※本記事は、株式会社ラクス の有価証券報告書(第25期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ラクスってどんな会社?
クラウドサービス「楽楽精算」などで企業のデジタル化を支援し、IT人材派遣も展開する高成長企業です。
■(1) 会社概要
2000年に設立され、翌年にはクラウド事業とITエンジニアスクール事業を開始しました。2015年に東京証券取引所マザーズ市場へ上場し、2021年には市場第一部へ変更するなど着実に成長を遂げています。近年では、メールマーケティング事業等の子会社化や再編を経て、現在のクラウド事業とIT人材事業の2軸体制を確立しました。
現在の従業員数は連結で3,086名、単体で1,907名です。大株主構成については、筆頭株主は創業者の中村崇則氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行です。安定した株主基盤のもと、経営が行われています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 中村崇則 | 33.68% |
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 7.65% |
| 井上英輔 | 4.91% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性1名の計9名で構成され、女性役員比率は11.1%です。代表取締役社長は中村崇則氏が務めています。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中村 崇則 | 代表取締役社長 | 日本電信電話を経て、2000年にインフォキャスト設立。同年11月に同社を設立し、代表取締役社長に就任。2000年より現職。 |
| 本松 慎一郎 | 取締役 | 2001年に同社入社。執行役員、クラウド事業本部長を経て、2024年4月より取締役を務める。 |
| 宮内 貴宏 | 取締役経営管理本部長 | 富士通、テクノラボ等を経て、2013年に同社入社。2014年に執行役員となり、2023年6月より現職。 |
社外取締役は、荻田健治(元DG&パートナーズ代表取締役)、國本行彦(株式会社Kips代表取締役)、斉藤鈴華(あみた綜合法律事務所経営参画)です。
2. 事業内容
同社グループは、「クラウド事業」および「IT人材事業」を展開しています。
■(1) クラウド事業
経費精算システム「楽楽精算」や電子請求書発行システム「楽楽明細」をはじめ、販売管理、勤怠管理、メール共有・管理など、企業の業務効率化に貢献する多様なSaaS型サービスを開発・提供しています。直感的に使える操作性を重視し、ITに不慣れな顧客でも導入しやすい製品群を展開しています。
収益は、主に顧客企業からの月額利用料(サブスクリプション)や初期導入費用から成ります。継続的なサービス利用に基づくストック型ビジネスモデルが特徴です。運営は主に同社が行っており、一部事業をグループ会社のラクスライトクラウド等が担っています。
■(2) IT人材事業
ITエンジニアに特化した正社員派遣サービスを提供しています。Webアプリケーション開発、インフラ構築・運用、機械学習、品質管理などの領域で、顧客企業のニーズに合わせた技術支援を行っています。エンジニアスクールのノウハウを活かした育成体制により、エンジニアの品質向上に注力しています。
収益は、顧客企業へのエンジニア派遣に基づく派遣料金から成ります。エンジニアの稼働実績に応じたフロー型収益が中心ですが、長期契約による安定性も兼ね備えています。運営は主に子会社のラクスパートナーズが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して右肩上がりで成長しており、特にここ数年は大幅な増収が続いています。利益面でも、一時的な投資局面を経て、直近では経常利益率が20%を超える高収益体質へと回帰しており、売上・利益ともに過去最高水準を更新する力強い成長トレンドにあります。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 154億円 | 206億円 | 274億円 | 384億円 | 489億円 |
| 経常利益 | 39億円 | 16億円 | 17億円 | 56億円 | 102億円 |
| 利益率(%) | 25.2% | 7.7% | 6.1% | 14.6% | 20.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 26億円 | 8億円 | 8億円 | 42億円 | 80億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も順調に拡大しています。売上総利益率は70%台の高水準を維持しており、効率的な事業運営が継続しています。営業利益および営業利益率は前期と比較して大きく伸長しており、成長投資と利益創出のバランスが最適化されつつある様子が見て取れます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 384億円 | 489億円 |
| 売上総利益 | 276億円 | 363億円 |
| 売上総利益率(%) | 71.9% | 74.2% |
| 営業利益 | 56億円 | 102億円 |
| 営業利益率(%) | 14.5% | 20.8% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が95億円(構成比36%)、給料手当が72億円(同28%)を占めています。売上原価においては、労務費等が主な構成要素となっています。
■(3) セグメント収益
クラウド事業は、「楽楽精算」「楽楽明細」を中心に堅調な需要を取り込み、価格改定やコストコントロールの効果もあって大幅な増収増益を達成しました。IT人材事業も、稼働エンジニア数の増加と高稼働率の維持により、売上・利益ともに伸長しています。両セグメントともに好調に推移しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| クラウド事業 | 325億円 | 419億円 | 50億円 | 94億円 | 22.4% |
| IT人材事業 | 59億円 | 70億円 | 6億円 | 8億円 | 11.7% |
| 連結(合計) | 384億円 | 489億円 | 56億円 | 102億円 | 20.8% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は、営業活動で稼いだキャッシュを原資に投資を行いながら、財務活動による支出(借入返済や配当)も行っている「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 53億円 | 90億円 |
| 投資CF | -49億円 | -35億円 |
| 財務CF | 6億円 | -12億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は45.3%で市場平均を大きく上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は69.4%で市場平均を大きく上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「ITサービスで企業の成長を継続的に支援します」というミッションを掲げ、デジタル化の推進を通じて企業の成長と働く人々の幸せに貢献することを目指しています。また、「日本を代表する企業になる」というビジョンを掲げ、これを達成すべきゴールとして位置付けています。
■(2) 企業文化
同社は「ラクスリーダーシッププリンシプル(RLP)」と称する11項目の行動指針を定めています。「自分自身の会社だと思う」「全体最適視点をもつ」「誠意をもって人と接する」「失敗を許容する」「結果にこだわる」などの具体的な行動様式を示し、これを全社的な育成・評価・制度設計の基盤としています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、1株当たり利益(EPS)の持続的成長を最重要指標として掲げています。現在の中期経営目標では、2021年3月期を基準とした5ヵ年で高い売上成長を目指しつつ、最終年度に向けては収益性の改善を図る方針です。
* 5カ年の売上高CAGR(年平均成長率):31%~32%
* 2026年3月期 当期純利益:100億円以上
* 2026年3月期 純資産:200億円以上
■(4) 成長戦略と重点施策
今後の成長に向けて、主力製品である「楽楽シリーズ」へ経営資源を重点配分し、市場シェアの獲得と収益力の向上を図ります。また、新サービスの開発やM&Aによるラインナップ拡充、営業・販売体制の強化、マーケティングの高度化を推進します。さらに、開発拠点の海外展開(インドネシア等)を含めた開発力の強化にも注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人の成長が組織の成長につながる」という考えのもと、全社員が自律的に学び挑戦できる環境づくりを重視しています。RLPを行動指針として浸透させ、リーダーシップや倫理観を持つ人材の育成を目指しています。また、多様な価値観に応じた柔軟な働き方や心身の健康を支える制度を整備し、エンゲージメント向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 32.5歳 | 3.0年 | 6,486,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 4.3% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 72.0% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 77.8% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 79.1% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) | 86.5% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇消化率(89.5%)、月間平均時間外労働時間(18.2時間)、全社育児休業取得率(79.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 競合他社による競争激化
クラウドサービス市場は参入障壁が必ずしも高くなく、市場の成熟に伴い競争が激化しています。資金力やブランド力のある大手企業の参入や、競合他社の積極的な施策により、顧客の解約や新規獲得の機会損失が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 特定サービスへの依存
同社の業績は、主力サービスである経費精算システム「楽楽精算」および電子請求書発行システム「楽楽明細」に大きく依存しています。これらのサービスが競合製品との競争激化等により売上高を大きく減少させた場合、グループ全体の業績に重大な影響を与える可能性があります。
■(3) システム障害およびサイバー攻撃
サービス提供において、アクセス集中や電力供給停止によるシステム停止、高度化するサイバー攻撃、人為的ミスによるデータ消失等のリスクがあります。これらの事象が発生した場合、サービス停止や社会的信用の毀損を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。



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