※本記事は、株式会社アカツキ の有価証券報告書(第15期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アカツキってどんな会社?
モバイルゲーム事業を主軸に、IP創出やコミック事業を展開するエンターテインメント企業です。
■(1) 会社概要
2010年に設立され、SNSプラットフォーム向けゲームの提供を開始しました。2014年には台湾に子会社を設立して海外展開を本格化させ、2015年に『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』をリリースしました。2016年に東証マザーズへ上場し、翌2017年には東証一部へ市場変更を果たしました。2022年の東証プライム市場への移行とともに、ゲーム事業を分社化し持株会社体制へ移行しています。
同社グループの連結従業員数は503名、単体では32名です。大株主構成については、筆頭株主は創業者の香田哲朗氏で、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は資本業務提携関係にある事業会社です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 香田 哲朗 | 10.21% |
| 日本マスタートラスト信託銀行 | 9.70% |
| ソニーグループ | 9.69% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性0名の計7名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は香田哲朗氏が務めています。社外取締役比率は50.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 香田 哲朗 | 代表取締役社長 | 2009年アクセンチュア入社を経て、2010年6月に同社を創業し代表取締役に就任。子会社代表や他社社外取締役を兼任しつつ、2020年6月より現職。 |
| 石倉 壱彦 | 取締役副社長CFO兼CSO | 2005年あずさ監査法人入所。同社監査役、執行役員を経て、子会社Akatsuki Ventures代表取締役社長等を歴任。2025年6月より現職。 |
社外取締役は、勝屋久(勝屋久事務所代表)、水口哲也(Enhance Experience Inc.代表取締役CEO)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ゲーム事業」、「コミック事業」および「その他」事業を展開しています。
■ゲーム事業
スマートフォン向けゲームの開発および提供を行っています。主なタイトルには、他社との協業による『ドラゴンボールZ ドッカンバトル』や『ロマンシング サガ リ・ユニバース』などがあります。
収益は、主にプラットフォームを通じたユーザーの課金収入や、協業先からの配分金等から得ています。運営は主に株式会社アカツキゲームスが行っています。
■コミック事業
縦読みフルカラーコミック等の企画、制作および配信を行っています。「HykeComic」アプリの運営や、制作したコミックを他社アプリへ掲載しています。
収益は、アプリ内でのコンテンツ課金や、他社プラットフォームでの配信による収入等から得ています。運営は株式会社HykeComicが行っています。
■その他
上記報告セグメントに含まれない事業として、IPソリューション事業等を行っています。
収益は、オンラインくじ販売サービス「Slash Gift」等のサービス提供による収入から得ています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は300億円台から200億円台前半へと推移しており、落ち着きを見せています。経常利益も変動があり、2024年3月期には28億円まで低下しましたが、2025年3月期には42億円へと回復しています。利益率は10%台から30%台の間で推移しており、比較的高い収益性を維持しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 311億円 | 263億円 | 243億円 | 240億円 | 237億円 |
| 経常利益 | 112億円 | 79億円 | 52億円 | 28億円 | 42億円 |
| 利益率(%) | 35.9% | 29.9% | 21.4% | 11.8% | 17.9% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 63億円 | 49億円 | 36億円 | 35億円 | -27億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で微減となりましたが、売上総利益は微増を確保しています。利益面では、営業利益率が10%台後半へと改善しました。コストコントロールや収益性の高い事業への注力が数字に表れており、安定した収益基盤を維持しつつ利益率の向上を図っている様子がうかがえます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 240億円 | 237億円 |
| 売上総利益 | 135億円 | 137億円 |
| 売上総利益率(%) | 56.3% | 57.9% |
| 営業利益 | 27億円 | 39億円 |
| 営業利益率(%) | 11.2% | 16.6% |
販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が52億円(構成比53%)、支払手数料が10億円(同10%)を占めています。売上原価に関しては、その多くを労務費や外注費等のコンテンツ制作・運営費用が占めていると考えられます。
■(3) セグメント収益
ゲーム事業は、既存タイトルの堅実な運用と新規開発への投資を進めましたが、研究開発費の増加等により減収となりました。コミック事業は、オリジナル作品の制作や他社プラットフォーム展開が奏功し、大幅な増収と黒字転換を達成しました。その他事業も、オンラインくじサービスの成長により増収増益となりました。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ゲーム事業 | 225億円 | 212億円 | 41億円 | 40億円 | 19.0% |
| コミック事業 | 8億円 | 11億円 | -4億円 | 1億円 | 8.6% |
| その他 | 7億円 | 13億円 | -1億円 | 2億円 | 13.9% |
| 調整額 | -1億円 | -1億円 | -8億円 | -4億円 | - |
| 連結(合計) | 240億円 | 237億円 | 27億円 | 39億円 | 16.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -1億円 | 36億円 |
| 投資CF | -1億円 | -12億円 |
| 財務CF | -32億円 | -21億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は4.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「世界をエンターテインする。クリエイターと共振する。」をミッションに掲げています。ゲーム事業を主軸としつつコミック事業にも挑戦し、デジタルコンテンツを武器にグローバル市場で競争できる企業を中長期的に目指しています。
■(2) 企業文化
同社グループは、「成長とつながり」という組織の哲学を大切にしています。インスピレーショナルなものづくりや働くことの幸福を感じられる組織として成長することを目指し、従業員の個性に配慮したサポートや、自他ともに持続可能な成長に向けた活動を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、継続的な企業価値の向上を経営上の重要課題と認識しており、売上高および営業利益を重要な経営指標として位置づけています。具体的な数値目標については明示されていませんが、長期間の継続運営による大きなリターンを目指す方針です。
■(4) 成長戦略と重点施策
国内市場に閉じたプロジェクトへの投資を凍結し、グローバルポテンシャルを持つ大型プロジェクトへ集中投資する方針です。ゲーム事業では3D・マルチデバイス・多言語対応を見据えた開発を進め、コミック事業ではオリジナル作品の制作と海外展開を強化します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
市場の拡大やユーザーの多様化に対応するため、優秀な人材の確保と育成が必要であると考えています。採用部門の充実やイベント開催により認知度を向上させるとともに、社内外の研修プログラムや目標管理制度、1on1制度などを通じて人材育成と定着を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 37.3歳 | 6.0年 | 8,891,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 賃金差異(全労働者) | 78.0% |
| 賃金差異(正規雇用) | 75.9% |
| 賃金差異(非正規雇用) | 101.7% |
※同社は公表義務の対象ではないため、上記は主要な連結子会社である株式会社アカツキゲームスの数値を記載しています。また、同社は選択項目により女性管理職比率および男性育児休業取得率の記載を省略しています。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 市場環境と競争激化について
ゲーム市場および電子コミック市場は拡大傾向にありますが、予期せぬ法的規制や通信事業者の動向により成長が鈍化する可能性があります。また、多数の競合他社が存在し、競争が激化した場合には利用者数が減少し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は開発力や運営力を活かしたコンテンツ提供で対応を図っています。
■(2) プラットフォーム事業者への依存
同社のサービスはAppleやGoogle等のアプリマーケットを通じて提供されており、各事業者の規約遵守や手数料支払いが求められます。手数料率の変更や事業戦略の転換など、プラットフォーム運営事業者の動向によっては、同社グループの事業や利益率に影響が出る可能性があります。
■(3) ユーザー嗜好の変化への対応
アイテム課金制ゲームや有料コミックを提供していますが、ユーザーの嗜好が変化し、これらのサービスに対するニーズが低下した場合、収益が得られなくなる可能性があります。同社は既存ユーザーからの意見収集やコンテンツの充実を通じて、ニーズの変化に対応していく方針です。



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