駅探 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

駅探 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所グロース市場に上場する、乗換案内サービス「駅探」等の運営企業です。当期は有料会員数の減少や子会社譲渡の影響で減収となりましたが、広告収入の増加やコスト削減効果により、営業利益および経常利益は前期比で大幅な増益を達成しました。また、最終損益も黒字転換を果たしています。


※本記事は、株式会社駅探 の有価証券報告書(第23期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月30日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 駅探ってどんな会社?


乗換案内サービスを中核に、移動と地域生活を結びつけるプラットフォーム事業を展開する企業です。

(1) 会社概要


同社のルーツは、1997年に東芝内で開始された乗換案内サービス「駅前探険倶楽部」にあります。2003年に分社化して設立され、2011年に東証マザーズ(現グロース)へ上場しました。2021年にはBold Investmentと資本業務提携を結び筆頭株主が交代。その後、2023年にM&A事業を統括する駅探I&Iを設立するなど、事業ポートフォリオの多角化を進めています。

現在の従業員数は連結194名、単体75名です。筆頭株主は投資事業や経営管理を行うBold Investmentで、第2位は個人株主、第3位も個人株主となっています。

氏名 持株比率
Bold Investment 36.01%
渡辺 佳昭 3.45%
柿沼 佑一 2.32%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長は菊井 健大氏が務めています。社外取締役比率は30.0%です。

氏名 役職 主な経歴
菊井 健大 代表取締役社長 Bold Investment COOなどを経て、2025年6月より現職。
藤井 知明 取締役 あかつき証券投資調査部長、Bold Investmentなどを経て、2025年6月より現職。
島田 零三 取締役 東京コンポーネント代表取締役CEOなどを経て、2025年6月より現職。


社外取締役は、成清 紘介(KIC取締役)、宇賀神 崇(宇賀神国際法律事務所代表弁護士)、村田 晴香(三浦法律事務所パートナー)です。

2. 事業内容


同社グループは、「モビリティサポート事業」、「広告配信プラットフォーム事業」、「M&A・インキュベーション事業」を展開しています。

(1) モビリティサポート事業

乗換案内サービス「駅探ドットコム」や法人向けASPサービス、自治体向けMaaS関連サービスなどを提供しています。主な顧客は一般消費者、鉄道会社、携帯キャリア、地方自治体などです。

収益は、有料会員からの課金収入、法人顧客からのシステム利用料や開発費、広告枠の販売収入などが柱です。運営は主に駅探、および旅行ガイドブック制作等を行うラテラ・インターナショナルが担当しています。

(2) 広告配信プラットフォーム事業

「駅探ドットコム」の資産を活かした自社メディア広告やアフィリエイト広告、インターネット広告の代理販売などを展開しています。広告主や代理店が主な顧客となります。

収益は、広告掲載料や成果報酬型のアフィリエイト収入、マーケティングASPの販売収入などから得ています。運営は駅探のほか、プラウドエンジン、音生が行っています。

(3) M&A・インキュベーション事業

IT領域におけるシステム開発保守、SES(システムエンジニアリングサービス)、労働者派遣などを行っています。企業のDXニーズに応えるソリューションを提供しています。

収益は、システムの受託開発費や技術者派遣による対価などです。運営は、統括会社の駅探I&Iの傘下にある、グロースアンドコミュニケーションズ、サイバネット、アイティジェイが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は拡大傾向から一転して当期は減少しましたが、利益面では底打ちして回復傾向にあります。特に当期は経常利益が大きく改善し、当期純利益も黒字化しました。利益率は依然として低い水準ですが、収益性の改善が進んでいます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 19億円 29億円 32億円 40億円 35億円
経常利益 2.1億円 1.4億円 1.0億円 0.3億円 1.6億円
利益率(%) 10.6% 4.9% 3.3% 0.7% 4.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.8億円 1.5億円 1.2億円 -9.5億円 0.1億円

(2) 損益計算書


売上高は減少したものの、売上原価および販売費及び一般管理費の抑制により、営業利益率は大幅に改善しました。前期は低水準だった営業利益が、当期は明確な利益を確保できる水準まで回復しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 40億円 35億円
売上総利益 12億円 12億円
売上総利益率(%) 29.1% 33.0%
営業利益 0.2億円 1.2億円
営業利益率(%) 0.6% 3.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が4億円(構成比34%)、役員報酬が2億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


モビリティサポート事業は有料会員減により減収減益、広告配信プラットフォーム事業は子会社譲渡の影響で減収となりましたが赤字幅は縮小しました。M&A・インキュベーション事業は大型案件の影響で減収となったものの、コスト削減等により増益を達成しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
モビリティサポート事業 15億円 14億円 3億円 3億円 22.4%
広告配信プラットフォーム事業 15億円 11億円 -0.6億円 -0.1億円 -0.8%
M&A・インキュベーション事業 11億円 10億円 0.5億円 1億円 9.7%
連結(合計) 40億円 35億円 0.2億円 1億円 3.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFでプラスを維持しつつ、投資CFと財務CFはマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行いながら投資も手元資金で賄う「健全型」のキャッシュ・フロー状態と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 1.4億円 1.5億円
投資CF -1.6億円 -0.5億円
財務CF -0.8億円 -2.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.5%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は67.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「世の中にない新たなサービスを創り出し、社会の役に立つ」をビジョンとして掲げています。また、「From the Stations~駅から始めよう~」を事業コンセプトとし、駅やバス停などの「Stations」を起点に、人々の健康で活き活きした生活を支えるサービスの創出を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、高齢化や過疎化などの社会問題やライフスタイルの変化を捉え、地域の生活者ニーズとサービスを結びつけることを重視しています。グループ全体で「地域マーケティングプラットフォーム(RMP)」構想の実現を目指し、社会の役に立つ新たな収益の柱を創出することに行動の軸を置いています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、営業利益とEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)を重要な経営指標と位置づけています。中期経営計画に基づき、既存の事業資産を最大活用してRMP構想を実現することで、数値目標の達成を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


RMP構想の実現に向け、「RMPメディアの強化」「RMPソリューションの拡大」「M&A・アライアンス戦略」を推進しています。具体的には、地域コンテンツの拡充、インバウンド向けサービスの強化、MaaSパッケージの提供、SNSキャンペーンツールの活用などを進めています。また、M&Aや提携を通じて事業ポートフォリオを強化し、新たな収益源の創出と安定収益の確保を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


RMP構想の実現と中期経営計画達成のため、豊かな経験やスキルを持つ人材、および潜在能力の高い人材の採用に注力しています。また、社員のスキル向上を目指した育成施策や評価制度の改善を行うとともに、テレワーク環境の整備などを通じ、社員が能力を発揮しモチベーションを高められる環境づくりに取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.3歳 7.6年 6,241,897円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」等の規定による公表義務の対象ではないため、有報には本稿の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、リモートワーク実施率(65%)、育児休暇取得率(女性100%・男性0%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 乗換案内有料課金サービスのコモディティ化

乗換案内サービスの収益は有料課金に依存していますが、競合他社による無料サービス等の影響でコモディティ化が進み、収益環境が厳しくなっています。同社はビジネスモデルの転換を進めていますが、想定以上にコモディティ化が進行した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 発信情報の誤謬

提携先からのデータ加工やシステム連携において、データの誤りやロジックのミスが生じると、サービスの精度低下を招く恐れがあります。また、データ形式や外部システムの仕様変更に伴う改修費用が増加した場合、業績に悪影響を与える可能性があります。

(3) 人材の確保

RMP構想や持続的成長の実現には、技術者やマネジメント層など多様なプロフェッショナル人材が不可欠です。適切な人材の確保や育成が計画通りに進まない場合、中期経営計画の達成が遅れるなど、事業運営や業績に影響が出る可能性があります。

(4) M&Aや新事業への投資

成長戦略としてM&Aや新事業への投資を行っていますが、デューデリジェンスを実施してもなお、買収後に予期せぬ債務が判明したり、当初の収益計画が達成できないリスクがあります。これらが顕在化した場合、財政状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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