※本記事は、アズビル株式会社の有価証券報告書(第104期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月19日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準はJapan GAAPです。
1. アズビルってどんな会社?
ビルディング、アドバンス、ライフオートメーションなどの事業を展開する企業です。
■(1) 会社概要
1906年に山武商会として創立され、1958年に株式を店頭公開しました。1961年に東京証券取引所市場第二部に、1969年には同市場第一部に上場しています。1998年に山武へと商号変更し、2008年にアズビル金門を完全子会社化しました。2012年に現在のアズビルへと商号変更し、各種事業を拡大しています。
従業員数は連結で9,170名、単体で5,143名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は外国法人、第3位は生命保険会社となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 13.46% |
| ステート ストリート バンク アンド トラスト カンパニー 505001 | 9.26% |
| 明治安田生命保険相互会社 | 8.05% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.0%です。代表執行役社長は山本清博氏が務めています。取締役10名のうち、社外取締役は6名です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 山本 清博 | 取締役代表執行役社長 | 1989年入社。ビルシステムカンパニーマーケティング本部長等を経て、2022年6月より現職。 |
| 横田 隆幸 | 取締役代表執行役副社長 | 1983年富士銀行入行。みずほフィナンシャルグループIR部長等を経て2013年入社、2023年6月より現職。 |
| 勝田 久哉 | 取締役 | 1983年入社。生産企画部長、グループ監査部長、常勤監査役等を経て、2022年6月より現職。 |
社外取締役は、永濱光弘(元みずほ証券会長)、アン カー ツェー ハン(元Baker McKenzie顧問)、吉川惠章(元三菱商事常務執行役員)、三浦智康(元野村総合研究所理事)、吉田寛(元日立化成監査役)、中谷聡子(元PwC Japan有限責任監査法人パートナー)です。
2. 事業内容
同社グループは、「ビルディングオートメーション事業」「アドバンスオートメーション事業」「ライフオートメーション事業」および「その他」事業を展開しています。
■ビルディングオートメーション事業
商業建物や生産施設等に空調自動制御やセキュリティ等の製品・エンジニアリングおよびサービスを提供しています。主な顧客はビルオーナーや工場などです。
機器の販売代金や施工、保守サービス料から収益を得ています。運営は主に同社およびアズビルベトナムプロダクションなどの子会社が行っています。
■アドバンスオートメーション事業
プラントや工場等の生産現場向けに、制御システム、スイッチ等各種センサ、エンジニアリングおよびメンテナンスサービスを提供しています。
製品の販売やソリューションの提供、保守サービス料から収益を得ています。運営は同社のほか、アズビルトレーディング、アズビルノースアメリカなどが担当しています。
■ライフオートメーション事業
市民生活に密着した、ライフライン向け計量・計測器や住宅メーカー向け住宅用全館空調システムの製造販売・サービスを提供しています。
ガスメーター・水道メーターなどの販売代金やクラウドサービスなどの利用料から収益を得ています。運営は主に同社およびアズビル金門が行っています。
■その他
報告セグメントに含まれない事業として、保険代理業やグループ内のソフトウェア開発業務などを展開しています。
代理店手数料や開発受託費などから収益を得ています。運営は同社グループ各社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間で売上収益は安定して推移しており、経常利益および利益率は継続的に改善しています。当期は売上高が微減となったものの、経常利益は増加しています。当期利益は前期比で減少しました。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 2566億円 | 2784億円 | 2909億円 | 3004億円 | 2989億円 |
| 経常利益 | 295億円 | 321億円 | 390億円 | 422億円 | 488億円 |
| 利益率(%) | 11.5% | 11.5% | 13.4% | 14.0% | 16.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 188億円 | 218億円 | 251億円 | 388億円 | 358億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は微減となりましたが、売上総利益および営業利益は増加しており、各利益率も改善傾向にあります。収益力の向上が確認できます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 3004億円 | 2989億円 |
| 売上総利益 | 1319億円 | 1396億円 |
| 売上総利益率(%) | 43.9% | 46.7% |
| 営業利益 | 415億円 | 473億円 |
| 営業利益率(%) | 13.8% | 15.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給与・賞与が336億円(構成比36.5%)、研究開発費が127億円(同13.8%)、賞与引当金繰入額が75億円(同8.1%)を占めています。
■(3) セグメント収益
ビルディングおよびアドバンスオートメーション事業が堅調に推移し増収となりました。一方でライフオートメーション事業は事業譲渡等の影響もあり減少しています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| ビルディングオートメーション事業 | 1484億円 | 1560億円 |
| アドバンスオートメーション事業 | 1057億円 | 1098億円 |
| ライフオートメーション事業 | 463億円 | 331億円 |
| その他 | 0.5億円 | 0.5億円 |
| 連結(合計) | 3004億円 | 2989億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業で十分なキャッシュを創出し、その資金で投資や借入金の返済・株主還元を賄っている健全な状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 440億円 | 380億円 |
| 投資CF | 20億円 | -65億円 |
| 財務CF | -298億円 | -301億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は15.7%で市場平均を上回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も76.1%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「人を中心としたオートメーション」のグループ理念のもと、事業拡大を通じて持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献により、継続的な企業価値の向上を図り、社会と社員のWell-beingを実現し、ステークホルダーと信頼関係を構築することを目指しています。また、パーパスとして「人と社会の可能性を、技術で解き放つ。」と定めています。
■(2) 企業文化
ブランドステートメントに「Engineering the Impossible」を掲げています。技術による革新と新たな可能性の解放、そして目指す姿である「不可能を可能へ。」の実現に向け、力強く未来志向の経営を推進する文化を重視しています。また、社員一人ひとりの健康が企業活動の重要な基盤であると捉え、「azbilグループ健幸宣言」を制定しています。
■(3) 経営計画・目標
2030年度をゴールとする長期目標を設定し、段階的に中期経営計画を立案しています。株主価値増大に向けて連結ROEの向上を基本的な目標としています。
* 長期目標(2030年度):売上高4,200億円、営業利益650億円、営業利益率15.5%、ROE15%
* 中期経営計画(2027年度):売上高3,400億円、営業利益510億円、営業利益率15.0%、ROE14%
■(4) 成長戦略と重点施策
幅広い顧客基盤との関係に基づく「基盤事業」と、半導体等の技術革新やカーボンニュートラル対応を事業機会と捉えた「成長事業」の両輪のサイクルを回す事業モデルを推進しています。また、納入製品を起点とした「ストック事業」を強化することで、持続的な成長を実現します。海外事業の拡大や新技術の獲得、人的資本の強化も推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
人材を持続的成長のための「資本」として捉え、事業環境の変化に対応できる人材の確保・育成と、長期的な視点での人的資本強化を重要な経営課題として位置付けています。多様な人材の採用・育成を一気通貫で行う組織体制を整備し、リファラル採用やアルムナイ採用も活用して優秀な人材の確保を図るとともに、適材適所の配置を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 46.0歳 | 19.8年 | 9,182,109円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 7.4% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全従業員) | 69.9% |
| 男女賃金差異(正規) | 74.6% |
| 男女賃金差異(非正規) | 55.1% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、一年間で仕事を通じて成長を実感する社員(58%)、働くことに満足している社員(60%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 品質に関するリスク
製品の設計・製造品質の確保不足や量産工程におけるデータ不備等が発生した場合、製品不適合によるリコールが必要となり、多額のコストが業績に影響を与える可能性があります。また、品質問題による顧客からの評価や信用の低下が、SNS等を通じて広まるリスクにも備え、開発・生産工程の管理や品質保証体制の強化に取り組んでいます。
■(2) 情報セキュリティに関するリスク
個人情報や機密情報の漏洩、サイバー攻撃によるシステム停止等が発生した場合、法令に基づく罰金や損害賠償、社会的信用の低下が業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、社内規程の整備や従業員教育、ネットワークの監視・防御体制の強化、インシデント発生時の対応体制の整備など、技術的・組織的な対策を講じています。
■(3) 技術・商品開発に関するリスク
DX関連の技術革新や国際標準動向への対応が遅れた場合、商品の陳腐化や競争力低下を招くリスクがあります。また、研究開発投資の不足や開発プロセスの管理不備が新製品の投入遅延に繋がる可能性があります。同社は関連技術動向を注視し、産学連携やオープンイノベーションを通じて開発力を強化するとともに、開発人材の育成に注力しています。
■(4) 国際情勢変化への対応に関するリスク
グローバル事業の拡大に伴い、進出先での政治経済情勢の変化や地政学的リスクが増大しています。予期せぬ紛争や各国の制裁措置、急激な為替変動、サプライチェーンの混乱等が業績に影響を与える可能性があります。情報収集とリスク判断を強化し、調達先の分散や適切な為替ヘッジなど、国際情勢の変化に対する対応力強化に努めています。



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