#記事タイトル:アズジェント転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、株式会社アズジェント の有価証券報告書(第28期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アズジェントってどんな会社?
セキュリティ・ソリューション・ベンダーとして、海外製セキュリティ製品の輸入販売や、運用監視などのサービスを提供しています。
■(1) 会社概要
1997年に設立され、セキュリティソフトウェアの輸入販売等へ事業目的を変更しました。2001年に店頭登録を行い、2004年にジャスダックへ上場しました。2013年には新ブランド「セキュリティ・プラス」を展開し、サービス事業を強化しています。2022年の市場区分見直しに伴い、スタンダード市場へ移行しました。
単体従業員数は103名です。筆頭株主は創業者である代表取締役社長の資産管理会社(アズジェントホールディングス)で、第2位は英国の金融機関(NOMURA INTERNATIONAL PLC)、第3位は社長の杉本隆洋氏です。創業者が経営の実権を握るオーナー企業の特徴を持っています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| アズジェントホールディングス | 46.28% |
| NOMURA INTERNATIONAL PLC A/C JAPAN FLOW | 3.22% |
| 杉本 隆洋 | 2.94% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性0名、計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は杉本 隆洋氏です。社外取締役比率は25.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 杉本 隆洋 | 取締役社長(代表取締役) | 1982年オービックビジネスコンサルタント入社。1997年同社設立とともに代表取締役社長就任。1997年より現職。 |
| 葛城 岳典 | 取締役常務経営企画本部長兼サービス本部長(代表取締役) | 1993年ショーポンド建設入社。2005年同社入社。最高財務責任者を経て、2024年より現職。 |
| 杉山 卓也 | 取締役最高デジタル責任者兼技術本部長 | 1997年同社入社。技術本部長、プロダクト本部長などを歴任し、2024年より現職。 |
社外取締役は、三森 裕(元プルデンシャル生命保険代表取締役最高経営責任者)です。
2. 事業内容
同社グループは、「プロダクト販売」および「セキュリティ・プラス(サービス)」事業を展開しています。
■プロダクト販売
Check Point社製品をはじめとする海外のネットワークセキュリティ関連商品や、コネクテッドカー・IoT機器向けセキュリティ製品等の輸入販売を行っています。官公庁やエンタープライズ顧客層が中心です。
収益は、顧客への商品販売代金として受け取ります。運営は主に同社が行っています。
■セキュリティ・プラス(サービス)
「セキュリティ・プラス」ブランドのもと、マネージドセキュリティサービス(MSS)やコンサルティング、製品保守サポートなどを提供しています。AIを活用したSOC(セキュリティオペレーションセンター)による監視も行っています。
収益は、顧客からのサービス利用料や保守料として受け取ります。運営は主に同社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は20億円台後半から30億円前後で推移していますが、利益面では苦戦が続いています。2023年3月期以降、営業損失および経常損失の状態にあり、特に直近2期は当期純損失が4億円を超える水準となっています。売上高は回復傾向にありますが、黒字化への転換が課題となっています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 28.0億円 | 31.7億円 | 28.3億円 | 23.7億円 | 29.7億円 |
| 経常利益 | -0.4億円 | 0.8億円 | -1.2億円 | -2.9億円 | -2.2億円 |
| 利益率(%) | -1.4% | 2.5% | -4.3% | -12.3% | -7.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -0.5億円 | 0.8億円 | -1.3億円 | -4.5億円 | -4.4億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し30億円に迫りましたが、売上原価も増加し、販管費が依然として高水準にあるため、営業損失2.1億円となりました。特別損失として減損損失2.2億円を計上したことなどから、当期純損失は4.4億円となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 24億円 | 30億円 |
| 売上総利益 | 10億円 | 11億円 |
| 売上総利益率(%) | 40.7% | 36.6% |
| 営業利益 | -2.9億円 | -2.1億円 |
| 営業利益率(%) | -12.3% | -6.9% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当及び賞与が4.5億円(構成比35%)、支払手数料が3.4億円(同26%)を占めています。売上原価は19億円(構成比63%)です。
■(3) セグメント収益
プロダクト関連では、官公庁やエンタープライズ向けの主力製品販売が好調で増収となりました。サービス関連(セキュリティ・プラス)も、新サービスの拡充などにより微増収となっています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| プロダクト | 18億円 | 24億円 |
| セキュリティ・プラス | 6億円 | 6億円 |
| 連結(合計) | 24億円 | 30億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローはマイナスで、投資活動も継続しているため、財務活動(借入等)で資金を補う「勝負型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -0.0億円 | -1.6億円 |
| 投資CF | -0.8億円 | -1.5億円 |
| 財務CF | -億円 | 2.0億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-79.0%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は21.4%で市場平均を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
サイバー攻撃の脅威が増大する中、高まるセキュリティのニーズに応えるため、経営スローガンである「One Step Ahead of the Game ~ その一手先へ」を掲げています。業界に革新を起こし、セキュアな社会を実現すべく、経営理念を軸とした理念経営を推進しています。
■(2) 企業文化
セキュリティを取り巻く環境変化をゲームチェンジの機会と捉え、市場ニーズを先取りしたスマートセキュリティサービスを投入する姿勢を重視しています。また、IT業界全体でセキュリティ人材が不足する中、将来を見据えた若手人材の採用および育成にも積極的に取り組む文化があります。
■(3) 経営計画・目標
市場ニーズを先取りしたスマートセキュリティサービスを投入することで、セキュリティ・トップベンダーとしてのポジションを確立するため、新たに中長期成長戦略として「アズジェント中長期成長戦略」を策定し、推進しています。
■(4) 成長戦略と重点施策
プロダクトビジネスでは、主力商品(Check Point社製品等)の需要獲得と新商材(Secure Layer、Vicarius等)の立ち上げ加速、スマートサービスとしてのストック化を推進します。サービスビジネスでは、MSSのメニュー拡張やAI-SOCの立ち上げ準備を進め、プロダクトとのシナジー強化を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
中長期的な成長を見据え、人的リソースの強化を不可欠としています。「アズジェント中長期成長戦略」の実現に向け、外部からの即戦力人材の採用を継続的に進めるとともに、セキュリティ人材不足が深刻化する中で、若手人材の採用および育成にも積極的に取り組む方針です。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 42.1歳 | 9.3年 | 5,916,876円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は常時雇用する労働者数が300人以下であり、公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 事業展開について
新商品の投入やスマートセキュリティサービスの立ち上げには、高度な専門人材の確保と設備投資が不可欠ですが、想定外のリスクにより計画通り進まない可能性があります。また、投資育成事業として海外スタートアップ企業への投資を行っており、対象企業の収益力低下により減損が必要となる可能性があります。
■(2) 競合について
インターネットセキュリティ市場では開発・販売競争が激しく、同社の商品・サービスを凌駕するモデルや画期的な技術、低価格サービスが提供される可能性があります。これら競合に対して有効な対抗策を講じることができなかった場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。
■(3) 商品の不具合について
輸入商品および自社開発商品ともに入念なテストを行っていますが、バグを完全に無くすことは困難であり、納品後に不具合が発見される可能性があります。海外ベンダー製品の場合は原則ベンダー負担ですが、その後の売上減少のリスクがあります。自社開発商品の場合は直接的な損害が生じる可能性があります。
■(4) セキュリティ管理について
MSSやコンサルティング等のサービスにおいて顧客情報に触れる場合があり、情報管理には詳細な規定を設けていますが、万が一情報漏洩が発生した場合には損害賠償責任を負う可能性があります。



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