オービックビジネスコンサルタント 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

オービックビジネスコンサルタント 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場のソフトウェア開発企業。「勘定奉行」などの基幹業務システム「奉行シリーズ」を主力とし、クラウドサービスへの移行を推進しています。直近の業績は、売上高470億円(前期比12.0%増)、経常利益230億円(同16.0%増)と増収増益を達成しており、堅調に推移しています。


※本記事は、株式会社オービックビジネスコンサルタント の有価証券報告書(第46期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. オービックビジネスコンサルタントってどんな会社?


「奉行シリーズ」をはじめとする企業の基幹業務システムおよびクラウドサービスを開発・提供するメーカーです。

(1) 会社概要


1980年の設立以来、業務パッケージソフトの開発・販売を行い、1993年に主力製品「奉行シリーズ」の販売を開始しました。2004年に東証一部へ上場し、2018年には「奉行クラウド」をリリースしてクラウドシフトを本格化させました。2022年の市場区分見直しに伴い、現在は東証プライム市場に上場しています。

同社(単体)の従業員数は995名です。筆頭株主はシステムインテグレータのオービックで、第2位は創業者の和田成史氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
オービック 36.81%
和田 成史 21.07%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.44%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長は和田成史氏です。社外取締役比率は41.7%です。

氏名 役職 主な経歴
和田 成史 代表取締役社長 1980年同社設立とともに代表取締役社長就任。2009年より営業本部長を兼務し、2020年より現職。
和田 弘子 代表取締役副社長管理本部長 1980年同社設立時に取締役就任。1990年常務取締役管理本部長、1999年専務取締役を経て、2020年より現職。
唐鎌 勝彦 常務取締役開発本部長 1989年入社。2007年開発本部部長、2013年開発本部副本部長、2017年取締役を経て、2020年より現職。
荻野 俊夫 常務取締役営業本部長 1993年入社。仙台営業所長、大阪支店長、営業本部副本部長などを歴任し、2017年取締役就任。2020年より現職。


社外取締役は、野田順弘(オービック会長)、橘昇一(オービック社長)、伊東千秋(元富士通副会長)、成田純治(元博報堂社長)、村田浩之(オービックオフィスオートメーション常務)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ソフトウェア」事業を展開しており、品目別に「プロダクト」と「サービス」に区分しています。

(1) プロダクト事業


「奉行クラウド」「奉行V ERPクラウド」などの会計・人事・給与等の基幹業務システムや、周辺・拡張業務システムを開発し、中堅・中小企業を中心に提供しています。また、専用用紙などの関連製品も取り扱っています。

ソフトウェアのライセンス料やクラウドサービスの利用料、サプライ用品の販売代金などをパートナー企業を通じて、あるいは直接顧客から受け取ります。開発・提供は主にオービックビジネスコンサルタントが行っています。

(2) サービス事業


製品の導入支援、操作指導、および継続的な利用を支える保守サービスを提供しています。法改正対応プログラムの提供や問い合わせ対応などが含まれます。

顧客から保守契約に基づく保守料や、操作指導などのサービス料を受け取ります。サービスの運営・提供は主にオービックビジネスコンサルタントが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は着実な右肩上がりを続けており、直近5期で約1.6倍に成長しています。利益面でも、経常利益率は一貫して40%台後半の高水準を維持しており、非常に高収益な体質です。クラウドサービスへの移行が進む中、売上・利益ともに拡大基調にあり、安定した成長を見せています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 293億円 348億円 337億円 420億円 470億円
経常利益 139億円 172億円 158億円 199億円 230億円
利益率(%) 47.6% 49.4% 47.0% 47.4% 49.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 97億円 118億円 110億円 138億円 162億円

(2) 損益計算書


直近2期間において、売上高の増加に伴い売上総利益、営業利益ともに増加しています。売上総利益率は80%を超える極めて高い水準を維持しており、営業利益率も40%台中盤から後半へと上昇傾向にあります。収益性の高さが際立つ損益構造となっています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 420億円 470億円
売上総利益 343億円 393億円
売上総利益率(%) 81.9% 83.7%
営業利益 187億円 217億円
営業利益率(%) 44.7% 46.3%


販売費及び一般管理費のうち、給与・賞与が43億円(構成比25%)、研究開発費が41億円(同23%)、広告宣伝費が26億円(同15%)を占めています。売上原価においては、労務費が22億円(構成比29%)、材料費が40億円(同53%)となっています。

(3) セグメント収益


全社売上高の増加は、主力である「プロダクト」の伸長が大きく寄与しています。特にクラウド製品の売上が拡大しており、オンプレミスからの移行や新規導入が進んでいることが伺えます。「サービス」の売上は若干減少しましたが、全体としてはプロダクトの成長が業績を牽引しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
プロダクト 257億円 319億円
サービス 162億円 151億円
連結(合計) 420億円 470億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業の儲けを示す営業CFがプラスで、その範囲内で投資を行い、借入返済や配当支払いなどの財務活動を行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 233億円 177億円
投資CF -9億円 -11億円
財務CF -53億円 -71億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は76.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「業務にイノベーションを お客様に感動を」をミッションとして掲げています。顧客に価値あるものを提供し、顧客の成長に貢献することを目的とし、変化し続ける顧客の要求に応えるだけでなく、期待を超える価値を創造し続けることを目指しています。また、「顧客第一主義」の思想をサービス開発に貫き、中堅・中小企業のIT化をサポートするリーディングカンパニーとしての役割を果たしていく方針です。

(2) 企業文化


同社は「成長のための基本姿勢」として、「自由と公平」「採用と教育」「革新と戦略」「選択と集中」の4つを基本方針としています。また、社会的責任を果たすべく、オービックグループの一員として連携を図りながら、法令を遵守した継続的かつ安定的な企業成長を目指しています。顧客、パートナー、株主、社員、地域社会の期待に応えることを重視する姿勢を持っています。

(3) 経営計画・目標


同社は設備投資等に大きな資本を投下する必要がないため、経営上は収益面での指標を重視しています。具体的には、売上高を伸ばしながら、営業利益率、経常利益率を維持、もしくは高めることで高収益企業として成長し続けることを目標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


「コアコンピタンスの強化」として、企業業務(会計・人事・給与)およびEdgeサービス、中堅・中小企業、Microsoft Azure、パートナー戦略、ブランド戦略にフォーカスし、クラウドを活用した新ビジネスモデルの創出を図ります。また、AI技術を活用した「AIエージェントサービス」等の開発を加速し、製品の価値向上とAX(AIトランスフォーメーション)の実現を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「業務にイノベーションを お客様に感動を」というミッション推進のため、「採用と教育」を最重要方針と位置付けています。従業員を「人財」という財産として捉え、専門性や強みを伸ばす教育の仕組みづくりと支援を最大限行い、常に成長し続ける組織づくりを目指しています。また、健康経営にも注力し、社員が能力を発揮できる環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 35.1歳 11.8年 8,144,452円


※平均年間給与は基準外賃金及び賞与を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.3%
男性育児休業取得率 113.6%
男女賃金差異(全労働者) 75.9%
男女賃金差異(正規) 76.8%
男女賃金差異(非正規) 44.7%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) Microsoftプロダクトのライフサイクル


同社の製品・サービスは、オンプレミス・クラウド共にMicrosoftプラットフォーム(Azure等)に注力して開発されています。そのため、Microsoft製品のライフサイクル変更や技術動向の変化が、同社の製品開発計画や業績に影響を与える可能性があります。

(2) 利益計画に対するリスク


同社はパートナー企業を通じた販売を主としており、主力パートナーの動向が販売実績に影響する可能性があります。また、クラウドへの移行スピードが想定と異なる場合や、製品の不具合によるリリース遅延等が発生した場合、利益計画の達成や今後の事業展開に影響が及ぶ可能性があります。

(3) 法制度改正等への対応


同社製品は企業の基幹業務を担うため、会計基準や税法等の制度改正に迅速に対応する必要があります。改正内容が複雑・広範囲にわたる場合、開発費用の増加や対応遅延のリスクがあり、業績に影響を与える可能性があります。

(4) クラウドサービス販売の特性


売上の多くを占めるクラウドサービスは期間按分で計上されるため、解約や返品等の異常が発生しても即座に売上数値に表れにくい特性があります。異常の検知が遅れた場合、的確な経営判断への影響や、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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