伊藤園 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

伊藤園 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東京証券取引所プライム市場に上場。「お~いお茶」等の茶葉・飲料製品の製造販売や「タリーズコーヒー」等の飲食事業を展開しています。2025年4月期の連結業績は、主力ブランドや飲食事業の好調により増収となりましたが、原材料費高騰や広告宣伝費の増加等が響き減益となりました。


※本記事は、株式会社伊藤園 の有価証券報告書(第60期、自 2024年5月1日 至 2025年4月30日、2025年7月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 伊藤園ってどんな会社?

緑茶飲料「お~いお茶」を中心とした飲料メーカーで、タリーズコーヒー等の飲食事業も展開する企業です。

(1) 会社概要

1966年にフロンティア製茶として設立され、1969年に伊藤園へ商号変更しました。1985年に「缶入り煎茶」を発売し、1989年には「お~いお茶」へ名称変更してブランドを確立しました。1998年に東京証券取引所市場第一部へ指定され、2006年にはタリーズコーヒージャパンを子会社化しています。

連結従業員数は7,916名、単体では4,965名です。筆頭株主はグリーンコアで、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は公益財団法人本庄国際奨学財団です。グリーンコアは創業家関連の資産管理会社と推察される属性を持ち、安定的な株主構成となっています。

氏名 持株比率
グリーンコア 19.69%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.70%
公益財団法人本庄国際奨学財団 5.87%

(2) 経営陣

同社の役員は男性12名、女性1名の計13名で構成され、女性役員比率は7.7%です。代表取締役社長執行役員は本庄大介氏です。社外取締役比率は38.5%です。

氏名 役職 主な経歴
本庄 大介 代表取締役社長執行役員 1987年入社。2002年代表取締役副社長を経て、2009年より現職。
本庄 周介 代表取締役副社長執行役員CDOマーケティング本部担当営業統括本部長兼・グループシステムDX本部長 1994年入社。2010年取締役副社長を経て、2014年より現職。タリーズコーヒージャパン代表取締役等を兼務。
中野 悦久 取締役専務執行役員CSO物流本部担当生産本部長 1989年入社。人事総務本部長、広域流通営業本部長等を経て、2019年より現職。
神谷 茂 取締役専務執行役員総合企画部、グループ経営推進部、サプライチェーン戦略部担当兼・特命担当 1982年入社。広域量販店営業本部長等を経て、2021年より現職。
平田 篤 取締役専務執行役員CHROCFO内部統制担当管理本部長 1988年入社。管理本部長、常務執行役員等を経て、2020年より現職。
Yosuke Jay Oceanbright Honjo 取締役執行役員米国事業担当 1992年入社。ITO EN(North America)INC. President&CEO等を歴任し、2023年より現職。
近藤 清 取締役(常勤監査等委員) 1989年入社。内部監査室長、営業統括管理本部長等を経て、2023年より現職。


社外取締役は、髙野秀夫(元東京商工会議所理事・事務局長)、阿部啓子(東京大学名誉教授)、臼井祐一(元警視庁地域部長)、横倉仁(弁護士・公認会計士)、奥田芳彦(税理士)です。

2. 事業内容

同社グループは、「リーフ・ドリンク関連事業」「飲食関連事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) リーフ・ドリンク関連事業

「お~いお茶」ブランドをはじめとする緑茶、麦茶、コーヒー、野菜飲料などの製造・販売を行っています。また、茶葉(リーフ)製品の仕入製造も手掛けています。国内外で事業を展開し、米国や中国、東南アジアなどでも製品を販売しています。

製品は主に卸売業者や小売店を通じて消費者に販売され、その対価を収益としています。国内の製造販売は主に伊藤園が行い、沖縄・北海道地区はそれぞれ株式会社沖縄伊藤園、株式会社北海道伊藤園が担当しています。海外ではITO EN(North America)INC.などが販売を行っています。

(2) 飲食関連事業

スペシャルティコーヒーを提供する飲食店「タリーズコーヒー」の経営およびフランチャイズ展開を行っています。こだわりのコーヒー豆を使用したドリンクやフードメニューを提供し、くつろぎの空間を創出しています。

直営店における一般顧客からの飲食代金や、フランチャイズ加盟店からのロイヤリティ収入などが主な収益源です。運営は主にタリーズコーヒージャパン株式会社が行っています。

(3) その他

サプリメントの製造販売などを行っています。米国においてサプリメント事業を展開し、健康食品分野での事業拡大を図っています。

製品の販売による対価を収益としています。運営は主にMason Distributors,Inc.が行っています。

3. 業績・財務状況

同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移

直近5期間の業績を見ると、売上高は着実な増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。経常利益については、2024年4月期に大きく伸長しましたが、直近の2025年4月期では原材料価格の高騰などの影響を受け、減益となりました。利益率は4%台後半から5%台で推移しており、比較的安定した収益性を維持しています。

項目 2021年4月期 2022年4月期 2023年4月期 2024年4月期 2025年4月期
売上高 4,463億円 4,008億円 4,317億円 4,539億円 4,727億円
経常利益 170億円 200億円 203億円 267億円 230億円
利益率(%) 3.8% 5.0% 4.7% 5.9% 4.9%
当期利益(親会社所有者帰属) 71億円 124億円 133億円 138億円 117億円

(2) 損益計算書

直近2期間の損益構成を見ると、売上高の増加に伴い売上総利益も増加していますが、売上原価の増加率が売上高の増加率を上回っており、利益率を圧迫しています。営業利益は前期比で減少しており、コストコントロールが課題となっている様子がうかがえます。

項目 2024年4月期 2025年4月期
売上高 4,539億円 4,727億円
売上総利益 1,771億円 1,796億円
売上総利益率(%) 39.0% 38.0%
営業利益 250億円 230億円
営業利益率(%) 5.5% 4.9%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が504億円(構成比32%)、自販機販売手数料が155億円(同10%)を占めています。

(3) セグメント収益

主力のリーフ・ドリンク関連事業は、売上高が増加したものの、コスト増により利益は減少しました。一方、飲食関連事業は売上高、利益ともに増加し、好調に推移しました。その他事業も増収増益となりましたが、全体としては主力事業の減益が響き、連結全体での減益要因となりました。

区分 売上(2024年4月期) 売上(2025年4月期) 利益(2024年4月期) 利益(2025年4月期) 利益率
リーフ・ドリンク関連事業 4,055億円 4,203億円 221億円 190億円 4.5%
飲食関連事業 404億円 438億円 32億円 35億円 8.0%
その他 80億円 86億円 4億円 8億円 8.9%
調整額 - - -7億円 -3億円 -
連結(合計) 4,539億円 4,727億円 250億円 230億円 4.9%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

営業活動によるキャッシュ・フローがプラスで、投資活動および財務活動によるキャッシュ・フローがマイナスであるため、本業で稼いだ資金を投資や借入返済、株主還元に充てている健全型と言えます。

項目 2024年4月期 2025年4月期
営業CF 255億円 180億円
投資CF -107億円 -133億円
財務CF -122億円 -232億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.0%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略

同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念

同社グループは、「お客様第一主義」を経営理念として掲げています。ここでの「お客様」とは、消費者、株主、販売先、仕入先、金融機関、地域社会など、同社グループに関わるすべての方々を指しています。この理念に基づき、企業価値を高め、株主価値を向上させる経営に努めています。

(2) 企業文化

全社員が「STILL NOW(今でもなお、お客様は何を不満に思っているか)」という精神を持ち続けることを重視しています。この精神に基づき、「自然・健康・安全・良いデザイン・おいしい」という製品開発コンセプトのもと、お客様に喜ばれる製品開発とサービス提供を行う文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標

2029年4月期までを対象とする「伊藤園グループ 中期経営計画」を策定しています。「お客様の健康で豊かな生活と持続可能な社会の実現」を使命とし、「健康創造企業」としてのミッション達成を目指しています。

* 連結売上高:年平均伸長率2%以上(海外8%以上 ※為替影響除く)
* 営業利益率:8%以上
* 自己資本利益率(ROE):10%以上

(4) 成長戦略と重点施策

中期経営計画に基づき、「お~いお茶」のグローバルブランド化を推進し、海外事業の強化を図ります。また、健康価値を表示できる製品の開発や、環境に配慮した「茶殻リサイクルシステム」の推進など、サステナビリティ経営を実践します。営業基盤の強化としてルートセールスの深耕やデジタル活用を進め、総コスト削減のため委託生産方式や効率的な物流体制の構築にも取り組みます。

5. 働く環境

同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針

「人は城、人は石垣」の考えのもと、社員一人ひとりが「STILL NOW」の精神を持ち、お客様第一主義を実践できる人材の育成を目指しています。実力主義に基づき、公正な評価と平等な機会を提供することで、自ら考え行動し、挑戦し続ける人材を育成し、組織全体の活性化を図る方針です。

(2) 給与水準・報酬設計

同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年4月期 42.4歳 18.5年 6,828,580円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示

同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 3.9%
男性育児休業取得率 83.3%
男女賃金差異(全労働者) 78.5%
男女賃金差異(正規雇用) 78.7%
男女賃金差異(非正規雇用) 84.1%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有機栽培の生産量(309t)、食品リサイクル率(94.5%)などです。

6. 事業等のリスク

事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 政治・経済・社会動向に起因するリスク

国内外での事業展開において、景気や為替相場の変動、国際情勢の変化、サプライチェーンの混乱などが業績に影響を与える可能性があります。特に、原材料やエネルギーコストの上昇が長期化した場合、収益性に悪影響を及ぼす恐れがあります。これに対し、製造委託先や物流の分散などで対応を進めています。

(2) 食品・飲料市場動向に起因するリスク

国内飲料市場では低価格化や競争激化が続いており、製品ライフサイクルも短期化しています。消費者の嗜好変化や販売チャネルの多様化に対応できない場合、業績に影響する可能性があります。同社は市場分析の強化や高付加価値製品の開発、デジタルマーケティングの推進などで競争力維持に努めています。

(3) 原材料調達に関するリスク

茶葉や輸入原料、容器包装資材の価格高騰や調達難がリスクとなります。特に茶葉については、国内生産者の高齢化による生産量減少が懸念されます。同社は茶産地育成事業を通じて原料の安定調達を図るとともに、調達先の分散やコスト削減策を実施しています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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