#記事タイトル:守谷輸送機工業転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態
※本記事は、守谷輸送機工業株式会社 の有価証券報告書(第78期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 守谷輸送機工業ってどんな会社?
荷物用および船舶用エレベーターに特化した専業メーカーです。製造から保守まで一貫体制で展開しています。
■(1) 会社概要
同社は1950年3月に設立され、エレベーター等の製造・販売を開始しました。1988年に冷蔵倉庫向け垂直搬送機「マックリフター」、2003年には船舶用エレベーターの販売を開始し、事業領域を拡大しています。2022年3月に東京証券取引所市場第二部に上場し、市場区分の見直しを経て現在はスタンダード市場に上場しています。2024年には宇都宮工場の増改築を行い、生産能力を増強しています。
同社単体の従業員数は360名です。筆頭株主は代表取締役社長の親族資産管理会社である株式会社M2Wで、第2位は代表取締役社長の守谷貞夫氏、第3位は親族の守谷順子氏となっており、創業家およびその関連会社が株式の過半数を保有する安定した株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| M2W | 31.28% |
| 守谷 貞夫 | 8.62% |
| 守谷 順子 | 7.56% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性0名の計12名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表者は代表取締役社長 守谷貞夫氏です。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 守谷 貞夫 | 代表取締役社長 | 1964年神戸製鋼所入社。1969年同社入社。常務、専務を経て1983年より現職。 |
| 鬼頭 淳 | 常務取締役 | 1996年同社入社。工事部長、製造部長、生産本部長等を歴任。2023年より現職。 |
| 舟橋 裕之 | 取締役 | 1986年同社入社。船舶部長、大阪支店長等を歴任。2020年より営業本部副本部長兼大阪支店長。 |
| 櫻井 智一 | 取締役 | 1996年同社入社。技術部長、設計部長等を歴任。2024年より技術本部長兼技術研修部長。 |
| 土屋 寛 | 取締役 | 1985年横浜銀行入行。同社総務部長を経て、2025年より管理本部長。 |
| 土屋 貴弘 | 取締役 | 2004年同社入社。第二営業統括部次長等を経て、2023年より営業本部長兼東京支店長。 |
| 矢部 匠 | 取締役 | 2005年同社入社。工事部長等を経て、2023年より生産本部長兼製造部長。 |
| 松葉 敏宏 | 取締役 | 1979年横浜銀行入行。横浜商事社長等を経て、2019年同社常勤監査役。2025年より現職。 |
社外取締役は、小梶清司(元日本証券クリアリング機構社長)、内田邦彦(弁護士)、垣内晃(元東光電気工事常勤監査役)、脇阪守(元マネックス証券取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「エレベーター」事業を展開しています。
■(1) エレベーター製造・販売事業
荷物用エレベーターは、工場や倉庫、物流施設などに設置され、フォークリフトでの使用に耐える堅牢性などが求められます。船舶用エレベーターは、大型の外航船やフェリーに設置され、船の揺れや塩害への対策が必要です。同社はこれらの専門性の高い分野で、開発から設計、製造、販売、据付までを一貫して手掛けています。
主な収益源は、物流施設オーナーや建設会社、造船会社等からの製品販売代金および据付工事代金です。国内では同社が主体となって事業を行い、中国では子会社の上海守谷電梯有限公司が資材調達や船舶用エレベーターの据付等を担っています。
■(2) 保守・修理事業
エレベーターの納入後、安全な稼働を維持するためのメンテナンスや、法定の定期検査、故障時の修理、老朽化した機器の入替工事(リニューアル)を行っています。契約形態には、部品交換費用を含むフルメンテナンス契約と、点検のみを行うPOG契約があります。
収益源は、顧客(ビルオーナーや管理者等)からの保守契約料および修理・入替工事代金です。このストックビジネスは、製品販売時の利益率を抑えつつ、その後の保守点検作業を受注することで長期的に安定した収益を確保する重要な基盤となっており、主に同社がサービスを提供しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は着実に右肩上がりで推移しており、特に直近の伸びが顕著です。利益面でも、経常利益、当期純利益ともに大きく増加しており、高い利益率を確保しています。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 135億円 | 139億円 | 154億円 | 175億円 | 194億円 |
| 経常利益 | 17億円 | 18億円 | 8億円 | 26億円 | 42億円 |
| 利益率 | 12.7% | 13.2% | 5.1% | 15.0% | 21.6% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 11億円 | 11億円 | 6億円 | 17億円 | 28億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い、売上総利益率および営業利益率が大幅に改善しています。コストコントロールや増収効果により、収益性が高まっていることがわかります。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 175億円 | 194億円 |
| 売上総利益 | 44億円 | 62億円 |
| 売上総利益率 | 25.0% | 31.8% |
| 営業利益 | 26億円 | 41億円 |
| 営業利益率 | 14.8% | 21.1% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が10億円(構成比47%)、役員報酬が3億円(同14%)を占めています。売上原価については、材料費が60億円(構成比45%)、外注費が30億円(同22%)となっています。
■(3) セグメント収益
各区分の売上高を見ると、主力の「エレベーター(船舶用を除く)」は横ばいですが、「船舶用エレベーター」が大幅に伸長しています。また、ストックビジネスである「保守・修理」も順調に拡大しており、収益基盤の強化に寄与しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) |
|---|---|---|
| エレベーター(船舶用を除く) | 95億円 | 95億円 |
| 船舶用エレベーター | 6億円 | 9億円 |
| 保守・修理 | 73億円 | 90億円 |
| 連結(合計) | 175億円 | 194億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは「健全型」です。本業でしっかりと現金を稼ぎ出し、その範囲内で設備投資を行い、借入金の返済や配当支払い等の株主還元を実施している、財務的に安定した状態と言えます。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 26億円 | 20億円 |
| 投資CF | -4億円 | -3億円 |
| 財務CF | -3億円 | -5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は27.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.8%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「信頼と誠実」を社是とし、「安全」「堅牢」「融通性」という基本コンセプトを掲げています。お客様の安全・安心を第一に考え、質実堅牢な製品づくりを通じて「お客様の声」に応え続け、「エレベーターで社会を支える」ことを経営の基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社は、製品品質の維持・向上を重点課題とし、具体的な全社活動方針として「原価低減と生産性向上」「特色ある製品やサービスの創造」「安定した製品品質と故障の削減」「労働災害ゼロ活動」「情報システム、データの利活用推進」を掲げています。地道な改善活動を重視する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は、持続的な成長と収益性の向上により企業価値を高めることを重視しており、経営上の目標を達成するための主要な指標として、以下の2つを位置付けています。
* 売上高総利益率
* 売上高営業利益率
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、国内の荷物用エレベーター事業および船舶用エレベーター分野に経営資源を集中させる方針です。今後は以下の事業戦略を展開し、持続的な成長を目指します。
* 生産能力増強により新規設置台数および保守契約台数の拡大を図ります。具体的には、宇都宮工場の増改築に加え、新工場(仮称:芳賀工場)の建設を計画しています。
* 「計画修理」の積極的な提案により、エレベーターの保全強化と稼働の安定化を図ります。
* 老朽化したエレベーターの入替需要を取り込みます。
* 新造船需要の高まりを背景に、船舶用エレベーターの販売拡大を図ります。
* 製造プロセスや保守業務の内製化を進め、一貫したサービス提供体制を維持します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、事業拡大に対応するため、新卒・中途採用の強化を進めています。人材の育成においては、技術研修部を設置し、基礎教育研修に注力しています。また、定年年齢の63歳への延長や、ベースアップによる待遇改善など、多様な人材が長く安心して働ける就業環境の整備に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 40.4歳 | 8.3年 | 7,781,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 5.0% |
| 男性育児休業取得率 | -% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 69.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 75.4% |
| 男女賃金差異(非正規) | 44.4% |
※「男性労働者の育児休業取得率」につきましては、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づく開示をしておりませんので、記載を省略しております。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 資材等の調達および価格変動
主な原材料である鋼材等は市場価格の影響を受けやすく、また一部資材は海外から調達しています。これら原材料価格の上昇や為替変動、または安定調達が困難になった場合、製造コストが上昇し、同社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 人材の確保および育成
事業の成長には、専門性の高い技術者や保守要員の確保が不可欠です。建設業・製造業での人手不足が深刻化する中、必要な人材の確保・育成が困難になった場合や人材流出が進んだ場合、事業運営に支障をきたし、業績に影響を与える可能性があります。
■(3) 経済情勢の変動
主力製品である荷物用エレベーターは物流施設や工場の建設需要に、船舶用エレベーターは造船需要に影響を受けます。景気後退等により設備投資意欲が減退し、新規受注が減少した場合、同社の財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 競合との競争
エレベーター業界では、グローバル企業を含む競合他社との競争が続いています。技術革新への対応遅れや価格競争の激化により、製品・サービスの競争力が低下した場合、受注減少や利益率低下を招き、業績に悪影響を与える可能性があります。



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