※本記事は、株式会社駅探の有価証券報告書(第24期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月29日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 駅探ってどんな会社?
乗換案内などの移動関連情報サービスを主力に展開するIT企業です。
■(1) 会社概要
同社は1997年に東芝の事業推進室内で「駅前探険倶楽部」として乗換案内サービスを開始したのが始まりです。2003年に分社化して設立され、2008年に現在の駅探に商号を変更しました。2011年に東証マザーズに上場し、近年は2023年に駅探I&Iを設立するなど、M&Aや新規事業領域の開拓を積極的に進めています。
同社グループは、連結で186名、単体で70名の従業員を擁しています。筆頭株主は資本業務提携を締結している事業会社のBold Investmentであり、第2位および第3位は個人株主となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| Bold Investment | 35.94% |
| 渡辺 佳昭 | 3.44% |
| 柿沼 佑一 | 2.53% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性6名、女性2名の計8名で構成され、女性役員比率は25.0%です。代表取締役社長は菊井健大が務めています。社外役員の比率を含めた体制を構築しています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 菊井 健大 | 代表取締役社長 | 富士通等を経て2021年にBold Investmentに入社。同社COO等を歴任し、2025年6月より現職。 |
| 藤井 知明 | 取締役 | SBI証券や高木証券等で企業調査部長等を歴任。2023年にBold Investmentに入社し、2025年6月より現職。 |
| 島田 零三 | 取締役 | 奥野製薬工業やジャパンライフ等を経て、東京コンポーネントにて代表取締役CEO等を務め、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、成清紘介(KIC取締役)、村田晴香(三浦法律事務所パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、モビリティサポート事業、広告配信プラットフォーム事業、M&A・インキュベーション事業を展開しています。
■モビリティサポート事業
乗換案内サービス「駅探ドットコム」の有料課金や広告枠の販売、他社ポータルサイトへのコンテンツ提供、地方自治体向けMaaS関連サービスなどを展開しています。一般消費者や鉄道会社、地方自治体などを顧客としています。
有料会員からの課金収入や企業からの広告掲載料が主な収益源です。運営は主に駅探およびラテラ・インターナショナルが行っています。
■広告配信プラットフォーム事業
インターネット広告の代理販売や、マーケティングASPの提供などを行っています。主に広告主となる企業を顧客としています。
広告トランザクションに応じた手数料やマーケティングツールの販売代金が主な収益源です。運営は主にプラウドエンジンおよび音生が行っています。
■M&A・インキュベーション事業
システム関連の開発保守やSES(システムエンジニアリングサービス)、労働者派遣などを展開しています。主にIT人材を必要とする企業を顧客としています。
派遣先企業からの派遣料金やシステムの受託開発料が主な収益源です。運営は主に駅探I&I、グロースアンドコミュニケーションズ、サイバネット、アイティジェイが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、売上高は一時40億円規模まで拡大しましたが、その後は減少傾向にあります。利益面でも、乗換案内の有料会員減少などの影響により低下傾向にあり、当期は各段階で赤字となるなど、収益性の回復が課題となっています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 28.9億円 | 32.1億円 | 40.4億円 | 35.0億円 | 29.9億円 |
| 経常利益 | 1.4億円 | 1.0億円 | 0.3億円 | 1.6億円 | -0.1億円 |
| 利益率(%) | 4.9% | 3.3% | 0.7% | 4.6% | -0.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1.5億円 | 1.2億円 | -9.5億円 | 0.1億円 | -4.2億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で減収となり、売上総利益も減少しました。営業利益については、固定費の削減に努めたものの減収の影響を補えず、赤字に転落しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 35.0億円 | 29.9億円 |
| 売上総利益 | 11.6億円 | 9.4億円 |
| 売上総利益率(%) | 33.0% | 31.3% |
| 営業利益 | 1.2億円 | -0.2億円 |
| 営業利益率(%) | 3.3% | -0.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が3.1億円(構成比33%)、役員報酬が1.2億円(同13%)、業務委託費が1.0億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のモビリティサポート事業は、有料会員の減少等により減収となりました。広告配信プラットフォーム事業は子会社譲渡の影響で大幅な減収です。M&A・インキュベーション事業も顧客の業務開始遅延等により減収となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| モビリティサポート事業 | 14.2億円 | 13.1億円 |
| 広告配信プラットフォーム事業 | 10.5億円 | 7.3億円 |
| M&A・インキュベーション事業 | 10.3億円 | 9.5億円 |
| 連結(合計) | 35.0億円 | 29.9億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は当期純損失により算出できませんが、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は65.2%でグロース市場平均を大きく上回っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1.5億円 | 0.2億円 |
| 投資CF | -0.5億円 | -0.5億円 |
| 財務CF | -2.2億円 | -1.4億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
公共交通機関をメインとした乗換案内や時刻情報、運行情報等をリアルタイムに提供する情報コンテンツサービスを核に、移動体験を価値に変え、「人と人、人と街」がつながり続ける「循環型の移動社会基盤」を創造することを目指しています。また、「移動に関する情報とデータを通じて、人の移動を支える企業」を事業コンセプトとしています。
■(2) 企業文化
持続的な成長を実現するためには、社員一人一人が、それぞれのバックグラウンドやライフステージの違いを越え、ワークライフバランスを充実し、能力を発揮することが重要であるという価値観を重視しています。日々蓄積される移動・行動データを社会課題解決へと還元することで、社会と共に成長を続けることを目指しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、営業利益、EBITDAを重要な経営指標と考えており、中期経営計画の数値達成に向け、事業アセットを最大限に活用した事業戦略を推進していく方針を掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
既存事業の基盤強化を図るとともに、新たな収益基盤の確立を目指しています。具体的には、インバウンド市場に向けた多言語対応メディアの立ち上げ、CGM型プラットフォームやポイントプログラムによる媒体価値向上を進めます。さらに、自社事業の延長線上にある業態を中心にM&Aを積極的に推進し、事業ポートフォリオを強化することで非連続的な成長を加速させる方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
豊かな経験と高いスキルを持つ人材や、潜在能力の高い人材の獲得に向けて採用活動を行うとともに、社員の役割に見合ったスキルの獲得のための育成施策の実施、評価制度の改善を通じ、社員の総合的な能力を高めていく方針を掲げています。また、持続的な成長を支える基盤としての人的資本強化をマテリアリティの一つとしています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 43.8歳 | 8.3年 | 6,437,813円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社および連結子会社は規定による公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性育児休暇取得率(100%)、男性育児休暇取得率(50%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 乗換案内サービスのコモディティ化
メガプレイヤーが無料で乗換案内関連情報を提供するなど、サービスのコモディティ化が急速に進んでおり、収益の多くを有料課金に依存する同社の業績に影響を及ぼすリスクがあります。
■(2) ソフトウェア・ハードウェアの高騰
円安や原材料価格の高騰、AIサービスによる需要増により、サービス維持のための調達価格が急騰しています。一方、サービスの値上げは困難な側面もあり、利益に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 人材の確保
事業運営には技術者をはじめとする専門的な人材が不可欠ですが、適切な人材が十分に確保・育成できない場合、中期経営計画の達成に遅れが生じ、事業運営や業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) M&Aや新事業への投資
事業拡大のためにM&Aや新事業投資を推進していますが、事前の詳細調査を実施しても、買収後に偶発債務が判明した場合や想定した収益計画を達成できない場合、業績や財務状況に影響を与えるリスクがあります。



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