クイック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クイック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場。人材サービス、リクルーティング事業等を展開。売上高325億円(前期比10.2%増)、経常利益46億円(同8.3%減)と増収減益ですが、投資有価証券売却益等により最終利益は増益を確保しました。人材紹介や「Indeed」関連サービスが好調に推移しています。


※本記事は、株式会社クイック の有価証券報告書(第45期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. クイックってどんな会社?


人材サービス事業とリクルーティング事業を中核に、地域情報サービスや海外事業も展開する総合人材サービス企業です。

(1) 会社概要


1980年にリクルート(現リクルートホールディングス)の代理店として創業し、1997年に人材紹介事業を開始しました。2003年に北陸地区へ進出し、2014年には東証一部銘柄に指定されています。2022年の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しました。

連結従業員数は1,602名、単体では1,174名体制です。筆頭株主は創業者の資産管理会社である有限会社アトムプランニングで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
有限会社アトムプランニング 16.91%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 10.03%
BBH FOR FIDELITY LOW-PRICED STOCK FUND 5.33%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性2名の計14名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役会長グループCEOは和納勉氏、代表取締役社長は川口一郎氏です。社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
和納 勉 代表取締役会長グループCEO 1980年同社設立とともに社長就任。グループCEOを経て2019年より現職。
川口  一郎 代表取締役社長 リクルート、トランス・コスモス常務を経て2005年同社入社。人材紹介事業本部長等を歴任し2019年より現職。
中井  義貴 常務取締役執行役員 1989年同社入社。リクルーティング事業本部長等を歴任し、キャリアシステム会長を兼務。2022年より現職。
林    城 取締役執行役員 1985年同社入社。HRビジョン社長を兼務。2011年より現職。
来島 健太 取締役執行役員管理本部長兼経理部長 2001年同社入社。人材紹介事業本部営業一部長等を経て2022年より現職。
柴崎 雄貴 取締役執行役員人材紹介事業本部長兼営業二部長 2008年同社入社。人材紹介事業本部営業一部長を経て2023年より現職。
岡田 直隆 取締役執行役員リクルーティング事業本部長 リクルートキャリア執行役員等を経て2021年同社入社。2023年より現職。
横田 勇夫 取締役 リクルートを経て2003年同社入社。リクルーティング事業本部長や海外事業担当を歴任。2006年より現職。


社外取締役は、中居成子(シェルメール社長)、酒井美穂(元フロムエーキャリア社長)、河野俊博(元ダンヒルグループジャパンGM)、村尾考英(元トランス・コスモス常務)、斉藤誠(斉藤公認会計士事務所長)、六郷裕之(元メイテックネクスト社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「人材サービス」「リクルーティング」「地域情報サービス」「HRプラットフォーム」「海外」の5つの報告セグメントで事業を展開しています。

(1) 人材サービス事業


建設、電気・機械、製薬、自動車、IT、医療・福祉等の領域で、転職希望者と求人企業のマッチングを行う人材紹介サービスを提供しています。また、看護師や保育士を中心とした人材派遣、紹介予定派遣、業務請負サービスに加え、認可保育園等の運営も行っています。

人材紹介では求人企業から成功報酬として紹介手数料を受領します。人材派遣では企業と労働者派遣契約を締結し派遣料金を受領します。運営は主にクイック、ワークプロジェクト、クイックケアジョブズ、キャリアシステムが行っています。

(2) リクルーティング事業


企業の採用課題解決に向けたコンサルティングと位置づけ、採用活動全般から人材育成までをワンストップで提供しています。求人広告の取扱いに加え、採用戦略の立案、パンフレットやWebサイト等のツール制作、採用代行(RPO)、教育研修サービスなどを展開しています。

求人広告においては、広告枠を仕入れて販売する代理店形態や、広告取次による手数料形態で収益を得ます。「Indeed」等の運用型広告では運用手数料も受領します。運営はクイックとジャンプが行っています。

(3) 地域情報サービス事業


石川・富山・新潟において、無料戸別配布の生活情報誌(「金沢情報」等)や住宅情報誌の出版、ポスティングサービス、対面相談カウンター「ココカラ。」の運営を行っています。Webプロモーション支援も手掛けています。

情報誌への広告掲載による広告収入や書籍販売収入、チラシ配布による配布料、対面相談サービスにおける紹介手数料などを収益源としています。運営はカラフルカンパニーが行っています。

(4) HRプラットフォーム事業


人事・労務に関するポータルサイト「日本の人事部」の企画・運営や、関連イベント「HRカンファレンス」の開催を行っています。人事担当者や経営者に対し最新情報を提供し、人事サービス企業とのマッチングを支援しています。

人事サービスを提供する企業からの広告掲載料や、イベントにおける講演枠等の販売料を主な収益としています。運営はHRビジョンが行っています。

(5) 海外事業


米国、英国、中国、メキシコ、タイ、ベトナム、オランダにおいて、現地日系企業を中心に人材紹介、人材派遣、人事労務コンサルティングサービスを提供しています。

人材紹介手数料、人材派遣料金、コンサルティングフィーなどを収益源としています。運営はQUICK USA,Inc.をはじめとする海外現地法人が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は5期連続で増加傾向にあり、直近では325億円規模に達しています。経常利益も拡大基調でしたが、当期は減益となりました。一方、当期利益は増加を続けており、成長性と収益性のバランスを維持しながら事業規模を拡大させています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 194億円 236億円 278億円 295億円 325億円
経常利益 21億円 34億円 45億円 50億円 46億円
利益率(%) 11.0% 14.5% 16.3% 17.1% 14.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 13億円 19億円 28億円 30億円 32億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で約30億円増加しましたが、売上原価および販売費及び一般管理費の増加により営業利益は減少しました。積極的な事業投資やコスト増が利益を圧迫したものの、高い売上総利益率を維持しており、本業の稼ぐ力は依然として底堅い状況です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 295億円 325億円
売上総利益 199億円 214億円
売上総利益率(%) 67.5% 65.8%
営業利益 50億円 45億円
営業利益率(%) 16.8% 13.9%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が85億円(構成比51%)、賞与引当金繰入額が9億円(同5%)を占めています。人材への投資がコストの大部分を占める構造です。

(3) セグメント収益


人材サービス事業は看護師や保育士の採用ニーズが高く増収となりましたが、プロモーション投資等により減益となりました。海外事業は米国・英国での業績拡大により大幅な増収となっています。リクルーティング事業も「Indeed」関連が好調で増収増益でした。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
人材サービス 206億円 227億円 44億円 39億円 17.3%
リクルーティング 32億円 34億円 6億円 9億円 25.8%
地域情報サービス 25億円 27億円 3億円 4億円 13.6%
HRプラットフォーム 13億円 12億円 7億円 6億円 47.2%
海外 18億円 24億円 2億円 1億円 5.6%
連結(合計) 295億円 325億円 50億円 45億円 13.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、本業で稼いだ資金で借入返済を行い、投資も手元資金の範囲内で実施している「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 30億円 42億円
投資CF -8億円 -2億円
財務CF -15億円 -20億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.9%で市場平均を大きく上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.0%で市場平均を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「関わった人全てをハッピーに」という経営理念を掲げています。創業以来、人と企業を結ぶ総合人材サービスを提供しており、「人材・情報ビジネスを通じて社会に貢献する」企業としての成長を目指しています。

(2) 経営計画・目標


中長期的に安定的な成長と堅実な財務体質の実現を目指し、以下の指標向上を目標としています。

* 売上高経常利益率
* 自己資本当期純利益率(ROE)

(3) 成長戦略と重点施策


既存事業の深耕に加え、国際間の転職支援(クロスボーダーリクルートメント)を強化し、世界中でHRサービスを展開する「世界の人事部」構想の実現を目指しています。また、各事業において新たなマーケットの開拓や新サービス・ビジネスモデルの開発に取り組み、事業間の連携強化による相乗効果で競争力を高める方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材採用と育成を最重要経営課題と位置づけています。積極的な採用活動に加え、経営理念研修や階層別研修等の教育投資により個人のスキルアップを支援しています。「キャリアチャレンジ制度」等による多様なキャリア開発支援や、働きやすい職場環境の整備を通じて社員の定着を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 30.5歳 6.6年 6,306,347円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 25.7%
男性育児休業取得率 70.0%
男女賃金差異(全労働者) 65.9%
男女賃金差異(正規) 69.3%
男女賃金差異(非正規) 49.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(9.8%)、新規雇用者数(310名)、離職者数(171名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人材紹介における看護師分野への注力


人材サービス事業において看護師紹介業務に注力していますが、医療分野の規制緩和等によるニーズ減少や、競合他社との競争激化により成約数や利益が減少した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、看護師以外の領域への営業強化を進めています。

(2) 検索エンジンへの対応


Webサイトの集客において検索サイトへの依存度が高いため、検索エンジンの表示方針変更等により集客効果が低下した場合、業績に影響を与える可能性があります。これに対し、コンテンツ制作やユーザビリティ向上、専門人材の採用等により対策を講じています。

(3) Indeed Japan社との取引


リクルーティング事業においてIndeed Japan社の求人広告枠の取扱高が多く、同社への依存度が高い状況です。同社の営業戦略変更や媒体競争力低下のリスクに対し、採用コンサルティングやツール制作など多様なサービスの提案力強化により依存度の軽減を図っています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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