※本記事は、株式会社Jストリーム の有価証券報告書(第28期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. Jストリームってどんな会社?
インターネット動画配信の草分けとして、配信インフラから制作・運用までをワンストップで提供する動画ソリューション企業です。
■(1) 会社概要
同社は1997年に設立され、日本におけるストリーミングサービスの先駆けとして事業を開始しました。2001年に東証マザーズへ上場し、2009年にはトランス・コスモスが直接の親会社となりました。その後、2022年の市場区分見直しに伴い、現在は東証グロース市場に上場しています。
2025年3月31日現在、従業員数は連結671名、単体416名です。筆頭株主は親会社(事業会社)であるトランス・コスモスで、第2位は主要な取引先でもある通信事業者のKDDIです。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| トランス・コスモス | 50.32% |
| KDDI | 12.25% |
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505103 | 0.91% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性0名、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は石松 俊雄氏が務めています。社外取締役比率は27.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 石松 俊雄 | 代表取締役社長 | 1986年リクルート入社。1999年に同社入社後、営業部長、取締役副社長を経て、2014年より現職。 |
| 三山 悟 | 取締役副社長 | 1988年リクルート入社。2000年に同社入社後、技術部長、CO3社長等を歴任し、2014年より現職。 |
| 白石 清 | 取締役会長 | 1981年富士通入社。トランス・コスモスを経て1998年に同社社長就任。2016年より現職。 |
| 髙野 範房 | 取締役 | 2005年トランス・コスモス入社。DEC統括等の要職を歴任し、2023年より現職。 |
社外取締役は、物江 信明(KDDI執行役員)、宮野 隆(元セゾン情報システムズ社長)、大下 亮(元住友生命保険取締役常務執行役員)です。
2. 事業内容
同社グループは、「動画ソリューション事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■(1) 動画ソリューション事業
動画配信プラットフォーム「J-Stream Equipmedia」やCDNサービス「J-Stream CDNext」の提供をはじめ、ライブ配信支援、動画制作、Webサイト制作、システム開発などを展開しています。顧客層は医薬品メーカーなどの一般企業から、放送局などのメディア系企業まで多岐にわたり、動画活用に関連するニーズを総合的に支援しています。
収益は、動画配信プラットフォームの月額利用料や配信量に応じた従量課金、ライブ配信や動画・Web制作、システム開発などの受託費用からなります。運営は主にJストリームが行い、映像制作やライブ配信支援などの一部業務はクロスコやJクリエイティブ ワークスなどの連結子会社も担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績推移は以下の通りです。2021年3月期はコロナ禍での特需により売上・利益が大きく伸長しましたが、その後は反動減により利益面での調整局面が見られました。2025年3月期は増収増益となり、回復基調にあります。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 130億円 | 124億円 | 125億円 | 113億円 | 118億円 |
| 経常利益 | 24億円 | 21億円 | 17億円 | 6億円 | 10億円 |
| 利益率(%) | 18.1% | 16.5% | 13.2% | 5.2% | 8.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 11億円 | 11億円 | 7億円 | 3億円 | 6億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を比較します。売上高は前期比で増加し、売上原価率の改善に伴い売上総利益率も向上しました。販管費は増加しましたが、増収効果により営業利益率は改善しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 113億円 | 118億円 |
| 売上総利益 | 41億円 | 45億円 |
| 売上総利益率(%) | 36.3% | 38.5% |
| 営業利益 | 6億円 | 9億円 |
| 営業利益率(%) | 5.0% | 7.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が約9億円(構成比26%)、販売支援費が約5億円(同12%)を占めています。売上原価においては、外注費が約29億円(構成比40%)、労務費が約17億円(同23%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社は「動画ソリューション事業」の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略し、連結数値を記載します。医薬領域以外の一般企業やメディア向けの需要が堅調に推移し、増収増益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 動画ソリューション事業 | 113億円 | 118億円 | 6億円 | 9億円 | 7.8% |
| 連結(合計) | 113億円 | 118億円 | 6億円 | 9億円 | 7.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、積極的な事業展開と投資実施により事業の成長を図ることで、資金状況を充実させています。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益の計上や、前受金の増加などにより大幅に増加しました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形及び無形固定資産の取得による支出が主な要因でした。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いなどが主な支出要因となりました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 8億円 | 21億円 |
| 投資CF | -13億円 | -6億円 |
| 財務CF | -5億円 | -5億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「もっと素敵な伝え方を。」をコーポレートメッセージとして掲げています。また、「最先端の動画ソリューションを提供し、企業活動の支援を通じて社会の発展に貢献する」ことを経営の基本方針とし、動画のビジネス利用拡大に対応した事業展開を進めています。
■(2) 企業文化
同社は、経営理念を実現するための考え方と行動からなる「JストリームWAY」を社員の活動指針として定めています。ボトムアップで作成されたこの指針は、業務上の判断に迷った際の指針となるよう設計されており、エヴァンジェリストによる普及活動を通じて社内への浸透が図られています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、「The Streaming DX Company」を目指す姿として掲げています。具体的な数値目標としては、継続的な売上と利益が期待できる配信系のプラットフォーム売上高や取引先数、既存取引先の維持率、新規取引先獲得数などを重視し、営業利益率を利益確保の目安としています。
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、「医薬(EVC領域)」「医薬以外(EVC領域)」「OTT領域(放送局等)」の3つの市場を軸に戦略を展開しています。医薬領域ではデジタルマーケティングの強化による上流工程への貢献、医薬以外ではSaaSサービスの拡充や内製化支援、OTT領域では配信基盤や収益化支援の強化を進め、特定の市場に依存しないポートフォリオ構築を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人材を競争力の源泉と位置づけ、「自ら考え、周囲の力を借りながら、自ら一歩前に踏み出すような活躍を、楽しみながらし続けられる人」を育成像としています。人事制度改革による「5つの基本方針」に基づき、飛び級昇格や社内公募制度、副業の自由化などを導入し、多様な人材が活躍できる環境整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 37.2歳 | 7.2年 | 6,091,417円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 10.0% |
| 男性育児休業取得率 | 42.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 81.4% |
| 男女賃金差異(正規) | 81.3% |
| 男女賃金差異(非正規) | 75.3% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 特定業界や顧客への依存
同社グループの売上は、医薬業界やメディア業界など特定の領域における動画利用ニーズに大きく依存しています。薬機法の改正や市場環境の変化により動画利用が減少した場合、業績に影響が及ぶ可能性があります。このため、医薬領域では上流工程への関与を深め、メディア領域では信頼性を高めることで関係強化を図っています。
■(2) 競合他社及び競合サービス
CDNを提供する大手事業者やクラウドインフラ事業者、動画配信プラットフォーム事業者などとの競争が存在します。価格競争の激化や、競合サービスの機能向上により優位性が維持できなくなった場合、収益性が低下する可能性があります。同社はセキュリティや配信の安定性、サポート体制などで差別化を図っています。
■(3) システムトラブルとセキュリティ
24時間稼働するネットワークシステムにおいて、自然災害やサイバー攻撃、人的ミスなどにより障害が発生した場合、顧客の活動に支障をきたし、信頼失墜につながる可能性があります。また、機密性の高いデータを扱うため、情報漏洩が発生した場合には事業に重大な影響を与えるリスクがあります。



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