ラクス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ラクス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ラクスは、東京証券取引所プライム市場に上場し、経費精算システム「楽楽精算」等を提供するクラウド事業とIT人材事業を展開しています。クラウドサービスが堅調に推移したことに加え、広告宣伝費の最適化等により利益率が改善し、直近の連結業績は大幅な増収増益を達成しており、高い成長性と収益性を両立しています。


※本記事は、株式会社ラクスの有価証券報告書(第26期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ラクスってどんな会社?


経費精算や帳票発行などの業務効率化クラウドサービスと、ITエンジニア派遣サービスを展開しています。

(1) 会社概要


同社は2000年11月にアイティーブーストとして設立され、2001年にクラウド事業とIT人材事業を開始しました。2010年に現在の社名に変更し、2015年に上場を果たしています。近年はクラウド事業が大きく成長しており、選択と集中の一環として2026年4月にIT人材事業を譲渡し、クラウド専業体制へと事業転換を図っています。

同社グループは連結で3569名、単体で2190名の従業員を擁しています。筆頭株主は創業者の「中村崇則」で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は役員の「本松慎一郎」です。

氏名 持株比率
中村崇則 34.15%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 6.43%
本松慎一郎 4.98%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は中村崇則が務めており、取締役における社外取締役の比率は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
中村崇則 代表取締役社長 1996年日本電信電話入社。1997年デジタルネットワークサービス設立。2000年インフォキャスト取締役を経て、同年11月同社設立、現職。
本松慎一郎 取締役Chief AI Officer/最高AI責任者 2001年同社入社。2021年執行役員クラウド事業本部長、取締役クラウド事業本部長を経て、2025年7月より現職。
宮内貴宏 取締役経営管理本部長 1992年富士通入社。2003年アクトステージ代表取締役。2009年テクノラボ入社。2013年同社入社。2014年執行役員を経て、2023年6月より現職。


社外取締役は、荻田健治(元DG&パートナーズ代表取締役)、國本行彦(元インディペンデンツ代表取締役)、斉藤鈴華(元あみた綜合法律事務所経営参画)です。

2. 事業内容


同社グループは、「クラウド事業」および「IT人材事業」を展開しています。

クラウド事業


経費精算システム「楽楽精算」や帳票発行システム「楽楽明細」など、企業の業務効率化に貢献するクラウドサービスを企画・開発・運用し、法人向けに提供しています。直感的に扱えるサービスを理想とし、顧客要望を反映した機能改善を継続的に行っています。

サービス導入時の初期費用や提供期間にわたる利用料を受け取るモデルで収益を得ています。運営は主に同社および子会社のラクスライトクラウド等が行っています。

IT人材事業


ITエンジニアに特化した正社員派遣サービスを提供し、顧客企業に対してシステム開発やインフラ構築・運用、機械学習などの分野で高度な技術力を提供しています。社内研修やイベントを通じて特性を理解し、顧客ニーズに対する最適な提案を行っています。

派遣期間における稼働実績に応じた料金を顧客から受け取ることで収益を得ています。運営は主に子会社のラクスパートナーズが行っていましたが、同事業は譲渡されています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間において、売上高は一貫して力強い成長を継続しています。経常利益も大幅な増益基調にあり、利益率が7.7%から28.9%へと飛躍的に向上するなど、高成長と高収益化を同時に達成していることが伺えます。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 206億円 274億円 384億円 489億円 603億円
経常利益 16億円 17億円 56億円 102億円 174億円
利益率(%) 7.7% 6.1% 14.6% 20.9% 28.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 11億円 13億円 42億円 80億円 133億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な拡大に伴い、売上総利益と営業利益がともに大きく伸びています。売上総利益率は高い水準を維持しており、営業利益率も前期からさらに向上し、収益性の高さが顕著です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 489億円 603億円
売上総利益 363億円 454億円
売上総利益率(%) 74.2% 75.3%
営業利益 102億円 173億円
営業利益率(%) 20.9% 28.7%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が87億円(構成比31.0%)、給料手当が87億円(同31.0%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力であるクラウド事業は、楽楽精算等の新規受注の積み上げや価格改定、広告宣伝費の最適化により大幅な増収増益を牽引しました。IT人材事業も稼働エンジニア数の増加と高稼働率により順調に売上と利益を拡大しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
クラウド事業 419億円 518億円 94億円 160億円 31.0%
IT人材事業 70億円 85億円 8億円 13億円 15.5%
連結(合計) 489億円 603億円 102億円 173億円 28.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況です。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 90億円 134億円
投資CF -35億円 -28億円
財務CF -12億円 -80億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は55.4%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も71.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「ITサービスで企業の成長を継続的に支援します」というミッションを掲げ、ITサービスを通じたデジタル化の推進により、企業の成長と働く人々の幸せに貢献することを目指しています。また、ビジョンとして「日本を代表する企業になる」を掲げ、これを達成すべきゴールとして事業を展開しています。

(2) 企業文化


ゴール達成のための思考と行動指針に特徴があります。思考は「ユニークネス」と称し、ゴールオリエンテッドや継続的な進化など4項目で構成されます。行動指針は「ラクスリーダーシッププリンシプル(RLP)」と称し、「自分自身の会社だと思う」「全体最適視点をもつ」など11項目を定め、高い目標に挑戦する文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


2027年3月期から2029年3月期の3カ年を対象とする中期経営計画を策定し、クラウド事業に経営資源を集中して成長と高収益を両立するクオリティグロースを目指しています。

・クラウド事業売上高の3カ年のオーガニックグロース:CAGR15%以上
・正社員1名当たり売上高:3000万円以上(2029年3月期)
・特別損益等、一過性要因の影響を除いたROE:30%以上を堅持

(4) 成長戦略と重点施策


IT人材事業の譲渡によりクラウド専業体制へ移行し、成長性の高いサービスへ経営資源を重点配分します。既存プロダクト群の強化に加え、新サービスの開発やM&Aによるポートフォリオの多様化を推進します。また、生成AIをはじめとする最新技術のプロダクトへの実装と継続的な機能改善をスピード感を持って進めます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「安心して働き、成長し続けられる」環境構築を重視しています。ラクスリーダーシッププリンシプル(RLP)を全社的な育成・評価の基盤とし、多様な学習機会の提供と自律的なキャリア形成を支援しています。また、社員の多様な価値観やライフステージに応じた柔軟な働き方を可能とする制度拡充を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 32.7歳 3.2年 6,647,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.8%
男性育児休業取得率 75.8%
男女賃金差異(全労働者) 77.6%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 78.8%
男女賃金差異(非正規雇用労働者) 81.9%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇消化率(88.1%)、全社育休取得率(83.5%)、健康診断受診率(98.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 経営環境の変化と競合

IT導入の意思決定先送りや、類似サービスの増加による競争激化が懸念されます。大手企業の代替製品登場や価格・機能面での競争により、解約や新規獲得の機会損失が生じ、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 生成AIを含む技術革新への対応

変化の激しいインターネット業界において、新技術の開発や導入が遅れた場合、サービスの競争力が低下する恐れがあります。とくに生成AI技術の進展に伴い、新規サービスの台頭による競争環境の激変が生じるリスクがあります。

(3) 情報管理とシステムトラブル

多数の機密情報や個人情報を取り扱っているため、サイバー攻撃やシステム障害、人為的過誤によって情報漏洩やサービス停止が発生した場合、社会的信用の失墜や損害賠償請求等により、事業展開に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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