コーエーテクモホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

コーエーテクモホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

コーエーテクモホールディングスは東京証券取引所プライム市場に上場し、デジタルエンタテインメントコンテンツの開発やアミューズメント施設の運営、不動産運用などを手がけています。直近の業績トレンドでは、大型タイトルを含む新作の貢献により、売上高と利益がいずれも前年を上回り、増収増益を達成しています。


※本記事は、コーエーテクモホールディングス の有価証券報告書(第17期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. コーエーテクモホールディングスってどんな会社?


デジタルエンタテインメントを中心に多彩な事業を展開する同社の歴史と現在の体制について解説します。

(1) 会社概要


光栄(1978年設立)とテクモ(1967年設立)が2009年に経営統合し、同社を設立しました。2010年にはグループ組織再編により、コーエーテクモゲームスなどが事業の中核を担う体制へと移行しました。その後、2011年にガストを完全子会社化し、現在に至ります。

同社グループの従業員数は連結で2,835名、単体で121名です。筆頭株主は光優ホールディングスで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は環境科学となっています。

氏名 持株比率
光優ホールディングス 51.83%
JP MORGAN CHASE BANK 380752(常任代理人 みずほ銀行決済営業部) 9.36%
環境科学 6.48%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性5名の計15名で構成され、女性役員比率は33.3%です。代表取締役社長執行役員CEOは鯉沼久史氏です。取締役11名のうち6名が社外取締役であり、その比率は54.5%です。

氏名 役職 主な経歴
鯉沼久史 代表取締役社長執行役員CEO 1994年に光栄(現コーエーテクモゲームス)入社。同社専務取締役、代表取締役社長COOなどを経て、2025年6月より現職。
襟川陽一 代表取締役会長 兼取締役会議長 1978年に光栄(現コーエーテクモゲームス)を設立し代表取締役社長に就任。同社代表取締役会長CEOなどを経て、2025年6月より現職。
襟川芽衣 常務取締役CSuO コーエーテクモゲームス監査役、取締役などを経て、2015年に同社取締役に就任。2025年4月より現職。
襟川恵子 取締役名誉会長 1978年に光栄専務取締役に就任。同社代表取締役社長などを経て、2009年に同社取締役に就任。2025年6月より現職。
柿原康晴 取締役顧問 テクモ監査役、取締役などを経て、2009年に同社代表取締役会長に就任。2013年6月より現職。


社外取締役は、手嶋雅夫(ティー・アンド・ティー代表取締役社長CEO)、小林宏(元ドワンゴ代表取締役社長・指名報酬委員長)、佐藤辰男(元カドカワ代表取締役社長)、小笠原倫明(元総務事務次官)、上沼紫野(弁護士)、小山内いづ美(元横浜市立大学理事長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「エンタテインメント事業」「アミューズメント事業」「不動産事業」および「その他事業」を展開しています。

エンタテインメント事業


パッケージゲームやスマートフォン向けオンライン・モバイルゲームなど、エンタテインメントコンテンツの開発および販売を行っています。また、自社が保有する知的財産のライセンス供与も展開し、世界中のユーザーに多彩なコンテンツを提供しています。

収益源は、製品の販売代金、ゲーム内アイテムの課金収入、他社へのライセンス供与に伴うロイヤリティ収入などです。運営は主にコーエーテクモゲームス、コーエーテクモネット、および海外のグループ各社が行っています。

アミューズメント事業


スロットやパチンコ向けの液晶ソフトの受託開発と、アミューズメント施設(ゲームセンター等)の企画開発、運営、管理を行っています。

収益源は、液晶ソフトの開発受託費用および関連するロイヤリティ収入、アミューズメント施設でのユーザーからのプレイ料金です。運営は主にコーエーテクモウェーブが行っています。

不動産事業


ライブハウス型ホールの運用や、賃貸用不動産の管理・運営を行っています。

収益源は、イベント主催者からのホール施設利用に伴う賃料収入や、観客に対する飲食物の販売、ロッカー等の付帯設備提供による収入などです。運営は主にコーエーテクモゲームスが行っています。

その他事業


ベンチャーキャピタル事業としてファンドの管理などを行っているほか、有価証券の運用を通じたグループファイナンス機能を担っています。

収益源は、有価証券の運用収益やファンドの管理費用などです。運営は主にコーエーテクモコーポレートファイナンスやコーエーテクモキャピタルが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は安定的に成長を続けており、増収傾向が鮮明です。経常利益も高い水準を維持し、利益率は継続して50%を超えるなど、強固な収益力を誇っています。親会社株主に帰属する当期純利益も各期で安定して計上されています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 728億円 784億円 846億円 832億円 884億円
経常利益 487億円 399億円 457億円 500億円 570億円
利益率(%) 66.9% 50.9% 54.1% 60.1% 64.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 502億円 183億円 189億円 210億円 175億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しています。営業利益率も前期の38.6%から当期は42.0%へと上昇しており、効率的なコストコントロールと本業での高い収益性が確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 832億円 884億円
売上総利益 524億円 571億円
売上総利益率(%) 63.0% 64.6%
営業利益 321億円 372億円
営業利益率(%) 38.6% 42.0%


販売費及び一般管理費のうち、販売手数料が61億円(構成比31%)、広告宣伝費が32億円(同16%)、従業員給料及び手当が25億円(同12%)を占めています。

(3) セグメント収益


セグメント別の状況を見ると、主力であるエンタテインメント事業が売上高の大半を牽引しており、新作タイトルの貢献などにより堅調な成長を示しています。アミューズメント事業や不動産事業も着実に売上を伸ばしています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期)
エンタテインメント事業 777億円 822億円
アミューズメント事業 42億円 48億円
不動産事業 12億円 13億円
その他事業 0.3億円 0.8億円
連結(合計) 832億円 884億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがプラスとなっており、営業で利益を出し、借入等によって積極投資を行う「積極型」の状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 344億円 330億円
投資CF 410億円 -121億円
財務CF -632億円 129億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は18.6%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は86.7%であり、いずれも市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「創造と貢献 新しい価値を創造して、社会に貢献する」という精神と、「Level up your happiness 新しい面白さで もっと幸せに」というコーポレートスローガンの2つを存在意義としています。また、将来のありたい姿として「世界No.1のデジタルエンタテインメントカンパニー」というビジョンを掲げています。

(2) 企業文化


同社は、新しい価値をつくる「クリエイティブ&ビジネス」、お客様に大きな満足を提供する「クオリティ&サティスファクション」、そして成長を支える源としての「品質・納期・予算」という3つの価値観を重視しています。また、「最高のコンテンツの創発」など4つの経営基本方針を循環させ、持続的成長を目指す文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は成長性と収益性の実現による企業価値の向上を目指し、第4次中期経営計画を推進しています。また、長期ビジョンとして世界のデジタルエンタテインメント企業の中で営業利益額世界トップ10入りを目指しています。

* 売上高営業利益率:30%以上
* 3カ年累計の営業利益:1,000億円以上
* 単年度の営業利益:400億円達成に再挑戦

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、中長期でのグローバルな飛躍に向けた「成長のための基盤づくり」をテーマとしています。新規IPへのチャレンジによる成長と、既存IPの多方面展開による安定的な成長を両立し、確度の高い事業ポートフォリオを構築します。

* コンソール・PC分野、オンライン・モバイル分野への積極的な投資
* パイプラインの数と質、販売力、コスト効率の成長
* インド・東南アジア等の成長市場を視野に入れたグローバルマーケティング戦略の推進

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、「良きクリエイターは良きビジネスパーソンであれ」という考えの下、「クリエイティブ&ビジネス」を両立できる人材の育成を方針としています。「自立したプロフェッショナルなクリエイター」や「グローバルな視点でIPの価値を高める人材」を育成すべき人材像とし、多様な人材の確保、成長を実現する育成制度、安心して働ける環境の構築を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 38.8歳 9.8年 9,035,323円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 18.2%
男性育児休業取得率 110.3%
男女賃金差異(全労働者) 58.1%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 79.6%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 66.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、外国籍社員の比率(29.2%)、年次有給休暇取得率(79.4%)、離職率(4.3%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) コンテンツ表現における倫理的配慮


SNS等の普及による価値観の多様化が進む中、同社が提供するコンテンツに対して特定の地域や属性の消費者から予期せぬ反応が寄せられる可能性があります。同社は正確な事実認識に基づいた一貫性ある表現を行い配慮に努めていますが、事象が発生した場合、事業展開や社会的評価に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 新タイトル開発の長期化と販売遅延


ゲーム開発の高度化や複雑化により、開発期間が長期化し、開発費の高騰や市場ニーズとの乖離が生じるリスクがあります。同社は多様なタイトルのポートフォリオを構築し最適化に努めていますが、品質基準の達成に時間を要し製品の発売が遅延した場合、経営成績やキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

(3) 優秀な人材の確保と定着


ゲーム開発は知識集約型の事業であり、競争力の維持・向上には優秀な人材の確保が不可欠です。労働市場での採用競争が激化する中、同社は人的資本経営を推進し、多様な能力を持つ人材の採用やエンゲージメントの向上に取り組んでいますが、人材流動化に十分対応できなかった場合、長期的な業績に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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