※本記事は、飯田グループホールディングス株式会社の有価証券報告書(第12期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はIFRSです。
1. 飯田グループホールディングスってどんな会社?
飯田グループホールディングスは、戸建分譲事業を中心にマンション分譲や請負工事などを手掛ける持株会社です。「誰もがあたり前に家を買える社会」の実現を目指しています。
■(1) 会社概要
同社は、2013年に一建設、飯田産業、東栄住宅、タクトホーム、アーネストワン、アイディホームの6社が経営統合し、共同株式移転により設立されました。2014年にはファーストウッドを子会社化し、2022年にはロシアの林産企業グループを子会社化するなど、事業領域を拡大しています。2022年4月の東証市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しました。
2025年3月31日現在、連結従業員数は13,748名、単体従業員数は119名です。筆頭株主は創業家資産管理会社の飯田興産で、第2位は個人株主の西河洋一氏、第3位は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 飯田興産 | 19.17% |
| 西河洋一 | 10.55% |
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 9.63% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性3名の計16名で構成され、女性役員比率は18.8%です。代表取締役社長は西野弘氏が務めています。取締役12名のうち4名が社外取締役で、社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 西野 弘 | 代表取締役社長 | 東栄住宅代表取締役社長、飯田グループホールディングス管理本部長などを経て、2025年4月より現職。 |
| 堀口 忠美 | 取締役専務 | 一建設代表取締役社長、飯田グループホールディングス生産本部長などを経て、2021年5月より現職。 |
| 兼井 雅史 | 取締役 | 飯田産業代表取締役社長、飯田グループホールディングス代表取締役社長などを経て、2025年4月より現職。 |
| 松林 重行 | 取締役 | アーネストワン常務取締役営業本部長などを経て、2013年9月より同社代表取締役社長(現任)。2013年11月より現職。 |
| 小寺 一裕 | 取締役 | 一建設代表取締役社長、タクトホーム代表取締役社長兼営業本部長(現任)などを経て、2015年6月より現職。 |
| 佐藤 千尋 | 取締役 | 東栄住宅代表取締役社長(現任)、東栄ホームサービス代表取締役社長(現任)などを経て、2023年6月より現職。 |
| 築地 重彦 | 取締役 | 飯田産業代表取締役社長(現任)、ファミリーライフサービス取締役(現任)などを経て、2023年6月より現職。 |
| 中島 健一 | 取締役 | 飯田産業入社後、飯田グループホールディングス執行役員経営企画室長などを経て、2025年6月より現職。 |
社外取締役は、村田奈々子(東洋大学副学長)、佐々木新一(元住友商事副社長)、今井尚哉(元内閣総理大臣秘書官)、本多則惠(元厚生労働省)です。
2. 事業内容
同社グループは、「一建設グループ」「飯田産業グループ」「東栄住宅グループ」「タクトホームグループ」「アーネストワングループ」「アイディホーム」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 一建設グループ
一建設グループは、戸建分譲事業、マンション分譲事業、請負工事事業などを展開しています。戸建住宅や分譲マンションの販売を行うほか、注文住宅の請負なども手掛けています。
収益は、住宅購入者からの物件代金や、工事発注者からの請負代金等から得ています。運営は、一建設、住宅情報館などが主に行っています。
■(2) 飯田産業グループ
飯田産業グループは、戸建分譲事業、マンション分譲事業、請負工事事業のほか、不動産賃貸事業やホテル事業なども行っています。多様な住まい関連サービスを提供しています。
収益は、物件の販売代金や工事請負代金、賃貸料収入、ホテル宿泊料などから構成されます。運営は、飯田産業、パラダイスリゾート、ユニバーサルホームなどが担っています。
■(3) 東栄住宅グループ
東栄住宅グループは、戸建分譲事業、請負工事事業、不動産賃貸事業を展開しています。高品質な分譲住宅の提供に注力しています。
収益は、戸建住宅の販売収入や建築工事の請負代金、賃貸収入などが主な源泉です。運営は、東栄住宅、東栄ホームサービスなどが行っています。
■(4) タクトホームグループ
タクトホームグループは、戸建分譲事業、請負工事事業、不動産賃貸事業を行っています。地域に密着した住宅供給を進めています。
収益は、住宅販売代金やリフォーム等の請負代金、不動産賃貸料などから得ています。運営は、タクトホーム、ソリド・ワンなどが担っています。
■(5) アーネストワングループ
アーネストワングループは、戸建分譲事業、マンション分譲事業、請負工事事業を展開しています。コスト競争力を活かした住宅供給を行っています。
収益は、戸建およびマンションの販売収入や請負工事代金などから構成されます。運営は、アーネストワン、エイワンプラスなどが行っています。
■(6) アイディホーム
アイディホームは、戸建分譲事業と請負工事事業を主に行っています。品質と価格のバランスを重視した住宅を提供しています。
収益は、戸建住宅の販売代金や工事請負代金から得ています。運営は、アイディホームが行っています。
■(7) その他
その他には、木材製造事業や不動産仲介事業、ガラス製造販売事業などが含まれます。グループ全体のバリューチェーンを支える機能を有しています。
収益は、木材製品や住宅設備の販売代金、仲介手数料などから得ています。運営は、ファーストウッド、ホームトレードセンター、IGウインドウズ、ファーストプラスなどが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期間の業績を見ると、売上収益は1兆4,000億円前後で推移しており、直近では増加傾向にあります。利益面では、2022年3月期をピークに減少しましたが、当期は回復基調にあり、税引前利益および当期利益ともに前期比で増加しました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 14,562億円 | 13,870億円 | 14,398億円 | 14,392億円 | 14,596億円 |
| 税引前利益 | 1,197億円 | 1,522億円 | 1,066億円 | 557億円 | 743億円 |
| 利益率(%) | 8.2% | 11.0% | 7.4% | 3.9% | 5.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 833億円 | 1,034億円 | 756億円 | 372億円 | 507億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上収益の増加に伴い売上総利益も増加しました。販売費及び一般管理費も増加しましたが、その他の営業費用が減少したことも寄与し、営業利益は前期比で大きく改善しています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 14,392億円 | 14,596億円 |
| 売上総利益 | 2,096億円 | 2,324億円 |
| 売上総利益率(%) | 14.6% | 15.9% |
| 営業利益 | 592億円 | 805億円 |
| 営業利益率(%) | 4.1% | 5.5% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び諸手当が452億円(構成比29%)、支払手数料が337億円(同22%)を占めています。売上原価においては、土地代や建築資材費等が大きな割合を占めています。
■(3) セグメント収益
各セグメントにおいて、売上収益は概ね堅調に推移しました。特に一建設グループ、飯田産業グループ、東栄住宅グループ等で増収増益となり、グループ全体の業績を牽引しました。アイディホームは減収となりましたが、黒字を確保しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 一建設グループ | 4,074億円 | 4,084億円 | 145億円 | 204億円 | 5.0% |
| 飯田産業グループ | 2,680億円 | 2,700億円 | 149億円 | 189億円 | 7.0% |
| 東栄住宅グループ | 2,008億円 | 2,015億円 | 124億円 | 158億円 | 7.8% |
| タクトホームグループ | 1,876億円 | 1,899億円 | 75億円 | 111億円 | 5.9% |
| アーネストワングループ | 2,820億円 | 2,836億円 | 137億円 | 173億円 | 6.1% |
| アイディホーム | 805億円 | 829億円 | -3億円 | 17億円 | 2.0% |
| その他 | 334億円 | 1,117億円 | -35億円 | -44億円 | -4.0% |
| 調整額 | -億円 | -883億円 | -0億円 | -3億円 | -% |
| 連結(合計) | 14,392億円 | 14,596億円 | 592億円 | 805億円 | 5.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は営業活動で得た資金で借入金の返済や投資を行っており、財務基盤の健全化を進めながら成長投資を行う「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -164億円 | 923億円 |
| 投資CF | -178億円 | -386億円 |
| 財務CF | 274億円 | -110億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は5.2%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「より多くの人々が幸せに暮らせる住環境を創造し、豊かな社会作りに貢献する」という経営理念を掲げています。この理念のもと、「誰もがあたり前に家を買える社会」の実現を目指し、理想の住まいづくりを通じて社会の発展に貢献することを基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社グループは、「時代の変革をいち早く読み、素早く対応できる企業集団」として、常に変革に挑み続ける姿勢を重視しています。また、グループ各社が自主性と独自性を尊重しながらも統一的な事業方針のもとで運営されており、多様な顧客ニーズに対応できる体制を構築しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、2030年3月期をターゲットとした経営指標をガイドラインとして掲げ、収益構造の変革を推進しています。
* オーガニック成長率:4.0%
* 戸建分譲売上依存率:70.0%
* 自己資本利益率(ROE):10.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「コア事業の競争力強化」と「事業ポートフォリオの拡大」を推進しています。戸建分譲事業ではコスト競争力の強化とマーケットインの発想による販売戦略の再構築を図ります。また、メンテナンス・リフォーム事業や収益不動産事業の拡大、海外事業への投資も進めていく方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は人的資本の向上が企業成長の源泉であると捉え、健康的で働きがいのある職場環境の維持を目指しています。人材育成においては、資格手当の拡充や各種研修プログラムを展開し、社員の自律的成長を支援しています。また、ワークライフバランスや健康経営を推進し、多様な人材が活躍できる職場づくりに取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 44.6歳 | 4.5年 | 7,553,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 3.7% |
| 男性育児休業取得率 | -% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 68.0% |
| 男女賃金差異(正規) | 71.2% |
| 男女賃金差異(非正規) | 35.0% |
※男性育児休業取得率の「-」について:同社(提出会社)は育児休業等の取得割合を算出していますが、該当者がいなかった等の理由により表記がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(74.5%)、ストレスチェック受検率(91.5%)、資格保有率(58.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 国内人口・世帯数の減少
国内の人口減少、特に生産年齢人口の減少により、中長期的には住宅市場の縮小が懸念されます。同社はこれに対し、住宅周辺分野への事業領域の拡大や、今後経済成長が見込まれる海外市場への展開を推進することで対応しています。
■(2) 労働力不足・人材確保
建設現場や事業運営における人材獲得競争の激化により、十分な人材確保ができない場合、競争力が低下するリスクがあります。同社は採用・育成の強化や職場環境の整備を進めるとともに、建設現場のDX推進や大工の内製化等に取り組んでいます。
■(3) 原材料・資材価格等の高騰
原材料や人件費等の上昇を販売価格へ転嫁できない場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社はスケールメリットを活かした調達や、主要資材の内製化を進めることで、コスト競争力の維持と安定調達を図っています。
■(4) 保有資産の価値下落
保有する販売用不動産等の価値が不動産市況の悪化等により下落した場合、評価損の計上等により業績に影響を与える可能性があります。同社は在庫回転率を重要な経営指標とし、市況変動による影響を極小化するよう努めています。



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