オリエンタル白石 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

オリエンタル白石 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の総合建設会社。プレストレストコンクリート(PC)技術とニューマチックケーソン工法を核に、橋梁やインフラの建設・補修を行う。当期は大型工事の端境期や一部工事の遅れ、完了工事の減少等が響き、売上高646億円、営業利益54億円と減収減益で着地しました。


※本記事は、オリエンタル白石株式会社 の有価証券報告書(第74期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. オリエンタル白石ってどんな会社?


独自のPC技術とニューマチックケーソン工法を強みに、社会インフラの整備・保全を行う建設のエキスパートです。

(1) 会社概要


同社は1952年設立のオリエンタル建設と、1933年設立の白石が2007年に合併して発足しました。2021年には親会社であったOSJBホールディングスを吸収合併し、東証一部(現プライム)へ上場しました。PC橋梁やケーソン工法を軸に事業を展開し、2025年には菊政、榮開発を子会社化するなど規模を拡大しています。

同グループは連結1,145名、単体790名の従業員を擁する企業です。筆頭株主は資本業務提携先である総合商社の伊藤忠商事であり、次いで資産管理業務を行う信託銀行2行が名を連ねています。商社との提携による事業機会の拡大や、安定した株主構成を背景に、インフラ整備事業を推進しています。

氏名 持株比率
伊藤忠商事 17.35%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 13.59%
日本カストディ銀行(信託口) 7.02%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名(注:データ上の集計値)の計11名で構成され、女性役員比率は18.1%です。代表取締役社長安全統括本部長は大野達也氏が務めています。社外取締役比率は55%です。

氏名 役職 主な経歴
大野達也 代表取締役社長安全統括本部長 1983年オリエンタルコンクリート(現同社)入社。施工・技術本部長、土木本部長等を経て2017年代表取締役社長に就任。OSJBホールディングス社長も歴任し、2025年4月より現職。
正司明夫 取締役専務執行役員技術本部長技術本部東日本業革推進部長技術本部イノベーション・ディビジョン長情報システム担当 1985年入社。施工・技術本部技術部長、土木本部技術部長等を歴任。2024年6月取締役専務執行役員に就任し、技術本部イノベーション・ディビジョン長等を兼務。
橋本幸彦 取締役常務執行役員管理本部長法務コンプライアンス担当 1985年三和銀行(現三菱UFJ銀行)入行。市場営業部長等を経て2014年同社入社。経営企画、安全・品質・環境担当等を歴任し、2024年6月取締役常務執行役員に就任。
水野敏昭 取締役常務執行役員営業本部長建築担当 1985年白石(現同社)入社。東京支店長、営業本部長等を歴任。2024年6月取締役常務執行役員に就任し、営業本部長として建築担当も務める。
照井満 取締役常務執行役員経営企画部長 1987年三井建設(現三井住友建設)入社。同社土木事業本部長、日本橋梁副社長等を歴任。2025年4月常務執行役員経営企画部長となり、2025年6月より現職。


社外取締役は、加藤英明(元双日プラネット社長)、森永博之(元アイカ工業常務)、小島公彦(公認会計士・税理士)、千葉直人(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設事業」、「鋼構造物事業」、「港湾事業」および「その他」事業を展開しています。

建設事業


プレストレストコンクリート(PC)を用いた橋梁などの土木構造物の建設工事や製造販売、ニューマチックケーソン工法による基礎工事、橋梁の補修補強工事、PC建築の設計施工を行っています。また、建設機材の設計・製作や土木工事請負、建設機械の賃貸も手掛けています。主な顧客は国や地方自治体、高速道路会社です。

工事の進捗や製品の引き渡しに応じて、発注者である官公庁や民間企業から請負代金を受け取る収益モデルです。運営は主にオリエンタル白石が行うほか、タイコー技建、榮開発、菊政、菊政工務店などの子会社も各分野で事業を展開しています。

鋼構造物事業


橋梁などの鋼構造物の設計、製作、架設工事および補修補強等の建設工事を行っています。高い技術力が求められる鋼橋の分野において、新設工事から維持管理まで幅広く対応しており、公共インフラの整備に貢献しています。

国や地方自治体、高速道路会社などの発注者から、工事の完成引き渡し等に応じて請負代金を受け取ります。この事業は、連結子会社である日本橋梁が専門的に運営を行っています。

港湾事業


港湾、土木、建築工事を行っています。港湾施設や関連する土木構造物の建設・整備を通じて、物流や産業の基盤を支える役割を担っています。

発注者からの工事請負代金が主な収益源です。この事業は、連結子会社である山木工業が運営を行っています。

その他


太陽光発電による売電事業、不動産賃貸事業、インターネットによるホームページの企画・制作・運営などを行っています。建設関連以外の多角的な事業展開を通じて、収益の安定化を図っています。

電力会社からの売電収入やテナントからの賃貸料などが収益源となります。運営は、オリエンタル白石および株式会社クリエイティブ・ラボが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の推移を見ると、売上高は600億円前後で推移してきましたが、当期は前期比で減収となりました。利益面でも、売上減少に伴い経常利益、当期利益ともに減少しています。利益率は低下傾向にあり、大型工事の端境期やコスト増の影響が見受けられます。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 552億円 607億円 615億円 674億円 646億円
経常利益 52億円 55億円 54億円 66億円 56億円
利益率(%) 9.3% 9.0% 8.8% 9.8% 8.6%
当期利益(親会社所有者帰属) 37億円 38億円 36億円 46億円 38億円

(2) 損益計算書


前期と比較すると、売上高の減少に伴い売上総利益が減少し、売上総利益率は低下しました。販売費及び一般管理費は増加しており、営業利益率も低下しています。売上原価の減少幅よりも売上の減少幅が大きく、利益を圧迫する形となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 674億円 646億円
売上総利益 126億円 117億円
売上総利益率(%) 18.7% 18.1%
営業利益 65億円 54億円
営業利益率(%) 9.7% 8.4%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が23億円(構成比36.3%)、研究開発費が10億円(同15.8%)を占めています。売上原価については、材料費、労務費、外注費、経費等が含まれる完成工事原価が売上原価のほぼ全てを占めています。

(3) セグメント収益


建設事業、鋼構造物事業、港湾事業の主要3セグメントすべてで減収減益となりました。特に鋼構造物事業と港湾事業での減収幅が大きく、建設事業でも微減となりました。その他事業は増収増益となりましたが、全体への寄与は限定的です。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
建設事業 550億円 540億円 59億円 50億円 9.3%
鋼構造物事業 85億円 73億円 5.6億円 2.7億円 3.7%
港湾事業 37億円 30億円 -0.2億円 0.6億円 2.0%
その他 2.1億円 2.6億円 0.4億円 0.9億円 33.1%
調整額 -2.8億円 -3.3億円 0.4億円 0.9億円 -
連結(合計) 674億円 646億円 65億円 54億円 8.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFで得た資金を、子会社株式の取得や設備投資などの投資活動、および配当支払や自己株式取得などの財務活動に充当しています。本業でキャッシュを生み出しながら、将来の成長投資と株主還元をバランスよく実施している健全型と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 53億円 78億円
投資CF -10億円 -52億円
財務CF 20億円 -29億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.1%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「人と技術を活かし、常に社会から必要とされる集団を目指す。」を経営理念として掲げています。公共事業を中心とした社会基盤の整備と維持管理事業を通じて社会の発展に貢献し、社会から支持され信頼される企業となることで企業価値を高めていくことを基本方針としています。

(2) 企業文化


同社は、「人財と技術の多様性を活かし、社会インフラ整備の様々な需要に応え、挑戦と前進を続ける企業集団」を目指す姿としています。また、2025年1月の重大事故を受け、「安全のオリエンタル白石」の実現に向け、全社一丸となって安全管理体制の強化や意識改革に取り組む姿勢を強く打ち出しています。

(3) 経営計画・目標


2026年3月期を最終年度とする中期経営計画において、以下の数値目標を掲げています。
* 売上高:730億円
* 営業利益:62億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:45億円
* ROE:9%以上

※なお、最新の業績予想では、売上高660億円、営業利益43億円を見込んでいます。

(4) 成長戦略と重点施策


基幹事業(PC土木、ニューマチックケーソン等)では公共工事のシェア拡大と技術的優位性の発揮による受注確保、連結事業(鋼構造物、港湾)では新設・補修のバランス最適化とカーボンニュートラルポートへの対応を進めます。また、M&Aを含む新規・周辺事業の拡大、DXやプレキャスト化による生産性向上、サステナブル経営への取り組みを推進し、企業価値の向上を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人財と技術の多様性を活かす働きやすさと働きがいのある魅力的な企業づくり」を掲げ、多様な人材の確保と育成に注力しています。教育・研修への投資促進による競争力ある人財の構築、多様な働き方・就業制度の整備、エンゲージメント向上施策などを通じ、組織力の強化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.7歳 19.3年 8,300,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.1%
男性育児休業取得率 23.1%
男女賃金差異(全労働者) 56.1%
男女賃金差異(正規雇用) 63.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 37.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、新卒女性採用率(19.4%)、女性・外国人・中途採用の社員割合(29.5%)、障害者雇用率(2.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 公共事業への依存と市場リスク


同社グループの事業は国や地方自治体、高速道路会社からの公共事業に大きく依存しています。そのため、公共事業費の削減や発注計画の変更、延期などが発生した場合、受注高や売上高が減少し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。これに対し、受注情報収集の強化や営業戦略会議での対応策検討を行っています。

(2) 資材価格・労務費の高騰リスク


建設資材や労務費の価格が請負契約金額への転嫁が困難な水準で高騰した場合、工事採算が悪化し、業績に影響を与える可能性があります。入札時の価格動向確認や、施工中の価格変動について発注者との協議を通じ、請負金額への反映に努めています。

(3) 重大事故の発生リスク


建設事業において大規模な事故が発生した場合、社会的信用の失墜、指名停止等の行政処分、損害賠償などにより経営に多大な影響を及ぼす可能性があります。同社は安全を最優先としていますが、2025年1月に発生した死亡事故を受け、安全統括本部の設置や再発防止策の徹底など、安全管理体制の抜本的強化を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。