インターネットイニシアティブ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

インターネットイニシアティブ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

インターネットイニシアティブは、プライム市場に上場し、主に法人向けネットワークサービス及びシステムインテグレーション事業を展開する企業です。前連結会計年度と比較して売上収益は3,168億円から3,454億円へ、営業利益は301億円から348億円へ拡大しており、増収増益のトレンドにあります。


※本記事は、株式会社インターネットイニシアティブの有価証券報告書(第34期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. インターネットイニシアティブってどんな会社?


インターネットイニシアティブは、国内におけるインターネットサービスプロバイダーの先駆けとして、法人・個人向けのネットワークサービスやシステムインテグレーションを展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は1992年12月に設立され、1993年7月にインターネット接続サービスの提供を開始しました。1999年8月には米国ナスダックにADRを登録(2019年廃止)し、2005年12月に東証マザーズへ上場、2006年12月に東証一部へ市場変更を果たしています。2008年1月に法人向けモバイルデータ通信サービスを、2009年12月にクラウドコンピューティングサービスの提供を開始するなど、事業領域を拡大してきました。

現在の従業員数は連結で5,533名、単体で3,174名です。筆頭株主は事業会社のKDDIで、第2位も事業会社のNTT、第3位は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(その他信託口)です。

氏名 持株比率
KDDI 11.50%
NTT 6.90%
日本マスタートラスト信託銀行(その他信託口) 5.02%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性3名の計15名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役会長執行役員Co-CEOは鈴木幸一氏、代表取締役社長執行役員Co-CEO&COOは谷脇康彦氏が務めています。社外取締役は5名選任されています。

氏名 役職 主な経歴
鈴木 幸一 代表取締役会長執行役員Co-CEO 1972年日本能率協会入社、1992年同社取締役、1994年同社代表取締役社長兼CEOなどを経て2024年より現職。
谷脇 康彦 代表取締役社長執行役員Co-CEO&COO 1984年郵政省入省、総務省総合通信基盤局長、同省総務審議官などを経て2025年より現職。
北村 公一 取締役副社長執行役員 1978年新日本製鐵入社、新日鉄ソリューションズ取締役副社長執行役員などを経て2025年より現職。
渡井 昭久 取締役副社長執行役員CFO 1989年住友銀行入行、2000年同社入社、経営企画本部長、財務本部長などを経て2025年より現職。
島上 純一 取締役副社長執行役員CTO 1990年野村総合研究所入社、1996年同社入社、ネットワークサービス本部長などを経て2025年より現職。
村林 聡 取締役 1981年三和銀行入行、三菱東京UFJ銀行常務取締役、三菱UFJリサーチ&コンサルティング代表取締役社長などを経て2026年より現職。


社外取締役は、塚本隆史(元みずほ銀行取締役頭取)、佃和夫(元三菱重工業代表取締役社長)、岩間陽一郎(元東京海上アセットマネジメント投信代表取締役社長)、岡本厚(元岩波書店代表取締役社長)、鵫巣香穂利(元有限責任監査法人トーマツボードメンバー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ネットワークサービス及びSI事業」および「ATM運営事業」を展開しています。

(1) ネットワークサービス及びSI事業


主に法人や官公庁等の顧客に対し、インターネット接続サービス、アウトソーシングサービス、WANサービス、システム構築や運用保守などのシステムインテグレーションを提供しています。個人向けにもモバイルデータ通信サービスなどのインターネット接続サービスを展開しています。

収益源は、インターネット接続の継続的な通信料金やネットワークシステムのアウトソーシング運用保守料、システム構築の対価などです。運営は主にインターネットイニシアティブおよびIIJエンジニアリングなどの子会社が行っています。

(2) ATM運営事業


銀行ATMおよびそのネットワークシステムを構築し、運営するサービスを提供しています。ATMを利用する一般顧客に金融インフラとしての便益を提供する事業モデルです。

収益源は、利用者がATMにて現金の引出しなどを行う際に発生する利用手数料収入です。運営は連結子会社であるトラストネットワークスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間を通じて、売上収益および各種利益は順調に拡大を続けており、企業のデジタル化需要を取り込んで成長している傾向が見られます。利益率も安定して高い水準を維持しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 2,263億円 2,527億円 2,761億円 3,168億円 3,454億円
税引前利益 242億円 273億円 289億円 292億円 352億円
利益率(%) 10.7% 10.8% 10.5% 9.2% 10.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 157億円 189億円 198億円 199億円 242億円

(2) 損益計算書


売上高が堅調に増加する中で、売上総利益や営業利益も順調に拡大しており、収益性を向上させている傾向が伺えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 3,168億円 3,454億円
売上総利益 531億円 594億円
売上総利益率(%) 16.8% 17.2%
営業利益 301億円 348億円
営業利益率(%) 9.5% 10.1%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が76億円(構成比23%)、外注費が41億円(同12%)、広告宣伝費が31億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のネットワークサービス及びSI事業が増収増益を牽引し、全体の業績拡大に大きく寄与しています。ATM運営事業も安定して高い利益率を維持しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
ネットワークサービス及びSI事業 3,139億円 3,424億円 289億円 336億円 9.8%
ATM運営事業 29億円 30億円 12億円 12億円 40.8%
調整額 -0.4億円 -0.3億円 - - -
連結(合計) 3,168億円 3,454億円 301億円 348億円 10.1%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業活動で得た資金で投資を行いながら、財務活動による返済も進める「健全型」となっています。
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は16.2%で、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.9%です。いずれも市場平均を上回っています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 285億円 505億円
投資CF -217億円 -263億円
財務CF -197億円 -191億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


社名の通り、技術革新をリードし新たな利用形態を提案する画期的なサービスやプラットフォームの提供を通じてネットワーク社会の発展に貢献するという理念を掲げています。技術革新によりネットワークインフラストラクチャーを発展させ、デジタル社会の未来を切り拓くことを目指しています。

(2) 企業文化


技術革新や社会貢献に積極果敢に挑戦する人材が集まり、誇りとやりがいをもって自律的に能力を発揮できる場を提供することを重視しています。社員個々人が現状に満足せず、常に先の世界を考えることで社会発展に貢献し、世間からも評価されることで成長を実感できる会社であることを目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、IT利活用の継続的な市場拡大を見込み、中長期で目指すべき通過点として連結売上高5,000億円規模への伸長を含む中長期ビジョンを定めています。その道筋として3ヵ年の中期計画を推進しており、以下の業績目標を掲げています。

* 2027年3月期 売上高(売上収益):3,850億円
* 2027年3月期 営業利益:385億円

(4) 成長戦略と重点施策


多様な人材が集い自律的に能力を発揮してインターネット環境を創り上げた自負のもと、高い技術力を源泉とした付加価値の高いネットワークサービスの開発やシステムインテグレーションの提供を推進します。既存のコアビジネス領域の徹底的な強化により売上伸長の加速と利益水準の向上を図るほか、新規領域への取り組みにも注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


優秀な技術者の獲得と育成継続が更なる成長に向け非常に重要と認識しています。自己実現を目指す意欲的な人材の採用および育成を継続し、性別、年齢、国籍等の属性に依らない能力重視の人材活用や登用と、個々が担う役割および貢献度等を評価と報酬に反映することで、従業員とのエンゲージメントの一層の向上を図ります。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 37.5歳 9.3年 7,472,000円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.0%
男性育児休業取得率 61.8%
男女賃金差異(全労働者) 76.5%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 77.6%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 38.1%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員意識調査における「チャレンジ」(3.9)、従業員意識調査における「成長」(4.1)、従業員意識調査における「上司サポート」(4.3)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競合と価格競争リスク


ネットワークサービスやシステムインテグレーションにおいて、通信キャリアやシステムインテグレーターなど資金力と技術力を持つ企業との競合が激化しています。効果的な差別化が図れず価格競争に巻き込まれた場合や、マーケティング費用が想定以上に増加した場合には、収益性が低下し業績に影響が及ぶ可能性があります。

(2) 外部インフラへの依存リスク


インターネット接続やWANサービス等の提供に不可欠な通信回線やデータセンター施設を、通信キャリアや外部事業者に依存しています。半導体不足や電力料金の高騰、または外部の設備障害などにより、代替手段の確保が困難になりサービス提供が長期間中断した場合には、同社グループの信用失墜や業績への悪影響が生じるおそれがあります。

(3) サービスの信頼性とセキュリティリスク


サイバー攻撃、コンピュータウイルス、人的過失などによりサービスの中断や情報漏洩が発生するリスクがあります。同社は適切なセキュリティ対策を講じていますが、想定を超える事象により顧客データが毀損したり、重大な障害が生じた場合には、損害賠償による損失や企業ブランドの失墜を招く可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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