SRAホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

SRAホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

プライム市場に上場し、システム開発、運用・構築、販売事業を展開しています。2025年3月期の連結業績は、売上高516億円(前期比9.5%増)、営業利益79億円(同15.0%増)と増収営業増益を達成しました。経常利益は為替差損の影響で81億円(同5.2%減)となりました。


※本記事は、株式会社SRAホールディングス の有価証券報告書(第35期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. SRAホールディングスってどんな会社?


システム開発や運用管理、機器販売を行う独立系SIerグループの持株会社です。海外展開も積極的です。

(1) 会社概要


1991年に設立され、2006年に持株会社体制へ移行し東証一部に上場しました。2010年にSRAを完全子会社化し、グループ経営体制を確立しています。海外展開も進め、中国や米国、欧州に拠点を設立しました。2022年の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しています。

連結従業員数は1,388人、単体では12人です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は事業子会社のSRA(相互保有株式等)、第3位は生命保険会社となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 13.28%
SRA 8.60%
第一生命保険 4.07%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名、計12名で構成され、女性役員比率は17.0%です。代表取締役社長は大熊克美氏です。社外取締役比率は41.7%です。

氏名 役職 主な経歴
大熊 克美 代表取締役社長 日本アイ・ビー・エムを経てAIT社長等を歴任。2023年6月より現職。
鹿島 亨 代表取締役会長 日本国有鉄道を経てSRAに入社。SRA社長等を経て2016年6月より現職。
平田 淳史 取締役 SRA入社後、海外子会社社長やSRA社長等を歴任。2024年6月より現職。
内田 裕之 取締役 ファナック副社長等を経てSRA顧問に就任。2023年6月より現職。


社外取締役は、成川匡文(元東京パワーテクノロジー常務)、大橋弘隆(元三井造船理事)、藤原豊(元経済産業省大臣官房審議官)、藤本雪奈(tsumugi.代表)、大越いづみ(元電通専任局長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「開発事業」、「運用・構築事業」、「販売事業」の3つの報告セグメントを展開しています。

開発事業


メインフレーム系の大規模システム開発からオープン系システムの構築、オープンソースソフトウェア(OSS)による技術サポートなどを提供しています。金融機関や製造業など幅広い顧客が対象です。

収益は、システム開発や保守に伴う対価、OSSサポート料などから得ています。運営は主にSRA、ソフトウエア・サイエンス、SRA西日本などが担当しています。

運用・構築事業


コンピュータシステムやネットワークシステムの運用管理、データセンター運用、インフラ構築サービスを提供しています。企業のITインフラを支える業務が中心です。

収益は、運用管理業務の委託料やインフラ構築費用から得ています。運営は主にSRAやAITが行っています。

販売事業


パッケージソフトウェアのライセンス販売や、サーバーを中心としたシステム機器の販売、IT導入コンサルティングを行っています。大学向け文教システムなどの自社製品も含まれます。

収益は、製品や機器の販売代金、導入コンサルティング料などから得ています。運営はSRA、AIT、SRA OSSなどが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は394億円から516億円へと右肩上がりで成長しています。経常利益も53億円から81億円へと拡大傾向にありますが、直近では為替の影響等により微減しました。当期利益は変動が見られますが、安定した利益率を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 394億円 402億円 429億円 471億円 516億円
経常利益 53億円 65億円 72億円 86億円 81億円
利益率(%) 13.4% 16.1% 16.8% 18.2% 15.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.2億円 21億円 19億円 26億円 22億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益も増加しました。営業利益率は上昇しており、本業の収益性が向上しています。販売費及び一般管理費のコントロールも効いており、増収効果が利益に結びついています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 471億円 516億円
売上総利益 120億円 132億円
売上総利益率(%) 25.4% 25.5%
営業利益 69億円 79億円
営業利益率(%) 14.7% 15.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当・賞与が21億円(構成比41.0%)、賞与引当金繰入額が0.8億円(同1.6%)を占めています。売上原価では、人件費や外注費などが主な内訳です。

(3) セグメント収益


開発事業は金融業向け等が伸長し増収増益でした。運用・構築事業も製造業や金融業向けが堅調で増益となりました。販売事業は病院や金融業向けの大口案件があり、大幅な増収増益を達成しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
開発事業 247億円 256億円 51億円 53億円 20.7%
運用・構築事業 60億円 64億円 19億円 21億円 32.9%
販売事業 164億円 196億円 16億円 22億円 11.1%
調整額 -5億円 -8億円 -16億円 -17億円 -
連結(合計) 471億円 516億円 69億円 79億円 15.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 41億円 58億円
投資CF -1.7億円 -2.6億円
財務CF -16億円 -19億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


創業以来、「自らの職業的実践を通じ、コンピュータサイエンスの諸分野を発展させ、それによって人類の未来に貢献する」という経営理念を掲げています。ITを活用してユーザーの満足度を最大化することを経営の基本とし、収益性と成長性の追求により企業価値の向上を目指しています。

(2) 企業文化


「SRAグループ倫理憲章」に基づき、公正で透明な企業活動を通じて社会との健全な関係を維持することを重視しています。優れたサービスの提供による顧客信頼の獲得、情報の保護、社員の人格・個性の尊重、安全で働きやすい職場環境の提供などを行動指針としています。

(3) 経営計画・目標


2026年3月期を最終年度とする経営方針において、「環境の変化に即応した成長の実現」を掲げています。数値目標として以下の指標を設定しています。

* 売上高:535億円
* 営業利益:83億円
* ROE:10%以上(安定的かつ継続的に確保)
* 配当性向:50%目途

(4) 成長戦略と重点施策


既存顧客との取引拡大やビジネスモデルの変革、自社IPとグローバルビジネスの推進を成長戦略としています。具体的には、コンサルティング業務やクラウドビジネスの強化、AI活用の推進、自社製品の商品力向上などに取り組んでいます。また、グループシナジーの強化により顧客ニーズに対応していきます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


技術の進化や競争激化に対応するため、優秀な人材の確保と育成を最重要課題としています。階層別研修や資格取得支援に加え、新興国でのIT人材育成も行い、個々の社員の成長を促進しています。特にクラウドやAI分野の技術者育成に注力し、先進的な技術力の向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 57.0歳 6.7年 12,834,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 6.9%
男性育児休業取得率 50.0%
男女賃金差異(全労働者) 87.1%
男女賃金差異(正規雇用) 71.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 84.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ストレスチェックの受検率(87.8%)、テレワーク比率(48.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 環境の変化に関するリスク


技術進化が速く、顧客ニーズの多様化や競合激化が進む情報サービス産業において、急激な社会情勢の変化が業績に影響を与える可能性があります。「ビジネスモデルの変革」などの成長戦略に取り組んでいますが、環境変化への対応が遅れた場合、競争力が低下する恐れがあります。

(2) プロジェクトの採算に関するリスク


システム開発における一括請負契約では、仕様変更や工数増加により採算が悪化する可能性があります。プロジェクト管理体制の強化やリスク要因のレビューを行っていますが、想定外の事象により不採算プロジェクトが発生した場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 海外事業投融資に関するリスク


成長市場開拓のため海外での提携やM&Aを推進していますが、経済情勢の悪化やカントリーリスク、投融資先の経営状況の変化により、投融資資産の評価額が変動する可能性があります。実際に特別損失を計上した事例もあり、業績への影響を慎重に見極める必要があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。