オービックビジネスコンサルタント 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

オービックビジネスコンサルタント 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

オービックビジネスコンサルタントは東京証券取引所プライム市場に上場し、会計・人事等の基幹業務を支援するソフトウェアやクラウドサービスを開発・提供しています。近年はクラウドサービスの導入需要が牽引し、売上高、営業利益、経常利益、当期純利益のすべてにおいて安定した増収増益のトレンドを継続しています。


※本記事は、株式会社オービックビジネスコンサルタントの有価証券報告書(第47期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月18日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. オービックビジネスコンサルタントってどんな会社?


同社は、企業業務に関する基幹業務システムの開発メーカーとして、クラウドサービス等を提供しています。

(1) 会社概要


1980年に設立され、1993年に主力製品の「奉行シリーズ」の販売を開始しました。1999年に日本証券業協会に株式を店頭登録し、2004年に東京証券取引所市場第一部へ上場しました。近年はクラウドサービスの開発・提供に注力しており、2018年に「奉行クラウド」を販売開始するなど、継続的な事業展開を行っています。

従業員数は単体で1065名です。筆頭株主は事業会社であり同社のソフトウェアプロダクトの販売も行うオービックで、第2位は創業者の和田成史氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
オービック 36.81%
和田 成史 21.07%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.77%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長執行役員は和田成史氏が務めています。取締役9名のうち、社外取締役は4名です。

氏名 役職 主な経歴
和田 成史 代表取締役社長執行役員 1980年同社設立時に代表取締役社長就任。2009年営業本部長兼務を経て、2025年6月より現職。
和田 弘子 代表取締役副社長執行役員管理本部長 1980年同社設立時に取締役就任。常務、専務等を経て2020年代表取締役副社長。2025年6月より現職。


社外取締役は、野田順弘(オービック代表取締役会長)、橘昇一(オービック代表取締役社長)、伊東千秋(元富士通代表取締役副社長)、成田純治(元博報堂代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ソフトウェア事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

プロダクト


企業業務に関するソリューションテクノロジーの開発メーカーとして、会計・人事・給与等の基幹業務や周辺・拡張業務におけるクラウドサービスおよびオンプレミス製品等を提供しています。中堅・中小企業を主な顧客とし、専用のサプライ用紙などの関連製品を含め、業務効率化に貢献するシステムを企画・開発・販売しています。

主にソフトウェア等の販売やサービス利用料から収益を得ています。クラウドサービスは利用期間に応じた按分で、製品は納品時に収益を計上します。事業の運営は主に同社が行い、関連製品の販売等においてはオービックオフィスオートメーションなどの関係会社も事業の一翼を担っています。

サービス


主力製品である奉行シリーズなどを安心して利用してもらうためのサポート体制として、ソフトウェアの保守契約や導入時の操作指導等のユースウェア業務を展開しています。顧客の業務プロセス改善を後押しし、安定した利用環境を提供することを目指しています。

保守サービスについては期間を通じたサービスの提供であるため利用期間に応じて按分して収益を計上し、操作指導等は実施した指導時間や回数に応じて収益を得るモデルです。本事業についても主に同社が運営主体となっています。

3. 業績・財務状況


同社の単体業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、一時的な減益の期間があったものの、総じて右肩上がりで成長しています。特に直近数年はクラウドサービスの導入需要が牽引し、連続して大幅な増収増益を記録しており、利益率も約50%という極めて高い水準を安定して維持しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 348億円 337億円 420億円 470億円 514億円
経常利益 172億円 158億円 199億円 230億円 252億円
利益率(%) 49.4% 47.0% 47.4% 49.0% 49.1%
当期利益 118億円 110億円 138億円 162億円 181億円

(2) 損益計算書


売上高の成長に伴い、売上総利益および営業利益も順調に拡大しています。売上総利益率は80%台半ばと非常に高く、ソフトウェア開発という付加価値の高い事業モデルの強みを示しており、高い営業利益率の源泉となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 470億円 514億円
売上総利益 393億円 435億円
売上総利益率(%) 83.7% 84.6%
営業利益 217億円 236億円
営業利益率(%) 46.3% 45.9%


販売費及び一般管理費のうち、給与・賞与が48億円(構成比24%)、研究開発費が44億円(同22%)、広告宣伝費が31億円(同16%)を占めています。また、売上原価においては、材料費が45億円(構成比57%)、労務費が22億円(同28%)となっています。

(3) セグメント収益


同社はソフトウェア事業の単一セグメントですが、品目別に見ると、主力であるプロダクトがクラウドサービスの伸長により順調に売上を伸ばしています。一方、サービスはオンプレミス製品からクラウドへの切り替えが進んだ影響で保守売上が減少し、やや減収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
プロダクト 319億円 368億円
サービス 151億円 146億円
合計 470億円 514億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済等を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態である「健全型」に該当します。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 177億円 174億円
投資CF -11億円 -544億円
財務CF -71億円 -77億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.0%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も76.7%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「業務にイノベーションを お客様に感動を」をミッションとして掲げています。企業の目的は顧客に価値あるものを提供し、顧客の成長に貢献することにあると考え、先進的なIT技術を駆使して顧客満足を徹底的に追求する「顧客第一主義」の思想を製品開発や各種サービスに貫いています。

(2) 企業文化


同社は「自由と公平」「採用と教育」「革新と戦略」「選択と集中」「報連相と情報共有」の5つを成長のための基本姿勢とし、さらに「オープン・フェア・フラット・グローバル」という経営理念に基づいて多様な「個」を尊重しています。全社員が役割の違いを超えて一体となる「チームOBC」という企業文化を重視し、組織力を高めています。

(3) 経営計画・目標


同社は設備投資等に大きく資本を投下する必要がない事業モデルであるため、経営上は収益面での指標を重視しています。具体的な数値目標は設定していませんが、売上高を伸ばしながら、営業利益率および経常利益率を維持、または高めることで、高収益企業として安定的に成長し続けることを目標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、基幹業務サービスとクラウド環境(Microsoft Azure)にフォーカスする「コアコンピタンスの強化」を推進しています。特にAIを活用した技術革新により「奉行クラウド」などの価値をさらに高めることに注力する方針です。

・中堅および中規模・小規模企業へのアプローチ強化
・パートナー・ブランド戦略の推進
・高いセキュリティ環境の提供による安心・安全の実現

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「人財」を企業の成長を支える資本と捉え、採用と教育を最重要方針としています。「チームOBC」の文化に共感し、自律的に成長できる人材の確保を重視しており、知識ゼロからでも高度なIT人材へと育成する充実した研修体制を整えています。さらに、健康経営を推進し、社員が能力を最大限発揮できる環境整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 34.7歳 11.6年 8,314,685円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.5%
男性育児休業取得率 89.6%
男女賃金差異(全従業員) 76.7%
男女賃金差異(正規雇用) 77.2%
男女賃金差異(非正規雇用) 59.3%


また、同社は「従業員の状況」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(1.9%)、採用充足率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) Microsoftプロダクトのライフサイクルによる影響


同社はMicrosoftプラットフォームにフォーカスした製品開発を行っており、クラウドサービスでは「Microsoft Azure」を採用しています。そのため、Microsoft製品のライフサイクルの動向や方針変更が、同社の製品開発計画や業績に影響を与える可能性があります。

(2) 最新プログラムの継続提供に伴う負担増


同社の製品は企業の基幹業務システムであるため、会計基準や税法などの各種制度改正があった場合、迅速に対応プログラムを提供する必要があります。制度改正が複雑かつ広範囲にわたる場合、開発費用が増加したり、対応に遅れが生じたりすることで業績に影響が及ぶリスクがあります。

(3) 情報セキュリティに関する脅威


事業活動において個人情報や機密情報を取り扱うため、万が一、情報の紛失や漏えいなどが発生した場合、同社の社会的信用やブランドイメージが低下するおそれがあります。さらに、それに伴う賠償金の支払い等により、経営成績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 急速な技術革新や競争激化


情報サービス産業は技術や市場ニーズの変化が激しく、AI等の新技術の普及が進んでいます。パートナーシップの選択を誤った場合や、予期せぬ技術革新によって他のプラットフォームが主流となった場合、開発スケジュールや市場競争力に後れをとり、業績に影響を及ぼすリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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