インターネットイニシアティブ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

インターネットイニシアティブ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の電気通信事業者です。インターネット接続サービス、システムインテグレーション、ATM運営事業を展開しています。主力事業であるネットワークサービスやシステム構築が好調に推移し、売上収益は3,168億円、営業利益は301億円となり、前期比で増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社インターネットイニシアティブ の有価証券報告書(第33期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. インターネットイニシアティブってどんな会社?


日本のインターネット接続サービスの先駆けとして創業し、高度な技術力を基盤に法人向けネットワークやクラウド、セキュリティを提供するIT企業です。

(1) 会社概要


1992年に日本初の商用インターネット接続サービスの提供を目的に設立され、1993年にサービスを開始しました。2005年に東証マザーズへ上場し、2006年には東証一部へ市場変更しました。2010年にはAT&Tジャパンから国内ネットワーク事業を承継したIIJグローバルソリューションズを子会社化し、事業基盤を強化しています。2023年にはKDDIと資本業務提携契約を締結しました。

連結従業員数は5,221名、単体では2,971名です。筆頭株主は資本業務提携先のKDDIで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。第3位には、かつて持分法適用関連会社として資本関係の深かった日本電信電話(NTT)が名を連ねています。

氏名 持株比率
KDDI 11.52%
日本マスタートラスト信託銀行 (信託口) 11.47%
日本電信電話 6.91%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性3名の計15名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表者は代表取締役会長執行役員Co-CEOの鈴木 幸一氏と、代表取締役社長執行役員Co-CEO&COOの谷脇 康彦氏です。社外取締役比率は33.3%です。

氏名 役職 主な経歴
鈴木 幸一 代表取締役会長執行役員Co-CEO 日本能率協会、日本アプライドリサーチ研究所社長を経て1992年同社取締役。1994年社長、2013年会長兼CEO等を歴任し、2024年4月より現職。
谷脇 康彦 代表取締役社長執行役員Co-CEO&COO 1984年郵政省入省。総務省総合通信基盤局長、総務審議官(郵政・通信)などを歴任。2022年同社顧問、副社長を経て、2025年4月より現職。
村林 聡 取締役副社長執行役員 三菱東京UFJ銀行専務、三菱UFJフィナンシャル・グループ執行役専務などを歴任。2021年同社取締役副社長、2024年4月より現職。
北村 公一 取締役副社長執行役員 新日本製鐵(現日本製鉄)入社。新日鉄ソリューションズ副社長執行役員などを経て、2020年同社専務執行役員。2025年4月より現職。
渡井 昭久 取締役副社長執行役員CFO 住友銀行(現三井住友銀行)入行。1996年同社出向、2004年取締役CFO。専務取締役などを経て、2025年4月より現職。
島上 純一 取締役副社長執行役員CTO 野村総合研究所を経て1996年同社入社。2007年取締役、2015年専務執行役員CTOなどを歴任し、2025年4月より現職。


社外取締役は、塚本隆史(元みずほFG社長)、佃和夫(元三菱重工業社長)、岩間陽一郎(元東京海上AM社長)、岡本厚(元岩波書店社長)、鵫巣香穂利(元トーマツボードメンバー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ネットワークサービス及びSI事業」および「ATM運営事業」を展開しています。

ネットワークサービス及びSI事業


法人および官公庁を主な顧客とし、インターネット接続サービス、WANサービス、アウトソーシングサービス、システム構築および運用保守などを提供しています。また、個人向けには「IIJmio」ブランドでモバイル通信サービスを提供しており、MVNO(仮想移動体通信事業者)としての事業も展開しています。

収益は、顧客からの月額通信料、運用保守料、システム構築の対価等から構成されています。運営は主にインターネットイニシアティブや、子会社のIIJグローバルソリューションズ、IIJエンジニアリングなどが行っています。

ATM運営事業


銀行ATMおよびそのネットワークシステムの構築・運営を行っています。コンビニエンスストアなどに設置されたATMを通じて、金融機関の顧客にサービスを提供しています。

収益は、提携金融機関等からのATM利用に伴う手数料収入です。運営は連結子会社のトラストネットワークスが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上収益は過去5期間を通じて着実な増加傾向にあります。利益面でも、税引前利益および当期利益ともに安定して推移しており、高い利益率を維持しています。特に直近の決算では、売上収益が3,000億円を超える規模にまで成長しており、事業規模の拡大が続いています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 2,130億円 2,263億円 2,527億円 2,761億円 3,168億円
税引前利益 140億円 242億円 273億円 289億円 292億円
利益率(%) 6.6% 10.7% 10.8% 10.5% 9.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 97億円 157億円 189億円 198億円 199億円

(2) 損益計算書


直近2期間の比較では、売上収益が順調に伸長しています。売上原価の増加に伴い売上総利益率は若干低下していますが、売上総利益の額自体は増加しています。営業利益も増加傾向を維持しており、事業拡大に伴うコスト増を吸収して利益を確保している様子がうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,761億円 3,168億円
売上総利益 639億円 684億円
売上総利益率(%) 23.1% 21.6%
営業利益 290億円 301億円
営業利益率(%) 10.5% 9.5%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が65億円(構成比21%)、支払手数料が45億円(同15%)を占めています。売上原価においては、外注費が529億円(構成比21%)、回線費が298億円(同12%)となっています。

(3) セグメント収益


主力であるネットワークサービス及びSI事業は、法人需要の拡大や大型案件の獲得により大幅な増収となりました。ATM運営事業も堅調に推移しています。全体として、コアビジネスの成長が連結業績を牽引しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
ネットワークサービス及びSI事業 2,732億円 3,139億円 280億円 289億円 9.2%
ATM運営事業 29億円 29億円 10億円 12億円 39.8%
その他 - - - - -
調整額 -1億円 -0億円 - - -
連結(合計) 2,761億円 3,168億円 290億円 301億円 9.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得た資金を、設備投資や借入金の返済に充てている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 408億円 285億円
投資CF -179億円 -217億円
財務CF -208億円 -197億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は45.0%で市場平均(プライム市場・非製造業平均24.2%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「インターネットイニシアティブ」との社名の通り、インターネットの世界において技術革新をリードし、新たな利用形態を提案する画期的なサービス、プラットフォームの提供を通じて、ネットワーク社会の発展に貢献することを経営理念としています。技術革新によるインフラの発展と、社会を支える高品質なITサービスの提供を目指しています。

(2) 企業文化


技術革新や社会貢献に積極果敢に挑戦する人材が集まり、誇りとやりがいをもって自律的に能力を発揮できる場を提供することを重視しています。社員個々人が現状に満足せず常に先の世界を考えることで社会発展に貢献し、世間からも評価されることで成長を実感できるような会社であることを目指しています。

(3) 経営計画・目標


同社は、中長期で目指すべき通過点として連結売上高5,000億円規模への伸長を含む中長期ビジョンを定めています。そのプロセスとして中期計画(FY2024-FY2026)を策定し、最終年度である2027年3月期の数値目標を設定しています。

* 売上高(売上収益):3,800億円規模
* 営業利益:460億円規模

(4) 成長戦略と重点施策


高いインターネット関連技術を源泉に、付加価値の高いネットワークサービスを開発し、システムインテグレーション機能と併せて日本企業のIT需要に応えることで事業拡大を目指します。特に、複数年大型ネットワーク構築案件の増加等を背景に、既存コアビジネス領域の徹底的な強化による売上伸長と利益向上を図るとともに、次の成長に向けた新規領域への取り組みにも注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材育成はOJTを根幹とし、国内最大規模のバックボーン運用や新サービス開発等の業務機会を提供することで技術者のモチベーション向上を図っています。若手育成を重視し、OJTトレーナー制度や各種研修を充実させています。また、多様な働き方の推進や健康経営、人権尊重に取り組み、従業員が心身ともに健康で安心して働ける環境整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 37.4歳 9.0年 7,260,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.4%
男性育児休業取得率 61.9%
男女賃金差異(全労働者) 76.9%
男女賃金差異(正規雇用) 76.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 37.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、若手従業員の「チャレンジ」評価(4.0)、女性の育児休業制度利用率(100%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業展開について


売上高の大半は国内顧客であり、国内景気や企業のIT投資意欲の影響を受けます。また、法人向けサービスでは技術優位性の維持や価格競争への対応、クラウドサービスの普及状況等が業績に影響する可能性があります。個人向けモバイルサービスにおいては、競合激化や接続料単価の変動などがリスク要因となります。

(2) 事業投資等について


中長期的な成長のため、人材獲得や設備投資を積極的に行っています。特にクラウドサービスや自社データセンター建設への投資は多額であり、為替変動によるコスト増などのリスクがあります。また、海外事業展開においても、現地の法制度や経済情勢等の不確実性が事業に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 通信回線等の外部依存について


サービスの提供に必要な通信回線をNTTグループやKDDI等の通信キャリアから調達しており、その安定提供に依存しています。また、ネットワーク機器やソフトウェア、データセンター設備等も特定の第三者からの調達や賃借に依存しており、供給不足や価格高騰、サービスの中断等が発生した場合、同社の事業運営に影響が出る可能性があります。

(4) サービスの信頼性について


システム障害やサイバー攻撃、自然災害等によりサービスが中断した場合、信用失墜や損害賠償につながる可能性があります。また、顧客情報を保有しており、情報漏洩が発生した場合には経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。提供サービスの品質維持のために想定を超える設備投資が必要となるリスクもあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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