※本記事は、株式会社カチタスの有価証券報告書(第48期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月22日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. カチタスってどんな会社?
空き家等を買い取り、リフォームして販売する中古住宅再生事業を展開しています。
■(1) 会社概要
1978年に群馬県桐生市で石材業を目的として設立されました。1988年に不動産事業を開始し、1998年には中古住宅再生事業を確立しました。2013年に社名をカチタスに変更し、2016年にリプライスを完全子会社化しています。2017年に東証一部へ上場し、2022年にプライム市場へ移行しました。
同社グループは連結で1,002名、単体で809名の従業員を擁しています。筆頭株主は資本業務提携を結んでいる事業会社のニトリホールディングスで、第2位および第3位は資産管理業務を行う信託銀行となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| ニトリホールディングス | 34.14% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.80% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 8.66% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性8名、女性3名の計11名で構成され、女性役員比率は27.3%です。代表取締役社長は新井健資氏が務めています。取締役7名のうち3名が社外取締役です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 新井健資 | 代表取締役社長 | 元リクルート(現リクルートホールディングス)、2012年より同社代表取締役社長に就任し現職。 |
| 横田和仁 | 取締役管理本部長 | 元キャリアデザインセンター代表取締役副社長、2012年より同社管理本部長に就任し現職。 |
| 牛嶋孝之 | 取締役 | 元ライク(現リプライス)、2026年4月よりリプライス代表取締役社長に就任し現職。 |
| 白井俊之 | 取締役 | ニトリホールディングス代表取締役社長、2017年より同社取締役に就任し現職。 |
社外取締役は、佃秀昭(ボードアドバイザーズ代表取締役社長)、須藤実和(プラネットプラン代表取締役)、中尾隆一郎(中尾マネジメント研究所代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「中古住宅再生事業」を展開しています。
■(1) 中古住宅再生事業
地方都市の築古物件や都市近郊の比較的築浅な戸建中古住宅を中心に買い取り、リフォームを施した上で、手頃な価格帯の「リフォーム済み中古再生住宅」として一般消費者向けに販売しています。仕入れ時にはリフォーム協力会社と白蟻調査会社を交えた立会検査を行い、品質確保と追加工事の未然防止に努めています。
同社と子会社のリプライスが事業を運営しています。主に一般の個人の買い手から住宅の販売代金を受け取ることで収益を得ています。同社は地方都市の築古物件を対象に内外装の修繕や間取り変更など大規模な再生を担い、リプライスは都市郊外等の築浅物件を対象に水回りや壁紙の交換など簡易なリフォームをパッケージ化して販売しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績は、持続的な成長傾向を示しています。売上高は着実に増加し、直近では1,519億円に達しました。経常利益も右肩上がりで推移し、利益率は継続して10%前後の高水準を維持しています。主力事業の販売件数拡大が収益の伸びを牽引しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,013億円 | 1,213億円 | 1,267億円 | 1,295億円 | 1,519億円 |
| 経常利益 | 127億円 | 138億円 | 123億円 | 139億円 | 178億円 |
| 利益率(%) | 12.5% | 11.4% | 9.7% | 10.7% | 11.7% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 49億円 | 55億円 | 72億円 | 80億円 | 101億円 |
■(2) 損益計算書
当期は新築住宅の価格高騰を背景に、割安な中古住宅への需要が高まり、販売件数が大幅に増加しました。これにより、売上高と営業利益がともに前期比で2桁の伸びを記録しています。低価格帯商品の販売や利益率向上施策も寄与し、堅調に収益を拡大させています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1,295億円 | 1,519億円 |
| 売上総利益 | 307億円 | 354億円 |
| 売上総利益率(%) | 23.7% | 23.3% |
| 営業利益 | 142億円 | 183億円 |
| 営業利益率(%) | 11.0% | 12.0% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当及び賞与が58億円(構成比34%)、仲介手数料が19億円(同11%)、租税公課が18億円(同10%)を占めています。
■(3) セグメント収益
同社グループは「中古住宅再生事業」の単一セグメントであるため、事業全体の収益推移を示します。当期は割安な中古住宅へのニーズを的確に捉えて販売件数が増加し、増収に貢献しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 中古住宅再生事業 | 1,295億円 | 1,519億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFのマイナスは棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 12億円 | -52億円 |
| 投資CF | -2億円 | -1億円 |
| 財務CF | -43億円 | -52億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は25.2%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.9%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は、「未来への扉を。『くらしに価値タス』ことを通じて、地域とお客様に。」という経営理念を掲げています。持ち家を望むすべての人に、安心・清潔・実用的な住まいを手頃な価格で提供することを目指しています。また、既存の家を再生して住み継ぐ新しい住まい方を提唱し、地域の活性化と発展に貢献することを使命としています。
■(2) 企業文化
同社は、お客様の顕在ニーズと潜在ニーズを深く把握し、リフォームの企画と仕上がりにこだわり続ける姿勢を重視しています。十分に活用されず売りにくいとされる空き家等に対しても、潜在的な価値と需要を見出すことを大切にしています。一連の工程を自社で一気通貫で行う体制を取り、地域密着によるニーズ把握と住宅再生ノウハウを活かしています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、長期ビジョンとして「日本で一番、ひとびとの暮らしを豊かにする会社」を目指しています。中間目標として、2035年には年間販売件数2万件への成長を掲げており、第4次中期経営計画では以下の目標を設定しています。
* 販売件数:10,000件超
* 営業利益:230億円
* ROE:最低20%以上を維持し25%を目指す
* 配当性向:50.0%以上かつ累進配当
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、提供する住まいの品質と価値を維持・向上させつつ、安定的に良質なリフォーム済み中古住宅を供給する能力を着実に拡充することを成長戦略の柱としています。
* 営業人員数の増加と育成強化による国内未出店エリアの拡充
* 各種システム関連への投資を通じた生産性の向上
* 従来のフルリフォーム以外の企画多様化と新たな顧客層の獲得
* 地方自治体や異業種との連携による空き家情報の仕入チャネル多様化
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、「人材」を持続的な成長と中長期的な企業価値向上の実現に向けた重要な経営資本と位置づけています。同社の理念や価値観に共感し、高い成長意欲と行動力、チーム意識を持つ人材の採用と育成を推進しています。新卒採用を中心として営業人員を増強し、本部主導の研修プログラムと現場でのOJTによる育成と従業員エンゲージメントの向上を図っています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 32.3歳 | 6.2年 | 5,910,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.5% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 84.2% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 104.3% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 93.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性の営業員比率(成績上位20名中約4割)、新卒入社の従業員数(671名)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 感染症や伝染病等の流行による影響
感染症や伝染病等の流行により、本部機能や店舗の営業活動の停止、国内外での流通制限などが生じる可能性があります。同社グループは地方都市などをターゲットとしているため影響は相対的に限定的と判断していますが、社会的な混乱や経済活動の著しい停滞が発生した場合は業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) ブランドイメージの毀損による影響
提供する中古再生住宅の欠陥や品質不良、顧客からの苦情、従業員や第三者が関与する不適切行為などにより、同社グループのブランドイメージが損なわれるリスクがあります。メディア報道やSNS等への不適切な書き込みによるネガティブな評判が広がった場合、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 国が進める中古住宅に関する各種施策による影響
同社は自社基準のインスペクション等で品質確保に努めていますが、国の中古住宅施策が想定を超える内容となった場合(例えば、第三者によるインスペクションや耐震診断の義務化、省エネ基準の厳格化など)は、対応に伴う費用負担の増加などが生じ、同社グループの経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。



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