ロート製薬 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

ロート製薬 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場のヘルス&ビューティケア企業です。OTC医薬品やスキンケア製品、機能性食品等をグローバルに展開しています。直近の業績は、国内外での販売が好調に推移し売上高は前期比14.0%増と伸長しましたが、原価率の上昇や研究開発費の増加等により経常利益は4.7%減の増収減益となりました。


※本記事は、ロート製薬株式会社 の有価証券報告書(第89期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. ロート製薬ってどんな会社?


アイケア、スキンケア、内服薬等を主軸に、世界の人々の「Well-being」に貢献するヘルス&ビューティケア企業です。

(1) 会社概要


1899年に信天堂山田安民薬房として創業し、胃腸薬や点眼薬で事業を拡大しました。1949年に設立、1964年には東証一部へ上場。1988年に米メンソレータム社を買収しグローバル展開を加速させました。近年では2024年にシンガポールの漢方薬企業ユーヤンサン・インターナショナル社を買収するなど、事業領域を広げています。

同グループの従業員数は連結9,144名、単体1,753名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位も同様に日本カストディ銀行です。第3位は常任代理人みずほ銀行を通じたSTATE STREET BANK AND TRUST COMPANYとなっており、機関投資家や信託口が上位を占めています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 14.26%
日本カストディ銀行(信託口) 6.73%
STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505223(常任代理人 みずほ銀行決済営業部) 5.46%

(2) 経営陣


同社の役員は男性12名、女性5名の計17名で構成され、女性役員比率は29.4%です。代表取締役会長チーフエグゼクティブオフィサー(CEO)は山田邦雄氏です。社外取締役比率は38.5%です。

氏名 役職 主な経歴
山田 邦雄 代表取締役会長チーフエグゼクティブオフィサー(CEO) 1980年同社入社。取締役副社長、メンソレータム社取締役会長などを経て1999年代表取締役社長就任。2009年より代表取締役会長兼CEO。
杉本 雅史 代表取締役社長チーフオペレーティングオフィサー(COO) 1984年武田薬品工業入社。武田コンシューマーヘルスケア代表取締役社長を経て2019年同社入社。同年6月より現職。天藤製薬代表取締役会長も兼務。
斉藤 雅也 取締役副社長チーフファイナンシャルオフィサー(CFO) 1986年同社入社。ロート・メンソレータム・ベトナム社社長、経営企画本部長等を経て2018年取締役副社長就任。2022年よりCFO。
國﨑 伸一 取締役副社長チーフテクニカルオフィサー(CTO) 1981年サントリー入社。2007年同社入社。研究開発本部長、クオリテックファーマ社長、常務取締役等を経て2023年より取締役副社長。
瀬木 英俊 常務取締役チーフストラテジーオフィサー(CSO) 1985年日本ヴィックス入社。1997年同社入社。2018年取締役就任。2022年よりCSO、2023年より常務取締役。
河﨑 保徳 取締役チーフヒューマンリソースオフィサー(CHRO) 1982年日本生命保険入社。1986年同社入社。執行役員人材開発教育担当を経て2023年取締役就任。同年よりCHRO。
山中 雅恵 取締役チーフトランスフォーメーションオフィサー(CXO) 日本IBM、日本マイクロソフト、LIXIL、パナソニックを経て2024年同社入社。同年6月より取締役兼CXO。
本間 陽一 取締役チーフサイエンティフィックオフィサー(CScO) 1992年同社入社。研究開発本部副本部長、R&D推進特任部長、執行役員を経て2024年取締役就任。同年よりCScO。


社外取締役は、入山章栄(早稲田大学ビジネススクール教授)、米良はるか(READYFOR代表取締役CEO)、上村達男(早稲田大学名誉教授)、林依利子(依利法律事務所代表)、片田江舞子(Red Capital代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「日本」「アメリカ」「ヨーロッパ」「アジア」および「その他」事業を展開しています。

(1) 日本


国内において、アイケア関連(目薬、洗眼薬等)、スキンケア関連(外皮用薬、リップクリーム、日やけ止め、機能性化粧品等)、内服関連(胃腸薬、漢方薬、サプリメント等)およびその他製品の製造・販売を行っています。

収益は主に卸売業者や小売店への製品販売から得ています。運営はロート製薬が中心となって行うほか、アイケア関連製品の一部についてはロートニッテンが製造・販売を行っています。また、クオリテックファーマ等の子会社も製造・販売に関わっています。

(2) アメリカ


米国を中心に、主にスキンケア関連製品の製造・販売を行っています。

収益は現地での製品販売から得ています。運営は主に米国子会社のメンソレータム社が中心となって行っています。

(3) ヨーロッパ


英国を中心に、主にスキンケア関連製品の製造・販売を行っています。

収益は現地での製品販売から得ています。運営は主に英国子会社のメンソレータム社・イギリスが中心となって行っています。

(4) アジア


中国、ベトナム、インドネシア、シンガポール等のアジア地域において、主にアイケア関連、スキンケア関連、内服関連製品の製造・販売を行っています。

収益は現地での製品販売から得ています。運営はメンソレータム社・アジアパシフィック、メンソレータム社・中国、ロート・メンソレータム・ベトナム社などが担当するほか、内服関連はユーヤンサン・インターナショナル社が行っています。

その他


オーストラリア等において、主にスキンケア関連製品の製造・販売を行っています。

収益は現地での製品販売から得ています。運営はメンソレータム社・オーストラレーシア等が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は毎期順調に増加を続けており、成長基調にあります。利益面では、経常利益も売上高の伸長に伴い増加傾向にありましたが、直近では原価率の上昇等の影響を受けやや減少しました。当期利益は安定して推移しており、底堅い収益力を維持しています。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 1,813億円 1,996億円 2,387億円 2,708億円 3,086億円
経常利益 239億円 288億円 356億円 424億円 404億円
利益率(%) 13.2% 14.4% 14.9% 15.7% 13.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 89億円 130億円 166億円 200億円 189億円

(2) 損益計算書


売上高は増加しましたが、売上総利益率は低下し、営業利益も減少しました。売上の拡大に対し、原価や販管費の増加が利益を圧迫した形です。特に営業利益率は低下しており、コストコントロールや効率化が課題となっていることがうかがえます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,708億円 3,086億円
売上総利益 1,573億円 1,749億円
売上総利益率(%) 58.1% 56.7%
営業利益 400億円 389億円
営業利益率(%) 14.8% 12.6%


販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が392億円(構成比28.8%)、その他が310億円(同22.8%)を占めています。

(3) セグメント収益


全セグメントで売上が増加しました。特にヨーロッパとアジアの大幅な増収が全体の成長を牽引しています。日本も堅調に推移し、アメリカも増収となりました。利益面では、日本が減益となったものの、アメリカ、ヨーロッパ、アジアはいずれも増益となり、海外事業が利益面でも貢献度を高めています。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
日本 1,569億円 1,650億円 244億円 225億円 13.6%
アメリカ 186億円 208億円 12億円 15億円 7.4%
ヨーロッパ 139億円 192億円 14億円 14億円 7.4%
アジア 788億円 1,003億円 120億円 123億円 12.2%
その他 28億円 34億円 2億円 4億円 10.5%
調整額 △94億円 △114億円 8億円 9億円 -%
連結(合計) 2,708億円 3,086億円 400億円 389億円 12.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


本業の営業活動で得た資金に加え、財務活動でも資金を調達し、それらを投資活動に積極的に充当しています。特に当期は投資キャッシュ・フローの支出が大きく、事業拡大や将来の成長に向けた投資を加速させている積極型の状態と言えます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 342億円 369億円
投資CF △163億円 △892億円
財務CF △138億円 353億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は61.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「健康」をコアバリューとし、世界の人々に商品やサービスを通じて「健康」を届けることで、すべての人や社会を「Well-being」に導くことを存在意義(パーパス)としています。心身の健康への貢献を最大の責務と捉え、長期視点での価値創出と社会課題の解決を目指しています。

(2) 企業文化


「Well-being経営」を目指し、「健康」「美」「サイエンスに基づく高い研究開発力」という強みと共に、「一人ひとりが自律し、チャレンジを続ける企業文化」を重視しています。社内外の仲間と手を携え、健康で笑顔あふれる社会環境の実現に向けて挑戦し続けることを行動様式としています。

(3) 経営計画・目標


「ビジョン2030」を掲げ、全てのステークホルダーの満足度向上を目指しています。経営管理においては、売上高や営業利益率、自己資本当期純利益率(ROE)、総資産経常利益率(ROA)、EBITDAマージンなどの収益指標を重視し、各分野でトップあるいは主要なブランドを築くことを目標としています。

(4) 成長戦略と重点施策


「事業収益力の強化」「技術商品力の深化と拡充」「メディカル事業の基盤構築」の3つを基本戦略としています。OTC医薬品ではリーディングカンパニーを目指し、スキンケアではサイエンスに基づく高機能製品を提供します。また、機能性食品を第三の柱に育てるとともに、医療用眼科、再生医療、CDMO(開発製造受託)事業を推進し、DXやグローバル展開も加速させます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「Well-being経営」推進のため、社員が主体的に参画し、プロの仕事人として自律的にキャリアを実現できるようダイバーシティ・マネジメントを推進しています。多様な個を活かした組織づくりを行い、社員と会社が共に成長することを目指しています。また、パーパスの連動や多様な働き方の推進、健康経営などを通じ、社員のWell-being向上に向けた環境整備を行っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 42.3歳 14.0年 8,261,000円


※平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 30.0%
男性育児休業取得率 97.5%
男女賃金差異(全労働者) 65.8%
男女賃金差異(正規) 68.6%
男女賃金差異(非正規) 38.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(76.5%)、学び実践率(62.7%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法的規制並びに制度・行政


同社グループの事業は医薬品医療機器法等の関連法規の規制を受けます。将来的な規制の変更や強化があった場合、製品開発や製造販売活動に制約が生じたり、対応コストが増加したりすることで、業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 気候変動等の社会的課題への対応


気候変動の影響による原材料や燃料価格の高騰が原価上昇につながる可能性があります。また、サステナビリティに対する消費者の意識の高まりに伴い、環境配慮型の商品やサービスの開発コストが増加し、業績に影響を与える可能性があります。

(3) 海外展開に伴うリスク


グローバルに事業を展開しており、海外売上比率が高いため、現地の政治・経済情勢の悪化や法規制の変更、予期せぬ事象の発生などが事業活動に支障をきたし、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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