クイック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クイック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クイックは、東京証券取引所プライム市場に上場する総合人材サービス企業です。人材紹介や人材派遣をはじめ、求人広告の取り扱いや採用コンサルティング、地域情報誌の出版、人事向けポータルサイトの運営などを展開しています。直近の業績は、旺盛な採用ニーズを背景に主力事業が好調に推移し、増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社クイックの有価証券報告書(第46期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. クイックってどんな会社?


同社は、人と企業を結ぶ総合人材サービスや販促支援などを幅広く手掛ける企業です。

(1) 会社概要


クイックは1980年に大阪市で設立され、求人広告代理業や採用教育コンサルタント業務を開始しました。1990年に現在の社名に変更し、1997年には人材紹介事業をスタートさせています。その後も地域情報出版や海外での人材サービスなど事業領域を拡大し、2004年にジャスダック上場、2014年に東京証券取引所市場第一部への指定替えを果たしました。

同社グループは、連結で1,682名、単体で1,251名の従業員を擁しています。筆頭株主は創業者の関連会社とみられるアトムプランニングで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は海外の機関投資家となっています。

氏名 持株比率
アトムプランニング 16.91%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 10.49%
BBH FOR FIDELITY LOW-PRICED STOCK FUND 5.21%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.4%です。
代表取締役社長は川口一郎氏が務めています。社外取締役比率は38.5%です。

氏名 役職 主な経歴
和納勉 取締役会長グループCEO 1976年日本リクルートセンター入社。1980年クイックプランニング設立と同時に代表取締役社長就任。2005年同社グループCEO就任。2025年6月より現職。
川口一郎 代表取締役社長 1979年日本リクルートセンター入社。トランス・コスモス常務取締役を経て2005年同社入社。人材紹介事業本部長などを歴任し、2019年6月より現職。
中井義貴 常務取締役執行役員 1981年東海興業入社。1989年同社入社。リクルーティング事業本部長やカラフルカンパニー代表取締役社長などを歴任し、2022年6月より現職。
林城 取締役執行役員 1985年同社入社。東京リクルーティング営業部長やHRビジョン代表取締役社長などを経て、2011年4月より現職。
来島健太 取締役執行役員管理本部長兼経理部長 2001年同社入社。人材紹介事業本部の各営業部長を経て、2021年管理本部長兼経理部長に就任。2022年6月より現職。
柴崎雄貴 取締役執行役員人材紹介事業本部長兼営業十部長 2008年同社入社。人材紹介事業本部の各営業部長を経て、2023年人材紹介事業本部長に就任。同年6月より現職。
岡田直隆 取締役執行役員リクルーティング事業本部長 1998年リクルートエイブリック入社。リクルートキャリア執行役員等を経て2021年同社入社。2023年6月より現職。
小原努 取締役執行役員CMO兼Web事業企画開発本部長兼企画開発一部長 2004年同社入社。Web事業企画開発室長等を経て、2023年CMOおよびWeb事業企画開発本部長に就任。2026年4月より現職。


社外取締役は、中居成子(元シェルメール代表取締役)、酒井美穂(元リクルートジョブズ執行役員)、河野俊博(元ダンヒルグループジャパン人事部長)、斉藤誠(斉藤公認会計士事務所所長)、六郷裕之(元メイテック取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「人材サービス事業」「リクルーティング事業」「地域情報サービス事業」「HRプラットフォーム事業」「海外事業」の報告セグメントを展開しています。

人材サービス事業


人材紹介、人材派遣、紹介予定派遣、業務請負、保育園運営を展開しています。転職希望者と求人企業のマッチングを図る登録型人材バンクや、看護師等の専門職派遣などを提供しています。

収益は、求人企業から採用決定時に受け取る紹介手数料や、派遣先企業からの派遣料金が主な柱です。運営は同社およびワークプロジェクト、クイックケアジョブズ、キャリアシステムが担っています。

リクルーティング事業


企業の採用課題解決に向けたコンサルティングとして、求人広告の取り扱いや採用支援ツールの制作、教育研修サービスなどを提供しています。また、看護学生向けの就職支援サイトの運営も行っています。

収益は、求人メディアへの広告掲載による手数料や代理店マージン、採用戦略のコンサルティング費などから得ています。運営は同社およびジャンプが担っています。

地域情報サービス事業


北陸・新潟エリアにおいて、生活情報誌「金沢情報」「富山情報」などの無料戸別配布型情報誌の発行や、ポスティングサービス、対面での無料相談窓口「ココカラ。」の運営を展開しています。

収益は、情報誌への広告掲載料やチラシの配布料、相談窓口での成約に伴う提携企業からの紹介手数料が中心です。運営はカラフルカンパニーが担っています。

HRプラットフォーム事業


人事・労務に関する日本最大級の情報ポータルサイト「日本の人事部」の企画・運営や、人事関連のイベント・カンファレンスの開催、人事支援サービス企業向けのWebプロモーション支援を行っています。

収益は、サイトへの広告掲載料やメルマガ配信料、イベントでの講演枠の販売などによる広告収入が主な柱となっています。運営はHRビジョンが担っています。

海外事業


米国、英国、メキシコ、ベトナム、タイ、オランダ、ドイツなどにおいて、主に現地に進出している日系企業を対象とした人材紹介、人材派遣、人事労務コンサルティングサービスを展開しています。

収益は、現地企業からの人材紹介手数料や派遣料金、コンサルティング報酬から得ています。運営はQUICK USA,Inc.をはじめとする各国の海外現地法人が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5年間の業績推移を見ると、企業の旺盛な採用ニーズや人材不足を背景に、売上高は右肩上がりで成長を続けています。経常利益についても高い水準を維持しており、利益率も安定して推移するなど、強固な収益基盤を確立しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 236億円 278億円 295億円 325億円 339億円
経常利益 34億円 45億円 50億円 46億円 47億円
利益率(%) 14.5% 16.3% 17.1% 14.2% 13.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 19億円 28億円 30億円 32億円 37億円

(2) 損益計算書


増収に伴い売上総利益も増加しています。人材サービスを中心とするビジネスモデルのため売上総利益率は約67%と高く、積極的な人材投資などを行いつつも安定した営業利益を確保しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 325億円 339億円
売上総利益 214億円 226億円
売上総利益率(%) 65.8% 66.6%
営業利益 45億円 46億円
営業利益率(%) 13.9% 13.5%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が92億円(構成比51%)、賞与引当金繰入額が10億円(同5%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の「人材サービス」と「リクルーティング」が増収を牽引しています。特にアグリゲーション型求人サービスの取り扱い拡大や、注力分野における人材紹介の成約増がグループ全体の成長に大きく貢献しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
人材サービス事業 227億円 235億円
リクルーティング事業 35億円 37億円
地域情報サービス事業 27億円 31億円
HRプラットフォーム事業 12億円 11億円
海外事業 24億円 26億円
連結(合計) 325億円 339億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業といえます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 42億円 27億円
投資CF -2億円 -27億円
財務CF -20億円 -19億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は22.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も74.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「関わった人全てをハッピーに」という経営理念を掲げています。また、「人材・情報ビジネスを通じて社会に貢献する」ことを事業理念とし、企業と人を結ぶ総合人材サービス企業として、ステークホルダーとの良好な関係を構築しながら持続的な企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、社員の成長を支援するための各種研修や、自律的なキャリア形成を後押しする「キャリアチャレンジ制度」を設けるなど、個人の成長と挑戦を重んじる文化を持っています。また、「クイックグループビジネスコンテスト」の開催を通じて、新規事業の創出や前向きなチャレンジを支援する企業風土を醸成しています。

(3) 経営計画・目標


中長期的な事業規模の拡大と安定成長を目標としており、既存事業の強化や新規領域への積極的な投資を行いつつ、資本効率の改善と株主還元の強化を図っています。具体的な数値目標として、継続的な自己資本当期純利益率(ROE)の向上を掲げて経営を推進しています。

(4) 成長戦略と重点施策


既存事業での新たなマーケット開拓と注力分野への投資深耕により、当該マーケットでのNo.1獲得を目指しています。また、海外進出先での日系企業支援や国内の人手不足課題の解消に向け、グローバルなHRサービスを展開する「世界の人事部」構想の実現を重点施策に据え、旗艦サイト「アンドプロ」の育成にも注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、持続的な企業価値向上のために人材の採用と育成を最重要課題と位置づけています。採用専門部署の設置やリファラル採用の推進により優秀な人材を確保し、階層別研修などの多様な教育プログラムで専門性を磨いています。さらに、多様な人材が活躍できる職場環境の整備とエンゲージメントの向上に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 30.3歳 6.5年 6,475,585円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 28.6%
男性育児休業取得率 94.0%
男女賃金差異(全労働者) 66.6%
男女賃金差異(正規) 70.7%
男女賃金差異(非正規) 49.5%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(9.5%)、新規雇用者数(271名)、育児休業後の復職率(95.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 訴訟に関するリスク


事業活動において、社内研修の充実や内部管理体制の整備を行っていますが、予期せぬトラブルから取引先や第三者との間で訴訟等に至った場合、損害賠償請求の発生や社会的信用の失墜により、同社グループの事業活動や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 検索エンジンへの集客依存


同社が運営するWebサイトは検索エンジンからの集客に依存しています。検索エンジンの上位表示方針の変更や、AIによる概要表示の普及によりサイトへの流入が減少した場合、集客効果が低下し、事業活動や業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 個人情報の漏洩


人材サービス事業や保育施設運営において、大量の個人情報を保有しています。プライバシーマークの取得など管理体制を強化していますが、情報漏洩が発生した場合は業務停止処分や損害賠償請求を招き、業績に重大な影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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