記事タイトル:「アズジェント転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態」
※本記事は、アズジェントの有価証券報告書(第29期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アズジェントってどんな会社?
アズジェントは、海外の最新セキュリティ製品の輸入販売と独自のセキュリティサービスを提供する企業です。
■(1) 会社概要
1997年11月、コンピュータネットワークのコンサルティング等を目的として設立され、1998年よりセキュリティソフトウェアの販売を開始しました。2004年にジャスダック証券取引所への上場を果たし、現在は東京証券取引所スタンダード市場に上場しています。自社開発のセキュリティ・ポリシー策定支援ツールやSaaS型サービスの提供などを通じて事業を拡大し、近年はAI環境特有のリスクに対応するソリューション展開も進めています。
現在、従業員数は単体で100名体制となっています。筆頭株主は資産管理業務を行うアズウェルマネジメントで、第2位は創業者の杉本隆洋氏、第3位は個人の原田茂行氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| アズウェルマネジメント | 46.28% |
| 杉本 隆洋 | 2.94% |
| 原田 茂行 | 2.57% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は杉本隆洋氏が務め、取締役5名のうち1名が社外取締役(比率20%)となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 杉本 隆洋 | 取締役社長(代表取締役) | 1982年オービックビジネスコンサルタント入社。エー・エス・ティー・リサーチ・ジャパン代表取締役を経て、1997年同社設立、代表取締役社長に就任。 |
| 葛城 岳典 | 取締役常務経営企画本部長兼サービス本部長(代表取締役) | 1993年ショーポンド建設入社。2005年同社入社。経営企画本部部長、執行役員最高財務責任者などを経て、2025年より現職。 |
| 杉山 卓也 | 取締役最高デジタル責任者兼技術本部長 | 1997年同社入社。テクニカル・ソリューション部長、営業本部長、技術本部長、プロダクト営業本部長などを経て、2024年より現職。 |
| 津村 英樹 | 取締役営業本部長 | ブロケードコミュニケーションズシステムズ代表取締役社長、アクロニス・ジャパン執行役員パートナー営業本部長などを経て、2026年より現職。 |
社外取締役は、三森裕(元プルデンシャル生命保険代表取締役副会長)です。
2. 事業内容
同社は「ネットワークセキュリティ事業」の単一セグメントで事業を展開していますが、主に以下の2つの区分でサービスを提供しています。
■(1) プロダクト
同社は、海外スタートアップ企業等が開発した最新のネットワークセキュリティ製品や運用関連商品の輸入販売を行っています。ランサムウェア対策やサプライチェーン攻撃対策に加え、AI環境特有のリスクに対応する新規商材も取り扱っており、官公庁や大規模エンタープライズ向けのハイエンドモデルを中心に提供しています。
収益は、販売代理店やシステムインテグレーター等を通じた製品の販売代金、または顧客へ直接販売することによる対価として得ています。製品の発掘から輸入、顧客への販売までのプロセスは、同社が一貫して運営しています。
■(2) セキュリティ・プラス(サービス)
独自のセキュリティノウハウを活かし、マネージドセキュリティサービス(MSS)やスマートセキュリティサービスといった付加価値の高い保守・運用サービスを提供しています。クラウド環境のセキュリティ向上を目的としたソリューションなど、多様化する顧客のニーズに包括的に対応するメニューを展開しています。
収益は、顧客が利用するサービスや保守期間の経過に応じた継続的な利用料・保守料として受け取るストック型のビジネスモデルとなっています。これらのサービスも同社が主体となって開発から保守運用までの提供を行っています。
3. 業績・財務状況
同社の単体業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、数年間は減収や利益面の赤字が続いていましたが、直近の2026年3月期においては大幅な改善を見せています。売上高は34億円台まで回復し、経常利益および当期純利益も黒字転換を果たしました。官公庁や大型エンタープライズ向けの受注が堅調に推移したことが業績回復に大きく寄与しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 32億円 | 28億円 | 24億円 | 30億円 | 34億円 |
| 経常利益 | 0.8億円 | -1.2億円 | -2.9億円 | -2.2億円 | 1.4億円 |
| 利益率(%) | 2.5% | -4.3% | -12.3% | -7.3% | 3.9% |
| 当期純利益 | 0.8億円 | -1.3億円 | -4.5億円 | -4.4億円 | 1.7億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益も前年から大きく伸長し、売上総利益率は41.2%に改善しています。また、積極的な販促施策を実施した一方で、人員体制の見直しによる人件費の最適化や前年度の減損処理に伴う減価償却費の減少などが寄与し、営業利益も黒字化を達成しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 30億円 | 34億円 |
| 売上総利益 | 11億円 | 14億円 |
| 売上総利益率(%) | 36.6% | 41.2% |
| 営業利益 | -2.1億円 | 1.5億円 |
| 営業利益率(%) | -6.9% | 4.3% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当及び賞与が4.5億円(構成比36%)、支払手数料が3.4億円(同27%)を占めています。売上原価においては、当期商品仕入高が15.8億円(構成比70%)、その他の原価が4.6億円(同20%)となっています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントですが、売上区分別の動向を見ると、プロダクト事業において大規模ネットワーク向けハイエンドモデルなどの大型案件を順調に獲得したことが売上拡大を牽引しました。セキュリティ・プラス(サービス)事業もストック型の収益基盤として安定的に推移しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| プロダクト | 25億円 | 29億円 |
| セキュリティ・プラス | 5億円 | 5億円 |
| 合計 | 30億円 | 34億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業活動で生み出した資金を借入金の返済や将来に向けた設備・システム投資に充当する、健全な循環状態にあります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -1.6億円 | 2.3億円 |
| 投資CF | -1.5億円 | -1.3億円 |
| 財務CF | 2.0億円 | -0.7億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は39.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は28.5%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、サイバー攻撃の脅威が増大する中で高まるセキュリティニーズに応えるため、経営スローガンである「One Step Ahead of the Game ~ その一手先へ」を掲げています。業界に革新を起こし、セキュアな社会を実現すべく、経営理念を軸とした理念経営を推進し、企業としての社会的な責務を果たしていく方針です。
■(2) 企業文化
同社は、変化の激しいサイバーセキュリティ市場をゲームチェンジの機会と捉え、市場ニーズを先取りした革新的なスマートセキュリティサービスを投入するスピード感を重視しています。また、既存の枠組みにとらわれないアプローチや、外部パートナーとの連携を積極的に構築していく柔軟かつ挑戦的な文化を持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、継続的な成長と企業価値向上に向けた必要不可欠な先行投資を実施しつつ、中長期的に安定成長を牽引する収益基盤の確立を目指しています。セキュリティ・トップベンダーとしてのポジションを確立するため、新たに策定した「アズジェント中長期成長戦略」に基づき、これまでにない大きな成長を遂げることを目標としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
既存主力商品では官公庁やエンタープライズ向けの大型案件を確実に取り込み安定的な収益を維持しつつ、サプライチェーンセキュリティ評価制度の需要を取り込む戦略です。また、生成AIに内在するリスクに対応する新商材の販売を加速させ、ストックビジネス型商材の伸長に注力します。同時に、AI-SOCサービスなど多様化する顧客ニーズを包括的に対応できるメニュー開発を進め、事業の収益力と拡張性の向上を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、中長期的な成長の実現に向けて、優秀な人材の確保と育成を重要な課題と位置づけています。高度なセキュリティ対策ソリューションを提供し続けるため、外部からの経験者採用を継続的に進めるとともに、若手の採用と教育を積極的に実施しています。また、先端領域における高度人材への投資を強化し、従業員の意欲向上と定着に配慮した報酬制度を運用しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.7歳 | 9.6年 | 6,111,796円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は従業員規模が300人以下のため公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 競合と技術の陳腐化リスク
インターネットセキュリティおよびクラウドコンピューティング市場は開発・販売競争が激しく、同社の製品を凌駕する画期的な新技術や低価格のサービスが登場する可能性があります。これらに対する有効な対抗策を講じられなかった場合、業績に悪影響が及ぶリスクがあります。
■(2) 商品の不具合(バグ)発生リスク
同社は製品のテストを入念に行っていますが、高度なソフトウェアにおいてすべての使用状況を想定したテストは困難です。納品後に重大な不具合が発見された場合、商品の売上減少や、自社開発製品においては直接的な損害賠償責任が生じ、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 情報漏洩リスク
マネージド・セキュリティ・サービスやコンサルティング業務において、顧客情報に触れる機会があります。情報の取り扱いに関する規程の整備と運用を徹底していますが、万が一情報漏洩が発生した場合には損害賠償責任を負い、同社の社会的信用および業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。
■(4) 優秀な人材の確保に関するリスク
今後の事業成長には、営業、技術、経営管理の各部門での優秀な人材、特に最新技術を持つエンジニアの確保が不可欠です。人材獲得競争の激化により採用に失敗した場合や、採用コストおよび人件費が想定以上に高騰した場合には、事業展開や財政状態に影響を与える可能性があります。



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