※本記事は、株式会社リログループ の有価証券報告書(第58期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. リログループってどんな会社?
企業福利厚生のアウトソーシングサービスを主力とし、社宅管理や賃貸管理、海外赴任支援などを総合的に展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1967年に前身となる日本建装を設立し、1984年にリロケーション事業を本格化させました。1993年には福利厚生代行サービス「福利厚生倶楽部」を開始し、事業を拡大しました。2001年に持株会社体制へ移行し、2011年に東京証券取引所市場第一部へ上場、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。
2025年3月31日現在、連結従業員数は3,334名、単体では128名です。筆頭株主は創業家等の資産管理会社とみられる有限会社ササダ・ファンドで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。また、第3位には通信サービス等の大手事業会社が名を連ねており、安定的な株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 有限会社ササダ・ファンド | 23.40% |
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 12.70% |
| 光通信株式会社 | 7.80% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性3名の計12名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役CEOは中村謙一氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中村 謙一 | 代表取締役CEO | 1989年同社入社。リロバケーションズ社長等を経て2010年同社社長。2022年4月より現職。 |
| 佐々田 正徳 | 取締役会長 | 1971年同社入社。1978年社長、2003年会長等を歴任。2012年4月より現職。グループ統括。 |
| 門田 康 | 取締役CFO兼CIO | 1990年太陽神戸三井銀行入行。2000年同社入社。コーポレートスタッフ部門担当等を経て2025年4月より現職。 |
| 河野 豪 | 取締役COO | 1997年同社入社。リロクラブ社長、同社CIO兼CSO等を経て2025年4月より現職。アウトソーシング・賃貸管理事業統括。 |
| 小山 克彦 | 取締役CHRO | 1989年同社入社。人材開発室長、常勤監査役等を経て2022年4月より現職。人材開発・人事給与・リスクマネジメント担当。 |
| 田村 佳克 | 取締役 | 1997年同社入社。リロバケーションズ社長、同社常務執行役員等を経て2025年6月より現職。 |
| 大木 延佳 | 取締役(常勤監査等委員) | 1989年同社入社。福利厚生倶楽部中国取締役、内部監査室等を経て2024年6月より現職。 |
| 堤竹 あかね | 取締役(常勤監査等委員) | 1989年同社入社。リロケーション・ジャパン執行役員、ダイヤモンド住宅取締役等を経て2024年6月より現職。 |
社外取締役は、櫻井政夫(公認会計士・税理士)、佐藤香織(弁護士)、本間洋一(公認会計士)、山本節子(有限会社ザ・プロトコール代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「リロケーション事業」「福利厚生事業」「観光事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) リロケーション事業
借上社宅管理、賃貸管理、海外赴任支援などで構成され、企業の従業員の移動を総合的にサポートしています。借上社宅の物件検索や転居支援、留守宅管理、賃貸不動産の管理・仲介、さらには北米等での海外赴任サポートなどを提供しています。
収益は、顧客企業や物件オーナーからの管理手数料、仲介手数料、各種業務代行手数料などが主な柱です。運営は、株式会社リロケーション・ジャパン、株式会社リロケーション・インターナショナル、株式会社リロパートナーズ、株式会社東都などが担っています。
■(2) 福利厚生事業
企業の業務負担とコストを軽減する福利厚生代行サービスや、提携企業向けの顧客特典代行サービス等を提供しています。また、住まいの駆け付けサービスも手掛け、会員の生活を総合的にサポートしています。
収益は、契約企業からの会費収入や、各種サービスの利用料などが中心です。運営は、株式会社リロクラブなどが主に行っています。
■(3) 観光事業
福利厚生事業の会員基盤や企業保養所等の運営ノウハウを活用し、ホテル運営事業と別荘のタイムシェア事業を展開しています。また、後継者問題を抱える地方の中小型ホテルや旅館の再生にも取り組んでいます。
収益は、宿泊施設の利用料、タイムシェア会員権の販売や年会費、ホテル運営受託による収入などから構成されています。運営は、株式会社リロバケーションズなどが担っています。
■(4) その他事業
主力事業の基盤を活かし、金融関連事業等を展開しています。
収益は、金融サービスに伴う手数料収入などが中心です。運営は、株式会社リロ・フィナンシャル・ソリューションズなどが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上収益は一時的な減少を除き増加傾向にあります。2024年3月期は一時的な損失計上により最終赤字となりましたが、2025年3月期は大幅な増収増益を果たし、V字回復を遂げました。特に当期は過去最高益を記録しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 1,561億円 | 1,131億円 | 1,237億円 | 1,326億円 | 1,429億円 |
| 税引前利益 | 134億円 | 218億円 | 259億円 | △194億円 | 529億円 |
| 利益率(%) | 8.6% | 19.2% | 20.9% | -14.6% | 37.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 84億円 | 156億円 | 209億円 | △278億円 | 433億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上収益の増加に伴い売上総利益も拡大しています。前期は営業利益を計上しつつも特別要因等により最終赤字でしたが、当期は営業利益率が向上し、大幅な黒字化を達成しました。収益性の高い事業構造への転換が進んでいることが窺えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 1,326億円 | 1,429億円 |
| 売上総利益 | 605億円 | 663億円 |
| 売上総利益率(%) | 45.7% | 46.4% |
| 営業利益 | 276億円 | 304億円 |
| 営業利益率(%) | 20.8% | 21.3% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給付費用が222億円(構成比55.5%)と最も大きな割合を占めており、次いで減価償却費及び償却費が37億円(同9.4%)となっています。労働集約的な側面とシステム投資等の償却負担があることが読み取れます。
■(3) セグメント収益
各セグメントとも増収増益となりました。リロケーション事業は管理戸数の増加等が寄与し安定成長しています。福利厚生事業は会員獲得や駆け付けサービスの好調により収益を伸ばしました。観光事業はホテル稼働率の向上や新規開業効果により、利益面で特に高い伸びを示しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| リロケーション事業 | 927億円 | 989億円 | 168億円 | 181億円 | 18.3% |
| 福利厚生事業 | 253億円 | 277億円 | 115億円 | 123億円 | 44.2% |
| 観光事業 | 142億円 | 158億円 | 31億円 | 42億円 | 26.5% |
| その他 | 13億円 | 14億円 | △2億円 | △2億円 | -12.1% |
| 連結(合計) | 1,326億円 | 1,429億円 | 276億円 | 304億円 | 21.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業の営業活動で資金を獲得しつつ、資産の売却等による投資キャッシュ・フローもプラスとなりました。これらで得た資金を借入金の返済や配当支払いに充てており、財務体質の改善が進んでいる「改善型」の状況です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 187億円 | 259億円 |
| 投資CF | △58億円 | 300億円 |
| 財務CF | △78億円 | △413億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は81.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は43.5%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「日本企業が世界で戦うために本業に集中できるよう、本業以外の業務をサポートすること」や「真のサムライパワーを発揮できるよう、日本企業の世界展開を支援すること」を使命としています。これらの活動を通じて、「世界規模で展開する『生活総合支援サービス産業』の創出」というビジョンの実現を目指しています。
■(2) 企業文化
創業来の精神として、「人や企業が後顧の憂いなく安心して本来の力を発揮できるようにサポートすること」を重視しています。また、全社員が経営に参加する「パートナーシップ経営」や、意欲ある人材に活躍の場を提供する「舞台を与える経営」を掲げ、顧客満足と卓越したサービスの追求を信条としています。
■(3) 経営計画・目標
2026年3月期を初年度とする4ヵ年の中期経営計画「第四次オリンピック作戦」を策定し、最終年度である2029年3月期に向けた目標を設定しています。持続的な成長と企業価値向上を目指し、資本効率と財務健全性の両立を図ります。
* 売上収益:2,000億円
* 営業利益:500億円
* 調整後ROIC:15%
* ROE:20%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「日本の大転換に必要な課題解決カンパニーとなる」をテーマに、「人材投資」「労働力不足」「シニア・相続」の3領域を重点課題としています。BtoB領域ではアウトソーシング事業による生産性向上支援、BtoC領域では賃貸管理・観光事業を通じた地方創生やインバウンド対応、事業承継の推進を図ります。また、グループシナジーの最大化やシステム投資によるデジタル化を推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「パートナーシップ経営」と「舞台を与える経営」を基盤とし、社員が当事者意識を持って経営に参加できる環境づくりを推進しています。従業員持株会の奨励やストックオプションの付与等により個人の繁栄と会社の成長をリンクさせるほか、年齢や性別に関係なく早期に責任あるポジションを任せる抜擢人事やグループ内公募制度を通じて、自律的なキャリア形成と挑戦を支援しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.2歳 | 7.8年 | 5,934,000円 |
※平均年間給与は税込支払給与額であり、基準外給与および賞与を含んでいます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 31.0% |
| 男性育児休業取得率 | 28.6% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 75.9% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 79.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 49.2% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員持株会加入率(98.6%)、役職者兼務状況(30.7%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 企業福利厚生制度の変遷
主力事業である企業福利厚生分野において、顧客企業の制度が従来の日本型から欧米型の成果主義や手当支給へ移行する可能性があります。同社グループがこうした制度変遷に適切に対応できない場合、ビジネスモデルの変更を迫られ、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 法的規制の変更や会計基準改定
不動産取引、建設、旅行業など多岐にわたる事業を展開しており、それぞれの法的規制や許認可を受けています。今後、これらに関連する法令や会計基準等が改変または新設された際に、適切に対応できない場合は、事業展開や業績に悪影響が生じる可能性があります。
■(3) 個人情報保護
多くの顧客や会員の個人情報を取り扱っており、厳格な管理体制を構築しています。しかしながら、情報漏洩等の事態が発生した場合、損害賠償や信用失墜により、業績および財政状態に多大な影響を与える可能性があります。
■(4) 人の移動の停滞
転居支援や海外赴任サポート、賃貸仲介等のサービスは人の移動に伴い収益が発生します。天災、紛争、感染症等により移動が広範囲かつ長期にわたり制限された場合、サービス需要が低下し、業績に影響を及ぼすリスクがあります。



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