森永乳業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

森永乳業 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場する大手食品メーカー。市乳、乳製品、アイスクリーム等の製造販売を主力事業とします。当期の連結業績は、売上高が前年比2.6%増の5,612億円、営業利益が6.5%増の297億円と増収増益となる一方、親会社株主に帰属する当期純利益は91.1%減の55億円となりました。


※本記事は、森永乳業株式会社 の有価証券報告書(第102期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 森永乳業ってどんな会社?


市乳、乳製品、アイスクリーム、飲料などの製造販売を行う食品メーカー。「ビヒダス」「ピノ」などのブランドを展開しています。

(1) 会社概要


同社は1917年9月に日本煉乳として設立され、1949年4月に現在の森永乳業が設立されました。1954年9月に東京証券取引所に上場し、2017年9月には創業100周年を迎えました。2022年4月の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しています。

連結従業員数は7,453名、単体では3,310名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様の業務を行う日本カストディ銀行です。第3位には三井住友銀行の退職給付信託口であるSMBC信託銀行が名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.49%
日本カストディ銀行(信託口) 7.13%
SMBC信託銀行(三井住友銀行退職給付信託口) 3.17%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性2名の計15名で構成され、女性役員比率は13.3%です。代表取締役社長は大貫陽一氏です。社外取締役比率は26.7%です。

氏名 役職 主な経歴
大貫 陽一 代表取締役社長 1983年入社。経営企画部長、広報部長、経営戦略本部長などを歴任。2019年専務取締役、2021年6月より現職。
大川 禎一郎 代表取締役副社長海外事業本部長 1982年入社。食品総合研究所長、研究本部長などを歴任。2020年代表取締役副社長に就任、2025年2月より現職。
港 毅 取締役 常務執行役員 1988年入社。渉外本部長、コーポレート本部長などを歴任。2023年6月より現職。
柳田 恭彦 取締役 常務執行役員生産本部長 1984年入社。盛岡工場長、中京工場長、東京多摩工場長などを経て、2020年生産本部長。2021年6月より現職。
兵働 仁志 取締役 常務執行役員国内営業本部長 1989年入社。営業本部冷菓事業部長、営業本部長などを歴任。2025年4月より現職。
野崎 昭弘 取締役 常務執行役員財務本部長 1988年入社。財務部長、経営戦略本部長、コーポレート戦略本部長などを歴任。2025年4月より現職。
柳田 隆宏 取締役 1985年入社。MILEI GmbH代表取締役社長、海外事業本部長などを歴任。2025年2月より現職。


社外取締役は、吉永泰之(元富士重工業社長)、富永由加里(元日立ソリューションズ常務執行役員)、中村寛(元カシオ計算機副社長執行役員)、池田隆之(元東芝テック社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「食品」および「その他」事業を展開しています。

(1) 食品事業


市乳、乳製品、アイスクリーム、飲料などの製造販売を行っています。主な製品には、牛乳、ヨーグルト、チーズ、育児用ミルク、流動食などがあり、一般消費者や業務用の顧客へ提供しています。

製品の販売による対価を収益として受け取ります。運営は同社が製造販売を行うほか、一部製品の製造をエムケーチーズ、横浜森永乳業などの連結子会社に委託し、販売については森永乳業販売などの連結子会社が主に行っています。

(2) その他事業


飼料の販売、プラント設備の設計施工、不動産の賃貸などを展開しています。飼料やペットフードの取り扱いや、設備の設計施工サービスなどを顧客へ提供しています。

商品の販売やサービスの提供による対価を収益として受け取ります。運営は、飼料販売を森永酪農販売、ペットフード販売を森乳サンワールド、プラント設備の設計施工などを森永エンジニアリングが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年3月期から2025年3月期までの業績を見ると、売上高は変動しながらも直近では増加傾向にあります。利益面では、経常利益は300億円前後で推移していましたが、2023年3月期にやや減少した後、回復傾向にあります。当期利益は2024年3月期に固定資産売却益などで大きく伸びましたが、2025年3月期はその反動や減損損失の計上等により減少しました。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 5,836億円 5,034億円 5,256億円 5,471億円 5,612億円
経常利益 301億円 311億円 252億円 281億円 299億円
利益率(%) 5.2% 6.2% 4.8% 5.1% 5.3%
当期利益(親会社所有者帰属) 187億円 338億円 169億円 613億円 55億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で増加し、売上総利益率も改善傾向にあります。営業利益も増加しており、本業の収益性は堅調です。一方、当期利益については、前期に計上された特別利益の反動減などにより大きく減少しています。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 5,471億円 5,612億円
売上総利益 1,320億円 1,351億円
売上総利益率(%) 24.1% 24.1%
営業利益 278億円 297億円
営業利益率(%) 5.1% 5.3%


販売費及び一般管理費のうち、運送費・保管料が282億円(構成比27%)、従業員給料・賞与が169億円(同16%)を占めています。

(3) セグメント収益


食品事業は、「健康5領域」商品の拡大や価格改定効果などにより増収増益となりました。その他事業も増収増益で推移しました。連結全体では、各種コストアップの影響を受けつつも、これらを吸収し増収増益を達成しました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
食品 5,207億円 5,375億円 381億円 398億円 7.4%
その他 263億円 237億円 20億円 29億円 12.2%
調整額 - - -123億円 -130億円 -
連結(合計) 5,471億円 5,612億円 278億円 297億円 5.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

森永乳業は、安定的な資金調達と財務安定性の維持を基盤とした株主還元を重視しています。

当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益が収入となったものの、法人税等の支払額が大きかったことから、前連結会計年度に比べ大幅な支出となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却収入はあったものの、固定資産の取得による支出が先行し、前連結会計年度に比べ支出が増加しました。財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の発行による収入があったものの、社債償還や自己株式の取得による支出が影響し、前連結会計年度に比べ支出は減少しました。これらの結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ減少しました。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 566億円 -125億円
投資CF 252億円 -188億円
財務CF -386億円 -50億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、コーポレートスローガン「かがやく“笑顔”のために」のもと、経営理念として「乳で培った技術を活かし、私たちならではの商品をお届けすることで健康で幸せな生活に貢献し豊かな社会をつくる」を掲げています。

(2) 企業文化


同社グループは、2026年3月期からの中期経営計画策定にあたり「Merihari(メリハリ)」という考え方を重視しています。カテゴリーごとの役割明確化や強弱をつけた資源配分を行い、業務遂行における「濃淡」と「スピード」を意識することで、生産性とエンゲージメントの向上に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、2029年3月期を最終年度とする「中期経営計画2025-28」において、以下の目標を掲げています。
* 連結売上高:6,300億円
* 連結営業利益:440億円
* 売上高営業利益率:7%
* ROE:10%
* 海外売上高比率:15%

(4) 成長戦略と重点施策


「中期経営計画2025-28」では、これまでの全方位思考から脱却し、ヨーグルト、アイス、菌体、海外育児用ミルクなど、強みを活かせる領域へ経営資源を集中させる成長戦略を掲げています。また、バリューチェーン全体の最適化や生産体制再編による構造改革、ROIC目標導入やエンゲージメント向上による組織風土改革を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社グループは、「高い専門性と多様性に富んだ活力ある人財集団」の実現を目指しています。人づくりとして「個人の自律」と「専門能力の発揮」、組織づくりとして「多様な価値の結合」と「挑戦を奨励する風土」に取り組み、エンゲージメント向上を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 40.2歳 16.8年 7,924,888円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.2%
男性育児休業取得率 91.5%
男女賃金差異(全労働者) 66.6%
男女賃金差異(正規雇用) 75.9%
男女賃金差異(非正規雇用) 62.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、人財育成に向けた研修投資額(4.3万円/人/年)、社員エンゲージメントレーティング(B)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 酪農乳業界の動向


生乳取引における加工原料乳生産者補給金制度や、乳製品に対する関税制度が大幅に変更された場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は関係省庁等と連携し、変化に対処するとともに、酪農現場への支援を行っています。

(2) 原材料調達


国内外の需給状況や関税制度、為替相場の変化等により、主要原材料の価格や納期が変動する可能性があります。同社は調達ポリシーのもと、複数地域・取引先からの購買や代替原材料の手当、為替予約等により対策を講じています。

(3) 食品安全


大規模な製品回収や製造物責任賠償につながる事態が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。同社は品質ポリシーを定め、製造現場だけでなくサプライチェーン全体で製品の安全と品質の確保に努めています。

(4) 海外事業、新規事業等


海外M&Aや新規事業において、外部環境の急激な変化等により当初計画が未達となり、減損損失が発生する可能性があります。同社は投資案件のモニタリングや進捗確認を通じて、リスク回避に努めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

森永乳業の転職研究 2026年3月期2Q決算に見るキャリア機会

森永乳業の2026年3月期2Q決算は、海外事業の好調により営業利益予想を330億円に上方修正。MILEI社の収益貢献や国内の生産体制再編加速など、利益率向上に向けた構造改革が進行中です。攻めの投資領域であるアイスや菌体事業、グローバル展開で活躍できる「変革期」のキャリア機会を整理します。