KOKUSAI ELECTRIC 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

KOKUSAI ELECTRIC 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

KOKUSAI ELECTRICは東京証券取引所プライム市場に上場し、半導体製造装置の開発や製造、販売、保守サービスをグローバルに展開しています。直近の連結業績は、一部の主力顧客による設備投資が一服した影響等を受け減収減益となりましたが、中長期的にはAI関連の需要増を背景とした成長基調への回帰が期待されています。


※本記事は、株式会社KOKUSAI ELECTRICの有価証券報告書(第11期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は IFRS です。

1. KOKUSAI ELECTRICってどんな会社?


高度な成膜技術とトリートメント技術を駆使した半導体製造装置を提供するグローバル企業です。

(1) 会社概要


同社のルーツは1949年設立の国際電気に遡ります。2000年に日立国際電気へ商号変更後、2017年の株式公開買付けを経て上場廃止となりました。その後、2018年に成膜プロセスソリューション事業が分離独立する形で現在のKOKUSAI ELECTRICが誕生し、2023年に東京証券取引所プライム市場への再上場を果たしました。

同社グループは、連結で2,609名、単体で1,193名の従業員を擁しています。大株主の構成は、信託銀行などの金融機関や投資ファンドが上位を占めており、筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行となっています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 13.23%
KKR HKE INVESTMENT L.P. 10.57%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 9.99%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役社長執行役員は塚田和徳氏が務めており、社外取締役比率は60.0%となっています。

氏名 役職 主な経歴
塚田和徳 代表取締役社長執行役員 1986年国際電気入社。日立国際電気で電子機械事業部営業本部長等を歴任後、2018年同社理事営業本部長。専務執行役員等を経て2025年4月より現職。
柳川秀宏 取締役専務執行役員 1988年国際電気入社。日立国際電気で縦型拡散装置設計部長等を歴任後、2018年同社執行役員。常務執行役員等を経て2026年4月より現職。
中村正樹 取締役 2010年マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。KKRジャパン等を経て2017年12月同社取締役。KKRジャパンマネージング・ディレクター等を兼務し現職。


社外取締役は、鶴田雅明(元日本サムスン代表取締役)、佐々木摩美(元クレディ・スイス・ファースト・ボストン証券会社マネージング・ディレクター)、阿部剛士(元横河電機執行役常務)、熊谷均(トラスティーズFAS代表取締役)、酒井紀子(ひらかわ国際法律事務所パートナー)、関根千津(元住化技術情報センター代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「半導体製造装置事業」の単一セグメントですが、事業内容は主に「装置ビジネス」と「サービスビジネス」に大別されます。

(1) 装置ビジネス


半導体製造の前工程における「成膜」や「熱処理」に使用するバッチ成膜装置および枚葉プラズマトリートメント装置を開発・製造しています。主に世界の半導体デバイスメーカーに向けて、難易度の高い成膜と高生産性を両立する高度な技術を用いた装置を提供しています。

顧客への半導体製造装置の販売を主な収益源としています。製品の納入や据付の完了時などに販売代金を受け取るビジネスモデルです。事業の運営はKOKUSAI ELECTRICや、韓国、中国、台湾、米国などに拠点を置く各国の連結子会社が担っています。

(2) サービスビジネス


半導体製造装置の稼働を支えるため、消耗部品の販売や保守サービス、有償修理、装置の移設・改造などを提供しています。また、レガシー世代のバッチ成膜装置や中古装置の販売も行い、顧客のライフサイクルに合わせた幅広いニーズに対応しています。

定期的な保守メンテナンス料や部品の販売代金、装置の移設・改造に伴う作業料などを継続的な収益源としています。事業運営はKOKUSAI ELECTRICのほか、国内の国際電気セミコンダクターサービスや各国の海外連結子会社が担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


半導体市況の影響を受け、直近5年間の業績は増減を繰り返しています。2025年3月期は生成AI向け需要などを背景に大きく回復しましたが、2026年3月期は一部地域での設備投資一服や先行投資の増加により、わずかに減収となり利益面も減少しています。

項目 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期 2026年3月期
売上収益 2,454億円 2,457億円 1,808億円 2,389億円 2,351億円
税引前利益 693億円 559億円 298億円 508億円 407億円
利益率(%) 28.2% 22.7% 16.5% 21.3% 17.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 513億円 403億円 224億円 360億円 301億円

(2) 損益計算書


売上収益の減少に伴って売上総利益が減少し、同時に中長期的な成長に向けた研究開発費等の販売費及び一般管理費が増加したため、営業利益および営業利益率は低下する結果となりました。

項目 2025年3月期 2026年3月期
売上高 2,389億円 2,351億円
売上総利益 1,017億円 968億円
売上総利益率(%) 42.6% 41.2%
営業利益 513億円 418億円
営業利益率(%) 21.5% 17.8%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が183億円(構成比33.1%)、従業員給与・賞与が111億円(同20.1%)を占めています。

(3) セグメント収益


半導体製造装置事業の単一セグメントです。当期は、NAND向け装置やDRAM向けのアップグレード改造が伸長したものの、中国でのDRAM向け設備投資が一服した影響により売上収益は減少しました。利益面も研究開発等の先行投資により減少しています。

区分 売上(2025年3月期) 売上(2026年3月期) 利益(2025年3月期) 利益(2026年3月期) 利益率
半導体製造装置事業 2,389億円 2,351億円 513億円 418億円 17.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業活動で得た資金を活用し、借入金の返済や設備投資を手元資金で賄っている健全な状態(健全型)と言えます。

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業CF 385億円 488億円
投資CF -277億円 -170億円
財務CF -581億円 -215億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は14.5%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も61.0%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


ステークホルダーの皆様との対話をより一層深め、技術で未来を支えていく決意を込めた企業理念として「KOKUSAI ELECTRIC Way」を掲げています。事業活動と環境・社会課題の解決の両側面から価値を追求し、SDGsの達成に寄与するとともに、持続可能な社会の実現と同社グループの持続的な発展の両立を目指しています。

(2) 企業文化


「技術と対話で未来をつくる」というコーポレートスローガンのもと、イノベーションを創出し続ける企業文化の形成を重視しています。顧客との対話を通じて課題を深く理解し、技術を通じて積極的な解決策を提案する姿勢を重んじており、多様な人材が能力を発揮できるオープンな職場環境づくりを目指しています。

(3) 経営計画・目標


中長期的には、半導体製造装置市場の成長を前提に、資本コストを意識しながら資本収益性を向上させることを目指しています。見直しを行った中期経営計画では、2029年3月期までに以下の目標達成を掲げています。

* 売上収益:3,300億円以上
* 調整後営業利益率:30%以上

(4) 成長戦略と重点施策


難易度の高い成膜と高生産性を両立するバッチALD技術やプラズマトリートメント技術を生かし、高付加価値製品の継続的な創出と開発体制の強化を図ります。また、部品販売やメンテナンスなどのサービスビジネスを拡大するとともに、DX推進やグループ運営モデルの刷新により経営効率化を実行する方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


高度な技術力とそれを実現する人的資本を成長の源泉と位置づけ、戦略的な人材マネジメントを推進しています。ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DEI)を重視し、性別や国籍を問わず経験者採用を拡大しています。また、従業員の自律的なキャリア形成を支援するプログラムや働き方改革に注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年3月期 44.1歳 18.0年 9,607,105円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.0%
男性育児休業取得率 82.9%
男女賃金差異(全労働者) 78.3%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 53.7%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 78.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、経験者採用者の割合(19.1%)、外国籍社員の割合(2.8%)、年間死亡災害件数(0件)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) マクロ経済環境の変動と貿易摩擦


半導体デバイスの急激な需要増減や、国際的な貿易摩擦、各国の関税政策、輸出規制などが事業に影響を与える可能性があります。特に米中貿易摩擦などに伴う主要顧客の投資計画見直しや、インフレ長期化による世界経済の低迷が、同社の経営成績に悪影響を及ぼすリスクが懸念されます。

(2) 半導体市場の変動と技術革新


半導体業界は技術革新が激しく、市況が急変しやすい特性があります。需要と供給のギャップによる設備投資の抑制や、顧客の投資計画の後ろ倒しが発生した場合、業績に直接的な影響が及びます。また、技術革新や生産性の改善が他社より遅れた場合、競争力や市場シェアが低下するリスクがあります。

(3) 特定の主要顧客への依存


同社の売上収益は、特定の主要顧客に対して高い依存度を持っています。主要顧客の事業方針や取引条件の変更、地政学的影響などにより取引量が縮小した場合、または価格競争の激化により利益率が低下した場合、同社の財政状態やキャッシュ・フローに大きな影響を及ぼす可能性があります。

(4) 部材の調達と生産体制の制約


半導体製造装置の生産に不可欠な部材の供給遅延や不足、仕入価格の上昇がリスクとなります。特定の仕入先への依存や、代替品への切り替えに顧客承認を要する制約があるため、急な供給中断が起きた場合、生産活動の停滞や納期遅延が生じ、業績や顧客からの信頼に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。