コーエーテクモホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

コーエーテクモホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する、「信長の野望」や「無双」シリーズなどで知られるゲームソフト開発・販売の大手企業です。エンタテインメント事業を中核とし、アミューズメントや不動産事業も展開しています。直近の決算では、大型タイトルの開発投資が先行しましたが、金融収支等の改善により減収増益となりました。


※本記事は、株式会社コーエーテクモホールディングス の有価証券報告書(第16期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. コーエーテクモホールディングスってどんな会社?


ゲームソフト開発の老舗で、「信長の野望」や「三國志」などの歴史シミュレーションゲームに強みを持つ企業です。

(1) 会社概要


1978年に株式会社光栄として設立され、染料販売からパソコンソフト開発へ転換しました。1994年に東証二部へ上場し、2000年に一部指定となりました。2009年にテクモ株式会社と経営統合し、共同持株会社として同社が設立されました。2010年のグループ再編により、株式会社コーエーテクモゲームス等が事業の中核を担う体制となり、2022年には東証プライム市場へ移行しました。

同グループの従業員数は連結で2,684名、単体では113名です。筆頭株主は創業家および役員の資産管理会社である株式会社光優ホールディングスで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。安定した株主構成のもと、長期的な视点での経営が行われています。

氏名 持株比率
光優ホールディングス 56.74%
JP MORGAN CHASE BANK 380815 9.90%
環境科学 7.15%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性5名の計15名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長執行役員CEOは鯉沼久史氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
鯉沼久史 代表取締役社長執行役員CEO 1994年株式会社光栄入社。開発部門を経て執行役員、常務、専務を歴任。コーエーテクモゲームス社長などを経て、2025年6月より現職。
襟川陽一 代表取締役会長 兼取締役会議長 1978年株式会社光栄設立、社長就任。「シブサワ・コウ」として数々のヒット作を手掛ける。2025年6月より現職。
襟川恵子 取締役名誉会長 1978年株式会社光栄専務。社長、会長を歴任し、グループの成長を牽引。ソフトバンクグループ社外取締役なども務める。2025年6月より現職。
襟川芽衣 常務取締役CSuO 2010年コーエーテクモゲームス監査役。取締役などを経て、2025年4月より現職。光優ホールディングス社長を兼務。
柿原康晴 取締役顧問 2001年テクモ株式会社監査役。同社社長、会長などを経て、2013年6月より現職。


社外取締役は、手嶋雅夫(ティー・アンド・ティー社長)、小林宏(元ドワンゴ社長)、佐藤辰男(KADOKAWA相談役)、小笠原倫明(元総務事務次官)、林文子(元横浜市長)、上沼紫野(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「エンタテインメント事業」、「アミューズメント事業」、「不動産事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) エンタテインメント事業


家庭用ゲーム機やPC向けのパッケージゲーム、およびスマートフォン向けのオンライン・モバイルゲームの開発・販売を行っています。「信長の野望」「三國志」「真・三國無双」「アトリエ」シリーズなどの有力IPを保有し、グローバルに展開しています。

主な収益源は、ユーザーへのゲームソフト販売や課金収入、他社へのライセンス許諾によるロイヤリティ収入です。運営は主に株式会社コーエーテクモゲームス、株式会社コーエーテクモネット、および海外の販売子会社が行っています。

(2) アミューズメント事業


スロット・パチンコ遊技機向けの液晶ソフト受託開発や、ゲームセンター等のアミューズメント施設の企画・運営・管理を行っています。アミューズメント施設では「テクモピア」などの店舗を展開しています。

収益源は、遊技機メーカーからの開発受託費やロイヤリティ収入、およびアミューズメント施設の利用者からのプレイ料金です。運営は主に株式会社コーエーテクモウェーブが行っています。

(3) 不動産事業


同社グループが保有する賃貸用不動産の運用・管理を行っています。これにはオフィスビルやライブハウス型ホール「KT Zepp Yokohama」などが含まれ、安定的な収益基盤としての役割を果たしています。

収益源は、テナントからの賃貸料収入です。運営は主に株式会社コーエーテクモゲームスや株式会社コーエーテクモリブが行っています。

(4) その他事業


上記セグメントに含まれない事業として、ベンチャーキャピタル事業や有価証券の運用などを行っています。

収益源は、投資先からの配当やキャピタルゲインなどです。運営は株式会社コーエーテクモキャピタルや株式会社コーエーテクモコーポレートファイナンスなどが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は堅調に推移しており、800億円台を維持しています。利益面では、ゲーム事業の好調に加え、有価証券運用などの営業外収支が寄与し、高い利益水準を確保しています。直近では売上高は微減となりましたが、経常利益および当期純利益は過去最高水準となっています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 604億円 728億円 784億円 846億円 832億円
経常利益 393億円 487億円 399億円 457億円 500億円
利益率(%) 65.1% 66.9% 50.9% 54.1% 60.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 167億円 502億円 183億円 189億円 210億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高はわずかに減少しましたが、販売費及び一般管理費の抑制により営業利益は増加しました。営業利益率は30%台後半という高い水準を維持しており、本業の収益力の高さがうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 846億円 832億円
売上総利益 553億円 524億円
売上総利益率(%) 65.4% 63.0%
営業利益 285億円 321億円
営業利益率(%) 33.7% 38.6%


販売費及び一般管理費のうち、販売手数料が74億円(構成比36%)、広告宣伝費が31億円(同15%)を占めています。

(3) セグメント収益


エンタテインメント事業が売上・利益の大半を占めています。アミューズメント事業や不動産事業も黒字を確保しており、安定収益に寄与しています。その他事業は変動がありますが、全体への影響は限定的です。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
エンタテインメント事業 794億円 777億円 283億円 315億円 40.5%
アミューズメント事業 39億円 42億円 7億円 5億円 12.0%
不動産事業 12億円 12億円 2億円 3億円 24.7%
その他 0.8億円 0.3億円 -6億円 -2億円 -
調整額 -4億円 -6億円 - - -
連結(合計) 846億円 832億円 285億円 321億円 38.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 366億円 344億円
投資CF -249億円 410億円
財務CF -155億円 -632億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.7%で市場平均を大きく上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も89.9%で市場平均を大きく上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「創造と貢献」を精神とし、新しい価値を創造して社会に貢献することを存在意義としています。また、「Level up your happiness」をスローガンに掲げ、独自のエンタテインメントコンテンツを通じて世界中の人々の心を豊かにし、「世界No.1のデジタルエンタテインメントカンパニー」となることを目指しています。

(2) 企業文化


「クオリティ&サティスファクション」を掲げ、高い品質で顧客に大きな満足を提供することを重視しています。また、「クリエイティブ&ビジネス」の両立を掲げ、優れたクリエイターであると同時に、収益性を意識したビジネスパーソンであることを求めています。「品質・納期・予算」の遵守を成長の源泉と位置づけています。

(3) 経営計画・目標


第4次中期経営計画(2026年3月期~2028年3月期)において、「成長のための基盤づくり」をテーマとしています。重点施策の推進により、持続的な成長と企業価値の向上を目指しています。

* 3カ年累計営業利益:1,000億円以上
* 単年度営業利益:400億円達成への再挑戦
* 売上高営業利益率:30%以上

(4) 成長戦略と重点施策


「経営基盤強化」「事業戦略」「キャッシュアロケーション」を柱としています。事業面では、新規IP・ジャンルへの挑戦による成長と、既存IPの活用による安定的成長の両立を図ります。特にグローバル市場での展開を強化し、パッケージゲームとデジタル販売の融合や、スマートフォン向けタイトルの拡充を進めます。また、開発体制の質・量の向上や、自社エンジン「KATANA ENGINE」の強化による技術力向上にも注力します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「良きクリエイターは良きビジネスパーソンであれ」の方針のもと、創造性と収益性を両立できる人材の育成に注力しています。新卒採用を中心に多様な人材を確保し、独自の研修制度やOJTを通じてプロフェッショナルへと育成します。また、働きやすい環境整備や福利厚生の充実に加え、10年連続のベースアップ実施など、社員の意欲向上に向けた施策を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 38.2歳 9.4年 7,939,258円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 21.1%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 58.1%
男女賃金差異(正規雇用) 85.1%
男女賃金差異(非正規雇用) 61.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒採用人数(199人)、離職率(4.7%)、育児休業からの復職率(100.0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 人材確保・育成について


ゲーム開発は知識集約型産業であり、優秀な人材の確保が競争力の源泉です。少子化や労働市場の需給逼迫により、採用競争は激化しています。同社は新卒採用を重視し、人的資本経営を推進していますが、十分な人材を確保・育成できない場合、長期的な成長や競争力に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 知的財産権について


同社は多くの有力IPを保有しており、これらを保護しつつ、他社の権利を侵害しないよう努めています。しかし、第三者との間で知的財産権を巡るトラブルが発生した場合、損害賠償請求や差止請求などにより、業績や財政状態に悪影響を与える可能性があります。また、生成AIに関連する権利リスクにも留意が必要です。

(3) 個人情報等のデータセキュリティについて


事業活動において多くの個人情報や機密情報を扱っており、サイバー攻撃やシステム障害のリスクに晒されています。同社はセキュリティ対策を強化していますが、万が一、情報の漏洩やシステムの停止が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償などにより、業績に重大な影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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