※本記事は、東京センチュリー株式会社 の有価証券報告書(第56期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東京センチュリーってどんな会社?
広範な事業領域を持つ金融・サービス企業であり、リース事業を核に国内外で多角的なサービスを展開しています。
■(1) 会社概要
1969年に伊藤忠商事や第一銀行(現みずほ銀行)等の出資によりセンチュリー・リーシング・システムとして設立されました。2009年に東京リースと合併し、東京センチュリーリースへ商号変更しました。2016年には現社名へ変更し、2020年には日本電信電話(NTT)と資本業務提携を締結するなど事業基盤を拡大しています。
連結従業員数は8,146人、単体では1,070人です。筆頭株主は総合商社の伊藤忠商事、第2位は不動産会社の中央日本土地建物、第3位は資本業務提携先である通信持株会社の日本電信電話です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 伊藤忠商事 | 29.99% |
| 中央日本土地建物 | 14.02% |
| 日本電信電話 | 10.05% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性3名の計16名で構成され、女性役員比率は19.0%です。代表者は代表取締役社長の藤原弘治氏です。社外取締役比率は31.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 藤原 弘治 | 代表取締役社長 | 1985年第一勧業銀行入行。みずほ銀行取締役頭取、みずほフィナンシャルグループ特別顧問等を経て、2025年4月より現職。 |
| 雪 矢 正 隆 | 代表取締役会長 | 1979年伊藤忠商事入社。同社執行役員、東京センチュリー取締役副社長等を経て、2022年6月より現職。 |
| 原 真 帆 子 | 取締役 専務執行役員スペシャルティ営業推進部門長兼スペシャルティ営業第三部門長 | 1987年第一勧業銀行入行。東京センチュリー常務執行役員等を経て、2025年4月より現職。 |
| 平 崎 達 也 | 取締役 専務執行役員経営企画部門長兼経理部門長 | 1990年東京リース入社。経営企画部長、常務執行役員等を経て、2024年4月より現職。 |
| 浅 田 俊 一 | 取締役 | 1972年第一勧業銀行入行。みずほ銀行常務、東京センチュリー社長、会長等を経て2022年6月より現職。 |
| 岡 田 明 彦 | 取締役 | 1983年伊藤忠商事入社。同社常務執行役員、東京センチュリー副社長等を経て2025年4月より現職。 |
| 佐 藤 浩 | 取締役 | 1984年伊藤忠商事入社。同社常務執行役員、東京センチュリー副社長等を経て2025年4月より現職。 |
社外取締役は、中村明雄(元財務省理財局長)、浅野敏雄(元旭化成社長)、田中美穂(弁護士)、沼上幹(一橋大学名誉教授)、小笠原浩(安川電機代表取締役会長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「国内リース事業」「オートモビリティ事業」「スペシャルティ事業」「国際事業」「環境インフラ事業」および「その他」事業を展開しています。
■国内リース事業
情報通信機器、事務用機器、産業工作機械、輸送用機器、商業・サービス業用設備等を対象としたリース・ファイナンスおよびその附帯サービスを提供しています。幅広い顧客層に対し、物件の賃貸や金融サービスを行っています。
収益は主に顧客からのリース料やファイナンス収益からなります。運営は主に東京センチュリーが行うほか、グループ各社が連携して事業を展開しています。
■オートモビリティ事業
法人・個人向けのオートリース、レンタカー、カーシェア事業等を展開しています。車両の調達から維持管理、処分に至るまでのトータルサービスを提供し、法人顧客の車両管理合理化や個人の移動ニーズに応えています。
収益はリース料やレンタカー利用料、車両売却益等からなります。運営は主に連結子会社の日本カーソリューションズやニッポンレンタカーサービスが行っています。
■スペシャルティ事業
船舶、航空機、不動産等のプロダクツを対象とした、国内・海外におけるリース・ファイナンスおよびその附帯サービスを提供しています。専門性の高い資産に対する金融・サービスソリューションを展開しています。
収益はリース料、ファイナンス収益、資産の売却益等からなります。運営は東京センチュリーのほか、Aviation Capital Group LLC(航空機リース)やTC神鋼不動産などが担っています。
■国際事業
東アジア・アセアン、北米・中南米を中心としたリース・ファイナンスおよびその附帯サービス、オート事業等を展開しています。グローバルなネットワークを活用し、現地法人を通じて日系企業や現地企業の設備投資を支援しています。
収益はリース料やファイナンス収益等からなります。運営はCSI Leasing, Inc.(米国)をはじめとする各国の現地法人が行っています。
■環境インフラ事業
再生可能エネルギー等に係る国内・海外における発電事業、リース・ファイナンスおよびその附帯サービス等を展開しています。太陽光発電所等の開発・運営や環境関連設備へのファイナンスを行っています。
収益は売電収入やリース料等からなります。運営は東京センチュリーや連結子会社の京セラTCLソーラー合同会社などが行っています。
■その他
上記報告セグメントに含まれない事業として、損害保険代理店業等を営んでいます。
収益は保険手数料等からなります。運営は連結子会社のTCエージェンシーなどが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。利益面でも、経常利益および親会社株主に帰属する当期純利益ともに増加基調を維持しており、特に当期は過去最高益水準を達成しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 12,002億円 | 12,780億円 | 13,250億円 | 13,461億円 | 13,686億円 |
| 経常利益 | 781億円 | 905億円 | 1,062億円 | 1,173億円 | 1,323億円 |
| 利益率(%) | 6.5% | 7.1% | 8.0% | 8.7% | 9.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 491億円 | 503億円 | 48億円 | 721億円 | 853億円 |
■(2) 損益計算書
前期と比較して、売上高、売上総利益、営業利益ともに増加しており、増収増益となりました。売上総利益率および営業利益率も改善しており、収益性が向上しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 13,461億円 | 13,686億円 |
| 売上総利益 | 2,532億円 | 2,802億円 |
| 売上総利益率(%) | 18.8% | 20.5% |
| 営業利益 | 1,042億円 | 1,171億円 |
| 営業利益率(%) | 7.7% | 8.6% |
販売費及び一般管理費のうち、従業員給与手当・賞与が711億円(構成比44%)、賞与引当金繰入額が43億円(同3%)を占めています。
■(3) セグメント収益
当期は、国際事業とスペシャルティ事業が大幅な増益となり、全体の利益成長を牽引しました。一方、国内リース事業と環境インフラ事業は減益となりましたが、オートモビリティ事業は増益を確保しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 国内リース事業 | 4,586億円 | 4,491億円 | 242億円 | 228億円 | 5.1% |
| オートモビリティ事業 | 3,372億円 | 3,007億円 | 167億円 | 177億円 | 5.9% |
| スペシャルティ事業 | 3,122億円 | 3,345億円 | 300億円 | 329億円 | 9.8% |
| 国際事業 | 1,774億円 | 2,227億円 | 110億円 | 163億円 | 7.3% |
| 環境インフラ事業 | 597億円 | 608億円 | 19億円 | 1億円 | 0.2% |
| その他 | 11億円 | 8億円 | 11億円 | 17億円 | 226.1% |
| 調整額 | - | - | -126億円 | -62億円 | - |
| 連結(合計) | 13,461億円 | 13,686億円 | 721億円 | 853億円 | 6.2% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
東京センチュリーは、営業活動で賃貸資産の取得やリース債権の増加があったものの、税金等調整前当期純利益や賃貸資産の償却等により、収入超過となりました。投資活動では、投資有価証券の取得や社用資産の取得による支出がありましたが、売却や償還による収入もありました。財務活動では、長期借入れや社債発行による収入があった一方で、借入金や社債の返済等による支出がありました。これらの結果、現金及び現金同等物は前期末から減少しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -1,767億円 | 514億円 |
| 投資CF | -1,085億円 | -315億円 |
| 財務CF | 2,619億円 | -434億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、高い専門性と独自性を持つ金融・サービス企業として、事業の成長に挑戦する顧客と共に、環境に配慮した循環型経済社会の実現に貢献することを経営理念としています。社会に対する企業責任を積極的に果たすことを基本方針としています。
■(2) 企業文化
顧客との連携やグループ総力の結集により、グローバルに最良の商品・サービスを提供し、顧客の事業発展に貢献することを重視しています。また、多様な人材の能力と個性の発揮を促す風土を醸成し、すべての役職員が専門性を高め、成長と誇りを実感できる企業を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
2023年度から2027年度までの「中期経営計画2027」を推進しています。「自らを変革し、変化を創造する」をテーマに、高い収益性と安定性のあるポートフォリオへの変革を進め、稼ぐ力の強化とESGの推進による好循環サイクルの確立を目指しています。
* 2028年3月期 親会社株主に帰属する当期純利益:1,000億円
* 2028年3月期 連結ROA:1.4%
* 2028年3月期 連結ROE:10%
■(4) 成長戦略と重点施策
「中期経営計画2027」において、「脱炭素」「社会インフラ」「サーキュラーエコノミー」を注力領域と定めています。これらの領域において、ポートフォリオの適切な配分を行い、利益成長とROA向上にこだわり、高い収益性と安定性のあるポートフォリオへの変革を進めます。また、デジタル・トランスフォーメーション(DX)や人材・組織変革(HRX)を推進し、持続的な成長基盤を強化していきます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「中期経営計画2027」において「人材・組織Transformation(HRX)」を掲げ、従業員一人ひとりが自己変革力、創造力、挑戦心を高められる人材育成を目指しています。また、多様な人材が健やかでやりがいを持って働ける組織づくり、学び直しの場の提供、円滑なコミュニケーションが行える職場環境の整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 43.7歳 | 16.6年 | 9,010,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 13.7% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 61.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 60.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 35.7% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用に占める女性比率(40.4%)、キャリア採用比率(35.6%)、エンゲージメントスコア(56.2)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 信用リスク
リース、割賦、貸付取引において長期間の信用供与を行っているため、景気動向や取引先の信用状況悪化により不良債権が増加した場合、貸倒費用が増加し業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、信用リスク管理委員会による管理や、個別案件の厳格な審査、ポートフォリオ管理等でリスク極小化に努めています。
■(2) カントリーリスク
海外での事業展開や投資を積極的に進めているため、各国の法令・規制変更、政治・経済情勢の変化等により事業が順調に展開できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。地政学的リスクの顕在化を踏まえ、情報収集やモニタリングの強化、投融資対象不適格国の指定等の管理を行っています。
■(3) 市場リスク
金利変動による資金調達コストの上昇や、為替相場の変動が海外子会社の収益換算や投資価値に影響を与える可能性があります。これらのリスクに対し、ALM委員会による総合的な管理や、ヘッジ比率、VaR管理等を導入し、デリバティブ取引等を用いてリスクを適切にコントロールしています。
■(4) ものにかかわるリスク
航空機、船舶、自動車、不動産、発電所等の資産価値を有する「もの」のビジネス比重が高まっているため、経済・社会環境の悪化等により資産価値が下落した場合、減損損失等が発生し業績に影響を及ぼす可能性があります。アセットリスクを考慮したポートフォリオ構築や、リスク量ガイドラインの導入等により管理を強化しています。



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