※本記事は、株式会社バンダイナムコホールディングスの有価証券報告書(第20期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年6月23日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. バンダイナムコホールディングスってどんな会社?
ゲーム、玩具、アニメ、アミューズメント施設などを展開する総合エンターテインメント企業グループの持株会社です。
■(1) 会社概要
2005年にバンダイとナムコの経営統合により設立されました。2008年にバンプレストのゲーム事業を、2009年にバンダイネットワークスを統合し、事業領域を拡大しました。2018年にはBANDAI SPIRITSを設立しハイターゲット向け事業を強化。2022年には新ロゴマークの導入とパーパスを制定しました。
連結従業員数は11,345名、単体従業員数は46名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行、第2位は日本カストディ銀行です。主要株主には、創業家資産管理会社の有限会社ジルや、取引関係のある任天堂などが名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 19.98% |
| 株式会社日本カストディ銀行(信託口) | 8.88% |
| JP MORGAN CHASE BANK 380815 | 5.07% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性3名の計15名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長CEOは浅古 有寿氏です。社外取締役比率は33.3%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 浅古 有寿 | 代表取締役社長CEO | 1986年バンダイ入社。同社経営企画本部長、アミューズメントユニット管掌などを経て、2025年4月より現職。 |
| 川口 勝 | 取締役会長 | 1983年バンダイ入社。同社代表取締役社長、BANDAI SPIRITS社長、同社代表取締役社長グループCEOなどを歴任し、2025年4月より現職。 |
| 桃井 信彦 | 取締役副社長グループ戦略担当(CW360) | ソニー入社後、2001年バンダイ入社。欧米事業政策担当、Bandai Namco Holdings USA Inc.社長などを経て、2025年4月より現職。 |
| 辻 隆志 | 取締役CFO、経営企画本部長 | 1990年バンダイ入社。同社経営企画本部副本部長などを経て、2025年6月より現職。 |
| 藤田 訓子 | 取締役CISO、CIO、CSO(チーフサステナビリティオフィサー)、グループ管理本部長 | 1997年バンダイ入社。同社取締役サステナビリティ・管理政策担当などを経て、2025年6月より現職。 |
| 竹中 一博 | 取締役トイホビーユニット担当 | 1987年バンダイ入社。BANDAI SPIRITS常務、同社執行役員エンターテインメントユニットトイホビー事業担当などを経て、2025年4月より現職。 |
| 宇田川 南欧 | 取締役デジタルユニット担当 | 1994年バンダイ入社。バンダイナムコエンターテインメント常務、BANDAI SPIRITS社長、同社執行役員などを経て、2025年4月より現職。 |
| 浅沼 誠 | 取締役映像音楽ユニット担当 | 1986年ネットワーク入社。サンライズ(現バンダイナムコフィルムワークス)社長、同社取締役IPプロデュースユニット担当などを経て、2025年4月より現職。 |
| 川﨑 寛 | 取締役アミューズメントユニット担当 | 1987年バンダイ入社。バンダイナムコアミューズメント社長、同社執行役員アミューズメントユニット担当などを経て、2021年6月より現職。 |
| 金子 秀 | 取締役(常勤監査等委員) | 1987年大倉商事入社。同社執行役員グループ管理本部長などを経て、2024年6月より現職。 |
社外取締役は、島田 俊夫(元シーエーシー社長)、川名 浩一(元日揮社長)、篠田 徹(公認会計士)、桑原 聡子(弁護士)、小宮 孝之(公認会計士)です。
2. 事業内容
同社グループは、「デジタル事業」「トイホビー事業」「IPプロデュース事業」「アミューズメント事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) デジタル事業
ネットワークコンテンツの企画・開発・配信や、家庭用ゲームソフトの企画・開発・販売を行っています。「DRAGON BALL」や「ONE PIECE」などのIPを活用したアプリや、「ELDEN RING」などのワールドワイド向けタイトルを提供し、世界のゲームユーザーを顧客としています。
収益は、ユーザーからのゲーム内アイテム課金収入やパッケージ・ダウンロードソフトの販売代金などから得ています。運営は主に株式会社バンダイナムコエンターテインメントや株式会社バンダイナムコスタジオなどが担っています。
■(2) トイホビー事業
玩具、カプセルトイ、カード、菓子・食品、プラモデル、フィギュア等の企画・開発・製造・販売を行っています。「ガンプラ」や「一番くじ」、トレーディングカードゲームなどを展開し、子供から大人まで幅広い層を顧客としています。
収益は、卸売業者や小売店、一般消費者への商品販売代金から得ています。運営は主に株式会社バンダイや株式会社BANDAI SPIRITSなどが担っています。
■(3) IPプロデュース事業
アニメーション等の映像・音楽コンテンツの企画・製作、著作権・版権の管理・運用、ライブイベント等を行っています。「ガンダム」シリーズや「ラブライブ!」シリーズなどのIPを創出し、メディア展開やライセンス許諾を行っています。
収益は、映像・音楽パッケージの販売、配信収入、ライセンス許諾によるロイヤルティ収入、ライブイベントのチケット収入などから得ています。運営は主に株式会社バンダイナムコフィルムワークスや株式会社バンダイナムコミュージックライブなどが担っています。
■(4) アミューズメント事業
アミューズメント機器の企画・開発・販売や、アミューズメント施設の企画・運営を行っています。「バンダイナムコ Cross Store」や「ガシャポンのデパート」などの施設を展開し、リアルなエンターテインメント体験を提供しています。
収益は、施設利用者からのプレー料金や物販収入、施設運営者への機器販売代金などから得ています。運営は主に株式会社バンダイナムコエクスペリエンスや株式会社バンダイナムコアミューズメントなどが担っています。
■(5) その他
グループ各社へ向けた物流事業、その他管理業務などを行っています。
収益は、グループ会社からの物流業務受託料などから得ています。運営は主に株式会社バンダイロジパルや株式会社バンダイナムコビジネスアークなどが担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの業績を見ると、売上高は7409億円から1兆2415億円へと大幅に拡大し、右肩上がりの成長を続けています。利益面でも、経常利益は876億円から1865億円へと倍増以上となり、利益率も高い水準で推移しています。当期はデジタル事業やトイホビー事業の好調により、過去最高の売上・利益を達成しました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 7,409億円 | 8,893億円 | 9,901億円 | 10,502億円 | 12,415億円 |
| 経常利益 | 876億円 | 1,336億円 | 1,280億円 | 1,042億円 | 1,865億円 |
| 利益率(%) | 11.8% | 15.0% | 12.9% | 9.9% | 15.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 489億円 | 928億円 | 903億円 | 1,015億円 | 1,293億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間を比較すると、売上高は18.2%増、営業利益は98.7%増と大幅な増収増益となりました。売上総利益率が35.3%から39.9%へと改善しており、利益率の高い商品・サービスのヒットが寄与しています。営業利益率も8.6%から14.5%へと大きく向上し、収益性が高まっています。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 10,502億円 | 12,415億円 |
| 売上総利益 | 3,710億円 | 4,952億円 |
| 売上総利益率(%) | 35.3% | 39.9% |
| 営業利益 | 907億円 | 1,802億円 |
| 営業利益率(%) | 8.6% | 14.5% |
販売費及び一般管理費のうち、役員報酬及び給料手当が788億円(構成比25%)、広告宣伝費が715億円(同23%)を占めています。売上原価では、商品化権使用料などが含まれています。
■(3) セグメント収益
全てのセグメントで増収増益となりました。特にデジタル事業は大型タイトルのヒットにより利益が約10倍に急増し、全体の利益成長を牽引しました。トイホビー事業もハイターゲット層向け商品やカード商材が好調で、売上・利益ともに伸長しました。IPプロデュース事業、アミューズメント事業も堅調に推移しています。
| 区分 | 売上(2024年3月期) | 売上(2025年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| デジタル事業 | 3,661億円 | 4,501億円 | 63億円 | 685億円 | 15.2% |
| トイホビー事業 | 4,912億円 | 5,748億円 | 787億円 | 1,022億円 | 17.8% |
| IPプロデュース事業 | 684億円 | 756億円 | 100億円 | 118億円 | 15.6% |
| アミューズメント事業 | 1,186億円 | 1,343億円 | 68億円 | 84億円 | 6.3% |
| その他 | 59億円 | 66億円 | 10億円 | 17億円 | 25.1% |
| 調整額 | -億円 | -億円 | -121億円 | -124億円 | - |
| 連結(合計) | 10,502億円 | 12,415億円 | 907億円 | 1,802億円 | 14.5% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業で稼いだ資金で投資や借入返済を行っている「健全型」です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 889億円 | 1,873億円 |
| 投資CF | 101億円 | -620億円 |
| 財務CF | -752億円 | -773億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.9%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同グループは、「パーパス“Fun for All into the Future”」を最上位概念としています。これは、社会における存在意義や働く意味を表すもので、世界中のファン、パートナー、社員、社会とつながり、夢・遊び・感動を通じて心の豊かさでつながる未来を共に創造することを目指しています。中長期ビジョンとして「Connect with Fans」を掲げています。
■(2) 企業文化
「同魂異才」を人材戦略のキーワードとして掲げています。これは、様々な才能、個性、価値観を持つ多様な人材が、同じ目的(魂)のもとに集い、生き生きと活躍できる企業集団でありたいという考えを表しています。また、2025年4月には「バンダイナムコグループ行動規範」を制定し、法令遵守や倫理尊重を徹底しています。
■(3) 経営計画・目標
2025年4月から3カ年の中期計画を推進しており、以下の数値目標を掲げています。
* 連結売上高:1兆4,500億円(2028年3月期)
* 連結営業利益:2,000億円(2028年3月期)
* 海外売上比率:50%以上(2028年3月期)
* 営業利益率:継続的に12%以上
* エクイティスプレッド:継続的に5%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
「IP軸戦略」をさらに強力に推進し、グローバル市場での成長を目指します。「いいものつくる」「もっとひろげる」「そだてつづける」「みがきふかめる」の4つのキーテーマに基づき、高品質なコンテンツ開発、エリア・カテゴリーの拡大、IP価値の最大化、データ活用に取り組みます。また、外部パートナーとの連携を強化する新組織「CW360」を設立し、アライアンスを推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「同魂異才」の考えのもと、多様な人材の確保と活躍推進に取り組んでいます。IP軸戦略をグローバルで推進するため、グループ一体感を醸成する「ALL BANDAI NAMCO」の意識付けや、グローバル人材の育成を重視しています。グループ横断研修や事業間ローテーションを積極的に行い、次世代経営人材やプロフェッショナル人材の育成を推進しています。また、エンゲージメントサーベイを実施し、働きやすい環境づくりに努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 46.7歳 | 19.3年 | 12,161,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は提出会社が公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員の育児休業からの復職率(98.0%)、健康診断の受診率(99.9%)、年次有給休暇の取得率(75.2%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) IPの創出・育成、展開に伴うリスク
IPビジネスにおける競争激化や市場・顧客の変化、特定IPへの依存、IP価値の毀損などがリスクとして挙げられます。これに対し、新規IPの創出、ポートフォリオの多様化、クオリティ重視の開発、品質管理の強化などで対応しています。
■(2) カテゴリー・エリア拡大に伴うリスク
グローバル展開における各国の法令や商慣習への対応、競争激化などが課題です。各地域のガバナンス強化、現地発IPの展開、プロモーション強化、サプライチェーンの最適化などにより、事業拡大とリスク低減を図っています。
■(3) 多彩な人材活用に関するリスク
IP軸戦略を推進するための人材確保競争の激化や、コーポレート人材の不足がリスクとなり得ます。多様な人材が活躍できる制度整備、グローバル人材の育成、エンゲージメント向上施策などを通じて、優秀な人材の確保と定着に努めています。
■(4) 情報セキュリティに関するリスク
サイバー攻撃による情報流出やシステム障害のリスクがあります。監視体制の強化、情報セキュリティ教育の実施、個人情報管理体制の構築などにより、情報資産の保護と事業継続性の確保に取り組んでいます。



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