SRAホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

SRAホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

SRAホールディングスは東京証券取引所プライム市場に上場し、システム開発事業、運用・構築事業、販売事業を営むグループ会社を統括しています。直近の連結業績では、金融業や製造業向けのシステム開発やITコンサルティングが堅調に推移し、売上高は増収、利益面でも大幅な増益を達成し過去最高水準を更新しています。


※本記事は、株式会社SRAホールディングスの有価証券報告書(第36期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. SRAホールディングスってどんな会社?


同社グループは、システム開発からIT基盤の構築、ソフトウェア販売までをワンストップで手掛ける独立系のIT企業群です。

(1) 会社概要


同社は1991年にアール・エム・ビジネスの名称で設立されました。2006年にSRAホールディングスへ商号変更し、同年に東京証券取引所市場第一部に上場しました。その後、株式交換によりSRAを完全子会社化して事業基盤を拡大し、2022年には同取引所のプライム市場へ移行しています。

現在は連結従業員数1,398名、単体10名の体制で事業を展開しています。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は事業子会社であるSRA、第3位は第一生命保険となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.35%
SRA 8.60%
第一生命保険 4.07%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は17.0%です。代表取締役会長の鹿島亨氏、代表取締役社長の大熊克美氏が経営を牽引しています。社外取締役の比率は41.7%となっています。

氏名 役職 主な経歴
鹿島亨 代表取締役会長 1975年日本国有鉄道入社、1984年SRA入社。欧米子会社の社長等を歴任後、2006年より同社代表取締役社長、2023年より現職。
大熊克美 代表取締役社長 1987年日本アイ・ビー・エム入社、2001年AIT入社。同社社長を経て2014年より同社取締役、2023年より現職。
平田淳史 取締役 1985年SRA入社、欧米子会社代表等を歴任。2021年SRA代表取締役社長、2022年同社グループ戦略本部長、2024年より現職。
内田裕之 取締役 1982年富士通ファナック入社。同社代表取締役副社長等を経て2023年にSRA顧問に就任。同年より現職。


社外取締役は、成川匡文(元東京電力建設部土木建築技術センター所長)、大橋弘隆(元三井造船事業開発本部副本部長)、藤原豊(元経済産業省大臣官房審議官)、藤本雪奈(tsumugi.代表)、大越いづみ(元電通エグゼクティブ・アドバイザー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「開発事業」「運用・構築事業」「販売事業」を展開しています。

開発事業


メインフレーム系大規模システムの要求定義から開発・保守に至る一貫したシステム開発や、オープン系システムのインテグレーションを提供しています。また、独自のツールを活かしたソリューションビジネスやオープンソースソフトウェアの技術サポートも行い、幅広い顧客ニーズに対応しています。

システム開発の請負や準委任契約を通じた開発対価がおもな収益源です。運営は事業子会社であるSRAやAIT、ソフトウエア・サイエンスなどが中心となって展開しています。

運用・構築事業


コンピュータシステムやネットワークシステムの構築と、それらの運用管理業務を行っています。データ管理や設備管理を含むオペレーション全般に加え、顧客のITインフラを支えるアウトソーシングサービスも提供しています。

ネットワーク構築作業による一括の対価や、システムの運用管理業務を通じた継続的な役務提供料が収益源です。こちらの運営もSRAやAITが主体となって行っています。

販売事業


ライセンスを含めたパッケージソフトの販売や、システムインテグレーションに伴うサーバー等のシステム機器販売を行っています。また、顧客のビジネス変革を支援するIT導入に関するコンサルティングサービスも提供しています。

パッケージソフトやハードウェアの販売代金、並びにソフトウェアの保守サービスを通じた継続的な利用料が主な収益源です。運営はSRAやAITのほか、SRAプロフェッショナルサービスなどが手掛けています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


過去5期間の売上高は402億円から533億円へと安定した増加傾向を見せています。経常利益も65億円から95億円へと順調に拡大しており、高い利益率を維持しながら成長を続けていることがわかります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 402億円 429億円 471億円 516億円 533億円
経常利益 65億円 72億円 86億円 81億円 95億円
利益率(%) 16.1% 16.8% 18.2% 15.7% 17.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 36億円 9億円 46億円 34億円 56億円

(2) 損益計算書


売上高は前期から約17億円増加し、売上総利益率も25.8%と良好な水準を保っています。利益率の高いクラウドビジネス等の進展により、営業利益も堅調に伸びています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 516億円 533億円
売上総利益 132億円 137億円
売上総利益率(%) 25.5% 25.8%
営業利益 79億円 82億円
営業利益率(%) 15.4% 15.5%


販売費及び一般管理費(55億円)のうち、給料手当・賞与が23億円(構成比42%)と最も大きく、次いで外注費が6億円(同10%)を占めています。売上原価(395億円)についても人件費や外注費が主要なコストとみられます。

(3) セグメント収益


各事業ともに堅調に推移しており、主力となる開発事業は金融業向けの業務が伸長し増収となりました。運用・構築事業でも金融業や製造業向けの引き合いが増加し、販売事業はAITにおける大口案件の獲得が増収に寄与しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
開発事業 256億円 259億円
運用・構築事業 6億円 66億円
販売事業 196億円 208億円
連結(合計) 516億円 533億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は営業CFでしっかりと資金を創出し、その資金で投資や借入金の返済・株主還元を行う「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 58億円 47億円
投資CF -3億円 -18億円
財務CF -19億円 -24億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.4%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は64.7%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「自らの職業的実践を通じ、コンピュータサイエンスの諸分野を発展させ、それによって人類の未来に貢献する」という経営理念を創業以来掲げています。ITでユーザーの満足度を最大化することを経営の基本としています。

(2) 企業文化


社会との健全かつ正常な関係を維持する「公正で透明な企業活動」を倫理憲章の基本方針としています。社員の人格・個性を尊重し、安全で働きやすい職場環境を提供するとともに、優れたサービスと品質向上により顧客の信頼を獲得する文化を育んでいます。

(3) 経営計画・目標


2027年3月期の経営目標値として以下の数値を掲げ、株主還元では配当性向50%を目途に安定的な高配当を目指しています。

・売上高:555億円
・営業利益:86億円
・経常利益:90億円
・ROE:安定的かつ継続的に10%以上確保

(4) 成長戦略と重点施策


「既存顧客との取引拡大」「ビジネスモデルの変革」「AI活用」「自社IP×グローバルビジネスの推進」を成長戦略の柱としています。クラウドインフラビジネスやITコンサルティングサービスの強化に加え、生成AIの活用による生産性向上や、東南アジアを中心とした海外市場の開拓に注力しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「優位性をもって対応できる人材を育成し、その人材を活かしたグループ経営を推進する」という方針のもと、AIやクラウド等の専門人材の拡充を図っています。技術等級制度や資格取得支援を通じて社員のキャリア成長を支え、多様な働き方を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 57.5歳 7.8年 12,713,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.4%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 83.3%
男女賃金差異(正規雇用) 85.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 72.7%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(74.0%)、テレワーク比率(48.0%)、ストレスチェック受検率(84.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 環境変化と市場競争リスク


技術の進化が著しく、顧客ニーズが多様化・高度化する情報サービス産業において、急激な社会情勢の変化や激しい競争環境が生じた場合、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。

(2) プロジェクトの採算リスク


システム開発業務において、作業開始後の仕様変更や想定外の工数増加、納品後の瑕疵対応などにより、期待した採算を下回る不採算プロジェクトが発生するリスクがあります。

(3) 海外事業におけるリスク


成長市場である海外への事業展開を進めていますが、急激な経済悪化、株式・為替市場の変動、政治や制度の違いなどにより、海外投融資の評価額に想定を超えたマイナスの変動が生じる可能性があります。

(4) 情報セキュリティリスク


業務上、顧客企業の機密情報や個人情報を取り扱うため、サイバー攻撃や人為的過失により情報漏洩やシステム停止が発生した場合、損害賠償の発生や社会的信用の低下を招く恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。