※本記事は、TIS株式会社 の有価証券報告書(第17期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. TISってどんな会社?
ITホールディングスを前身とし、金融・産業・公共分野のシステム構築やクラウドサービスなどを展開する総合ITグループです。
■(1) 会社概要
2008年、TISとインテックホールディングスの経営統合によりITホールディングスが設立され、東証一部に上場しました。2011年に事業会社3社が合併し新生TISが発足。2016年には持株会社がTISを吸収合併し、現商号へ変更して事業持株会社体制へ移行しました。2024年には長期経営方針を策定しています。
グループ全体の従業員数は連結21,765名、単体5,970名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は常任代理人を通じた海外法人いちごトラスト・ピーティーイー・リミテッドです。第3位にも資産管理銀行が名を連ねており、機関投資家や信託口が上位を占めています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行 | 15.96% |
| いちごトラスト・ピーティーイー・リミテッド | 9.90% |
| 日本カストディ銀行 | 6.09% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性4名の計14名で構成され、女性役員比率は28.6%です。代表取締役社長は岡本安史氏が務めています。取締役会における社外取締役比率は42.9%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 桑野 徹 | 取締役会長 | 1976年東洋情報システム入社。同社社長を経て、2016年TIS代表取締役会長兼社長。2021年4月より現職。 |
| 岡本 安史 | 代表取締役社長 | 1985年東洋情報システム入社。TIS専務執行役員産業事業本部長、サービス事業統括本部長などを経て、2021年4月より現職。 |
| 柳井 城作 | 代表取締役副社長執行役員 | 1987年日本長期信用銀行入行。TIS企画本部長、インダストリー事業統括本部長などを歴任。2025年4月より特命担当およびアグレックス代表取締役社長。 |
| 堀口 信一 | 代表取締役副社長執行役員 | 1987年東洋情報システム入社。金融事業本部長、IT基盤技術事業本部長などを経て、2024年4月より企画本部・人事本部等を管掌。 |
| 北岡 隆之 | 取 締 役 | 1984年インテック入社。同社代表取締役社長を経て、2018年6月よりTIS取締役。2024年4月よりインテック取締役会長。 |
| 疋田 秀三 | 取 締 役 | 1988年インテック入社。同社常務執行役員などを経て、2023年6月よりTIS取締役。2024年4月よりインテック代表取締役社長。 |
社外取締役は、土屋文男(元ジャルカード社長)、水越尚子(弁護士)、須永順子(元クアルコムジャパン社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「オファリングサービス」「BPM」「金融IT」「産業IT」「広域ITソリューション」および「その他」事業を展開しています。
■オファリングサービス
グループに蓄積したベストプラクティスに基づく知識集約型ITサービスを提供しています。決済関連やデジタルマーケティングなどの分野で、自社投資により構築したサービスを展開しています。
収益は、顧客企業からのサービス利用料や導入対価などから得ています。運営は主に同社およびTISシステムサービス、日本ICSなどが行っています。
■BPM
ビジネスプロセスに関する課題解決に向けて、IT技術や業務ノウハウ、人材を活用し、業務の高度化・効率化・アウトソーシングを提供しています。
収益は、顧客企業からの業務受託料などから得ています。運営は主にアグレックスが行っています。
■金融IT
金融業界に特化したビジネス・業務ノウハウをベースに、事業・IT戦略の検討・推進を支援し、システム開発やソリューション提供を行っています。
収益は、金融機関などの顧客からのシステム開発費やサービス対価から得ています。運営は主に同社が中心となって行っています。
■産業IT
金融以外の産業各分野(製造、流通、サービス、公共など)に特化したビジネス・業務ノウハウをベースに、事業・IT戦略の検討・推進を支援しています。
収益は、各産業分野の顧客企業からのシステム開発費やソリューション提供対価から得ています。運営は主に同社およびクオリカ、AJSなどが行っています。
■広域ITソリューション
地域や顧客サイトを含む広範なITプロフェッショナルサービスを提供し、ノウハウをソリューションとして蓄積・展開して課題解決を支援しています。
収益は、顧客企業からのシステム開発費、運用保守費、機器販売代金などから得ています。運営は主にインテックおよびTISソリューションリンクなどが行っています。
■その他
各種ITサービスを提供する上での付随的な事業等で構成されています。
収益は、グループ内外へのサービス提供対価から得ています。運営は主にTISビジネスサービスなどが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあります。経常利益も順調に伸長しており、利益率も12%台で安定的に推移しています。当期利益についても増加基調を維持しており、着実な成長を遂げています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 4,484億円 | 4,825億円 | 5,084億円 | 5,490億円 | 5,717億円 |
| 経常利益 | 393億円 | 557億円 | 632億円 | 686億円 | 705億円 |
| 利益率(%) | 8.8% | 11.5% | 12.4% | 12.5% | 12.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 277億円 | 395億円 | 555億円 | 489億円 | 500億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、それに伴い売上総利益も増加しました。営業利益についても増益となり、営業利益率は若干改善しています。全体として収益性は維持・向上されており、堅調な業績推移を示しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 5,490億円 | 5,717億円 |
| 売上総利益 | 1,516億円 | 1,602億円 |
| 売上総利益率(%) | 27.6% | 28.0% |
| 営業利益 | 646億円 | 690億円 |
| 営業利益率(%) | 11.8% | 12.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が355億円(構成比39%)、賞与引当金繰入額が37億円(同4%)を占めています。
■(3) セグメント収益
オファリングサービスはIT投資拡大や海外事業の寄与により大幅な増収増益となりました。BPMは増収増益、産業ITと広域ITソリューションも堅調に推移しました。一方、金融ITは大型案件のピークアウトにより減収減益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| オファリングサービス | 1,308億円 | 1,455億円 | 77億円 | 99億円 | 6.8% |
| BPM | 420億円 | 426億円 | 46億円 | 53億円 | 12.5% |
| 金融IT | 1,063億円 | 1,003億円 | 152億円 | 123億円 | 12.3% |
| 産業IT | 1,219億円 | 1,281億円 | 183億円 | 193億円 | 15.1% |
| 広域ITソリューション | 1,724億円 | 1,774億円 | 185億円 | 216億円 | 12.2% |
| その他 | 96億円 | 101億円 | 8億円 | 9億円 | 8.7% |
| 調整額 | - | - | △4億円 | △3億円 | - |
| 連結(合計) | 5,490億円 | 5,717億円 | 646億円 | 690億円 | 12.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動で得た資金の範囲内で投資活動と財務活動(借入返済や配当等)を行っており、本業の収益力が十分に高く、財務基盤が安定している「健全型」と言えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 626億円 | 637億円 |
| 投資CF | △328億円 | △177億円 |
| 財務CF | △219億円 | △278億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.5%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、グループ基本理念「OUR PHILOSOPHY」を策定し、グループの経営、企業活動、構成員において大切にする考え方やあり方を明確化しています。これを軸としたサステナビリティ経営を遂行し、持続可能な社会への貢献と持続的な企業価値向上の実現を目指しています。
■(2) 企業文化
「社会に、多彩に、グローバルに」をテーマとする「グループビジョン2032」を掲げ、社会性と革新性を併せ持つ先進的なグローバルITグループとなることを目指しています。革新的な技術の積極採用や異業種能力を取り込みながら事業の多彩化とグローバル化を進め、ビジネスの革新と市場創造を実現する方針です。
■(3) 経営計画・目標
2024年4月からの中期経営計画「Frontiers 2026」では、「フロンティア開拓」を基本方針としています。社会への貢献を測る客観的な指標として、以下の数値を掲げています。
* 売上高6,200億円
* 営業利益(営業利益率)810億円(13.1%)
* EPS年平均成長率10%超
* ROIC/ROE 13%超/16%超
* 1人あたり営業利益3.5百万円超
■(4) 成長戦略と重点施策
「Frontiers 2026」では、未来志向で市場開拓と事業領域の拡大を起点としたバリューチェーン全般の質的向上に取り組みます。市場戦略としてセグメントごとの特性を踏まえたサービス展開による事業領域拡大を図るとともに、グローバル戦略ではASEANでのビジネス拡大を目指します。また、生成AIをはじめとした技術の早期適応を図るテクノロジー戦略や、コンサルタント等の先鋭人材を拡充する人材戦略を推進します。
* 売上高1,000億円(グローバル戦略目標)
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を最重要の経営資本と位置づけ、「働く意義」「働く環境」「報酬」の3軸でエンゲージメントを高める投資を推進しています。中期経営計画では「課題解決力」「洞察力」「統合力」の強化をテーマに、コンサルタント、高度営業人材、ITアーキテクトの拡充に重点を置き、育成と獲得に向けた仕組みづくりを進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.6歳 | 14.5年 | 8,067,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 14.3% |
| 男性育児休業取得率 | 83.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 81.3% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 81.4% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 59.6% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、働きがい満足度(56%)、コンサルタント数(545人)、ITアーキテクト(270名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 人材の確保・育成について
人材は最も重要な経営資源であり、事業伸長は優秀な人材の確保・育成に大きく影響されます。人材の確保・育成が想定通りに進まない場合、事業及び経営成績等に影響が生じる可能性があります。これに対し、多様な人材が活躍できる風土や人事制度の整備、人的資本投資の強化、処遇改善、研修制度の充実などにより、人材の確保・育成と流出防止に努めています。
■(2) 市場・景気の変化について
社会が必要とする技術やサービスの変化に対応できず、技術・ノウハウが陳腐化したり、想定を超える価格競争に巻き込まれた場合、競争優位性を失い業績に影響が生じる可能性があります。これに対し、継続的な環境分析による市場ニーズの把握、サービスの高付加価値化、コア技術の研究開発、生産性革新などを通じて競争力の維持・向上を図っています。
■(3) 投資について
事業伸長や技術獲得を目的とした出資・M&A、データセンター等の大型IT設備、ソフトウェアへの投資を行っています。事業環境の変化等により計画した成果や資金回収が得られない場合、資産が陳腐化した場合には、業績に影響が生じる可能性があります。投資案件については、取締役会等で十分な検討を行い、投資後もモニタリングを実施してリスク管理を行っています。



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