※本記事は、株式会社カチタス の有価証券報告書(第46期、自 2023年4月1日 至 2024年3月31日、2024年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. カチタスってどんな会社?
地方都市の築古戸建住宅を中心に、買取りからリフォーム、販売までを一気通貫で行う中古住宅再生事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1978年に群馬県桐生市で石材業として創業し、1998年に競売物件をリフォーム販売する現在の中古住宅再生事業を確立しました。2013年に現在の社名へ変更し、2017年には家具大手のニトリホールディングスと資本・業務提携を締結、同年12月に東証一部へ上場しました。現在では全国に店舗網を展開し、累計販売件数は7万件を超えています。
2024年3月31日時点で、従業員数は連結859名、単体695名です。筆頭株主は業務資本提携先の家具大手企業で、第2位以降は資産管理業務を行う信託銀行です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ニトリホールディングス | 34.26% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.38% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 6.83% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.2%です。代表取締役社長は新井健資氏です。社外取締役比率は27.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 新井 健資 | 代表取締役社長 | リクルートを経て、2012年に同社入社し社長就任。2022年よりリプライス代表取締役会長も兼任し、グループ全体の経営を牽引。2012年より現職。 |
| 横田 和仁 | 取締役管理本部長 | リクルート、キャリアデザインセンター副社長を経て、2012年に同社入社。管理部門を統括し、2020年より現職。 |
| 牛嶋 孝之 | 取締役 | 2009年リプライス(現連結子会社)入社。同社社長などを経て、2023年よりカチタスグループ戦略推進室長を兼任。2017年より現職。 |
| 白井 俊之 | 取締役 | ニトリ(現ニトリホールディングス)入社後、同社社長などを歴任。現在はニトリホールディングス代表取締役社長を務める。2017年より現職。 |
社外取締役は、熊谷聖一(日本印刷代表取締役社長)、佃秀昭(ボードアドバイザーズ代表取締役社長)、須藤実和(プラネットプラン代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「中古住宅再生事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■中古住宅再生事業(カチタス)
地方都市に点在する築20年~40年の築古戸建住宅を中心に、独自のノウハウで安価に仕入れ、リフォームによって付加価値を高めた「再生住宅」として販売しています。主な顧客は、賃貸アパート等からの住み替えを希望する一次取得者層です。
収益は、リフォーム済み中古住宅を一般個人へ販売した際の代金です。また、買取再販事業のため、物件の仕入れからリフォーム企画、販売までを自社で一気通貫して行っています。運営は主にカチタスが行っています。
■中古住宅再生事業(リプライス)
三大都市圏の郊外や地方都市の中心部において、比較的築年数の浅い中古住宅(マンション含む)を取り扱っています。カチタスとは異なり、内装リフォームを中心とした早期商品化を行うことで在庫回転率を高めるモデルを採用しています。
収益は、再生した中古住宅の販売代金です。独自のデータ分析に基づいた査定により、競合が多い都市部エリアでの仕入れ競争力を確保しています。運営は連結子会社のリプライスが行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2020年3月期から2024年3月期までの5期間において、売上高は着実な増加傾向にあります。特に2024年3月期は過去最高の1,267億円に達しました。一方、経常利益は2023年3月期まで増加していましたが、直近では減益となっています。当期純利益については変動があるものの、2024年3月期は高い水準を確保しています。
| 項目 | 2020年3月期 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 900億円 | 977億円 | 1,013億円 | 1,213億円 | 1,267億円 |
| 経常利益 | 99億円 | 111億円 | 127億円 | 138億円 | 123億円 |
| 利益率(%) | 11.0% | 11.4% | 12.5% | 11.4% | 9.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 40億円 | 61億円 | 49億円 | 55億円 | 72億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の業績を見ると、売上高は増加しましたが、営業利益は減少しました。これは、販売件数や単価の上昇により増収となった一方で、仕入価格の上昇による原価率の悪化や、販売費及び一般管理費の増加が利益を圧迫したためです。特に営業利益率は低下傾向にあります。
| 項目 | 2023年3月期 | 2024年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,213億円 | 1,267億円 |
| 売上総利益 | 269億円 | 278億円 |
| 売上総利益率(%) | 22.1% | 21.9% |
| 営業利益 | 141億円 | 127億円 |
| 営業利益率(%) | 11.6% | 10.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が45億円(構成比30%)、租税公課が35億円(同23%)を占めています。売上原価については、商品及び製品の仕入等が大半を占めています。なお、当期は消費税に関する訴訟の影響で租税公課が増加しています。
■(3) セグメント収益
中古住宅再生事業の単一セグメントですが、販売面では営業人員の増加により供給件数が増え、高付加価値化により単価も上昇したことで増収となりました。一方で、都市部を中心に仕入単価が上昇したことや、一部地域での値下げ販売の影響を受けました。
| 区分 | 売上(2023年3月期) | 売上(2024年3月期) |
|---|---|---|
| 中古住宅再生事業 | 1,213億円 | 1,267億円 |
| 連結(合計) | 1,213億円 | 1,267億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は22.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は52.1%で市場平均(プライム非製造業平均24.2%)を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「未来への扉を。『家に価値タス』ことを通じて、地域とお客様に。」という経営理念を掲げています。持ち家を望むすべての人に、高品質で手頃な価格の住まいを提供し、空き家に新たな価値を見出すことで、既存住宅を住みつなぐ新しい住まい方を提唱し、地域社会の活性化に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
お客様の潜在ニーズまで把握し、「安心・清潔・実用的」なリフォームにこだわり続ける姿勢を重視しています。また、地域に埋もれた価値ある住宅を見つけ出し、自らリスクを取って買い取り再生することで、地域社会に貢献するという使命感を持っています。土地開発前提の新築中心の文化から、ストック活用の循環型社会への転換を志向する文化があります。
■(3) 経営計画・目標
同社は、将来的には年間販売件数1万件超を目指しています。その通過点として第3次中期経営計画を策定し、以下の数値目標を掲げています。安定的な成長と質の高い住宅供給の両立を重視し、急激な拡大よりも持続可能な成長を目指しています。
* 売上高:1,340億円
* 営業利益:175億円
* 売上高及び営業利益の年平均成長率:10%
* ROA(総資産営業利益率):20%以上
* 配当性向:40%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
中期経営計画の達成に向け、人材の採用と育成、業務プロセスの効率化、施工体制の強化、およびM&Aの検討を重点施策としています。特に、営業員一人当たりの生産性向上と、リフォーム施工能力の確保に注力しています。
* 新卒中心の採用と店長級人材の育成による営業組織の強化
* BPR(業務改革)とシステム導入による生産性向上
* 工務店・大工とのパートナーシップ強化による施工能力の拡充
* 既存事業の成長を加速させるためのM&Aの検討強化
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業成長の鍵は「営業員の増加」と「生産性の向上」にあるとし、地域貢献意欲の高い新卒採用を中心に人材確保を進めています。育成面では店長が果たす役割を重視し、各種研修を通じてリーダー人材を育成しています。また、エンゲージメントサーベイを活用したリテンション施策や、人事制度の拡充により、離職率の低減と定着化を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2024年3月期 | 33.1歳 | 6.6年 | 5,146,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 18.3% |
| 男性育児休業取得率 | 50.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 85.4% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 94.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 98.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性正社員比率(35.7%)、女性管理職登用比率(24.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済情勢と不動産市況の動向
不動産業界は金利動向や経済情勢の影響を受けやすく、景気悪化や住宅ローン金利の上昇により顧客の購入意欲が減退する可能性があります。これにより販売価格の下落や販売期間の長期化が生じた場合、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 国税当局との訴訟リスク
過去の消費税等の計算方法に関し、国税当局から更正処分等を受けています。これに対し取消しを求める訴訟を提起していますが、一審および控訴審で敗訴しており、現在は上告中です。国税当局の主張が確定した場合、消費税計算方法の修正が必要となり、業績や財政状態に影響を与える可能性があります。
■(3) リフォーム工事と契約不適合責任
中古住宅をリフォームして販売する事業特性上、販売後に予期せぬ欠陥や不具合が発見されるリスクがあります。引渡し後2年間の契約不適合責任を負っており、品質管理を徹底していますが、多額の補修費用が発生した場合や、訴訟等によりブランドイメージが毀損された場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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