※本記事は、守谷輸送機工業株式会社の有価証券報告書(第79期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 守谷輸送機工業ってどんな会社?
同社は荷物用や船舶用エレベーターの製造・販売から、保守・修理までを一貫して手掛ける専業メーカーです。
■(1) 会社概要
同社は1950年にエレベーター等の製造・販売・据付を目的に設立されました。1988年には冷蔵倉庫向け垂直搬送機を販売開始し、2002年にはシンドラーエレベータから船舶用エレベーター技術を譲り受け事業領域を拡大しました。その後も独自の製品開発と保守サービス拠点の拡充を進め、2022年に東京証券取引所への上場を果たしました。
同社単体の従業員数は388名です。筆頭株主のM2Wは同社の代表取締役社長である守谷貞夫氏の親族の資産管理会社であり、同社株式の31.17%を保有しています。第2位の株主は創業家出身で現代表である守谷貞夫氏、第3位も創業家関係者となっており、安定的な経営基盤を有しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| M2W | 31.17% |
| 守谷貞夫 | 8.59% |
| 守谷順子 | 7.53% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性0名の計12名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役社長は守谷貞夫氏が務めています。社外取締役は4名で、社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 守谷貞夫 | 代表取締役社長 | 神戸製鋼所を経て1969年に同社入社。常務取締役、専務取締役を経て、1983年6月より現職。 |
| 鬼頭淳 | 常務取締役 | 1996年同社入社。工事部長、製造部長などを歴任し、2023年6月より現職。 |
| 舟橋裕之 | 取締役 | 1986年同社入社。船舶部長、購買積算部長などを歴任し、2020年4月より現職。 |
| 櫻井智一 | 取締役 | 1996年同社入社。技術部長、設計部長などを歴任し、2024年4月より現職。 |
| 土屋寛 | 取締役 | 横浜銀行を経て2018年に同社入社。総務部長などを歴任し、2025年4月より現職。 |
| 土屋貴弘 | 取締役 | 川本工業などを経て2004年に同社入社。東京支店長などを歴任し、2023年6月より現職。 |
| 矢部匠 | 取締役 | 2005年同社入社。工事部長などを歴任し、2023年6月より現職。 |
社外取締役は、小梶清司(元日本国債清算機関代表取締役社長)、内田邦彦(弁護士)、垣内晃(元東光電気工事常勤監査役)、脇阪守(元SMBC日興証券常務執行役員)です。
2. 事業内容
同社はエレベーター事業の単一セグメントですが、製品・サービスごとに事業を展開しています。
■(1) エレベーター事業(荷物用・船舶用)
主に物流施設、工場、データセンター向けの荷物用中大型エレベーターや垂直自動搬送機の設計・製造・販売・据付を行っています。また、大型外航船などに設置される船舶用エレベーターも展開しており、特殊な環境における防錆性や防沫性能を備えた製品を国内外の造船会社等へ提供しています。
収益源は、新規設置および既存設備入替時のエレベーター本体の販売代金や据付工事費用です。事業の運営は同社が主体となって行っており、設計・開発から製造・据付までを一貫して担うことで、顧客の多様な個別仕様に対応しています。
■(2) 保守・修理事業
自社製エレベーターを中心に、建築基準法等で義務付けられた定期検査・点検、メンテナンス、修理、部品交換等を行っています。契約形態には、部品交換や修理費用が定額料金に含まれるフルメンテナンス契約と、基本的な点検を中心とし部品交換等に別途費用が発生するPOG契約があります。
収益源は、顧客との保守・点検契約に基づく定額のメンテナンス料金や、故障時・計画的な予防保全に伴う部品交換・修理の費用です。事業の運営は同社が行っており、24時間365日の受付対応体制を整えることで、長期的な価値提供と安定的な収益基盤を形成しています。
3. 業績・財務状況
同社の単体業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に拡大を続けており、特に直近2年間で大幅な増収を達成しています。経常利益も大きく伸長し、利益率は5%台から26%水準まで飛躍的に向上しており、強い収益力を獲得しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 139億円 | 154億円 | 175億円 | 194億円 | 236億円 |
| 経常利益 | 18億円 | 8億円 | 26億円 | 42億円 | 61億円 |
| 利益率(%) | 13.2% | 5.1% | 15.0% | 21.6% | 26.0% |
| 当期純利益 | 11億円 | 6億円 | 17億円 | 28億円 | 41億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益も拡大しており、売上総利益率は31.8%から35.6%へと改善しています。これに牽引される形で営業利益率も向上し、高収益体質が定着しつつあります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 194億円 | 236億円 |
| 売上総利益 | 62億円 | 84億円 |
| 売上総利益率(%) | 31.8% | 35.6% |
| 営業利益 | 41億円 | 61億円 |
| 営業利益率(%) | 21.1% | 25.7% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が12億円(構成比51%)、役員報酬が3億円(同13%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社はエレベーター事業の単一セグメントですが、製品・サービス別の売上高を見ると、全領域で前年を上回る実績を記録しています。特に主力の荷物用エレベーター分野や保守・修理分野が好調に推移し、全体の成長を牽引しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| エレベーター(船舶用を除く) | 95億円 | 118億円 |
| 船舶用エレベーター | 9億円 | 10億円 |
| 保守・修理 | 90億円 | 108億円 |
| 連結(合計) | 194億円 | 236億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFおよび財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」のパターンを示しています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 20億円 | 28億円 |
| 投資CF | -3億円 | -33億円 |
| 財務CF | -5億円 | -8億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は31.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も71.4%で市場平均を上回っており、いずれも市場平均を上回る優れた水準にあります。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「信頼と誠実」を社是とし、「安全」、「堅牢」、「融通性」という基本コンセプトを守りながら事業活動を行っています。物流施設や工場などの社会インフラを支える重要な機能であるエレベーターを提供する企業として、安全性や利便性の提供を通じて持続可能な社会の実現に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
お客様の安全・安心を第一に、質実堅牢な製品づくりで「お客様の声」に応え続けていくことを重視しています。日常業務においては「ムリ・ムダ・ムラ」の排除を徹底し、省資源・省エネルギーを推進するなど、原価低減と生産性向上に向けた活動や労働災害ゼロ活動の推進を全社方針として掲げる実直な文化があります。
■(3) 経営計画・目標
持続的な成長と収益性の向上を図ることで企業価値を高めていくことが経営上の重要課題であると認識しており、売上高総利益率及び売上高営業利益率を主要な指標と位置付けて改善に取り組んでいます。
■(4) 成長戦略と重点施策
国内での荷物用エレベーターの製造から保守・修理までの一貫事業と、競争力を備えた船舶用エレベーターの分野に経営資源を集中投下します。物流施設等への販路拡大に加え、老朽化した設備への予防保全の提案による保守・修理の拡大、新工場を活用した生産体制の最適化やデジタル技術の導入によるコスト競争力の強化を図ります。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
持続的な企業価値向上において人材を最大の資産と位置付け、優秀な人材の確保と育成に積極的な投資を行っています。柔軟な働き方やシニア世代の再雇用制度を活用した多様な人材の活躍を支援するほか、新卒・中途を問わず基礎教育研修に力を入れるなど、働きやすい就業環境の整備と次世代リーダーの育成を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.7歳 | 8.6年 | 8,606,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.6% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全労働者) | 71.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 76.8% |
| 男女賃金差異(パート・有期) | 47.0% |
※同社は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」の規定に基づく開示義務の対象ではないため、男性育児休業取得率の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性労働者の上位職階へ昇進する割合の目標(15.0%以上)、有給休暇の取得率の目標(60.0%以上)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 資材調達とコスト上昇の懸念
製品の主要原材料である鋼材や石油原料資材は市場価格や国際情勢の影響を受けやすく、為替相場の変動により仕入コストが上昇するリスクがあります。同社は複数の調達先との関係強化や内製化の推進によりコスト削減に努め、吸収が困難な場合は販売価格への転嫁を進めることでリスク低減を図っています。
■(2) 人材確保と育成の課題
建設・製造業界全体で人手不足が深刻化する中、技術者や保守要員などの高度な専門性を持つ人材を確保・育成できない場合、事業成長に影響が及ぶ可能性があります。これに対し、同社はベースアップによる待遇改善や教育研修体制の拡充により、新規採用の強化と既存社員の定着率向上に取り組んでいます。
■(3) 重大な故障・事故の発生リスク
主力の荷物用エレベーターは物流インフラの基盤であるため、万が一重大な故障や事故で長期停止が発生した場合、広範な社会経済活動に影響を与え、損害賠償や社会的信用の失墜につながるリスクがあります。同社は予防保全の積極的な提案や計画的な修理対応を通じて、事故の未然防止と安定稼働の確保に注力しています。



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