本記事は、株式会社メニコンの有価証券報告書(第69期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. メニコンってどんな会社?
同社は、コンタクトレンズおよびケア用品の製造販売と関連サービスをグローバルに展開する企業です。
■(1) 会社概要
同社は1951年に日本初の角膜コンタクトレンズを開発し、1957年に前身企業が設立されました。2001年に業界初の定額制会員システム「メルスプラン」を開始して成長し、2015年には東証および名証に上場を果たしました。近年は国内外で事業を拡大し、オルソケラトロジー関連等の新規分野も開拓しています。
現在の従業員数は連結で4,493名、単体で1,946名です。筆頭株主は資産管理業務等を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位は暖房器具等の製造を手掛けるトヨトミ、第3位は外資系金融機関のゴールドマン・サックス関連となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 11.67% |
| トヨトミ | 5.30% |
| GOLDMAN,SACHS & CO.REG | 4.42% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性2名の計13名で構成され、女性役員比率は15.0%です。代表執行役社長最高経営責任者 CEOは川浦康嗣氏です。社外取締役比率は38.5%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 川浦康嗣 | 取締役 兼 代表執行役社長最高経営責任者 CEO | 1992年に同社入社後、シンガポールR&Dセンター長や執行役商品開発本部長などを歴任。2025年より現職。 |
| 滝野喜之 | 取締役 取締役会議長 | 1984年に同社入社後、経営管理室経理部長や執行役経営管理室長などを歴任。2018年より現職。 |
| 篠田浩樹 | 取締役 | 1986年に同社入社後、関東営業部長や執行役国内営業本部長などを歴任。2025年より現職。 |
社外取締役は、堀西良美(堀西経営法律事務所所長・報酬委員長)、渡辺眞吾(公認会計士事務所所長)、本多立太郎(元エフエム愛知社長・指名委員長)、柳川勝彦(元富士ゼロックス常務・監査委員長)、寺﨑浩子(名古屋大学名誉教授)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ビジョンケア事業」および「その他」事業を展開しています。
■ビジョンケア事業
コンタクトレンズおよびケア用品の製造、販売を展開しています。1日使い捨てや定期交換タイプのディスポーザブルレンズ、従来型のハード・ソフトレンズに加え、近視進行抑制が期待されるオルソケラトロジー関連製品等も取り扱い、国内およびアジア、欧州、北米などグローバル市場の顧客に向けて提供しています。
収益源は、コンタクトレンズ販売店や卸を通じた製品販売収益、直営店等での小売収益のほか、入会金と月額定額制による会員システム「メルスプラン」の会費収入です。事業の運営は、同社を中心に、メニコンネクト、ダブリュ・アイ・システムなどの国内外のグループ各社が行っています。
■その他
ビジョンケア事業に次ぐ新たな事業領域として、ヘルスケア、ライフケア、動物医療、食品ビジネスなどを展開しています。動物病院向けの犬・猫用サプリメントなどの動物医療製品、自己集合性ペプチドゲル技術を活用した医療製品、グリーンインフラ関連製品、農水産物等の開発・販売を行っています。
これらの事業における収益源は、一般消費者や動物病院・卸業者への製品の販売収益や輸出入による収益です。運営は同社や、動物医療ビジネスを展開するメニワン、人材派遣等を行うメニコンビジネスアシスト、貿易事業を担う板橋貿易など、各分野に特化した子会社が事業を推進しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、コンタクトレンズ需要の拡大を背景に売上高が継続的に増加しています。一方、利益面では将来の成長に向けた先行投資等により変動が見られますが、当期は為替差益等の影響もあり、経常利益が安定した水準で推移しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,002億円 | 1,102億円 | 1,162億円 | 1,215億円 | 1,256億円 |
| 経常利益 | 101億円 | 118億円 | 82億円 | 96億円 | 110億円 |
| 利益率(%) | 10.0% | 10.7% | 7.1% | 7.9% | 8.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 27億円 | 28億円 | 11億円 | 49億円 | 48億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益が増加しています。販売費及び一般管理費も人件費等の増加により増えていますが、営業利益は安定して100億円以上を確保しており、継続的な収益基盤が維持されています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,215億円 | 1,256億円 |
| 売上総利益 | 650億円 | 676億円 |
| 売上総利益率(%) | 53.5% | 53.8% |
| 営業利益 | 100億円 | 102億円 |
| 営業利益率(%) | 8.2% | 8.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給与及び賞与が128億円(構成比22%)、研究開発費が55億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
主力のビジョンケア事業は、国内における自社製造品の販売増や、欧州・北米での量販店向けディスポーザブルレンズの受注拡大により増収となりました。その他事業は、食品事業の縮小等により売上高が微減で推移しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| ビジョンケア事業 | 1,123億円 | 1,165億円 |
| その他 | 92億円 | 91億円 |
| 連結(合計) | 1,215億円 | 1,256億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは以下の通り健全型となっています。営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業のパターンを示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 139億円 | 118億円 |
| 投資CF | -197億円 | -165億円 |
| 財務CF | 7億円 | -60億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は48.5%で製造業の市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「社会に役立つ製品とサービスを世界中へ提供し、顧客からの信頼・支持を得る」ことを目標としています。経営理念に「創造」「独創」「挑戦」を掲げ、「エンドユーザーファースト」の精神で顧客の目の健康を守るとともに、「人にも動物にも環境にも優しい地球企業」を目指す方針を掲げています。
■(2) 企業文化
創業者から受け継ぐ「創造」「独創」「挑戦」の考え方をベースとして、失敗からも学びを得ながら環境変化に柔軟に適応する組織風土を大切にしています。一人ひとりの感性や創造性を高めるため、従業員の自己実現を支援する就労環境の整備や、芸術・文化等の活動を通じても独自の文化を醸成しています。
■(3) 経営計画・目標
中期経営計画「Vision2030」において、スローガンに「新しい『みる』を世界に」を掲げています。五感を通じて人々が幸せを実感できる商品やサービスの提供を目指し、マイルストーンとして定めた以下の数値目標達成に向けて事業を推進しています。
* 売上高:1,400億円超
* 営業利益率:12%
* ROE:12%
■(4) 成長戦略と重点施策
「1DAY戦略」と「オルソケラトロジー関連戦略」の2つを成長方針に設定しています。1日使い捨てレンズの需要拡大に対し、マレーシア新工場等の生産能力増強によるグローバル供給の拡大を図っています。また、近視人口の増加を背景に、アジアを中心にオルソケラトロジーレンズやケア用品の拡販にも注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を企業価値創出の源泉と位置づけ、「自律性」「専門性」「変革力」を備えた人材の育成と、多様な人材が能力を最大限発揮できる組織づくりを基本方針としています。階層別・専門教育等を通じた能力開発に加え、柔軟な働き方の推進や健康への配慮など、働きやすい職場環境の整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 38.4歳 | 12.0年 | 6,314,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 11.6% |
| 男性育児休業取得率 | 65.9% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 66.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 68.2% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 83.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、離職率(自己都合)(5.4%)、年次有給休暇取得率(86.7%)、女性役職者比率(16.6%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) コンタクトレンズ市場における競合激化
コンタクトレンズ市場では、国内外メーカーとの競争やインターネット販売市場の拡大、価格競争が激化しています。顧客ニーズやライフスタイルの変化に対し、適時適切な製品・サービスを提供できない場合、市場シェアの確保が困難となり、同社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 金利上昇等の資金調達環境の変化
同社は設備投資や運転資金を金融機関からの借入や社債等により調達しています。固定金利での調達を主体に短期的な金利上昇リスクに対応していますが、金融市場の変化による金利上昇が支払利息の増加を招き、利益を圧迫して同社の財政状態に影響を与えるリスクがあります。
■(3) 海外事業拡大に伴う為替変動リスク
同社は欧州、北米、アジアなどで事業を展開しており、日本円以外の通貨での取引を行っています。為替予約の実行等によりリスクの低減を図っていますが、急激な為替レートの変動が発生した場合、外貨建て売上高や仕入高の円換算額が増減し、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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