NCD 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

NCD 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

NCDは東証スタンダード市場に上場し、システム開発事業、サポート&サービス事業、パーキングシステム事業を展開する企業です。直近の業績では、価格改定や案件獲得が堅調に推移し増収を達成したものの、人的資本や新サービス開発への戦略投資を継続したこと等により減益となっています。


※本記事は、NCD株式会社の有価証券報告書(第61期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. NCDってどんな会社?


システム開発やITインフラ構築と、パーキングシステム運営を展開するITソリューション企業です。

(1) 会社概要


NCDは1967年に設立され、システム開発事業を開始しました。1995年にはサポート&サービス事業、1997年にはパーキングシステム事業へ参入し、事業領域を拡大しています。2000年に店頭登録を行い、現在は東京証券取引所スタンダード市場に上場しています。2024年に日本コンピュータ・ダイナミクスから現在の社名へ変更しました。

同社グループの従業員数は連結で1,529名、単体で836名です。筆頭株主は米国系の金融機関で、第2位は投資事業有限責任組合、第3位は北斗となっています。

氏名 持株比率
US BANK NATIONAL ASSOCIATION JPACCTS TS(常任代理人 三菱UFJ銀行) 10.69%
光通信KK投資事業有限責任組合 6.38%
北斗 5.31%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は下條治氏が務めており、社外取締役比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
下條 治 代表取締役社長 1986年同社入社。北海道支店長、第2システムソリューション事業部長などを経て、2012年4月より現職。
高木 洋 取締役専務執行役員IT事業本部長 2016年同社入社。IT事業部担当などを経て、2021年6月より専務執行役員、2026年4月より現職。
加藤 裕介 取締役専務執行役員管理本部長 2018年同社入社。総務部長などを経て、2020年4月管理本部長。2021年6月より現職。
後藤 紀子 取締役執行役員管理本部副本部長兼人財開発部長 2006年同社入社。IT事業本部テクノロジーサービス部長、管理本部人財開発室長等を経て、2025年6月より現職。
小林 勇記 取締役(常勤監査等委員) 1998年同社入社。経理部長、管理本部長等を経て、2020年6月より現職。


社外取締役は、宮田晴雄(元メットライフ生命保険執行役員常務CTO)、小山俊也(元帝人取締役常務執行役員)、中山かつお(公認会計士)、奥野滋(弁護士)、安岡正晃(元三菱東京UFJ銀行審査部長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「システム開発事業」「サポート&サービス事業」「パーキングシステム事業」および「その他」事業を展開しています。

**システム開発事業**
システム構築、パッケージソリューション、およびアプリケーションの保守・運用ソリューションを提供しています。保険会社や金融業、建設業など幅広い業界の顧客を対象に、システム開発やクラウド型ワークフローシステムの導入などを行っています。
収益源は顧客からのシステム開発費や保守運用料であり、同社やNCDテクノロジー、ジャパンコンピューターサービスなどが共同で運営しています。

**サポート&サービス事業**
インフラ構築、インフラ保守・運用、および業務サポートソリューションを提供しています。小売業向けのサポートデスク案件や、複数の保険会社におけるセキュアなインフラ構築・運用案件などを手掛けています。
収益源は顧客からのインフラ構築費や保守運用サービス料であり、同社およびNCDソリューションズ、NCDテクノロジーなどが運営しています。

**パーキングシステム事業**
駐輪場の設営・運営・管理受託、駐輪場管理システムの販売および運営、自転車関連の総合コンサルティングを行っています。都市再開発に伴う新規開設や機器の入替需要、無人化需要に対応しています。
収益源は機器の販売代金や駐輪場利用料、および管理受託料であり、同社やNCDプロス、NCDエストなどが運営しています。

**その他**
新規事業創出に向けた活動やその他のサービスを行っています。社内の事業アイデア公募制度から生まれた自転車専用ドライブレコーダーなどの開発・提供などを手掛けています。
収益源は新サービスの販売や利用料であり、同社やNCDソリューションズ、NCDプロスなどが運営に携わっています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に成長を続けており、206億円から309億円へと拡大しています。経常利益も成長基調にありましたが、直近では人的資本や新サービスへの戦略投資等を背景に一時的な減益となっています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 206億円 229億円 255億円 301億円 309億円
経常利益 10億円 12億円 21億円 29億円 27億円
利益率(%) 4.7% 5.3% 8.4% 9.5% 8.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 3億円 5億円 11億円 15億円 15億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も拡大していますが、売上総利益率は21.8%で横ばいを維持しています。一方で、人件費の上昇や人的資本への投資強化により営業利益率はやや低下傾向にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 301億円 309億円
売上総利益 66億円 67億円
売上総利益率(%) 21.8% 21.8%
営業利益 28億円 26億円
営業利益率(%) 9.3% 8.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が12億円(構成比30.0%)、役員報酬が3億円(同6.8%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントで増収を達成しています。サポート&サービス事業はインフラ構築案件の獲得で伸長し、パーキングシステム事業も利用料収入が堅調に推移しました。システム開発事業は大型案件の終了等があったものの前年並みを維持しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
システム開発事業 127億円 127億円
サポート&サービス事業 94億円 100億円
パーキングシステム事業 80億円 81億円
その他 0.2億円 0.5億円
連結(合計) 301億円 309億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」となっています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 23億円 18億円
投資CF 4億円 -1億円
財務CF -9億円 -14億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は22.9%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.1%となっており、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「ユニークな技術とサービスにより、明るい未来に貢献する。」を経営理念として掲げています。独自の技術力と発想力を用いて社会課題を解決し、事業を通じて持続可能な社会の実現に貢献していくことを企業の存在意義としています。

(2) 企業文化


同社は「人の鼓動、もっと社会へ。」をパーパスとして定めており、社員、顧客や社会のすべての人に寄り添い、多様性を尊重するという創業以来の企業文化を大切にしています。ワクワク・イキイキと働く環境を通して、社会と共により多くの価値を創造することを目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、中長期的な価値向上を目指し、中期経営計画「Vision2029」を策定しています。持続的成長と企業価値向上に向けて、経営方針・経営戦略等の進捗状況を的確に把握するため、最終年度である2029年3月期の以下の数値を客観的な指標として掲げています。

* 連結売上高
* 連結営業利益
* 売上高営業利益率
* ROE
* ROIC

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「より明確な強みの構築による高付加価値ビジネスへの転換と、新たな成長領域の創出」を基本方針としています。IT関連事業ではDX推進やAI活用など先端IT技術を取り入れた提案力を強化し、パーキングシステム事業では無人化需要に対応するシステムの拡販や次世代駐輪システムの開発を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「自律的なキャリア形成と対話を通じた組織風土の変革」を人材戦略の基本コンセプトとしています。事業変革を担うプロフェッショナル人材や次世代リーダーの育成に向けて、専門スキルのトレーニングやリーダーシッププログラムを提供し、社員一人ひとりの成長と働きがいの向上に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 37.9歳 10.6年 6,477,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 13.2%
男性育児休業取得率 71.4%
男女賃金差異(全労働者) 97.0%
男女賃金差異(正規) 79.1%
男女賃金差異(非正規) 132.6%


また、同社は「人的資本」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用女性比率(45.8%)、自己都合離職率(5.7%)、年次有給休暇取得率(79.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 企業のIT投資抑制や経済状況の悪化

国内外の経済停滞により企業のIT投資が抑制された場合や、首都圏を中心とした再開発プロジェクト・商業施設リニューアル等が延期された場合、各事業の業績に影響が及ぶ可能性があります。同社は高付加価値なサービス提供型への転換や収益基盤の強化で影響の最小化に努めています。

(2) 専門人材の確保と育成

同社の事業は人材への依存度が高く、高度な専門性を持つIT人材の確保・育成が重要です。採用市場での競争激化により人材確保が想定通りに進まない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は採用広報の強化や地方拠点での採用、人的資本経営の推進に注力しています。

(3) 情報セキュリティとサイバー攻撃

個人情報や機密情報を取り扱うため、サイバー攻撃や不正・過失による情報流出が発生した場合、社会的信用の低下や損害賠償等により業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は定期的な脆弱性診断やISMS認証の取得など、各種セキュリティ対策と情報管理体制の強化を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。