆(元西村あさひ法律事務所パートナー)、江上美芽(米国ユタ大学併任教授)です。

2. 事業内容


同社グループは、「システムインテグレーション事業」、「システムサポート事業」、「オフィスオートメーション事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) システムインテグレーション事業


統合基幹業務システムの製造・販売を行っています。製造、流通、サービス、金融など、さまざまな業種や業界の大手・中堅企業を主な顧客としています。

収益は、主にソフトウェアの開発やシステム構築に伴う対価として顧客から受け取ります。運営は同社のほか、関連会社のオービーシステムなどが担当しています。

(2) システムサポート事業


統合基幹業務システムの運用支援や保守サービス等を提供しています。クラウドサービスを利用する顧客のシステムが安定的に稼働するためのサポートを実施しています。

収益は、システムの運用支援や保守サービス、インターネット回線等を利用したクラウドサービスの利用料として顧客から受け取ります。運営は主に同社が行っています。

(3) オフィスオートメーション事業


OA機器一般やコンピュータサプライ用品の仕入および販売を行っています。また、販売した機器類に対する保守メンテナンスサービスも提供しています。

収益は、機器やサプライ用品の販売代金、ならびに保守メンテナンスのサービス料金として顧客から受け取ります。運営は主に子会社のオービックオフィスオートメーションが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高および経常利益ともに毎期連続で成長を続けています。売上高は895億円から1,352億円へと拡大し、利益率も67.3%から77.5%へと年々向上しており、極めて高い収益性と安定した成長力を維持していることがわかります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 895億円 1,002億円 1,116億円 1,212億円 1,352億円
経常利益 602億円 702億円 812億円 898億円 1,048億円
利益率(%) 67.3% 70.1% 72.7% 74.0% 77.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 401億円 469億円 538億円 597億円 694億円

(2) 損益計算書


売上高および各段階利益は前期から堅調に増加しています。特に売上総利益率は78%前後、営業利益率は65%前後の極めて高い水準で推移しており、付加価値の高いシステム提案ビジネスによる強い収益基盤が確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 1,212億円 1,352億円
売上総利益 944億円 1,057億円
売上総利益率(%) 77.9% 78.1%
営業利益 784億円 888億円
営業利益率(%) 64.6% 65.7%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が77億円(構成比46%)、賞与引当金繰入額が11億円(同7%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のシステムインテグレーション事業では、統合業務ソフトウェアのシステム構築需要が大手・中堅企業を中心に拡大しました。また、システムサポート事業においてもクラウドソリューションを中心とする運用支援・保守サービスが好調に推移し、全セグメントで前期を上回る売上を記録しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
システムインテグレーション 503億円 553億円
システムサポート 630億円 715億円
オフィスオートメーション 79億円 85億円
連結(合計) 1,212億円 1,352億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.8%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は83.4%となり、いずれも市場平均を上回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 628億円 737億円
投資CF -39億円 -20億円
財務CF -290億円 -644億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


ユーザーオリエンテッド(顧客第一主義)の経営姿勢のもと、クラウドサービスをはじめとした技術革新によって顧客企業のデジタル変革と新たな企業利益の創造を支援することで社会に貢献することを経営の基本方針としています。また、「人財の成長が会社の成長」を理念に掲げています。

(2) 企業文化


職種の垣根を越えて連携し、それぞれの専門ノウハウを結集することで顧客のスピーディーな問題解決を実現する「フラットでオープンな組織体制」を特徴としています。また、「Innovation~破壊と創造~」を掲げ、前例にとらわれない「ふまじめ」な発想とチャレンジ精神を尊重する文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


顧客利益を意識した経営による持続的成長を目標とし、事業戦略や各種施策を立案・実行することで、自己資本利益率(ROE)の維持・向上に努めています。また、中長期的なキーワードとして「ワンストップ・ソリューション・サービス」を掲げ、情報システムの構築と運用をトータルでサポートする体制を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


既存顧客のクラウドサービス利用率を高めるとともに、AIなど最新のデジタル技術を用いたデータ活用を促進し、新たな経営課題の設定と解決策の検討を通じて顧客との継続的な関係構築に努めています。今年度の優先課題として以下の項目を掲げています。

・製販サービス一体体制の推進
・カスタマイズ性の高い「OBIC7シリーズ」による生産性の向上
・人材の育成と活性化への注力

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人財の成長が会社の成長につながる」という考えのもと、新卒で採用した社員の特性に合わせて中長期目線でじっくり育成する方針をとっています。充実した教育・研修制度を通じて、職種にかかわらず全社員が会計をはじめとした幅広い業務知識やノウハウの習得に努め、社員が長期に活躍できる環境づくりを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 35.8歳 12.9年 11,292,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 14.6%
男性育児休業取得率 101.4%
男女賃金差異(全労働者) 76.5%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 77.1%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 73.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用率(100.0%)、社員研修実施率(100.0%)、有給休暇取得率(89.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 技術革新と製品開発への対応遅延


当情報サービス業界では技術革新が急速に進展しており、同社は最新技術に対する研究開発活動に努めています。しかし、技術の変化への対応が遅れた場合、製品開発の遅延に伴う機会損失や開発コストの上昇が発生し、同社の経営成績に影響を与える可能性があります。

(2) 人材流出とノウハウの喪失


労働集約的な側面を持つ業界において、同社は優秀な人材の確保と育成に多くの時間とコストをかけています。敵対的な買収などによる人心の混乱が生じ、結果としてモチベーションの高い人材の流出やノウハウの喪失を招いた場合、安定的・継続的な事業活動に重大な損失が生じる可能性があります。

(3) 情報セキュリティインシデントの発生


機密度の高い経営情報を管理するクラウドサービス提供企業として、情報管理規程の整備やセキュリティ強化による漏洩防止に努めています。しかし、サイバー攻撃や人為的過失により顧客企業の個人情報が漏洩した場合、損害賠償請求による費用発生や社会的信用の低下を招く可能性があります。

(4) 環境・気候変動による事業への影響


同社は顧客の統合基幹業務システムの提供およびサポートを行っており、安定的な事業継続が求められています。しかし、気候変動に起因する大規模な自然災害が業務運営に影響を及ぼしたり、温室効果ガス排出規制への適合コストが増加した場合、同社の経営成績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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