ぐるなび 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ぐるなび 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所スタンダード市場に上場するぐるなびは、飲食店情報サイトを通じた販促支援やプロモーション、関連事業を展開しています。直近の業績は、売上高が前期比で増加し増収を達成したほか、経常利益も増加し増益となるなど、安定した成長を見せています。本記事では同社の実態を詳しく解説します。


※本記事は、ぐるなび の有価証券報告書(第37期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ぐるなびってどんな会社?


飲食店情報サイトを通じた販促支援や業務支援サービスを提供する同社の概要を紹介します。

(1) 会社概要


1989年に東京都千代田区で設立され、1996年に飲食店情報サイトの提供を開始しました。2000年にぐるなびへ商号を変更し、2005年に大阪証券取引所ヘラクレス市場へ上場しました。その後、2008年に東京証券取引所市場第一部への上場を果たし、近年は直営店舗の運営など事業領域を拡大しています。

現在の同社は、連結で777名、単体で745名の従業員を擁する体制で事業を展開しています。筆頭株主は資本業務提携関係にある事業会社の楽天グループで、第2位は創業者の滝久雄氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。

氏名 持株比率
楽天グループ 16.45%
滝 久雄 12.58%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 5.79%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性1名の計10名で構成され、女性役員比率は10.0%です。代表取締役社長は杉原章郎氏が務めており、社外取締役比率は70.0%です。

氏名 役職 主な経歴
杉原 章郎 代表取締役社長 1996年インターネットサービス会社起業。1997年エム・ディー・エム(現楽天グループ)共同創業者として参画し、楽天ブックス代表取締役社長などを歴任。楽天常務執行役員などを経て2019年より現職。
滝 久雄 取締役会長 1963年三菱金属(現三菱マテリアル)入社。1989年同社取締役、1999年代表取締役会長兼社長に就任。日本交通文化協会理事長やエヌケービー取締役会長などを歴任し、2019年より現職。
鈴木 清司 取締役監査等委員(常勤) 1981年パイオニア入社。1999年同社取締役、2011年取締役執行役員を経て、2017年常勤監査役に就任。2023年より現職。


社外取締役は、藤原裕久(東急取締役専務執行役員)、笠原和彦(楽天東急プランニング代表取締役社長)、安藤公二(CPAエクセレントパートナーズ取締役副社長)、松村亮(楽天グループ副社長執行役員)、佐藤英彦(元警察庁長官)、石田義雄(元東日本旅客鉄道代表取締役副社長)、南木みお(南木・北沢法律事務所パートナー弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「飲食店販促サービス」「プロモーション」「関連事業」などの事業を展開しています。

飲食店販促サービス


インターネット上で運営する飲食店情報サイトを通し、利用者に飲食店情報やネット予約サービスを提供しています。加盟飲食店に対しては、店舗ページのアクセス集計機能や多言語版への店舗情報掲載などの基本機能に加え、モバイルオーダーサービスなどの業務支援商品を提供しています。

これらの商品やサービスに対し、飲食店から基本加盟料、ネット予約手数料、商品利用料などを収益として得ています。同時に、各飲食店の経営課題に合わせた解決策の提案や導入支援などの人的なサポートも実施しており、運営は主に同社が行っています。

プロモーション


省庁や自治体などから受注した国内の食材や食文化などに関するプロモーションや、地域活性化支援のサービスを提供しています。また、食品や飲料メーカーなどに対する同社の飲食店および消費者ネットワークを活用したプロモーションサービスの提供なども行っています。

これらのプロモーションサービスを通じて、顧客である省庁や自治体、食品メーカーなどからサービス提供に対する対価を受け取ることで収益を上げています。各種プロモーションの企画立案から実施までを一貫して手掛けており、運営は主に同社が行っています。

関連事業


厨房機器販売店や訪日外国人向け観光情報サービスのほか、ミールキットなどのECサイトの運営を行っています。また、商業施設の飲食フロアをプロデュースする店舗開発事業や、ユーザー向け有料会員制サービス、海外に対する日本食のプロモーションなど幅広い事業を展開しています。

店舗やサイトの運営を通じた商品売上のほか、情報発信者として参加する業者や出店事業者、商業施設の運営者、ユーザー会員などから加盟料やコンサルティング料、販売手数料などを収益として得ています。運営は同社や子会社のぐるなび上海社、Gダイニングなどが担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は一時的な落ち込みを経て回復基調にあり、直近では増加傾向が続いています。経常利益と当期利益についても、過去の赤字から黒字へと転換を果たしており、利益率も改善が進んでいます。徹底したコストコントロールと収益体質への転換が業績の回復に寄与しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 129億円 123億円 130億円 135億円 141億円
経常利益 -47億円 -17億円 -3億円 3億円 4億円
利益率(%) -36.5% -13.5% -2.1% 1.9% 2.6%
当期利益(親会社所有者帰属) -57億円 -22億円 -3億円 2億円 2億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益と営業利益も着実に成長しています。売上総利益率は前年からやや低下したものの、営業利益率は上昇しており、効率的な事業運営による収益性の向上が確認できます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 135億円 141億円
売上総利益 83億円 84億円
売上総利益率(%) 61.8% 59.2%
営業利益 3億円 4億円
営業利益率(%) 2.0% 2.8%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が38億円(構成比48%)、賃借料が10億円(同12%)、業務委託費が6億円(同8%)を占めています。

(3) キャッシュ・フローと財務指標


本業・投資・財務いずれもマイナスで資金繰りが危機的である末期型の状態を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 9億円 -2億円
投資CF -10億円 -14億円
財務CF -2億円 -1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.7%で市場平均を下回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も47.7%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「日本の食文化を守り育てる」という創業からの想いを礎とし、「食でつなぐ。人を満たす。」というパーパス(存在意義)を掲げています。食が持つあらゆる可能性を模索し、食を通じてあらゆるヒト・モノ・コトをつなぎ合わせることで世の中に新たな価値を提供し、持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、企業活動はすなわち社会貢献であるべきという考えのもと、外食市場を中心とした社会への価値提供を通じて企業価値の向上に努めています。日本の優れた食文化や技術を世界に向けて発信し、後世へと承継することで、食を通じた豊かな社会の実現に向けた事業運営を重んじています。

(3) 経営計画・目標


同社は、中長期的な企業価値の向上を目指し、「中期経営計画2028」を策定しています。最終年度となる2029年3月期に向け、以下の具体的な数値目標を掲げています。

・売上高:189億円
・営業利益:13億円(営業利益率7%)
・総有料加盟店舗数:60,000店舗
・総加盟店舗数:100,000店舗
・自己資本当期純利益率(ROE):21%
・投下資本利益率(ROIC):16%

(4) 成長戦略と重点施策


同社は「真の飲食店のサポーター」となることをビジョンに掲げ、飲食店に深く寄り添うB2Bモデルに注力しています。楽天グループとの連携によるメディア強化や、飲食店の多様な業務を代行するエージェント事業の拡大に取り組んでいます。さらに、生成AIを活用したデータ基盤の構築や営業体制の増強を通じて、飲食店の経営手法の転換を伴走支援するプラットフォームとしての機能拡充を推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「働き方進化プロジェクト」を推進し、多様な従業員が能力を発揮できる組織づくりに取り組んでいます。自律的キャリア形成の促進やタレントマネジメントシステムの活用を通じて、社員の挑戦に寄り添い成長を支える環境を整備しています。柔軟な働き方の導入に加え、貢献実感の向上を図る人事制度の改定も進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 40.5歳 10.0年 6,355,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 19.9%
男性育児休業取得率 84.2%
男女賃金差異(全労働者) 67.8%
男女賃金差異(正規労働者) 71.8%
男女賃金差異(非正規労働者) 44.2%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 外部環境および市場構造の変化に関するリスク


同社の基盤事業である飲食店販促サービスは、外食市場の動向に強く左右されます。物価上昇による原材料費や光熱費の高騰、労働力不足による人件費増大などが加盟飲食店の収益性を悪化させ、販促投資の意欲減退や休廃業が加速した場合、有料加盟店舗数や契約単価の低下を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 技術革新への対応とAI活用に関するリスク


IT技術や生成AIの進化により、消費者の飲食店検索行動がAIとの対話型へと変化し、既存のメディア型販促支援モデルの競争力が低下するリスクがあります。新たな価値をタイムリーに提供できない場合や、情報資産の汎用化により独自性が損なわれた場合、プラットフォームとしての優位性が低下する可能性があります。

(3) 人材の確保および組織運営に関するリスク


事業領域の拡大や構造転換を推進するための高度な専門人材や、収益の根幹を支える営業人員の確保は最重要課題です。人材獲得競争の激化により必要な人員が計画通りに確保できない場合や、離職率の上昇によるノウハウ継承の断絶が生じた場合、売上高の成長が停滞し、競争力や業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(4) 情報セキュリティおよびシステム基盤に関するリスク


同社のサービスは複雑なネットワークとクラウド基盤に依存しており、高度なサイバー攻撃やセキュリティ侵害のリスクに晒されています。万が一、大規模なシステム障害や個人情報の漏洩が発生した場合、サービス提供の中断による収益減少にとどまらず、巨額の損害賠償やブランド価値の致命的な毀損を招く恐れがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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