※本記事は、ロート製薬株式会社の有価証券報告書(第90期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. ロート製薬ってどんな会社?
アイケアやスキンケアを中心としたヘルス&ビューティケア領域で、製品やサービスをグローバルに提供しています。
■(1) 会社概要
1899年2月に信天堂山田安民薬房を創業し、医薬品の製造販売を開始しました。1949年にロート製薬を設立し、1961年に大阪証券取引所市場第二部、1962年に東京証券取引所市場第二部に上場しました。その後、1988年のメンソレータム社買収などM&Aを通じて海外展開や事業領域の拡大を進めました。
同社グループの従業員数は連結で9,292名、単体で1,786名です。筆頭株主は信託業務を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位も常任代理人がみずほ銀行決済営業部となっている海外の信託銀行等であるSTATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505223です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 13.46% |
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505223(常任代理人 みずほ銀行決済営業部) | 5.44% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 4.92% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性8名の計19名で構成され、女性役員比率は42.1%です。代表取締役会長は山田邦雄氏、代表取締役社長は瀬木英俊氏が務めています。取締役14名のうち5名が社外取締役です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山田邦雄 | 代表取締役会長 | 1980年4月同社入社。1999年6月代表取締役社長就任。2009年6月代表取締役会長就任、最高経営責任者。2019年6月より現職。 |
| 瀬木英俊 | 代表取締役社長 | 1985年4月日本ヴィックス入社。1997年6月同社入社。2023年6月常務取締役就任。2025年6月より現職。 |
| 斉藤雅也 | 取締役副社長チーフファイナンシャルオフィサー(CFO) | 1986年4月同社入社。2018年6月メンソレータム社取締役社長就任。2022年3月チーフファイナンシャルオフィサー就任。2018年6月より現職。 |
| 國﨑伸一 | 取締役副社長チーフテクニカルオフィサー(CTO) | 1981年4月サントリー入社。2007年1月同社入社。2022年3月チーフテクニカルオフィサー就任。2023年6月より現職。 |
| 藤本陽子 | 常務取締役チーフメディカルオフィサー(CMO) | 2002年7月ファルマシア入社。2019年9月同取締役執行役員ワクチン部門長。2025年6月同社入社。2025年6月より現職。 |
| 河﨑保徳 | 取締役チーフヒューマンリソースオフィサー(CHRO) | 1982年4月日本生命保険入社。1986年4月同社入社。2023年6月より現職。 |
| 山中雅恵 | 取締役チーフトランスフォーメーションオフィサー(CXO) | 1987年4月日本アイ・ビー・エム入社。2017年7月パナソニック入社。2024年5月同社入社。2024年6月より現職。 |
| 本間陽一 | 取締役チーフサイエンティフィックオフィサー(CScO) | 1992年4月同社入社。2021年7月執行役員。2024年6月より現職。 |
| 末延則子 | 取締役チーフリサーチオフィサー(CRO) | 1991年4月ポーラ化成工業入社。2023年8月ポーラメディカル代表取締役社長。2025年4月同社入社。2025年6月より現職。 |
社外取締役は、入山章栄氏(早稲田大学ビジネススクール教授)、米良はるか氏(READYFOR代表取締役CEO)、林依利子氏(依利法律事務所代表)、片田江舞子氏(Red Capital代表取締役)、岩田彰一郎氏(元アスクル代表取締役社長CEO)です。
2. 事業内容
同社グループは、日本、アメリカ、ヨーロッパ、アジアの各報告セグメントおよびその他の事業を展開しています。
■(1) 日本
同社を中心に、アイケア関連、スキンケア関連、内服・食品関連、メディカル関連およびその他の製品やサービスを国内市場に向けて製造・販売しています。医療用眼科用薬やCDMO事業なども手がけています。
収益は一般消費者向けの医薬品や化粧品の販売、および他社からの受託製造等によって得ています。主な運営は同社ならびに、メディカル関連製品を扱うロートニッテン、クオリテックファーマなどの子会社が行っています。
■(2) アメリカ
米国や中南米市場に向けて、主にスキンケア関連の製品やサービスを製造・販売しています。ニキビ治療薬などの機能性スキンケアや、医療用消毒薬などの製品群を展開し、消費者のヘルス&ビューティニーズに応えています。
収益は、現地での小売店等を通じた製品の販売代金から得ています。運営は主にメンソレータム社が中心となり、ブラジル等の各現地法人がそれぞれの地域に密着した事業活動を行っています。
■(3) ヨーロッパ
英国やポーランド、オーストリアなどの市場に向けて、主にスキンケア関連および一部医療機器等の製品やサービスを製造・販売しています。現地市場の特性に合わせた化粧品や点眼薬などのブランドを展開しています。
収益は、製品の販売代金から得ています。運営は主にメンソレータム社・イギリスが中心となり、ダクス・コスメティクス社やモノ社などの各現地法人が製品の製造・販売活動を担っています。
■(4) アジア
中国、東南アジア等の市場に向けて、主にアイケア関連、スキンケア関連、および内服・食品関連の製品やサービスを製造・販売しています。現地のニーズに応える目薬や機能性化粧品、漢方薬などを展開しています。
収益は、製品の販売代金から得ています。運営はメンソレータム社・アジアパシフィックやメンソレータム社・中国のほか、ユーヤンサン・インターナショナル社などの各現地法人が主体となって行っています。
■(5) その他
報告セグメントに含まれないオーストラリアなどの地域において、ヘルス&ビューティケア領域の製品やサービスを製造・販売しています。現地消費者の需要に合わせた製品の提供を行っています。
収益は、製品の販売代金から得ています。運営は主にメンソレータム社・オーストラレーシアなどの現地法人が主体となり、地域に根ざした事業活動を展開しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5年間の業績推移を見ると、売上高は一貫して拡大を続けており、力強い成長傾向が伺えます。経常利益についても一時的な増減はあるものの、全体として増加傾向にあり、堅調な収益性を維持しています。積極的な海外展開や新規連結の効果が業績拡大を牽引していると考えられます。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,996億円 | 2,387億円 | 2,708億円 | 3,086億円 | 3,437億円 |
| 経常利益 | 288億円 | 356億円 | 424億円 | 397億円 | 480億円 |
| 利益率(%) | 14.4% | 14.9% | 15.7% | 12.9% | 14.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 130億円 | 166億円 | 200億円 | 189億円 | 249億円 |
■(2) 損益計算書
売上高が順調に拡大する中で、売上総利益も連動して増加しており、安定した付加価値を創出しています。売上総利益率および営業利益率は前年度と同水準を維持しており、着実なコストコントロールのもとで事業規模の拡大を実現していることがわかります。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 3,086億円 | 3,437億円 |
| 売上総利益 | 1,744億円 | 1,927億円 |
| 売上総利益率(%) | 56.5% | 56.1% |
| 営業利益 | 382億円 | 411億円 |
| 営業利益率(%) | 12.4% | 12.0% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が183億円(構成比12%)、研究開発費が110億円(同7%)、販売促進費が75億円(同5%)を占めています。
■(3) セグメント収益
各セグメントともに前年度から売上高を伸ばしており、特にアジアやヨーロッパでの増収幅が顕著です。海外市場におけるニーズを的確に捉えた商品展開や、新規にグループへ加わった企業による貢献が、グローバル全体での大幅な増収に寄与しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 日本 | 1,650億円 | 1,693億円 |
| アメリカ | 208億円 | 216億円 |
| ヨーロッパ | 192億円 | 239億円 |
| アジア | 1,003億円 | 1,253億円 |
| その他 | 34億円 | 36億円 |
| 連結(合計) | 3,086億円 | 3,437億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動によるキャッシュ・フローはプラス、投資活動および財務活動によるキャッシュ・フローはマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業である「健全型」の傾向を示しています。
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は12.1%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は62.1%であり、いずれも市場平均を上回っています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 369億円 | 478億円 |
| 投資CF | -892億円 | -298億円 |
| 財務CF | 353億円 | -118億円 |
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「豊かで幸せな生活を送るための心身の健康に貢献し続けることが最大の責務」とし、「社会の公器」としてステークホルダーと協働して社会課題を解決することを目指しています。また、パーパスとして「世界の人々に商品やサービスを通じて健康をお届けすることによって、すべての人や社会を『Well-being』に導き、明日の世界を元気にすること」を掲げています。
■(2) 企業文化
同社は、グループとして共有すべき理念や価値観、品質・倫理基準等を徹底しつつ、各地域の市場特性や顧客ニーズに根差した事業戦略を構築する自主性・自立性を尊重しています。「ロートは、ハートだ。」というコーポレートスローガンのもと、未来の可能性は人のハートの中にあると考え、社員一人ひとりの情熱を社会をより良い方向へ進める力に変える文化を大切にしています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、「Connect for Well-being & Longevity」のビジョンのもと、ヘルスケア市場において主要なブランドを築くことを目指しています。また、すべてのステークホルダーの満足度向上を図り、長期的視点で企業価値を高めるために、具体的な収益指標を重視して経営管理を行っています。
* 2030年度目標売上高:4,150億円
* 2030年度目標営業利益:540億円
* 2030年度目標営業利益率:13.0%
* EBITDAマージン:18.2%
* 海外売上比率:53%
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「事業収益力の強化」「技術商品力の深化と拡充」「メディカル事業の基盤構築」の3つの基本戦略に沿ってWell-beingな社会の実現を目指しています。アイケアやスキンケアでのブランド強化やグローバル展開を進めるとともに、内服・食品事業を第三の柱に育成します。さらに、再生医療やCDMO事業を含むメディカル事業へと多面的なソリューションの提供を拡大します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、社員一人ひとりが主体的に事業活動に参画し、プロの仕事人として自律的にキャリアビジョンを実現できるようダイバーシティ・マネジメントを推進しています。採用、人材育成、学習機会の提供、健康経営等を通じ、多様な個を活かした組織づくりを行うことで、社員個人と会社が共に成長し、Well-beingな社会を創造することを目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.1歳 | 13.8年 | 8,505,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 31.0% |
| 男性育児休業取得率 | 92.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 67.8% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 69.9% |
| 男女賃金差異(非正規雇用労働者) | 46.3% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給休暇取得率(80.6%)、健康診断受診率(100.0%)、喫煙者の割合(2.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 生産・調達・サプライチェーンの中断リスク
国内外の製造拠点や物流網を通じて製品を供給しているため、自然災害や原材料価格の高騰、サプライチェーンにおける操業停止等が発生した場合、製品の安定供給に支障が生じ、販売機会の逸失や代替調達費用の発生により業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 品質および製品の安全性に関するリスク
医薬品や化粧品など健康に関わる製品を扱っているため、製品の欠陥や予期せぬ副作用、異物混入等の問題が発生した場合、製品回収や損害賠償、ブランド価値の毀損につながり、社会的信用の低下を招くことで財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) グローバル事業展開に伴うリスク
海外売上高が連結の約半数を占めているため、展開する各国・地域における政治・経済情勢の悪化、法規制や行政運用の変更、為替変動、商慣習の違いなどにより、販売活動や生産・調達に支障が生じた場合、グループ全体の業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 市場環境の変化と競争激化リスク
展開するヘルス&ビューティケア市場において、消費者ニーズの変化や価格競争、新規参入、技術革新が生じる中、環境の変化に対して適切な商品開発やマーケティング戦略を実行できない場合、売上の減少や収益性の低下につながる可能性があります。



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