昭和システムエンジニアリング 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

 昭和システムエンジニアリング 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

昭和システムエンジニアリングは東京証券取引所スタンダード市場に上場し、システムインテグレーションやソフトウエアの設計・開発などのソフトウエア開発事業と、金融機関向け事務代行などのBPO事業を展開しています。近年はDX関連投資の活発化を背景に順調な成長を続け、直近の業績でも増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社 昭和システムエンジニアリングの有価証券報告書(第60期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 昭和システムエンジニアリングってどんな会社?


同社はソフトウエア開発と各種業務支援のBPO事業を展開し、顧客のシステムインフラを支える企業です。

(1) 会社概要


1966年にコンピュータ計算業務の受託を目的として設立されました。その後汎用コンピュータの導入を進めながら業容を拡大し、1986年に現在の昭和システムエンジニアリングへと商号を変更して総合情報サービス企業へ転換しました。2004年にはジャスダック証券取引所に株式を上場し、事業の多角化を進めています。

同社(単体)の従業員数は489名です。株主構成を見ると、筆頭株主は同社代表取締役社長の尾崎裕一氏で、第2位はオーエム商事、第3位は古殿恭子氏となっています。事業会社による出資よりも、創業・経営関係者や関連法人による保有が上位を占める特徴的な株主構成となっています。

氏名 持株比率
尾崎裕一 23.82%
オーエム商事 8.64%
古殿恭子 7.10%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性0名の計13名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は尾崎裕一氏が務めています。社外取締役比率は15.4%です。

氏名 役職 主な経歴
尾崎裕一 代表取締役社長 1981年日本ユニバック入社。1995年同社取締役、1998年代表取締役副社長を経て、2000年より現職。
有坂洋文 代表取締役副社長証券ビジネス管掌 1986年日興證券入社。日興システムソリューションズ代表取締役社長・会長等を経て、2026年6月より現職。
関口雅博 専務取締役ソリューションサービス事業本部長 1982年同社入社。ソリューションサービス事業本部の各部長や常務取締役を経て、2025年4月より現職。
宮本智之 常務取締役経営管理本部長 1981年日本ユニバック入社。製造流通システム本部長等を歴任し、2018年同社入社。2025年6月より現職。
川合雅浩 取締役ソリューションサービス事業本部証券ビジネス担当 1987年同社入社。ソリューションサービス事業本部第三統括部長等を経て、2026年6月より現職。
小口修一郎 取締役ソリューションサービス事業本部ビジネスイノベーション室長兼大阪支社長兼第一統括部管掌 1983年日本ユニバック入社。2016年同社入社。ソリューションサービス事業本部第一統括部長等を経て、2019年4月より現職。
高橋修 取締役経営管理本部戦略推進室長 1993年同社入社。ソリューションサービス事業本部第三統括部証券システム部長等を経て、2023年6月より現職。
山田竜郎 取締役ソリューションサービス事業本部第二統括部長 1987年日本ユニバック入社。ユニアデックス九州支店長等を経て、2025年4月同社入社。同年6月より現職。


社外取締役は、榮哲男(元バロース入社・ユニアデックス執行役員)、今村哲也(元日興證券入社・日興システムソリューションズ専務取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ソフトウエア開発事業」および「BPO事業」を展開しています。

ソフトウエア開発事業


企業のコンピュータシステムに関するシステムインテグレーションやコンサルティング、ソフトウエアの設計、開発、保守などを展開しています。基盤領域を含むソフトウエア開発の全領域にわたり、総合的なサービスを提供し、顧客のビジネス課題解決を支援しています。

顧客からのシステム開発や保守・運用の委託による受託開発費用や技術支援のサービス対価が主な収益源です。運営は同社が主体となって行っており、金融や製造、流通など幅広い業界のシステム構築に対応し、安定したビジネスパートナーとの連携を深めながらサービス提供体制を築いています。

BPO事業


業種を問わず様々な企業の業務支援を行うビジネスプロセスアウトソーシングサービスを提供しています。具体的には、金融機関向けの事務代行や、健康診断の予約代行、文書の電子化を行うスキャニングサービスなどを幅広く担っています。

顧客企業から業務運営を請け負うことで得られる代行業務の手数料やサービス利用料が主な収益源となります。本事業の運営も同社が行っており、顧客企業がノンコア業務を外部に委託することで、自社の主要業務に集中できるよう効率的な支援体制を提供しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上高は65億円から87億円へと毎期着実に拡大を続けています。経常利益も6億円から10億円へと順調に伸長しており、利益率も9%台から12%台へと向上傾向にあります。デジタルトランスフォーメーション(DX)関連投資の活発化を背景に、安定した成長基盤を築いていることがうかがえます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 65億円 71億円 80億円 83億円 87億円
経常利益 6億円 8億円 9億円 10億円 10億円
利益率(%) 9.6% 11.0% 11.6% 11.6% 12.0%
当期利益 4億円 5億円 7億円 7億円 8億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに前期を上回る水準で着地しています。売上総利益率は18%前後で安定しており、営業利益率も11%台を維持しています。高付加価値なDX案件の獲得や生産性の向上への取り組みが、着実な利益成長に寄与していると見られます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 83億円 87億円
売上総利益 15億円 16億円
売上総利益率(%) 17.8% 18.2%
営業利益 9億円 10億円
営業利益率(%) 11.4% 11.7%


販売費及び一般管理費のうち、役員報酬が1億円(構成比25%)、給与手当が1億円(同21%)、賃借料が0.7億円(同12%)を占めています。また売上原価については、外注費が35億円(構成比49%)、労務費が35億円(同48%)となっています。

(3) セグメント収益


主力であるソフトウエア開発事業は、DX関連分野の案件獲得や生産性向上への取り組みが奏功し、増収増益を牽引しています。BPO事業においても案件獲得の増加により売上高は伸長したものの、利益面では前期をわずかに下回る結果となりました。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
ソフトウエア開発事業 82億円 87億円 15億円 16億円 18.2%
BPO事業 0.8億円 0.8億円 0.1億円 0.1億円 14.3%
調整額 - - -5億円 -6億円 -
連結(合計) 83億円 87億円 9億円 10億円 11.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 6億円 8億円
投資CF -3億円 -3億円
財務CF -3億円 -2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は13.7%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も63.0%といずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「顧客満足度向上の追究」、「魅力ある人間の育成」、「社会への貢献」を経営理念として掲げています。この理念を踏まえ、長年にわたり培ってきたナレッジをもとに最適かつ高度なITソリューションを提供する「Knowledge Integrator」として、ITを通じて顧客と社会のインフラを支えていくことを経営の基本方針としています。

(2) 企業文化


次世代を見据えた高度なIT人材を育成・拡大することを経営の柱とし、企業の存在価値を高めて社会への使命を果たすという価値観が根付いています。また、役員や社員が公正さと高い倫理観、責任感を持ち、コンプライアンスの徹底や反社会的行為の禁止などを定めた行動指針を実践する誠実な組織文化を構築しています。

(3) 経営計画・目標


2025年4月からの3か年を対象とした新たな中期経営計画「+transform into Values」を推進しており、バイモーダルなDXカンパニーの実現を目指しています。定量的な配当方針として、株主還元の充実を図るため、特別損益を控除して算出される当期純利益に対する配当性向30%〜40%相当を継続的に実現することを目標に掲げています。

(4) 成長戦略と重点施策


中期経営計画に基づき、持続的な価値創出に向けた4つの重点課題に取り組んでいます。具体的には、「戦略的人材確保」による優秀な人材の獲得、「既存ビジネス領域の維持・拡大」およびエコシステムの拡充、生成AIなどを活用した「DXビジネス領域の維持・拡大」、そして「社内業務基盤におけるデジタル技術の拡大」による生産性向上を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


企業価値の持続的な向上に向け、人的資本への投資を重要課題と位置づけています。中期経営計画では「戦略的人材確保」と「DX人材の育成」を重点施策に掲げ、バイモーダルなDXカンパニーの実現に向けて新卒採用や高度なIT人材の育成を強化しています。また、従業員が能力を最大限に発揮できるよう、安心して働き続けられる環境づくりを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 38.5歳 15.4年 6,021,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 4.7%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 83.8%
男女賃金差異(正規雇用) 83.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 124.1%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障害者雇用率(1.8%)、男女の勤続年数の差異(4.2年)、採用した労働者に占める女性労働者の割合(28.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) IT投資動向など事業環境の変化


顧客企業のIT投資動向の変化や、同業者間での激しい価格競争が想定を超える水準で推移した場合、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。対策として、顧客の経営層などキーパーソンとの情報共有を推進するとともに、同社が持つナレッジを高めることで顧客の期待に応える体制を構築しています。

(2) 主要顧客のM&Aによる経営方針の変更


主要顧客のIT投資はその経営方針に直結しており、M&Aなどに伴う経営方針の転換によって投資の優先度や発注先の選定基準が激変するリスクがあります。このため、主要顧客との緊密な情報共有に努めるとともに、特定の取引先に過度に依存しないバランスの取れた事業展開を進めています。

(3) 請負開発における契約不適合責任


納品したシステムや成果物において、同社の責任に帰する不具合が発見された場合、損害賠償や代金減額、契約解除などにより業績に影響を与える可能性があります。同社では有識者で構成される専任グループが全プロジェクトの品質や財務状況をレビューし、課題の早期発見と未然防止に努めています。

(4) 個人情報や機密情報の漏洩事故


同社は顧客から委託された個人情報やシステムを扱うため、万が一情報の漏洩や毀損事故が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償により業績に悪影響を及ぼす恐れがあります。継続的なプライバシーマークの取得に加え、最新の法令に基づいた社員教育を定期的に実施し、情報管理の徹底を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。