※本記事は、森永乳業株式会社 の有価証券報告書(第103期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 森永乳業ってどんな会社?
市乳や乳製品、アイスクリームなどの食品製造販売を主力とし、健康と栄養を届ける企業です。
■(1) 会社概要
1917年に日本煉乳として設立され、1949年に現在の森永乳業として設立されました。1954年に東京証券取引所へ上場しています。近年はグローバル展開を加速させており、ベトナムやパキスタンの乳製品製造販売会社を連結子会社化するなど、海外での事業基盤を積極的に強化しています。
同社グループは連結で7,345名、単体で3,376名の従業員を擁しています。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行であり、第2位および第3位も同様に信託銀行が名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 13.81% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 7.62% |
| SMBC信託銀行(三井住友銀行退職給付信託口) | 3.28% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性4名の計15名で構成され、女性役員比率は26.7%です。代表取締役社長は大貫陽一が務めており、取締役11名のうち5名が社外取締役です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大貫陽一 | 代表取締役社長 | 1983年入社。経営戦略本部長等を経て、2021年より現職。 |
| 大川禎一郎 | 代表取締役副社長 | 1982年入社。研究本部長や海外事業本部長等を経て、2025年より現職。 |
| 野崎昭弘 | 取締役 専務執行役員財務本部長 | 1988年入社。コーポレート戦略本部長等を経て、2026年より現職。 |
| 柳田恭彦 | 取締役 常務執行役員生産本部長 | 1984年入社。各工場長や生産本部長等を経て、2023年より現職。 |
| 兵働仁志 | 取締役 常務執行役員国内営業本部長 | 1989年入社。営業本部長等を経て、2025年より現職。 |
| 久野浩子 | 取締役 常務執行役員コーポレート戦略本部長 | 2016年入社。サステナビリティ本部長等を経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、吉永泰之(元富士重工業社長)、富永由加里(元日立コンピュータコンサルタント常務執行役員)、中村寛(元カシオ計算機副社長執行役員営業本部長)、池田隆之(元東芝テック社長)、髙取幸子(元味の素サステナビリティ推進部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「食品」および「その他」事業を展開しています。
■(1) 食品事業
市乳、乳製品、アイスクリーム、飲料などの製造販売を行っており、一般消費者や業務用の得意先など幅広い顧客層に製品を提供しています。
商品の販売を通じて対価を受け取ります。運営は主に森永乳業が行うほか、エムケーチーズ、横浜森永乳業などが委託製造を担い、森永乳業販売などが商品の仕入販売を行っています。
■(2) その他の事業
飼料やペットフードの仕入販売のほか、プラント設備の設計施工、不動産の賃貸、運輸倉庫業などを手がけています。
商品販売や工事請負、賃貸料などから収益を得ています。運営は森永酪農販売が飼料、森乳サンワールドがペットフードを担当し、プラント設備等は森永エンジニアリングなどが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
売上高は一貫して増加傾向にあり、堅調な成長を続けています。経常利益も直近では過去最高水準まで拡大しており、収益力の向上が見られます。当期利益は一時的な特別損失等により変動がありますが、直近では黒字に回復しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 5034億円 | 5256億円 | 5471億円 | 5612億円 | 5715億円 |
| 経常利益 | 311億円 | 252億円 | 281億円 | 299億円 | 371億円 |
| 利益率(%) | 6.2% | 4.8% | 5.1% | 5.3% | 6.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 270億円 | 65億円 | 551億円 | -16億円 | 23億円 |
■(2) 損益計算書
売上高および各段階利益は前期から増加しており、利益率も改善傾向にあります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 5612億円 | 5715億円 |
| 売上総利益 | 1351億円 | 1433億円 |
| 売上総利益率(%) | 24.1% | 25.1% |
| 営業利益 | 297億円 | 345億円 |
| 営業利益率(%) | 5.3% | 6.0% |
販売費及び一般管理費のうち、運送費・保管料が274億円(構成比25%)、販売部門の従業員給料・賞与が172億円(同16%)、一般管理部門の従業員給料・賞与が126億円(同12%)を占めています。
■(3) セグメント収益
食品事業およびその他の事業ともに前期から売上を伸ばしています。特に主力の食品事業では、価格改定や高付加価値商品の販売拡大が寄与し、全体の増収を牽引しました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 食品事業 | 5375億円 | 5474億円 |
| その他の事業 | 237億円 | 240億円 |
| 連結(合計) | 5612億円 | 5715億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFがプラス、投資CFがマイナス、財務CFがマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う健全型のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -125億円 | 357億円 |
| 投資CF | -188億円 | -389億円 |
| 財務CF | -50億円 | -5億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
コーポレートスローガン「かがやく“笑顔”のために」、経営理念「乳で培った技術を活かし私たちならではの商品をお届けすることで健康で幸せな生活に貢献し豊かな社会をつくる」を掲げています。独自の価値をお届けし続けることで、笑顔あふれる豊かな社会の実現への貢献を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、一人ひとりが常に「濃淡」と「スピード」を意識して業務を遂行し、新しいことにチャレンジする風土の醸成を重視しています。また、多様な価値の統合と挑戦を奨励する風土を軸に、社員が自律的に専門能力を発揮できる組織づくりに取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
「森永乳業グループ10年ビジョン」を制定し、「食のおいしさ・楽しさと健康・栄養を両立した企業へ」等のありたい姿を定めています。また「中期経営計画2025-28」において、2029年3月期の数値目標を設定しています。
* 売上高:6,300億円
* 営業利益:440億円
* 営業利益率:7%
* 海外売上高比率:15%
* ROE:10%
■(4) 成長戦略と重点施策
「メリハリ」を重視し、ヨーグルト、アイス、菌体、海外育児用ミルクなど強みを活かせる領域へ経営資源を集中させています。また、バリューチェーン全体の最適化や生産体制の再編による構造改革を進めるとともに、ROIC目標の導入により資本収益性の向上を図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「高い専門性と多様性に富んだ活力ある人財集団の形成」を基本テーマに掲げています。個人の自律と専門能力の発揮を柱とし、キャリア調査や公募制度による挑戦の後押しに加え、多様な属性や価値観を尊重し、持続的な企業価値向上の源泉として活かす組織づくりを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 40.2歳 | 16.6年 | 7,990,598円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.0% |
| 男性育児休業取得率 | 104.1% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 68.8% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規労働者) | 77.6% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規労働者) | 68.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、社員エンゲージメントレーティング(B)、人財育成に向けた研修投資額(4.5万円/人/年)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 酪農乳業界の動向と制度変更
乳製品の原料である生乳の取引においては、生産者への補給金制度や関税制度が設けられています。これらの制度の大幅な変更や廃止、また酪農家の減少に伴う原乳量の減少が発生した場合、生産活動や開発が停滞し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 原材料調達の不安定化と価格変動
主要な原材料は、国内外の需給状況や関税制度、為替相場の変動により価格や納期が影響を受けます。気候変動等の環境課題による調達の不安定化リスクもあり、これらに対する適切な対応が遅れた場合、調達コストの増加や供給不足に陥る可能性があります。
■(3) 製品の品質と食品安全の確保
製品製造においては安全性と品質の確保に万全を期していますが、万が一、大規模な製品回収や製造物責任賠償につながるような不測の事態が発生した場合、社会的な信頼の低下や多額の対策費用が生じ、業績および財務状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。



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