※本記事は、株式会社いい生活の有価証券報告書(第27期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. いい生活ってどんな会社?
不動産市場のデジタルトランスフォーメーションを推進するバーティカルSaaS企業です。
■(1) 会社概要
同社は2000年にインターネット上でクラウドによるシステム提供を行う目的で設立されました。2001年に不動産物件情報管理データベース・システムを開始し、2006年に東証マザーズへ上場しています。2018年にはコンサルティングを行う子会社を設立し、2022年に東証スタンダード市場へ移行しました。
従業員数は連結で216名、単体で194名です。大株主は、筆頭株主である社長CEOの前野善一氏をはじめ、副社長COOの北澤弘貴氏、副社長CFOの塩川拓行氏など、創業メンバーである経営陣が上位を占めており、経営と所有が一体化した体制となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 前野善一 | 14.92% |
| 北澤弘貴 | 13.85% |
| 塩川拓行 | 13.07% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長CEOは前野善一氏が務めており、役員のうち37.5%が社外取締役です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 前野善一 | 取締役社長CEO(代表取締役)ビジネス・ストラテジーグループリーダー | 1991年ゴールドマン・サックス証券入社。2000年同社設立とともに代表取締役社長に就任。2020年より現職。 |
| 中村清高 | 取締役会長(代表取締役) | 1981年日興證券入社。1990年ゴールドマン・サックス証券入社。2000年同社代表取締役社長に就任。2020年より現職。 |
| 塩川拓行 | 取締役副社長CFO(代表取締役)コーポレートグループリーダー | 1991年住友銀行入行、同年リーマン・ブラザーズ証券入社。1994年ゴールドマン・サックス証券入社。2006年より現職。 |
| 北澤弘貴 | 取締役副社長COO(代表取締役)セールス&マーケティンググループリーダー | 1991年ゴールドマン・サックス証券入社。2000年同社設立とともに代表取締役副社長に就任。2006年より現職。 |
| 松崎明 | 専務取締役CTOウェブ・ソリューション開発グループリーダー | 2000年同社入社。システム開発本部長やCIOを経て、2012年取締役CTOに就任。2019年より現職。 |
社外取締役は、成本治男(TMI総合法律事務所パートナー)、伊藤耕一郎(伊藤国際会計税務事務所代表)、神村大輔(清風法律事務所所属)です。
2. 事業内容
同社グループは、「クラウドソリューション事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■クラウドソリューション事業
不動産業界特有の業務知識やデータ特性を反映した「バーティカルSaaS」を提供しています。賃貸管理や仲介営業など多岐にわたる業務データを一元管理するシステムであり、全国の中小不動産会社を中心に顧客基盤を構築しています。
収益モデルは、SaaSの月額利用料を得るサブスクリプションを主力とし、解約率の低い安定した経常収益を確保しています。さらに、システム導入支援やデータ移行を行うBPaaS(Business Process as a Service)などのソリューション収益も手がけており、これらの運営は同社および子会社のリアルテック・コンサルティングが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の売上高は安定して右肩上がりの成長を続けています。経常利益は一時的に赤字となった期間もありましたが、直近の2026年3月期には利益率を大きく改善させ、再び安定した収益基盤を確立しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 24億円 | 27億円 | 28億円 | 30億円 | 32億円 |
| 経常利益 | 2億円 | 2億円 | 2億円 | -0.4億円 | 2億円 |
| 利益率(%) | 6.9% | 8.8% | 7.4% | -1.4% | 7.3% |
| 当期利益 | 0.6億円 | 1億円 | 1億円 | -0.4億円 | 0.7億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の順調な拡大に加え、外注費の見直しや開発の生産性向上により売上総利益率が大きく改善しています。これにより、営業利益も大幅な黒字転換を達成しました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 30億円 | 32億円 |
| 売上総利益 | 16億円 | 19億円 |
| 売上総利益率(%) | 52.7% | 58.3% |
| 営業利益 | -0.4億円 | 2億円 |
| 営業利益率(%) | -1.2% | 7.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が7億円(構成比41%)、役員報酬が2億円(同12%)を占めています。売上原価の多くは外注費やシステム関連仕入などの経費が占めており、全体としてコスト構造の最適化が進められています。
■(3) セグメント収益
クラウドソリューション事業の単一セグメントであり、主力であるサブスクリプション売上が堅調に推移し、全体の成長を牽引しています。既存顧客への追加提案も順調です。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| クラウドソリューション事業 | 30億円 | 32億円 |
| 連結(合計) | 30億円 | 32億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業で利益を出し、借入によって積極投資を行う状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 3億円 | 8億円 |
| 投資CF | -7億円 | -6億円 |
| 財務CF | -0.3億円 | 1億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.8%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も74.5%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「テクノロジーと心で、たくさんのいい生活を」というミッションと、「心地いいくらしが循環する、社会のしくみをつくる」というビジョンを掲げています。最新の情報技術を組み込んだシステムを提供し、不動産市場全体の効率性向上とデジタルトランスフォーメーションの実現を通じて、社会に新しい価値を提供することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、組織と個人の自律性を促す価値基準として6つのバリューを定めています。「新たなスタンダードを定着し続けよう」「挑戦と失敗をまるごと愛そう」「多彩な仲間と化学結合を起こそう」などの行動指針を共有し、変化を恐れずにイノベーションを起こす組織風土を構築しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は中長期的な成長を牽引する重要業績評価指標(KPI)として、以下の目標を掲げています。増収増益基調を維持しつつ、事業規模の拡大を指向しています。
* 顧客数:5,000社
* 顧客単価(月額):100,000円以上
■(4) 成長戦略と重点施策
マルチプロダクト戦略による包括的な課題解決や、取引量に応じた従量課金を積層する立体的な成長モデルへの転換を推進しています。また、最先端の生成AI実装による付加価値の向上や、深刻な業界の人手不足に対応するBPaaS(伴走型支援)の拡大を重点施策として展開しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、持続的な企業価値向上の源泉を「人的資本」と位置づけ、不動産実務とテクノロジーの双方に精通した高度IT人材の育成に注力しています。新卒採用を中心とした体系的な教育や、マネジメントとスペシャリストの双方向のキャリアパスを用意し、個人の挑戦と組織の目標を連動させる柔軟な人事制度を運用しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 35.6歳 | 7.8年 | 6,281,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.0% |
同社および連結子会社における男性労働者の育児休業取得率および労働者の男女の賃金の差異については、公表義務に基づく公表項目として選択しておらず公表していないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員比率(32.4%)、離職率(10.5%)、有給休暇取得率(81.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) クラウド事業の競争激化と技術革新
同社は不動産業界向けにクラウド・SaaSを展開していますが、資金力を持つ大手企業の参入や、画期的な新技術を活用した競合サービスが出現した場合、競争環境が激化し、同社の事業や経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、激しい技術革新への対応が遅れた場合も競争力の低下につながります。
■(2) システムインフラの不具合と外部依存リスク
同社はサービスの基盤として米国Amazon社のAWS等、特定の外部IaaS事業者に依存しています。同事業者との契約に変更が生じた場合や、大規模な自然災害等により想定を超えるシステム障害が発生した場合、サービス提供に支障をきたし、経営成績に影響を与えるリスクがあります。
■(3) サイバー攻撃と情報セキュリティリスク
巧妙化するサイバー攻撃に対し、多要素認証や国際認証に基づく厳格なセキュリティ対策を講じていますが、未知の脆弱性を突いた攻撃により重要データが漏洩・損壊するリスクを完全に排除することは困難です。被害が発生した場合、損害賠償や信用の失墜につながる恐れがあります。



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