オリエンタル白石 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

オリエンタル白石 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場するオリエンタル白石は、プレストレストコンクリートやニューマチックケーソン等の独自技術を活用し、社会基盤の整備・維持管理を行う建設事業を主力としています。直近の連結業績では、受注高の増加を背景に増収となったものの、事業環境の変化等により経常利益は微減の増収減益です。


※本記事は、オリエンタル白石株式会社の有価証券報告書(第75期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. オリエンタル白石ってどんな会社?


同社はプレストレストコンクリートとニューマチックケーソン技術を強みとし、社会インフラの整備を担う企業です。

(1) 会社概要


1952年に設立されたオリエンタルコンクリート(のちのオリエンタル建設)と、1933年創業の白石が2007年に合併し、現在のオリエンタル白石が誕生しました。1996年に東証一部へ上場後、2011年に日本橋梁と経営統合、2021年に持株会社を吸収合併し、2022年にプライム市場へ移行しています。

従業員数は連結で1,166名、単体で791名を擁しています。筆頭株主は事業会社である伊藤忠商事であり、第2位は資産管理業務等を行う日本マスタートラスト信託銀行、第3位は金融機関であるゴールドマン・サックス証券の常任代理人となっています。

氏名 持株比率
伊藤忠商事 19.17%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 12.38%
GOLDMAN SACHS INTERNATIONAL(常任代理人 ゴールドマン・サックス証券) 7.47%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性2名の計12名で構成され、女性役員比率は16.6%です。代表取締役社長は照井満氏が務めており、取締役会に占める社外取締役の割合は50.0%です。

氏名 役職 主な経歴
照井 満 代表取締役社長 1987年三井建設入社。同社土木事業本部長等を経て2026年より現職。
大野 達也 取締役 1983年オリエンタルコンクリート入社。同社代表取締役社長等を経て2026年より現職。
正司 明夫 取締役専務執行役員技術本部長情報システム担当技術本部業革推進部長技術本部イノベーション・ディビジョン長 1985年入社。技術本部長等を経て2026年より現職。
橋本 幸彦 取締役常務執行役員管理本部長法務コンプライアンス担当経営企画担当 1985年三和銀行入行。同社管理本部長等を経て2026年より現職。
水野 敏昭 取締役常務執行役員営業本部長建築担当 1985年白石入社。同社東京支店長等を経て2025年より現職。


社外取締役は、加藤英明氏(元双日プラネット社長)、酢谷裕子氏(鈴木和夫・きほ法律事務所弁護士)、森永博之氏(元アイカ工業常務)、磯和春美氏(元毎日新聞社代表室長)、小島公彦氏(バリューアドバイザリー代表社員)、千葉直人氏(DT弁護士法人弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「建設事業」、「鋼構造物事業」、「港湾事業」および「その他」事業を展開しています。

建設事業


同事業では、プレストレストコンクリートの建設工事やニューマチックケーソン工法を用いた建設・補修補強工事、コンクリート構造物の調査・診断等を提供しています。国や地方自治体、高速道路会社などの公共事業発注者が主な顧客です。

収益は、建設工事や補修補強等の請負代金、コンクリート製品や建設機材の製造・販売代金から得ています。事業の運営は、主に親会社であるオリエンタル白石のほか、タイコー技建や榮開発、デンカリノテックなどの連結子会社が担当しています。

鋼構造物事業


橋梁等を中心とする鋼構造物の設計、製作、架設に加え、補修補強工事を提供しています。公共インフラを管轄する官公庁や高速道路会社が主な顧客となります。

収益は、鋼構造物の建設工事や補修工事の請負代金から得ています。事業の運営は、主に連結子会社である日本橋梁が単独で担当し、設計から製作・施工までの一貫したサービス体制を構築しています。

港湾事業


港湾設備の補修や海岸保全を目的とした港湾工事のほか、一般土木工事および建築工事を提供しています。主に地方自治体などの公共セクターが顧客となります。

収益は、港湾施設や土木建築工事の請負代金として受け取っています。事業の運営は、福島県を中心に地域密着型の事業展開を行う連結子会社である山木工業が担当しています。

その他


主力セグメントに含まれない周辺事業として、太陽光発電による売電事業、不動産賃貸事業、およびインターネットによるホームページの企画・制作・運営事業を提供しています。

収益は、電力会社への売電収入、テナントからの賃貸料、およびインターネット関連サービスの利用料等から得ています。事業の運営は、オリエンタル白石および連結子会社のクリエイティブ・ラボが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績推移を見ると、売上高は607億円から689億円へと堅調に拡大しています。経常利益は55億円前後で安定して推移していますが、原材料費や労務費の高騰等の影響もあり、利益率は9.0%から8.0%へとやや低下傾向にあります。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上高 607億円 615億円 674億円 646億円 689億円
経常利益 55億円 54億円 66億円 56億円 55億円
利益率(%) 9.0% 8.8% 9.8% 8.6% 8.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 29億円 36億円 46億円 38億円 36億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で約6.7%増加し、売上総利益も拡大しました。しかし、企業結合に伴うのれん償却費などの販売費及び一般管理費が増加したことにより、営業利益は微減となり、営業利益率も前期の8.4%から7.7%へと低下しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 646億円 689億円
売上総利益 117億円 125億円
売上総利益率(%) 18.1% 18.1%
営業利益 54億円 53億円
営業利益率(%) 8.4% 7.7%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給料及び手当が26億円(構成比36.6%)、研究開発費が9億円(同12.6%)を占めています。また、売上原価のうち、外注費が151億円(同40.2%)、経費が121億円(同32.2%)、材料費が104億円(同27.6%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の建設事業は、M&Aによる連結子会社増加の寄与もあり増収となった一方、新設橋梁工事等の減少により営業利益は低下しました。鋼構造物事業と港湾事業はともに増収増益を達成しており、特に港湾事業は大幅な利益成長を見せています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
建設事業 540億円 568億円 50億円 47億円 8.3%
鋼構造物事業 73億円 79億円 3億円 3億円 3.9%
港湾事業 30億円 39億円 1億円 2億円 6.1%
その他 3億円 2億円 1億円 1億円 24.1%
連結(合計) 646億円 689億円 54億円 53億円 7.7%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


当期のキャッシュ・フローは、本業・投資・財務いずれもマイナスで資金繰りが危機的となる末期型の傾向を示しています。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 78億円 -1億円
投資CF -52億円 -29億円
財務CF -29億円 -15億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は64.2%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は、「人と技術を活かし、常に社会から必要とされる集団を目指す。」を経営理念として掲げています。公共事業を中心とした社会基盤の整備と維持管理にかかわる事業活動を通じ、持続可能な社会への貢献と企業価値の向上を追求することを基本方針としています。

(2) 企業文化


同社は、サステナビリティ基本方針において、個人の人権や多様な価値観を尊重し、個々の能力を最大限活かせる働きがいのある職場づくりを重視しています。また、協力会社とは公平で信頼感のある関係を維持し、人材育成やリスク管理において一体となった取り組みを実践する企業文化が特徴です。

(3) 経営計画・目標


2026年度から2028年度までの3カ年の中期経営計画において、「人財と技術の多様性を活かし、社会インフラ整備の様々な需要に応え、挑戦と前進を続ける企業集団」という2030年像の実現を目指しています。

* 売上高750億円
* 営業利益40億円

(4) 成長戦略と重点施策


「変革の完遂と領域を超える挑戦」をスローガンに掲げ、基幹事業における確実な完遂と社会的信頼の回復に向けた経営基盤の再整備に尽力しています。特に「安全文化の醸成」を最優先事項とし、ガバナンス強化やM&Aを活用した事業領域の拡大、海外事業展開などを推進することで、成長投資と株主還元の両立を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人的資本の拡充と担い手の育成による事業継続と生産性の向上」および「ウェルビーイングを原動力とした自律的エンゲージメント」を基本方針としています。将来を担う多様な人財の採用、個々の能力を引き出す教育強化、働きがいを高める快適な職場環境の整備、ダイバーシティ&インクルージョンの展開に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 45.3歳 18.7年 8,895,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.2%
男性育児休業取得率 62.5%
男女賃金差異(全労働者) 51.4%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 61.3%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 24.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障害者雇用率(3.2%)、新卒女性採用率(11.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 公共投資の変動による市場リスク


同社の事業は大半が国・地方自治体や高速道路会社からの公共事業に依存しています。予想を超える公共投資の削減が行われた場合、目標とする受注が確保できず、売上高の減少を通じて業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。

(2) 資材価格・労務費上昇リスク


建設業界における資材価格や労務費の急激な高騰が発生し、それを請負金額に適切に反映することが困難な水準に達した場合、工事原価の上昇による利益の圧迫を招き、同社グループの業績に影響を与える可能性があります。

(3) 資材調達に関するサプライチェーンの混乱リスク


地政学的リスクの顕在化やサプライチェーンの混乱により、主要な建設資材や設備機器の調達に遅延や困難が生じた場合、工期の延長、追加費用の発生、さらには発注者からの信用失墜を引き起こすリスクがあります。

(4) 事故等の安全・品質管理リスク


事業において大規模な事故が発生した場合や、重大な契約不適合・製造物責任による損害賠償が生じた場合、社会的信用の失墜や指名停止措置、多大な修復費用負担により、受注機会の喪失と業績悪化につながる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。