システム・ロケーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

システム・ロケーション 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード市場に上場し、自動車関連事業者向けに中古車価格の算出や業務支援システムを提供する企業です。当連結会計年度の売上高は17億円、経常利益は6億円でした。主力商品である新車販売会社向け支援システムの解約等が影響し、前期比で減収減益となっています。


※本記事は、システム・ロケーション株式会社 の有価証券報告書(第57期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. システム・ロケーションってどんな会社?


自動車の「価値(現在価値・将来価値)」を算出する独自のノウハウを核に、オートリース会社やレンタカー会社、金融機関向けに業務支援システムを提供するIT企業です。

(1) 会社概要


1992年に自動車ファイナンス事業者向けの業務支援会社として創業しました。2000年に残価算出システム「RV Doctor」を開発し、現在の事業基盤を確立。2006年にジャスダック証券取引所(現・東証スタンダード)へ上場を果たしました。その後も中国や韓国への子会社設立、販売店向けソリューション会社の完全子会社化などを行い、事業領域を拡大しています。2022年には東証の市場区分見直しに伴いスタンダード市場へ移行しました。

2025年3月31日現在の連結従業員数は57名(単体34名)です。筆頭株主は有限会社タイムラーで、第2位は社長の千村岳彦氏、第3位は光通信となっています。

氏名 持株比率
(有)タイムラー 48.47%
千村岳彦 22.02%
光通信(株) 7.55%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.0%です。代表取締役社長は千村岳彦氏が務めています。取締役5名のうち、社外取締役の比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
千村 岳彦 代表取締役社長 1992年7月の同社創業時より営業部長を務め、1996年に社長就任。2023年に会長となった後、2024年5月より再び社長として現職。
内村 裕一 常務取締役営業管掌開発部門管掌 兼開発部門長 2001年に入社し、営業部長、取締役を経て2017年に常務取締役に就任。現在は営業および開発部門を管掌し、開発部門長も兼任する。
井坂 俊達 取締役管理部門管掌 2000年に公認会計事務所を開業。同社監査役を経て、2015年に取締役就任。一時退任後、2022年より再び管理部管掌取締役として現職。
落合 綾子 取締役 2009年に現Inspirationに入社。同社取締役等を経て、システム・ロケーションのICT部長、開発部門長を歴任し、2025年4月より現職。


社外取締役は、栁田一男(ワゴー株式会社代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「システム業務支援」の単一セグメントで事業を展開しており、自動車ファイナンス事業者や販売事業者向けに、以下のシステムやデータを提供しています。

(1) 自動車資産評価システム


中古車の統計分析に基づき、自動車の資産価値を評価するシステムを金融機関等に提供しています。具体的には、将来の売却予想価格を算出する「RV Doctor」や、現在の標準的な車両価値を算出する「PV Doctor」などがあります。また、リスク管理として残価と現在価値を照合する「CAV Monitor」も展開しています。

主な収益源は、これらのシステム利用料やデータ提供料です。運営は主にシステム・ロケーションが行っており、韓国では子会社のValuAble Co., Ltd.が事業展開を図っています。

(2) 業務支援・販売支援システム


自動車関連企業の業務効率化や販売促進を支援するプラットフォームを提供しています。オートリース会社向けのASPサービス「シスろけっと」や、新車販売会社向けの商談支援システム「CA Doctor」、カタログ情報をデータベース化した「車種カタログデータベース」などが主力商品です。

収益は主にシステムやデータベースの利用料(ストック型収益)から成り立っています。運営はシステム・ロケーションのほか、連結子会社のInspirationが自動車販売店向けソリューション事業を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は17億円前後で安定して推移しています。経常利益率は35%を超える高い水準を維持しており、収益性の高さが特徴です。当期は主力商品の解約や一時的な費用負担の影響により、前期比で減収減益となりました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 11億円 13億円 17億円 17億円 17億円
経常利益 5億円 6億円 6億円 6億円 6億円
利益率(%) 41.5% 42.6% 35.6% 35.6% 35.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 5億円 4億円 4億円 3億円 3億円

(2) 損益計算書


売上高、利益ともに前期から減少しました。売上総利益率は77.1%と依然として高水準ですが、若干低下しています。販売費及び一般管理費は減少しましたが、減収の影響をカバーするには至らず、営業利益率は低下しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 17億円 17億円
売上総利益 14億円 13億円
売上総利益率(%) 78.5% 77.1%
営業利益 6億円 5億円
営業利益率(%) 33.3% 32.2%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が2億円(構成比21%)、役員報酬が1億円(同14%)を占めています。また、売上原価においては、経費(主に外注費や減価償却費等を含む)が3億円(売上原価の79%)を占めており、労務費は1億円(同21%)となっています。

(3) セグメント収益


同社は「システム業務支援」の単一セグメントですが、製品ごとの売上推移を見ると、主力の商品である「CA Doctor」や「RV Doctor」が減収となっています。これは長納期時期に蓄積した解約等の影響によるものです。一方、その他の一部サービスは底堅く推移しています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期)
システム業務支援 17億円 17億円
連結(合計) 17億円 17億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動で得た資金の範囲内で投資を行い、余剰資金で配当等の支払いを行っている「健全型」のキャッシュ・フローです。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 5億円 5億円
投資CF -1億円 -1億円
財務CF -1億円 -1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は9.1%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は84.5%で市場平均を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


クルマの「価値(将来価値・現在価値)」を算出し、自動車に関わる企業や金融機関、ユーザーを結びつけることで、所有や利用のプロセスに変化をもたらすシステムを提供することを目指しています。あらゆる人や企業がクルマの価値を日常的に意識できるプラットフォーム企業となることを経営方針としています。

(2) 企業文化


社会環境の変化に対応し、Co-Creation(共創)の理念のもと、イノベーションを創出する顧客企業とのビジネスやコラボレーションを重視しています。また、多様な個性と能力の尊重、多様な働き方の実現、公平・公正・機会均等という基本方針を掲げ、ダイバーシティと機会均等を推進する文化を持っています。

(3) 経営計画・目標


安定的かつ持続的な成長を実現するため、財務体質の強化と収益性・安定性の向上を図る方針です。特に、株主資本利益率(ROE)を重要な経営指標として位置づけ、企業価値の向上に努めています。

(4) 成長戦略と重点施策


「クルマの価値解析エンジン」の進化と、それを活用したプラットフォームの提供拡大を短中期の戦略として掲げています。具体的には、AIやビッグデータを活用した価値算出モデルの高度化、既存の自動車ファイナンス市場向け新サービスの開発、成長領域である自動車流通市場への営業強化に取り組む方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業の継続と成長には優れた人材が不可欠であるとし、専門性の高い人材の確保・育成に注力しています。性別や国籍、採用区分に関わらず多様な人材を積極的に採用し、ジョブローテーションを通じてキャリア開発を支援する方針です。また、フレックス制度や在宅勤務など、柔軟な働き方ができる環境づくりを推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.2歳 8.3年 5,957,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外手当を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 新商品開発と新規事業に関するリスク


成長確保のために新たな業務支援サービスの開発や新規事業への参入を進めていますが、これらに伴う先行投資が必要です。開発が計画通りに進まない場合や、市場ニーズに適合せず十分な収益が得られない場合、投資回収ができず、グループの業績や財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 人材の確保と育成


サービスの質を維持・向上させるためには、優秀な開発スタッフや専門人材の確保が不可欠です。しかし、十分な人材を適時に採用できない場合や、既存の優秀な人材が流出した場合には、サービス品質の低下や事業計画の遅延を招き、業績に悪影響を与える可能性があります。また、人材獲得競争によるコスト増のリスクもあります。

(3) システムトラブルと情報セキュリティ


クラウド型サービスを提供しているため、システムやネットワークの安定稼働が重要です。人為的過誤や自然災害、サイバー攻撃などによりシステムトラブルが発生した場合、損害賠償や信用の低下を招く恐れがあります。また、顧客の機密情報や個人情報の漏洩が発生した場合も、業績に重大な影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。