コムチュア 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

コムチュア 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

コムチュアは東京証券取引所プライム市場に上場し、デジタル時代を担うパートナーとして、ITシステムのコンサルティングから構築、保守、運用、教育までトータルソリューションを提供しています。直近の連結業績では、クラウドやAI領域の伸長などにより増収増益を達成しており、安定した成長を継続しています。


※本記事は、コムチュア株式会社の有価証券報告書(第42期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. コムチュアってどんな会社?


ITシステムのコンサルティングから運用、教育まで、企業のデジタル化をトータルに支援しています。

(1) 会社概要


1985年1月に日本コンピューターテクノロジーとして設立され、2002年にコムチュアへ商号変更しました。2007年にJASDAQに上場し、現在はプライム市場に上場しています。近年はエディフィストラーニングやヒューマンインタラクティブテクノロジーの連結子会社化など、M&Aにより事業基盤を拡充しています。

現在の従業員数は連結で1,964名、単体で1,667名です。筆頭株主は有限会社コムで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は同社の社員持株会となっています。

氏名 持株比率
有限会社コム 20.51%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 9.92%
コムチュア社員持株会 3.65%

(2) 経営陣


同社の役員は男性3名、女性3名の計6名で構成され、女性役員比率は50.0%です。代表取締役社長執行役員は澤田千尋氏が務めています。社外取締役比率は66.7%です。

氏名 役職 主な経歴
澤田 千尋 代表取締役社長執行役員 日本アイ・ビー・エム入社後、ロータス事業部長、日本電気理事等を経て、2014年入社。常務取締役などを歴任し、2023年より現職。
樽谷 宏志 代表取締役専務執行役員 三菱銀行入行後、三菱UFJフィナンシャル・グループ法務部長、千代田化工建設代表取締役等を歴任。2023年に社外取締役、2025年より現職。


社外取締役は、原田豊(元野村総合研究所常務執行役員)、木村尚子(元監査法人トーマツパートナー)、池垣真里(元三菱UFJモルガン・スタンレー証券社外取締役)、志水三輪子(東京地方裁判所民事調停委員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ソリューションサービス事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

クラウドソリューション事業


グローバルなSaaSベンダー(Microsoft、Salesforceなど)との連携により、コラボレーションやCRMなどのクラウドサービス導入時のコンサルティングやインテグレーションサービスを提供しています。企業のクラウド導入と活用を支援し、業務改善や生産性向上を実現します。

収益は、顧客に対するシステム導入支援やコンサルティングなどのサービス対価として受け取ります。運営は主にコムチュアマーケティングなどが担当し、グループ全体で連携してサービスを提供しています。

デジタルソリューション事業


Google CloudやAWSなどのベンダーと連携したデータ基盤の構築や、SASなどのベンダーと連携したデータ分析ソリューションを提供しています。データ分析や業務自動化をサポートし、企業の働き方改革を支援します。

収益は、データ基盤の構築や分析ソリューションの提供に対する対価として顧客から受け取ります。運営はコムチュアデータサイエンスやヒューマンインタラクティブテクノロジーなどが担っています。

ビジネスソリューション事業


SAPなどのERPパッケージベンダーとの連携による会計や人事、フィンテックなど基幹システムの構築・運用・モダナイゼーションを行っています。コンサルティングから設計・開発までトータルにサポートします。

収益は、顧客の基幹システムの設計・開発、および導入後の運用サービスに係る対価として受け取ります。運営は主に同社が中心となり、企業の経営の見える化や業務効率化を実現しています。

プラットフォーム・運用サービス事業


Kubernetesなどを活用したハイブリッドクラウド環境や仮想化ネットワークの設計・構築・運用、自社センターでのシステムの遠隔監視サービスやヘルプデスクなどを提供しています。

収益は、IT環境のインフラ構築費用や、継続的な遠隔監視、運用・保守サービスの利用料として顧客から受け取ります。運営は主にコムチュアネットワークが担当しています。

デジタルラーニング事業


MicrosoftやSalesforceなどグローバルベンダーとの連携によるベンダー資格取得のための教育や、デジタル人材育成のためのITスキルの習得研修などを提供しています。

収益は、受講企業や個人からの研修サービス費用や資格取得支援サービスの対価として受け取ります。運営は主にエディフィストラーニングが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一貫して増加傾向にあり、堅調な事業拡大が伺えます。経常利益も増加傾向にありますが、利益率はやや低下傾向で推移しています。親会社所有者帰属の当期利益は直近数期で30億円台を安定して確保しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 250億円 291億円 342億円 363億円 381億円
経常利益 40億円 41億円 46億円 47億円 47億円
利益率(%) 16.0% 14.0% 13.4% 12.8% 12.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 19億円 20億円 43億円 39億円 32億円

(2) 損益計算書


売上高は増加したものの、労務費の増加などにより売上総利益は微減となりました。一方、業務効率化などにより営業利益は微増を確保しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 363億円 381億円
売上総利益 82億円 81億円
売上総利益率(%) 22.7% 21.3%
営業利益 46億円 47億円
営業利益率(%) 12.7% 12.2%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が8億円(構成比22%)、のれん償却額が5億円(同13%)を占めています。また、売上原価のうち、外注費が112億円(構成比49%)、労務費が105億円(同45%)を占めています。

(3) セグメント収益


クラウドソリューションおよびビジネスソリューション事業が主力として売上を牽引しています。デジタルソリューション事業は売上が大きく伸びたものの、先行投資等により利益は横ばいとなりました。各事業で着実な売上成長が見られます。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
クラウドソリューション事業 95億円 97億円 21億円 22億円 22.5%
デジタルソリューション事業 52億円 58億円 12億円 12億円 20.0%
ビジネスソリューション事業 137億円 146億円 33億円 33億円 22.7%
プラットフォーム・運用サービス事業 63億円 63億円 12億円 11億円 16.8%
デジタルラーニング事業 16億円 17億円 4億円 4億円 24.7%
連結(合計) 363億円 381億円 82億円 81億円 21.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFおよび財務CFはマイナスとなっており、営業利益で負債の返済を行い、投資も手元資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 32億円 34億円
投資CF -9億円 -39億円
財務CF -15億円 -16億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.0%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は74.6%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「お客様には"感動"を 社員には"夢"を」を経営理念に掲げています。社会課題の解決に対する貢献とともに持続的成長を果たすため、ステークホルダーの価値観や事業活動が環境や社会に与える影響を踏まえた、長期的な視野に立つ事業運営を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「社会貢献」と「持続的成長」の両立を重視し、持続的な社会の実現を目指す文化を持っています。社会課題の解決への貢献と共に、多様なステークホルダーの価値観を尊重した長期的な視点での経営が求められる中、「AIとデジタルで未来を創造する」をテーマに変革を推進する風土が根付いています。

(3) 経営計画・目標


2032年3月期に売上高1,000億円の達成を目指す戦略を掲げており、企業のデジタル投資の拡大やクラウド、データ活用の高度化を背景に中長期的な成長を見込んでいます。ステークホルダーとともに繁栄する企業を目指し、収益性の向上と安定的な成長を追求しています。

* 売上高:1,000億円

(4) 成長戦略と重点施策


「AIとデジタルで未来を創造する」をテーマに、AIネイティブ企業への成長に向けた事業構造の転換を進めています。また、営業力強化やM&Aを通じた成長基盤の拡充を図るほか、プロジェクトマネージャーの育成やAI領域のリスキリングなど、人材・組織力の強化に注力し、品質や生産性の向上を目指しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


企業価値を最大化するため、「顧客満足度の向上」「社員満足度の向上」「優秀な人材の育成と確保」の3つを重視しています。デジタル領域へのシフトや資格取得によるスキル高度化を進めるとともに、複線型の等級制度など新たな人事制度を通じて、社員の自発的な挑戦と成長を支援する環境を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 35.5歳 8.7年 7,000,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 9.8%
男性育児休業取得率 94.1%
男女賃金差異(全労働者) 85.2%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 86.2%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 70.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、退職率(7.3%)、中途採用数(58名)、平均昇給率(5.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) プロジェクトの採算管理と収益認識


システム構築にあたり、履行割合型の準委任契約を原則としリスクを極小化していますが、一部の請負契約では想定以上の見積工数や開発期間の超過が発生する可能性があります。納期遅延による損害賠償やシステム不具合に起因する追加コストが発生した場合、業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(2) デファクトスタンダード製品への依存


クラウドやデータ分析、ERPなどの各種ソリューションにおいて、MicrosoftやSalesforce、SAPなど特定のグローバルベンダーが提供するプラットフォームに依存しています。これらの製品の競争力や市場優位性が低下した場合、同社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) システム運用・保守サービスにおける責任


プラットフォーム運用サービス等の継続的な業務において、顧客の方針変更等により契約が終了した場合、固定費の負担が業績を圧迫する可能性があります。また、従業員等のオペレーションミスによって顧客に損害を与えた場合、その損害負担により経営成績に影響を与えるリスクが存在します。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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