KOKUSAI ELECTRIC 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

KOKUSAI ELECTRIC 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所プライム市場に上場し、半導体製造装置の製造・販売・保守サービスをグローバルに展開しています。直近の業績では、主要製品の販売が好調に推移し、売上収益は前期比32.1%増、営業利益は66.9%増と大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社 KOKUSAI ELECTRICの有価証券報告書(第10期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はIFRSです。

1. KOKUSAI ELECTRICってどんな会社?


同社は、半導体製造プロセスの前工程における成膜装置やトリートメント装置の開発・製造・販売を行う専業メーカーです。

(1) 会社概要


同社の前身は日立国際電気の成膜プロセスソリューション事業です。2017年に投資ファンドKKRが特別目的会社を設立し、日立国際電気への公開買付けを実施しました。その後2018年に会社分割により同事業を承継し、KOKUSAI ELECTRICへ商号変更しました。2023年10月に東京証券取引所プライム市場へ上場を果たし、2024年10月には富山県に砺波事業所を操業開始するなど、事業拡大を進めています。

連結従業員数は2,540名、単体では1,148名です。筆頭株主は投資ファンドのKKR関連で、第2位、第3位にはカストディアン(資産管理)業務を行う信託銀行が名を連ねています。KKRは上場後も株式を保有していますが、売出し等により比率は低下傾向にあります。

氏名 持株比率
KKR HKE INVESTMENT L.P. 18.25%
BNYM AS AGT/CLTS NON TREATY JASDEC 15.06%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 7.59%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名(社外取締役含む)の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表者は代表取締役社長執行役員の塚田 和徳氏です。社外取締役比率は45.5%です。

氏名 役職 主な経歴
塚田 和徳 代表取締役社長執行役員 国際電気(現同社)入社後、営業本部長や上海現地法人トップを経て、2018年同社執行役員。中国ビジネス戦略や経営企画等を担当し、2025年4月より現職。
柳川 秀宏 取締役専務執行役員 国際電気(現同社)入社後、装置設計や品質保証部門を歴任。富山事業所長や事業戦略本部長を経て、現在は事業開発担当およびDX・IT、情報セキュリティを統括。
金井 史幸 取締役 日立製作所を経て日立国際電気に入社。富山工場長や電子機械事業部長を歴任。2018年の同社分離独立時に代表取締役社長執行役員に就任し、2025年4月より現職。
小川 雲龍 取締役 中国大連の会社を経て国際電気(現同社)入社。技術開発や中国ビジネス戦略を牽引し、専務執行役員を経て2025年4月より現職。
中村 正樹 取締役 マッキンゼー・アンド・カンパニーを経てKKRジャパンに入社。KKRによる同社買収時より取締役を務める。現在はKKRジャパン マネージング・ディレクター。
神谷 勇二 取締役(監査等委員) 日立製作所を経て日立国際電気に入社。経理本部長などを歴任し、同社分離独立後は管理本部長として経理・財務・法務等を担当。2024年6月より現職。


社外取締役は、酒井 紀子(弁護士)、鶴田 雅明(元日本サムスン代表取締役)、関根 千津(元住化技術情報センター社長)、熊谷 均(公認会計士)、中田 裕人(弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「半導体製造装置事業」の単一セグメントで事業を展開しており、ビジネスユニットとして「装置ビジネス」と「サービスビジネス」に分類しています。

(1) 装置ビジネス


半導体製造の前工程において、シリコンウェーハ上に薄膜を形成する「成膜」工程や、膜質改善等を行う「熱処理」工程で使用される装置の製造・販売を行っています。主力製品は、一度に多数のウェーハを処理できるバッチ成膜装置や、枚葉トリートメント装置です。

半導体デバイスメーカー等の顧客から装置代金を受け取ることで収益を得ています。運営は主に同社が行い、海外においてはKook Je Electric Korea Co., Ltd.などの現地連結子会社が製造や販売サポートを担っています。

(2) サービスビジネス


納入した半導体製造装置の消耗部品の販売、定期的な保守サービス、修理、装置の移設や改造、中古装置の販売などを提供しています。顧客の工場で稼働する装置の安定稼働と耐久性維持を支援し、装置のライフサイクル全体にわたるソリューションを展開しています。

顧客から部品代、保守サービス料、修理費、改造費などを受領しています。運営は同社に加え、国内では株式会社国際電気セミコンダクターサービス、海外では各地域の連結子会社が連携して行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上収益は2022年3月期に大きく伸長した後、2024年3月期に市況の影響を受け一時調整局面となりましたが、2025年3月期には再び成長軌道に戻り、過去最高水準に迫っています。利益面でも、高い利益率を維持しながら推移しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 1,780億円 2,454億円 2,457億円 1,808億円 2,389億円
税引前利益 505億円 693億円 559億円 298億円 508億円
利益率(%) 28.4% 28.2% 22.7% 16.5% 21.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 330億円 513億円 403億円 224億円 360億円

(2) 損益計算書


売上収益の大幅な回復に伴い、売上総利益、営業利益ともに大きく伸長しました。増収効果により固定費負担率が低下し、利益率も改善しており、高い収益性を確保しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上収益 1,808億円 2,389億円
売上総利益 750億円 1,017億円
売上総利益率(%) 41.5% 42.6%
営業利益 307億円 513億円
営業利益率(%) 17.0% 21.5%


販売費及び一般管理費のうち、減価償却費・のれん償却額が132億円(構成比26%)、従業員給料手当が65億円(同13%)、研究開発費が56億円(同11%)を占めています。

(3) セグメント収益


半導体デバイス市場における生成AI普及に伴う先端DRAM需要増やロジック/ファウンドリ向け投資の加速を背景に、装置販売、サービスともに好調に推移し、大幅な増収増益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
半導体製造装置事業 1,808億円 2,389億円 307億円 513億円 21.5%
連結(合計) 1,808億円 2,389億円 307億円 513億円 21.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、生成AI普及等を背景とした先端DRAM需要増、先端ノード向け設備投資加速、データセンター拡充やGX投資等による半導体市場の成長を見込んでいます。

営業活動によるキャッシュ・フローは、売上収益増加に伴う利益計上が主な収入要因となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、主に有形固定資産の取得による支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の借換や自己株式の取得による支出となりました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 29億円 385億円
投資CF -120億円 -277億円
財務CF -63億円 -581億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は企業理念として「KOKUSAI ELECTRIC Way」を掲げています。ステークホルダーとの対話をより一層深め、技術で未来を支えていく決意を込めており、事業活動とESGの取り組みの両側面から経済価値および環境・社会価値を追求し、持続可能な社会の実現と同社グループの持続的な発展の両立を目指しています。

(2) 企業文化


コーポレートスローガンである「技術と対話で未来をつくる」に基づき、顧客が抱える課題を深く理解し、解決策を積極的に提案する姿勢を重視しています。また、従業員一人ひとりの多様性を生かした新たな価値創出の機会を設け、能力や才能を発揮できるオープンな職場環境づくりを目指す文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は、半導体製造装置市場(WFE)の市場規模および市場成長を前提とした中期目標を設定しています。

- WFEが1,200億ドルに達した時:売上収益3,300億円以上

(4) 成長戦略と重点施策


半導体デバイスの微細化・三次元化に伴う高難易度成膜へのニーズに対し、バッチALD技術やトリートメント技術を生かした高付加価値製品の販売拡大を目指します。

- イノベーションによる高付加価値製品の創出と開発体制の強化
- グループ一体化経営とDX活用による高効率経営の推進
- 提案力強化によるロジック/ファウンドリ分野及びDRAM分野への展開
- ライフサイクル全体でのサービス拡充とオペレーション最適化

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「自ら学び、自ら考え、自ら実行する人材の育成」を理念とし、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DEI)を推進しています。経験者採用の拡大や、性別・国籍を問わない多様な人材の確保、エンゲージメント向上に取り組み、イノベーション創出の基盤となる組織風土改革を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 44.5歳 19.7年 8,627,752円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.6%
男性育児休業取得率 68.2%
男女賃金差異(全労働者) 78.1%
男女賃金差異(正規) 78.0%
男女賃金差異(非正規) 53.5%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、経験者採用者の割合(15.8%)、外国籍社員の割合(2.4%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) マクロ経済環境と地政学リスク


グローバルに事業を展開しているため、各国の景気、経済動向、関税政策、地政学的リスクの影響を受けます。特に米中貿易摩擦による輸出規制の強化や、各国の国産化施策、ウクライナ情勢や中東情勢などが、サプライチェーンや顧客の設備投資計画に影響を与え、同社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 半導体市場の変動と技術革新


半導体業界は技術革新が激しく、需給バランスの変動により設備投資が抑制されることがあります。市場予測の急激な変化や、競合他社に対する技術的優位性の喪失、新たな競合の台頭などがリスク要因です。また、顧客が一度採用した装置メーカーを変更することはコストがかかるため、他社製品を使用している顧客への切り替え提案が困難な場合、シェア拡大に影響する可能性があります。

(3) サプライチェーンの寸断リスク


部材の供給遅延や停止、価格高騰が発生した場合、生産活動に支障をきたす可能性があります。特に、顧客の承認が必要な特定部材の供給が途絶えた場合、代替品への切り替えに時間を要し、納期遅延や受注取り消しにつながるおそれがあります。同社はマルチベンダー化や在庫確保等の対策を講じていますが、想定外の事象により調達難が生じるリスクは残ります。

(4) 情報セキュリティとサイバー攻撃


事業活動を通じて機密情報や個人情報を保有しており、サイバー攻撃や不正アクセス、システム障害等によりこれらが流出した場合、社会的信用の低下や損害賠償請求、業務の停滞を招く可能性があります。同社は情報セキュリティ委員会を中心に管理体制を強化していますが、高度化するサイバー攻撃等によるリスクを完全に排除することは困難です。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。