デジタルガレージ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

デジタルガレージ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所プライム市場に上場しており、決済代行を中心とするプラットフォームソリューション事業やマーケティング事業、スタートアップ投資事業を展開しています。2025年3月期は、決済取扱高の拡大により増収となりましたが、投資先の評価損計上などにより減益(赤字転落)となりました。


※本記事は、株式会社デジタルガレージの有価証券報告書(第30期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. デジタルガレージってどんな会社?


決済プラットフォーム事業とマーケティング、投資事業を展開し、テクノロジーの社会実装を推進するIT企業です。

(1) 会社概要


同社は1995年に設立され、インターネット関連事業を開始しました。2000年に店頭市場へ上場し、2002年には価格比較サイト運営のカカクコムを子会社化しました。2012年に決済事業を行うベリトランス(現DGフィナンシャルテクノロジー)を子会社化し、2016年に東証一部へ市場変更しました。

2025年3月31日時点で、連結従業員数は1,321人、単体では564人です。筆頭株主は資本業務提携先の株式会社りそなホールディングスで、第2位は創業者で代表取締役の林郁氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
りそなホールディングス 12.42%
林 郁 10.62%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.29%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。代表取締役社長執行役員グループCEOは林郁氏です。社外取締役比率は46.2%です。

氏名 役職 主な経歴
林 郁 代表取締役社長執行役員グループCEO 1995年同社設立代表取締役。カカクコム取締役会長などを歴任。2016年より現職。DGフィナンシャルテクノロジー代表取締役会長CEOも兼務。
踊 契 三 代表取締役副社長執行役員グループCOO 2000年フェイス入社。2010年同社取締役。イーコンテクスト代表取締役社長などを経て、2025年6月より現職。情報セキュリティ担当も務める。
伊藤 穰 一 取締役専務執行役員Chief Architect 1995年同社設立代表取締役。MITメディアラボ所長などを歴任。2023年千葉工業大学学長就任。2022年より現職としてデジタルアーキテクチャを担当。
篠 寛 取締役上席執行役員 2000年ソフトバンクファイナンス入社。ナビプラス代表取締役CEOなどを経て、2024年6月より現職。プラットフォームソリューション・セグメントを管掌。
大熊 将 人 取締役上席執行役員 1999年三菱商事入社。ファーストリテイリングを経て2016年同社入社。Crypto Garage代表取締役CEOなどを兼務し、2025年6月より現職。
六彌太 恭 行 取締役(監査等委員長) 1995年同社取締役。DGベンチャーズ代表取締役社長、同社取締役副社長などを歴任。2018年6月より現職。グループ会社の監査役も兼務。


社外取締役は、西田光志(元TIS代表取締役副社長)、森山博暢(元ゴールドマン・サックス証券)、池田雅子(弁護士)、石戸奈々子(慶應義塾大学大学院教授)、井上準二(元アイ・ティ・フロンティア社長)、牧野宏司(公認会計士)、内野州馬(元三菱自動車工業代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「プラットフォームソリューション」、「ロングタームインキュベーション」および「グローバル投資インキュベーション」事業を展開しています。

プラットフォームソリューション


Eコマースや対面店舗向けに、クレジットカードやQRコード決済などの多様な電子決済手段を提供する総合決済プラットフォームを展開しています。また、決済周辺サービスや金融事業者向けのデジタルマーケティング事業も提供しており、決済とマーケティングを連携させたソリューションを行っています。

収益は主に、加盟店から受け取る決済処理の初期費用、月額固定費、および決済取扱高に応じた手数料等から構成されています。運営は主に株式会社DGフィナンシャルテクノロジーや同社が行っています。

ロングタームインキュベーション


同社グループの事業基盤や株式会社カカクコムの顧客資産を活用し、決済プラットフォームの拡大を加速させる戦略事業です。Web広告技術の開発、不動産広告代理事業、ワインスクール運営、ブロックチェーン金融サービス、暗号資産関連事業などを展開しています。

収益は、広告主からの広告掲載料、ワインスクールの受講料や商品販売代金、システム開発の対価などです。運営は同社、株式会社BI.Garage、株式会社DGコミュニケーションズ、株式会社アカデミー・デュ・ヴァン、株式会社Crypto Garageなどが担っています。

グローバル投資インキュベーション


国内外の有望なスタートアップ企業への投資および育成を行うインキュベーション事業です。北米、日本、アジア等のグローバルネットワークを活用して投資先を発掘し、同社グループ事業との連携を通じて企業価値の最大化を図っています。

収益は、保有する営業投資有価証券の売却益や評価益、投資事業組合からの管理報酬や成功報酬などです。運営は主に株式会社DGベンチャーズ、株式会社DGインキュベーションなどが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近の業績を見ると、売上収益は300億円台で推移し、直近では増加傾向にあります。利益面では、投資事業における評価損益の影響を大きく受けるため変動が激しく、第28期と第30期は税引前損失および当期損失を計上しています。

項目 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 301億円 379億円 383億円
税引前利益 -139億円 63億円 -102億円
利益率(%) -46.2% 16.6% -26.7%
当期利益(親会社所有者帰属) -91億円 58億円 -72億円

(2) 損益計算書


売上収益は微増しましたが、金融費用の大幅な増加や営業投資有価証券に関する損失の計上により、税引前損益は赤字となりました。売上総利益率は高い水準を維持しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 379億円 383億円
売上総利益 46億円 45億円
売上総利益率(%) 12.0% 11.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が37億円(構成比17%)、賃借料が16億円(同7%)、業務委託料が13億円(同6%)を占めています。売上原価の内訳データはありません。

(3) セグメント収益


プラットフォームソリューションは決済取扱高の拡大により大幅な増収増益となりました。ロングタームインキュベーションも増収を確保しましたが、減益となりました。グローバル投資インキュベーションは投資先の評価減により大幅な減収および損失計上となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
プラットフォームソリューション 176億円 226億円 72億円 88億円 38.7%
ロングタームインキュベーション 128億円 136億円 14億円 10億円 7.1%
グローバル投資インキュベーション 59億円 6億円 14億円 -89億円 -1537.1%
調整額 16億円 15億円 -37億円 -110億円 -
連結(合計) 379億円 383億円 63億円 -102億円 -26.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業の営業活動でキャッシュを獲得しつつ、借入金の返済や自己株式の取得等の財務活動に資金を充当する健全型の傾向を示しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF -110億円 317億円
投資CF -88億円 -100億円
財務CF 159億円 -149億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-8.7%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は24.3%で市場平均とほぼ同じです。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「持続可能な社会に向けた“新しいコンテクスト”をデザインし、テクノロジーで社会実装する」をパーパス(存在意義)として掲げています。「コンテクストカンパニー」として、企業と人、情報を有機的に結びつけ、それぞれの存在価値を高める機能の開発を目的としています。

(2) 企業文化


創業以来、「ファーストペンギン・スピリット」を価値観として掲げています。これは、リスクを伴う領域にも果敢に挑戦する姿勢を意味し、従来の常識や既成概念にとらわれず、社会に貢献するサービスを提供し続けることを指針としています。また、クレドとして「強い意志を持て」「常識を疑え」などを掲げています。

(3) 経営計画・目標


2024年3月期を初年度とする5カ年の中期経営計画を策定しています。基礎事業における税引前利益の成長率や決済取扱高などを指標として設定しています。
* 税引前利益:5カ年平均成長率20%以上(グローバル投資インキュベーション等を除く)
* 決済取扱高:2028年3月期に15兆円以上
* 投資事業収入:5カ年合計300億円以上

(4) 成長戦略と重点施策


総合決済プラットフォームを軸とした持続的な事業拡大に加え、決済と連動するDX・フィンテック領域での新事業や、暗号資産などの非連続事業の開発に取り組みます。投資領域では、リターンの獲得だけでなく、グループ事業との連携によるスタートアップ育成を通じ、企業価値最大化を目指します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


多様なバックグラウンドを持つ人材が能力を発揮し、協働することを重視しています。「人財マネジメントポリシー」を策定し、可能性への投資、適材適所の実行、DEIB(多様性・公正性・包括・帰属意識)の実現、心理的安全性の醸成を行動指針としています。自律したキャリア構築と挑戦を支援する環境整備を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 39.2歳 5.5年 8,240,178円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 18.2%
男性育児休業取得率 53.8%
男女賃金差異(全労働者) 68.5%
男女賃金差異(正規雇用) 68.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 56.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、トータルエンゲージメントスコア(3.7)、人財育成に関する指数(2.8)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場環境の変化と競合


eコマースや決済市場の拡大が停滞した場合、業績に影響する可能性があります。また、技術進歩が速いインターネット・決済分野において、新たな技術を持つ競合他社の出現により競争力が低下する恐れがあります。これに対し、ニーズに合ったサービス開発やグループシナジーによる付加価値向上で差別化を図っています。

(2) 情報セキュリティとシステム


顧客情報の漏洩やサイバー攻撃、システム障害が発生した場合、信用失墜や損害賠償により業績に影響を与える可能性があります。これに対し、CSIRT(セキュリティインシデント対応チーム)の設置や外部認証の取得、システムの二重化、従業員教育などの対策を講じています。

(3) スタートアップ投資の変動性


投資先のスタートアップ企業は将来の不確定要素が多く、景気や株式市場の動向により業績が変動する可能性があります。投資先の選定や成長支援を行うとともに、ポートフォリオの分散化によりリスクを低減しています。また、投資先企業の状況を定期的にモニタリングし、適切に管理しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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