TIS 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

TIS 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

TISは東京証券取引所プライム市場に上場し、オファリングサービスや金融IT、産業ITなどのITサービスを幅広く展開しています。直近の業績では、顧客のIT投資需要の拡大や高付加価値ビジネスの提供、不採算案件の減少などが寄与し、売上高および営業利益ともに前期比で増収増益を達成しています。


※本記事は、TIS株式会社の有価証券報告書(第18期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. TISってどんな会社?


TISは、幅広い業界に向けてITシステムの開発やクラウドサービス等の提供を行う企業です。

(1) 会社概要


同社は2008年4月にITホールディングスとして設立され、上場しました。その後、グループ内の再編を進め、2016年7月に事業持株会社体制へ移行するとともに社名をTISへと変更しました。2025年にはさらなる経営・事業基盤の構築を目指し、インテックの吸収合併を取締役会で決議しています。

現在の同社グループは、連結従業員数21,598名、単体従業員数6,066名の体制で事業を展開しています。筆頭株主はいちごトラスト・ピーティーイー・リミテッドであり、第2位は資産管理業務などを行う日本マスタートラスト信託銀行となっています。

氏名 持株比率
いちごトラスト・ピーティーイー・リミテッド(常任代理人 香港上海銀行東京支店) 12.64%
日本マスタートラスト信託銀行 12.53%
日本カストディ銀行 5.30%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性4名の計14名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役社長は岡本安史が務めています。社外取締役は3名です。

氏名 役職 主な経歴
岡本安史 代表取締役社長 東洋情報システム入社。ソラン常務執行役員などを経て、TIS常務執行役員、専務執行役員を歴任。2021年4月より現職。
桑野徹 取締役会長 東洋情報システム入社。同社専務取締役、代表取締役副社長を経て、TIS代表取締役会長兼社長を歴任。2021年4月より現職。
堀口信一 代表取締役副社長執行役員 東洋情報システム入社。TIS人事部長、企画部長などを経て、同社常務執行役員、専務執行役員を歴任。2026年4月より現職。
中村清貴 取締役専務執行役員 東洋情報システム入社。同社執行役員、TIS常務執行役員、専務執行役員、デジタルイノベーション事業本部長などを歴任。2025年6月より現職。
疋田秀三 取締役 インテック入社。同社常務執行役員、専務執行役員などを経て、代表取締役社長に就任。2023年6月より現職。
眞門聡明 取締役 インテック入社。同社財務部長、常務執行役員、専務執行役員などを経て、代表取締役副社長執行役員を歴任。2025年6月より現職。


社外取締役は、水越尚子(株式会社polisee取締役)、須永順子(元クアルコムジャパン合同会社代表社長)、古澤満宏(株式会社三井住友銀行国際金融研究所理事長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「オファリングサービス」「BPM」「金融IT」「産業IT」「広域ITソリューション」および「その他」事業を展開しています。

(1) オファリングサービス


同社グループに蓄積したベストプラクティスに基づくサービスを自社投資により構築し、知識集約型ITサービスを提供しています。
多様なキャッシュレスニーズなどに対応するサービスの提供対価として収益を得ており、運営は主にTISのほか、TISシステムサービスや日本ICSなどが担当しています。

(2) BPM


ビジネスプロセスに関する課題解決に向けて、IT技術、業務ノウハウ、人材等による高度化・効率化・アウトソーシングを実現・提供しています。
顧客からのアウトソーシング業務の受託等によって収益を得ており、事業の運営は主にアグレックスが担当しています。

(3) 金融IT


金融業界に特化した専門的なビジネス・業務ノウハウをベースとして、顧客の事業戦略やIT戦略を共に検討・推進し、事業推進を支援しています。
金融機関に対するシステム開発やモダナイゼーション関連ビジネスなどの提供対価として収益を得ており、運営は主にTISが担当しています。

(4) 産業IT


金融以外の産業各分野に特化した専門的なビジネス・業務ノウハウをベースとして、事業戦略やIT戦略を共に検討・推進し、事業推進を支援しています。
製造業や流通業などの幅広い業種の顧客に対するシステム開発等の対価として収益を得ており、運営は主にTIS、クオリカ、AJSなどが担当しています。

(5) 広域ITソリューション


ITのプロフェッショナルサービスを地域や顧客サイトを含み広範に提供し、そのノウハウをソリューションとして蓄積・展開して課題解決を支援しています。
医療やインフラなど幅広い業種の顧客に対するITソリューションの提供対価として収益を得ており、運営は主にインテックやTISソリューションリンクが担当しています。

(6) その他


各種ITサービスを提供する上での付随的な事業等で構成されています。
各種サービスの提供対価として収益を得ており、運営はTISビジネスサービスやソランピュアなどが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、IT投資需要の拡大を背景に売上高は右肩上がりで成長を続けており、経常利益も連続して増益となっています。経常利益率は11%台から12%台後半へと上昇傾向にあり、安定した収益基盤を確立しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 4,825億円 5,084億円 5,490億円 5,717億円 5,965億円
経常利益 557億円 632億円 686億円 705億円 765億円
利益率(%) 11.5% 12.4% 12.5% 12.3% 12.8%
当期利益(親会社所有者帰属) 336億円 403億円 442億円 470億円 441億円

(2) 損益計算書


売上高の成長に伴い、売上総利益および営業利益ともに増加しています。人材への投資など成長投資を積極的に実行する一方で、高付加価値ビジネスの提供や生産性向上施策の推進などにより、営業利益率は上昇しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 5,717億円 5,965億円
売上総利益 1,602億円 1,683億円
売上総利益率(%) 28.0% 28.2%
営業利益 690億円 762億円
営業利益率(%) 12.1% 12.8%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が357億円(構成比39%)、賞与引当金繰入額が37億円(同4%)を占めています。

(3) セグメント収益


決済分野や基盤系などのIT投資需要の拡大によりオファリングサービスが成長したほか、幅広い業種でのIT投資が全体を牽引し、金融ITを除くすべての報告セグメントで増収となっています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
オファリングサービス 1,317億円 1,446億円
BPM 405億円 428億円
金融IT 989億円 969億円
産業IT 1,276億円 1,328億円
広域ITソリューション 1,704億円 1,770億円
その他 25億円 24億円
連結(合計) 5,717億円 5,965億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFと財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状態と言えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 637億円 814億円
投資CF -177億円 -309億円
財務CF -278億円 -784億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も58.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


グループ基本理念「OUR PHILOSOPHY」を策定し、事業活動を通じた社会課題の解決と社会要請に対応した経営高度化を通じて、持続可能な社会への貢献と持続的な企業価値向上の実現を目指しています。「社会に、多彩に、グローバルに」をテーマに、先進的なグローバルITグループとなることを使命としています。

(2) 企業文化


多様な人材が各々の「人間らしさ」を発揮し、意思と意見を表すことを大切にしています。お互いを尊重し刺激し合いながら、柔軟で絶え間ない変化やこれまでにない価値を生み出し続けることを目指し、ダイバーシティ&インクルージョンを推進する文化を形成しています。

(3) 経営計画・目標


中期経営計画(2024-2026)「Frontiers 2026」において、社会への貢献を測る客観的な指標として以下の数値を目標に掲げています。
・売上高:6,200億円
・営業利益:810億円
・ROE:17.5%
・一人当たり営業利益:3.7百万円

(4) 成長戦略と重点施策


「フロンティア開拓」を基本方針に、未来志向で市場開拓と事業領域の拡大を起点としたバリューチェーン全般の質的向上に取り組んでいます。次期中期経営計画に向けては、AI駆動開発による収益の質的転換や、業界ごとの業務に特化したエージェント型AI(Vertical AI)によるストック型収益の拡大などを重点戦略として推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を企業価値向上を支える最も重要な経営資本と位置付け、事業成長と社会課題解決の両立を目指しています。社員のエンゲージメントを高めるため、「働く意義」「働く環境」「報酬」の3つの軸で先行投資を進め、コンサルタントやITアーキテクトなどの先鋭人材の育成と獲得に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.7歳 14.4年 8,289,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 15.2%
男性育児休業取得率 77.1%
男女賃金差異(全労働者) 81.1%
男女賃金差異(正規雇用) 81.4%
男女賃金差異(パート・有期) 75.8%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、働きがい満足度(59.0%)、アブセンティズム(1.0%)、年間一人当たり学習研究日数(12.8日)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人材の確保・育成に関するリスク


AI等の技術革新や労働人口減少が進む中、高度な技術者やAI時代に対応できる人材の不足、新たなスキル獲得の遅延が発生した場合、事業の成長や競争力に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、同社は人的資本への投資強化や報酬のベースアップ、リスキリングなどの育成施策を進めています。

(2) システム開発におけるプロジェクト管理のリスク


システム開発が高度化・複雑化・短納期化する中、計画通りの品質を確保できない場合や納期に遅れた場合、追加対応に伴う費用の増加や顧客からの損害賠償請求等により、業績に影響が生じる可能性があります。これに対し、同社は独自の品質マネジメントシステムに基づき、専任組織による提案審査やレビューを徹底しています。

(3) 情報セキュリティに関するリスク


システム開発や運用において、顧客が有する個人情報や機密情報を取り扱うため、情報の漏洩や改竄が発生した場合、顧客からの損害賠償請求や信用の失墜を招く恐れがあります。これに対し、同社はグループ情報セキュリティ方針に基づく適切な管理や、社員への教育・研修を通じた意識向上に取り組んでいます。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。