オイシックス・ラ・大地 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

オイシックス・ラ・大地 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場し、食品宅配事業や給食受託事業などを展開しています。2025年3月期は、シダックスの子会社化などにより売上高が前期比約1.7倍に急拡大し大幅な増収となりましたが、親会社株主に帰属する当期純利益は減益となりました。


※本記事は、オイシックス・ラ・大地株式会社 の有価証券報告書(第28期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. オイシックス・ラ・大地ってどんな会社?

食品宅配サービス「Oisix」「大地を守る会」「らでぃっしゅぼーや」等を展開する食のインフラ企業です。

(1) 会社概要

2000年にオイシックスとして設立し、食品宅配事業を開始しました。2013年に東証マザーズへ上場し、2017年から2018年にかけて「大地を守る会」「らでぃっしゅぼーや」との経営統合を実施しました。2020年に東証一部へ変更し、2024年には給食大手のシダックスを子会社化しています。

連結従業員数は11,818名、単体では800名です。筆頭株主は創業社長の髙島宏平氏で、第3位には2010年より資本業務提携関係にあるリクルートが名を連ねています。その他、信託銀行等が上位株主となっています。

氏名 持株比率
髙島 宏平 13.96%
日本マスタートラスト信託銀行 8.99%
リクルート 7.62%

(2) 経営陣

同社の役員は男性9名、女性4名の計13名で構成され、女性役員比率は30.8%です。代表取締役社長は髙島宏平氏が務めています。取締役9名のうち5名が社外取締役であり、社外比率は55.6%です。

氏名 役職 主な経歴
髙島 宏平 代表取締役社長 1998年マッキンゼー・アンド・カンパニー・インク ジャパン入社。2000年6月同社代表取締役社長に就任し、現在に至る。オイシックス・ラ・大地グループを牽引。
堤 祐輔 取締役執行役員 2000年同社取締役就任。EC事業部長等を歴任し、現在はBtoB事業を統括。シダックス取締役等を兼務し、グループ全体の事業連携を推進。
小﨑 宏行 取締役執行役員 ダイエー取締役を経て2008年同社入社。総合企画本部長、人材企画本部長等を歴任し、現在はHR本部やリテールメディア事業本部等を管掌。
松本 浩平 取締役執行役員 2008年同社入社。経営企画室長等を経て2018年取締役就任。現在は経営企画本部本部長を務め、Future Food Fund代表取締役も兼任。


社外取締役は、花田光世(慶應義塾大学名誉教授)、田中仁(ジンズホールディングス代表取締役)、渡部純子(リクルートIDポイントプロダクトサービス開発部部長)、櫻井稚子(元ABC Cooking Studio社長)、小脇美里(「MOTHERS編集部」編集長)です。

2. 事業内容

同社グループは、「BtoCサブスク」「BtoBサブスク」「社会サービス」「車両運行サービス」および「その他」事業を展開しています。

BtoCサブスク事業

ウェブサイトやカタログを通じて、環境負荷の少ない高付加価値な食品やミールキット、日用品などを一般消費者に宅配しています。国内では「Oisix」「大地を守る会」「らでぃっしゅぼーや」の3ブランド、米国ではヴィーガン食の「Purple Carrot」を展開しています。

収益は、会員である消費者からの商品代金等により構成されています。運営は主に同社が行っていますが、米国事業はThree Limes,Inc.等が担当しています。

BtoBサブスク事業

保育園への食材卸や、社員食堂、病院、高齢者施設等での給食受託および管理業務、外食産業向けの食材販売を行っています。「メディカルフードサービス」「コントラクトフードサービス」「すくすくOisix」などが含まれます。

収益は、契約先である企業や施設等からの給食委託料や食材販売代金等から得ています。運営は主にシダックスコントラクトフードサービス、シダックスフードサービス、同社等が行っています。

社会サービス事業

地方自治体からの受託により、幼稚園や小中学校の給食、放課後児童クラブ、図書館、児童館等の施設管理・運営を行っています。また、民間企業からの各種アウトソーシング業務も受託しています。

収益は、地方自治体や民間企業からの業務委託料等から得ています。運営は主にシダックス大新東ヒューマンサービスが行っています。

車両運行サービス事業

民間企業や地方自治体から、役員車や送迎バス、コミュニティバスなどの車両運行管理業務をアウトソーシングで受託しています。

収益は、委託元である企業や自治体からの運行管理委託料等から得ています。運営は主に大新東が行っています。

その他

他社のEC支援事業や、移動スーパー「とくし丸」事業、食分野のスタートアップへの投資事業などを展開しています。

収益は、EC支援手数料、移動スーパー事業でのロイヤリティや商品販売、投資収益等から得ています。運営は同社、とくし丸、Future Food Fund等が行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、特に2025年3月期は大幅な増収となりました。これはM&Aによる事業規模拡大の影響が大きいと考えられます。経常利益は変動がありますが、2025年3月期は前期を上回りました。一方、当期純利益は2024年3月期に増加した後、2025年3月期は減少しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,001億円 1,135億円 1,152億円 1,484億円 2,560億円
経常利益 70億円 42億円 28億円 44億円 66億円
利益率(%) 7.0% 3.7% 2.4% 3.0% 2.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 46億円 25億円 26億円 57億円 36億円

(2) 損益計算書

2025年3月期は、売上高、売上総利益ともに前期から大きく増加しました。営業利益も増加していますが、売上高の伸び率に比べると利益率の改善は限定的です。これは事業規模の拡大に伴い、コスト構造が変化していることを示唆しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,484億円 2,560億円
売上総利益 619億円 752億円
売上総利益率(%) 41.7% 29.4%
営業利益 51億円 69億円
営業利益率(%) 3.5% 2.7%


販売費及び一般管理費のうち、荷造運賃発送費が132億円(構成比19%)、給料手当が124億円(同18%)、販売促進費が86億円(同13%)を占めています。売上原価率は70.6%となっています。

(3) セグメント収益

BtoCサブスク事業は減収増益となりましたが、BtoBサブスク事業、社会サービス事業、車両運行サービス事業はシダックスグループ連結の影響により大幅な増収となりました。特にBtoBサブスク等の新規連結事業が全体の売上拡大を牽引しています。利益面ではBtoCサブスク事業が主な収益源となっています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
BtoCサブスク 994億円 972億円 88億円 94億円 9.6%
BtoBサブスク 150億円 607億円 3億円 4億円 0.7%
社会サービス 114億円 523億円 3億円 22億円 4.1%
車両運行サービス 62億円 271億円 3億円 19億円 7.1%
その他 165億円 187億円 12億円 10億円 5.6%
調整額 -16億円 -億円 -58億円 -80億円 -
連結(合計) 1,484億円 2,560億円 51億円 69億円 2.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、本業で獲得したキャッシュを投資活動や借入返済等に充てている「健全型」です。ただし、投資活動による支出が大きく、積極的な事業拡大を行っています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 77億円 35億円
投資CF -108億円 -125億円
財務CF 177億円 -16億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.2%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は22.6%で市場平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、「これからの食卓、これからの畑」を企業理念としています。より多くの人が良い食生活を楽しめるサービスの提供、生産者が報われ誇りを持てる仕組みの構築、持続可能な社会の実現、食の社会課題解決を通じて、食のこれからをつくり広げていくことを目指しています。

(2) 企業文化

同社は、社員が自律的に挑戦的な課題解決に取り組むことを推奨しています。行動規範として「ORDism」を掲げ、その浸透や体現を通じて理念への貢献実感と働きがいを醸成することを重視しています。また、多様な人材のアイデアを尊重し、風通しの良い職場作りにも努めています。

(3) 経営計画・目標

同社グループは、BtoCサブスク事業の成長と収益力強化、BtoBサブスク事業の拡大等を推進し、売上高、EBITDA(営業利益+減価償却費+のれん償却額)、1株当たり当期純利益とその成長率を重視する経営指標としています。具体的な数値目標は記載されていません。

(4) 成長戦略と重点施策

BtoCサブスク事業では、「プレミアム時短」の価値強化や、特定のセグメント向けサービスの立ち上げ、製造・物流の内製化等による収益力強化に取り組みます。BtoBサブスク事業では、シダックスとのシナジーを活かし、新規契約施設の増加やM&Aによる規模拡大、「タイパ(タイムパフォーマンス)モデル」による収益性向上を目指します。また、海外展開や他社との提携も強化します。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「人が育ち、育てられ、社員が生き生きと働くことが出来る居場所(会社)を創造する!」というビジョンを掲げています。社員目線での多様性や働きやすさの追求、中期事業ポートフォリオ戦略の実現に向けた人材の育成・獲得、自律的なキャリアづくりと成長機会の提供を通じた「活躍人材の創出」を推進しています。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 41.5歳 10.3年 6,696,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 21.8%
男性育児休業取得率 100.0%
男女賃金差異(全労働者) 64.5%
男女賃金差異(正規) 69.2%
男女賃金差異(非正規) 84.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、中途入社者の比率(87.2%)、障がい者の雇用率(3.1%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 事業戦略に関するリスク

BtoCサブスク事業ではネットスーパー等の競合激化、BtoBサブスク事業では給食業界の価格競争やコスト削減ニーズへの対応が課題です。適切な差別化や効率化ができない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、食中毒や異物混入等の事故発生リスクもあります。

(2) 気候変動に関するリスク

農水産物等の一次産品を取り扱うため、大規模な風水害による産地被災や物流網の混乱が商品の調達・供給に支障をきたす恐れがあります。また、温室効果ガス排出規制への対応遅れによる社会的信用の低下や、気候変動に伴う異常気象が農産物供給に影響する可能性もあります。

(3) サプライチェーンに関するリスク

産地偽装や品質虚偽、放射能汚染問題等が発生した場合、ブランドイメージの失墜につながります。また、物流センターが自然災害等で操業停止した場合や、主要配送業者からの運賃値上げ要請等があった場合、事業運営に支障が出る可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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