※本記事は、飯田グループホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第13期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。
1. 飯田グループホールディングスってどんな会社?
戸建分譲事業を中核に、マンション分譲や請負工事など、住まいに関する事業を幅広く展開する企業グループです。
■(1) 会社概要
2013年に一建設、飯田産業、東栄住宅、タクトホーム、アーネストワン、アイディホームの経営統合により設立され、東京証券取引所第一部に上場しました。その後も国内外で事業を拡大し、2022年にはロシアのRFPグループを子会社化しています。現在は東京証券取引所プライム市場に上場し、持続的な成長を続けています。
従業員数は連結で14,217名、単体で109名です。筆頭株主は事業会社等の飯田興産で、第2位は個人の西河洋一氏、第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 飯田興産 | 19.17% |
| 西河洋一 | 10.11% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 9.03% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性13名、女性3名の計16名で構成され、女性役員比率は18.8%です。代表取締役社長は西野弘が務めています。社外取締役は4名選任されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 西野弘 | 代表取締役社長 | 東栄住宅に入社後、同社代表取締役社長等を歴任。同社取締役などを経て、2025年4月より現職。 |
| 堀口忠美 | 取締役専務 | 飯田建設工業(現一建設)に入社後、同社代表取締役社長等を歴任。2021年5月より現職。 |
| 兼井雅史 | 取締役 | 飯田産業に入社後、同社代表取締役社長やユニバーサルホーム代表取締役社長等を歴任。2025年4月より現職。 |
| 松林重行 | 取締役 | アーネストワンに入社後、同社代表取締役社長等を歴任。2013年11月より現職。 |
| 小寺一裕 | 取締役 | 飯田建設工業(現一建設)に入社後、タクトホーム代表取締役社長等を歴任。2015年6月より現職。 |
| 佐藤千尋 | 取締役 | 東栄住宅に入社後、同社代表取締役社長等を歴任。2023年6月より現職。 |
| 築地重彦 | 取締役 | 飯田産業に入社後、同社代表取締役社長等を歴任。2023年6月より現職。 |
| 中島健一 | 取締役 | 飯田産業に入社後、同社秘書室長や常務執行役員等を歴任。2025年6月より現職。 |
社外取締役は、村田奈々子(東洋大学教授)、佐々木新一(学校法人聖路加国際大学理事長)、今井尚哉(内閣官房参与)、本多則惠(日本司法支援センター理事)です。
2. 事業内容
同社グループは、「一建設グループ」「飯田産業グループ」「東栄住宅グループ」「タクトホームグループ」「アーネストワングループ」「アイディホーム」および「その他」の事業を展開しています。
■一建設グループ
主に一次取得者をターゲットに戸建分譲事業、マンション分譲事業、請負工事事業、投資用収益物件の開発販売事業を展開しています。耐震・環境性能に優れた値ごろ感のある住宅を提供しています。
収益は、顧客に対する戸建住宅やマンションの販売代金、注文住宅等の請負代金から得ています。運営は一建設を中心に行われています。
■飯田産業グループ
戸建分譲事業、マンション分譲事業、請負工事事業に加え、不動産賃貸事業やホテル事業などの幅広い周辺事業を展開しています。多様なニーズに応える高品質な住環境を創出しています。
収益は、住宅購入者からの物件販売代金や工事請負代金のほか、不動産の賃貸料収入などから構成されています。運営は主に飯田産業が行っています。
■東栄住宅グループ
戸建分譲事業、請負工事事業、および不動産賃貸事業を展開しています。長年培った技術とノウハウを活かし、安全で快適な住まいづくりとメンテナンス体制の充実に注力しています。
収益は、顧客からの戸建住宅の販売代金や、注文住宅・リフォーム工事などの請負代金から得ています。運営は主に東栄住宅が担っています。
■タクトホームグループ
戸建分譲事業、マンション分譲事業、請負工事事業、および不動産賃貸事業を展開しています。顧客のライフスタイルに合わせた、住みやすさを重視した住宅の供給を行っています。
収益は、戸建住宅やマンションの販売代金、建築工事の請負代金、そして賃貸物件からの賃料収入から得ています。運営は主にタクトホームが行っています。
■アーネストワングループ
戸建分譲事業、マンション分譲事業、および請負工事事業を展開しています。コスト競争力を活かし、幅広い顧客層に向けて適正価格での住宅供給を実現しています。
収益は、新築戸建住宅やマンションの販売代金、ならびに注文住宅の請負代金から得ています。運営はアーネストワンを中心に、米国での海外事業なども推進しています。
■アイディホーム
戸建分譲事業と請負工事事業を中心に展開しています。それぞれの地域の特性や需要に合わせた柔軟な事業展開により、多様な住宅ニーズにきめ細かく対応しています。
収益の大部分は、個人顧客を中心とした戸建住宅の販売代金や建築工事の請負代金によって構成されています。運営は主にアイディホームが担当しています。
■その他
その他事業として、集成材やプレカット加工等の木材製造事業や、コンクリートブロック等の建材製造、システムキッチンなどの住宅設備機器の製造販売などを展開し、グループ内のサプライチェーンを強化しています。
収益は、製品の販売代金などから得ています。運営は、ファーストウッド、IGウインドウズ、ファーストプラス、オリエントなどの各専門事業会社が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上収益は直近5年間で概ね増加傾向にあり、順調に事業を拡大しています。税引前利益および当期利益は一時的な減少が見られたものの、直近2期は連続して増益となっており、収益性の改善が進んでいます。利益率も直近は上昇傾向にあり、安定した成長基調を取り戻しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 13,870億円 | 14,398億円 | 14,392億円 | 14,596億円 | 15,089億円 |
| 税引前利益 | 1,522億円 | 1,066億円 | 557億円 | 743億円 | 899億円 |
| 利益率(%) | 11.0% | 7.4% | 3.9% | 5.1% | 6.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 1,034億円 | 756億円 | 372億円 | 507億円 | 633億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期の業績は、堅調な住宅需要を背景に売上収益が増加しました。利益面でも、適正な在庫水準の維持と利益を重視した販売戦略が奏功し、営業利益および営業利益率ともに前年を上回り、増収増益を達成しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 14,596億円 | 15,089億円 |
| 営業利益 | 805億円 | 944億円 |
| 営業利益率(%) | 5.5% | 6.3% |
■(3) セグメント収益
セグメント別の業績を見ると、全てのセグメントが利益を確保しています。特に一建設グループや飯田産業グループが売上・利益ともに大きく貢献しており、グループ全体の収益を牽引しています。アイディホームは減収となりましたが、利益面では前年を上回る成長を見せています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 一建設グループ | 4,084億円 | 3,927億円 | 204億円 | 297億円 | 7.6% |
| 飯田産業グループ | 2,700億円 | 2,953億円 | 189億円 | 238億円 | 8.1% |
| 東栄住宅グループ | 2,015億円 | 2,129億円 | 158億円 | 180億円 | 8.5% |
| タクトホームグループ | 1,899億円 | 2,231億円 | 111億円 | 163億円 | 7.3% |
| アーネストワングループ | 2,836億円 | 2,933億円 | 173億円 | 196億円 | 6.7% |
| アイディホーム | 829億円 | 640億円 | 17億円 | 27億円 | 4.2% |
| その他 | 1,117億円 | 1,146億円 | -44億円 | -93億円 | -8.1% |
| 調整額 | -883億円 | -871億円 | -3億円 | -64億円 | - |
| 連結(合計) | 14,596億円 | 15,089億円 | 805億円 | 944億円 | 6.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業は赤字だが、将来成長のため借入で投資を継続する勝負型のキャッシュ・フロー状況です。なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.3%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は62.5%で市場平均を上回っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 923億円 | -975億円 |
| 投資CF | -386億円 | -598億円 |
| 財務CF | -110億円 | 724億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「より多くの人々が幸せに暮らせる住環境を創造し、豊かな社会作りに貢献する」という経営理念のもと、「誰もがあたり前に家を買える社会」の実現を目指し、理想の住まいづくりを通じて社会の発展に貢献していくことを基本方針としています。また、海外市場においては「良質で安全、安価な住宅を供給して社会に貢献する」という方針を掲げています。
■(2) 企業文化
「時代の変革をいち早く読み、素早く対応できる企業集団」として、常に変革に挑む姿勢を大切にしています。各事業会社は、グループ統一的な事業方針のもと、それぞれの自主性や独自性を尊重した事業運営を行っており、多様な顧客ニーズに対して全方位的に対応できる柔軟な組織文化が根付いています。
■(3) 経営計画・目標
不動産事業は景気の影響を受けやすいため、中期的な視点で目標を設定しています。資本収益性を意識しつつ、事業ポートフォリオの拡大を推進するため、2030年3月期をターゲットとしたガイドラインを掲げ、収益構造の変革を進めています。
* オーガニック成長率:4.0%
* 戸建分譲売上依存率:70.0%
* 自己資本利益率(ROE):10.0%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
中核事業である戸建分譲事業では、エリア毎の需給バランスを考慮した利益成長を重視した展開を進めます。また、収益構造の安定化を図るため、メンテナンス・リフォーム事業や戸建賃貸をはじめとする収益不動産事業の拡大を図ります。
* コア事業の競争力強化と販売戦略の再構築
* メンテナンス・リフォーム事業や海外事業等の拡大
* 財務基盤の安定性確保とリスク耐性の維持
* サステナビリティ経営の推進
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人的資本の価値向上が企業成長の源泉と捉え、「社員一人ひとりの健康を大切にして、住まいと暮らしで地域社会に貢献する企業として『人生100年』『健康100年』『住宅100年』を目指す」という健康経営宣言のもと、健康経営を推進しています。また、多様な価値観を認め、性別や国籍等を問わず能力のある人材を中核に登用し、自律的な成長とスキル向上をサポートしています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.2歳 | 4.9年 | 7,651,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 4.2% |
| 男性育児休業取得率 | 33.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 63.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 71.0% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 19.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、ストレスチェック受検率(94.2%)、有給休暇取得率(73.7%)、資格保有率(59.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 国内人口減少による住宅市場の縮小
日本国内における人口や世帯数の減少、特に主要ターゲットである生産年齢人口の減少により、中長期的な住宅市場の縮小が懸念されています。同社グループでは、事業ポートフォリオの拡大として、住宅周辺分野への展開や海外市場への進出を推進しています。
■(2) 原材料費や建築コストの高騰
国内外の市場動向による原材料や資材価格、人件費、物流費等の上昇が、販売価格へ転嫁できない場合に業績へ影響を及ぼす可能性があります。これに対し、グループのスケールメリットを活かした調達や、主要な住宅資材のグループ内での内製化を進めることで安定的な調達体制を構築しています。
■(3) 環境規制の強化と気候変動
脱炭素社会に向けた環境規制の厳格化や、自然災害の激甚化などの物理的リスクが存在します。対策コストの増加や、生産活動の停止による機会損失が業績に影響する可能性がありますが、同社グループは高い断熱性能を持つ住宅の供給や環境技術の研究開発を通じて、サステナビリティ経営を推進しています。



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