#記事タイトル:ぐるなび転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、株式会社ぐるなび の有価証券報告書(第36期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ぐるなびってどんな会社?
飲食店情報サイト「楽天ぐるなび」を中核に、飲食店の経営支援やプロモーション事業を展開する企業です。
■(1) 会社概要
1989年に交通広告代理店として設立後、1996年に飲食店情報サイト「ぐるなび」を開設し事業の柱としました。2000年に現社名へ変更し、2008年には東証一部へ上場を果たしました。2019年には楽天(現楽天グループ)と資本業務提携を行い、サイト名を「楽天ぐるなび」へ変更するなど連携を強化しています。
2025年3月31日現在、連結従業員数は749名、単体では721名です。筆頭株主は資本業務提携先であるインターネットサービス大手の楽天グループで、第2位は創業者の滝久雄氏です。楽天グループとの連携を深めつつ、創業者の理念も継承する経営体制となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 楽天グループ | 16.44% |
| 滝 久雄 | 12.58% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.02% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役社長は杉原章郎氏が務めています。社外取締役比率は62.5%と過半数を占めています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 滝 久雄 | 取締役会長 | 1963年三菱金属(現三菱マテリアル)入社。1989年同社取締役。1999年代表取締役会長兼社長等を歴任し、2019年より現職。 |
| 杉原 章郎 | 代表取締役社長 | 1997年楽天グループ共同創業者として参画。楽天常務執行役員等を経て、2019年より現職。 |
| 鈴木 清司 | 取締役監査等委員(常勤) | 1981年パイオニア入社。1999年同社取締役。取締役執行役員、常勤監査役を経て2023年より現職。 |
社外取締役は、藤原裕久(東急取締役専務執行役員)、小野由衣(楽天グループ上級執行役員)、南木武輝(南木・北沢法律事務所代表)、佐藤英彦(元警察庁長官)、石田義雄(元東日本旅客鉄道副社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、飲食店販促支援事業の単一セグメントで事業を展開しており、「基盤事業」と「関連事業」に大別されます。
■(1) 基盤事業(飲食店販促サービス・プロモーション)
飲食店情報サイト「楽天ぐるなび」を通じ、飲食店情報の掲載、ネット予約、業務支援ツール等を提供しています。また、食品メーカー等に対し、同社が持つ飲食店・消費者ネットワークを活用したプロモーション支援も行っています。
主な収益源は、加盟飲食店からの基本加盟料、ネット予約手数料、商品利用料です。プロモーションでは、メーカーや自治体からの調査・販促支援料を得ています。運営は主にぐるなびが行っています。
■(2) 関連事業
訪日外国人向け観光情報サービス「LIVE JAPAN PERFECT GUIDE」や、選りすぐりの手土産等を扱うECサイトの運営、商業施設の飲食フロアプロデュース、海外事業などを展開しています。
収益源は、参加業者や自治体、ユーザー会員からの加盟料、コンサルティング料、販売手数料、会費等です。運営はぐるなびのほか、店舗運営を行うGダイニング、事務代行のぐるなびサポートアソシエなどが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高はコロナ禍の影響から回復基調にあり、2025年3月期には135億円まで伸長しました。利益面では、長らく赤字が続いていましたが、コストコントロールや売上の回復により、当期は経常利益、当期利益ともに黒字転換を果たしています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 162億円 | 129億円 | 123億円 | 130億円 | 135億円 |
| 経常利益 | -73億円 | -47億円 | -17億円 | -3億円 | 3億円 |
| 利益率(%) | -44.9% | -36.5% | -13.5% | -2.1% | 1.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | -93億円 | -57億円 | -22億円 | -3億円 | 3億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の傾向を見ると、売上高は増加し、売上総利益率も改善しています。前期は営業損失を計上していましたが、当期は増収効果に加え、販売費及び一般管理費の抑制等により営業黒字を達成しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 130億円 | 135億円 |
| 売上総利益 | 79億円 | 83億円 |
| 売上総利益率(%) | 60.9% | 61.8% |
| 営業利益 | -3億円 | 3億円 |
| 営業利益率(%) | -2.6% | 2.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が38億円(構成比47%)、賃借料が9億円(同12%)を占めています。売上原価では、外注費やシステム関連費用が主な構成要素となっています。
■(3) セグメント収益
同社は単一セグメントですが、サービス別の売上高を見ると、主力の飲食店販促サービス(ストック型およびスポット型)が堅調に推移し、全体を牽引しました。一方、プロモーション売上は減少しました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 飲食店販促サービス(ストック型サービス) | 84億円 | 91億円 |
| 飲食店販促サービス(スポット型サービス) | 12億円 | 13億円 |
| プロモーション | 16億円 | 12億円 |
| 関連事業 | 18億円 | 18億円 |
| 連結(合計) | 130億円 | 135億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスであり、本業で得た現金を借入返済や投資に回している「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -15億円 | 9億円 |
| 投資CF | -7億円 | -10億円 |
| 財務CF | -7億円 | -2億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.8%で市場平均(9.4%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は44.3%で市場平均(24.2%)を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は創業以来の「日本の食文化を守り育てる」という想いを基盤とし、「食でつなぐ。人を満たす。」をパーパス(存在意義)として掲げています。「食」を通じてあらゆるヒト・モノ・コトをつなぎ合わせ、新たな価値を提供し続けることで、持続可能なより良い社会の実現に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、社員一人ひとりの成長が食の未来を切り拓くという信念のもと、「自ら考え、学び、形にする」姿勢を重視しています。意欲ある人材が集まり育つ企業へと進化するため、社員の挑戦に寄り添い成長を支えることを人事ポリシーとし、個の力を結集する風土の醸成に取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
中期事業方針(2024年3月期から2026年3月期)において、黒字転換を果たした後の再成長フェーズへの移行を目指しています。具体的な数値目標として、利益創出力の向上を掲げています。
■(4) 成長戦略と重点施策
飲食店支援事業の成長力を引き上げるため、「楽天ぐるなびの強化」「マーケティングエージェントの本格化」「商品造成力の向上」を重点施策としています。楽天エコシステムとの連携強化や、多様な販促手法の提供による飲食店の経営課題解決、さらにモバイルオーダー等のDX支援を通じて、収益基盤の拡大を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「働き方進化プロジェクト」を通じ、社員の働きやすさとやりがいを向上させる人的資本経営を推進しています。採用・育成の強化や配置の最適化に加え、ダイバーシティ&インクルージョンの推進や、自律的なキャリア形成支援、マネジメント力強化のための研修体系の整備などに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.6歳 | 10.0年 | 6,045,000円 |
※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 22.0% |
| 男性育児休業取得率 | 73.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 67.6% |
| 男女賃金差異(正規) | 70.3% |
| 男女賃金差異(非正規) | 48.8% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 飲食店の支持獲得について
売上の大半を占める飲食店販促サービスは、飲食業界の動向や加盟店舗数に依存しています。原材料費高騰や人手不足による飲食店の経営悪化は、同社の契約数や単価の低下を招く恐れがあります。これに対し、送客力強化やDX支援、マーケティング支援等を通じて飲食店の経営効率化に貢献し、リスク低減を図っています。
■(2) 「楽天ぐるなび」のユーザーの支持獲得について
競合サービスの台頭や消費者の行動変容により、「楽天ぐるなび」の競争優位性が低下した場合、送客数が伸び悩み加盟店減少につながる可能性があります。同社は楽天グループとの協業によるエコシステムの活用や、消費者ニーズに即したコンテンツの見直しを行い、ユーザー基盤の維持・拡大に努めています。
■(3) 楽天グループとの関係について
筆頭株主である楽天グループとの資本業務提携は、同社の事業展開に重要な役割を果たしています。提携関係が解消された場合、送客力低下など業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は楽天ID連携会員の拡大や協業強化を通じて相互のメリットを高め、強固なパートナーシップの維持に努めています。
■(4) 人材の確保について
事業拡大には優秀な人材の確保と育成が不可欠です。人材獲得競争の激化や流出により計画通りに進まない場合、成長に影響が出る可能性があります。同社は「働き方進化プロジェクト」や人事ポリシーの制定を通じて、働きがいのある環境整備や採用・育成の強化を進めています。



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