アズビル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

アズビル 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場のオートメーション機器大手。建物市場の空調制御などを手掛けるビルディングオートメーション事業を主力に、工場向けのアドバンスオートメーション、生活インフラ向けのライフオートメーション事業を展開。直近の業績は、売上高3.2%増、営業利益12.6%増と増収増益を達成しました。


※本記事は、アズビル株式会社 の有価証券報告書(第103期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アズビルってどんな会社?


「人を中心としたオートメーション」を追求し、建物、工場、ライフライン向けに計測・制御機器やシステムを一貫体制で提供する企業です。

(1) 会社概要


1906年に山武商会として創業し、1953年に米国ハネウエル社と提携して山武ハネウエル計器へ商号変更しました。2008年に金門製作所(現アズビル金門)を完全子会社化し、事業領域を拡大。2012年に現社名であるアズビルへ商号変更を行いました。2022年には東証の市場区分見直しに伴い、プライム市場へ移行しています。

連結従業員数は8,922名、単体では5,052名です。筆頭株主は資産管理を行う日本マスタートラスト信託銀行(信託口)で、第2位は米国のステート ストリート バンク アンド トラスト カンパニー、第3位は明治安田生命保険となっています。特定の親会社は持たず、国内外の機関投資家等が主要株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 15.31%
ステート ストリート バンク アンド トラスト カンパニー 505001 7.99%
明治安田生命保険相互会社 7.88%

(2) 経営陣


同社の役員は男性13名、女性3名(うち社外2名)の計16名で構成され、女性役員比率は18.7%です。代表執行役社長は山本清博氏が務めています。社外取締役比率は58.3%です。

氏名 役職 主な経歴
山本 清博 取締役代表執行役社長 代表執行役社長 1989年入社。ビルシステムカンパニーマーケティング本部長、経営企画部長、執行役員副社長等を経て2020年6月より現職。
横田 隆幸 取締役代表執行役副社長 代表執行役副社長 1983年富士銀行入行。みずほコーポレート銀行執行役員等を経て2013年入社。グループ経営管理本部長等を経て2023年6月より現職。
曽禰 寛純 取締役会長 1979年入社。経営企画部長、代表取締役社長、代表取締役会長兼社長等を経て2022年6月より現職。
勝田 久哉 取締役 1983年入社。生産企画部長、監査室長、理事プロダクションマネジメント本部購買部長、常勤監査役等を経て2022年6月より現職。


社外取締役は、藤宗和香(元最高検察庁検事)、永濱光弘(元みずほ証券取締役会長・報酬委員長)、アン カー ツェー ハン(元Baker McKenzieパートナー)、吉川惠章(元三菱総合研究所代表取締役副社長・指名委員長)、三浦智康(元野村総合研究所執行役員)、市川佐知子(田辺総合法律事務所パートナー)、吉田寛(元日立化成執行役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「ビルディングオートメーション事業」、「アドバンスオートメーション事業」、「ライフオートメーション事業」および「その他」事業を展開しています。

ビルディングオートメーション事業


オフィスビルや工場、研究施設などの建物市場において、空調制御システムやセキュリティシステム、センサ、バルブ等の開発・製造から、計装設計、販売、エンジニアリング、保守サービスまでを提供しています。独自の環境制御技術により、快適で効率的な空間創造と環境負荷低減に貢献しています。

主な収益源は、施主や建設会社等からのシステム機器販売、工事代金、および建物の運用管理に伴う保守サービス料です。運営は主に同社が担い、一部の生産やエンジニアリング機能をアズビルベトナムプロダクション等の子会社が担当しています。

アドバンスオートメーション事業


石油、化学等の素材産業や、自動車、電機、半導体等の加工・組立産業の工場・プラント向けに、計測・制御機器やシステム、ソリューションを提供しています。工場の安全安定操業や生産性向上を支援し、計測制御技術を活用して生産現場の課題解決を行っています。

収益は、製造業等の顧客企業からの製品販売代金、エンジニアリング料、保守サービス料から得ています。運営は同社に加え、販売を担うアズビルトレーディングや、海外生産拠点であるアズビルプロダクションタイランド等が連携して行っています。

ライフオートメーション事業


ガス・水道等のライフラインや住宅市場において、計測・計量技術を活用した製品・サービスを提供しています。具体的には、都市ガス・LPガスメーター、水道メーター、住宅用全館空調システムなどを展開し、人々の生活に密着した分野で安全と快適さを支えています。

収益源は、ガス・水道事業者や住宅メーカー等からの製品販売代金やサービス料です。運営は、同社およびガス・水道メーター等の製造販売を行うアズビル金門が中心となって行っています。

その他


上記報告セグメントに含まれない事業として、保険代理業などを展開しています。

収益は、保険会社からの手数料収入等が該当します。運営は主に同社グループ内で行われています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は着実に増加傾向にあり、直近では3,000億円を突破しました。経常利益も右肩上がりで推移しており、利益率も10%台後半へと向上しています。当期純利益についても大幅な増益となっており、収益性の向上が継続していることが分かります。

項目 2021年3月期 2022年3月期 2023年3月期 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,468億円 2,566億円 2,784億円 2,909億円 3,004億円
経常利益 263億円 295億円 321億円 390億円 422億円
利益率(%) 10.7% 11.5% 11.5% 13.4% 14.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 150億円 188億円 218億円 251億円 388億円

(2) 損益計算書


売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益ともに増加しています。売上原価率や販管費率のコントロールにより、各段階利益率は前年よりも改善傾向にあります。特に営業利益率は1ポイント以上上昇し、収益体質の強化が進んでいることが読み取れます。

項目 2024年3月期 2025年3月期
売上高 2,909億円 3,004億円
売上総利益 1,230億円 1,319億円
売上総利益率(%) 42.3% 43.9%
営業利益 368億円 415億円
営業利益率(%) 12.7% 13.8%


販売費及び一般管理費のうち、給与・賞与が326億円(構成比36%)、研究開発費が127億円(同14%)を占めています。

(3) セグメント収益


ビルディングオートメーション事業は大型サービス契約の更改や海外事業の拡大により増収増益となりました。アドバンスオートメーション事業は横ばいでしたが、ライフオートメーション事業は一部子会社の譲渡などの影響で減収減益となりました。

区分 売上(2024年3月期) 売上(2025年3月期) 利益(2024年3月期) 利益(2025年3月期) 利益率
ビルディングオートメーション事業 1,342億円 1,484億円 194億円 244億円 16.4%
アドバンスオートメーション事業 1,056億円 1,057億円 161億円 160億円 15.1%
ライフオートメーション事業 511億円 463億円 14億円 12億円 2.5%
その他 0.5億円 0.5億円 -0.2億円 -0.4億円 -71.2%
調整額 -億円 -億円 -0.1億円 -0.4億円 -
連結(合計) 2,909億円 3,004億円 368億円 415億円 13.8%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CFはプラス、投資CFはプラス、財務CFはマイナスで、改善型(営業利益+資産売却で借入返済を進める改善局面)に該当します。なお、当期の投資CFがプラスである主な要因は、関係会社出資金の売却による収入があったためです。

項目 2024年3月期 2025年3月期
営業CF 275億円 440億円
投資CF -24億円 20億円
財務CF -225億円 -298億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は75.3%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは「人を中心としたオートメーション」をグループ理念として掲げています。オートメーション技術を通じて、人々の「安心、快適、達成感」を実現するとともに、地球環境への貢献を目指しています。「お客さまとともに、現場で価値を創る」「私たちらしさを追求する」「未来を考え、革新的に行動する」ことを指針としています。

(2) 企業文化


創業時からの精神である「人間の苦役からの解放」を継承し、社会貢献を重視する価値観を持っています。また、「健幸経営」を掲げ、社員の健康と幸せが企業活動の基盤であると考え、働きやすい職場環境づくりやダイバーシティ推進に注力しています。「学習する企業体」として、持続的な成長に向けた変化への対応力を重視する風土があります。

(3) 経営計画・目標


2030年度をゴールとする長期目標を設定し、段階的に中期経営計画を推進しています。2025年度から始まる新中期経営計画(2025〜2027年度)では、「持続可能な社会へ直列に繋がる貢献」に向けた進化と共創を目指しています。

* 2027年度 売上高:3,400億円
* 2027年度 営業利益:510億円
* 2027年度 営業利益率:15.0%
* 2027年度 ROE:14%

(4) 成長戦略と重点施策


「新オートメーション事業」「環境・エネルギー事業」「ライフサイクル型事業」の3つの成長領域への展開を加速させます。また、半導体市場等の技術革新やカーボンニュートラル対応を事業機会と捉え、人的資本、商品力、DXへの投資を強化します。海外市場においては、戦略地域での営業体制強化や現地ニーズに合った製品開発を進め、グローバル展開を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


人材を「資本」と捉え、「学習する企業体」として社員の成長を支援しています。多様な人材が活躍できるよう、ジョブ型人事制度の導入やリスキリングの推進、ダイバーシティ&インクルージョンの取組みを行っています。また、「健幸経営」のもと、社員のWell-being向上を目指し、働き方改革や健康経営施策を推進することで、エンゲージメントを高め、企業の持続的成長につなげる方針です。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年3月期 45.7歳 19.7年 8,337,376円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 7.0%
男性育児休業取得率 80.0%
男女賃金差異(全労働者) 69.0%
男女賃金差異(正規雇用) 73.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 57.8%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 品質に関するリスク


製品の設計・製造品質の不備やリコール発生は、多額のコスト発生や社会的信用の低下を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。同社は開発・生産プロセスの標準化や厳格な審査制度等により品質確保に努めていますが、万が一の事態には迅速な対応と原因究明を行う体制を整えています。

(2) 情報セキュリティに関するリスク


機密情報や個人情報の漏洩、サイバー攻撃によるシステム停止等は、損害賠償や信用失墜につながるリスクがあります。同社は専門組織による管理や社員教育、ネットワーク監視等の対策を講じていますが、巧妙化するサイバー攻撃を完全に防ぐことは困難であり、リスクが顕在化した場合は業績に影響を与える可能性があります。

(3) 技術・商品開発に関するリスク


DX等の急速な技術革新や市場ニーズの変化に対応できない場合、製品の陳腐化や競争力低下を招く恐れがあります。また、開発リソースの不足やプロジェクトの遅延・失敗もシェア低下の要因となります。同社は外部連携や人材育成を通じて開発力を強化し、市場動向を注視した製品開発を進めています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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