※本記事は、株式会社バンダイナムコホールディングス の有価証券報告書(第21期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月16日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. バンダイナムコホールディングスってどんな会社?
同社はトイホビーやゲーム、映像音楽など、多彩なIPを活用した総合エンターテインメント事業を展開しています。
■(1) 会社概要
2005年にバンダイとナムコが経営統合し、共同持株会社として設立されました。同年に東京証券取引所市場第一部へ上場しています。その後、バンダイナムコエンターテインメントやバンダイナムコアミューズメント、BANDAI SPIRITSの設立など事業再編を進め、IPを活用したグローバル体制を継続的に強化しています。
現在の従業員数は連結で11,457名、単体で80名となっています。大株主の状況を見ると、筆頭株主ならびに第2位株主は資産管理業務などを行う国内の信託銀行です。第3位株主には海外の金融機関であるJPモルガン・チェース・バンクが名を連ねており、国内外の機関投資家から広く支持を集める株主構成となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 19.60% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 8.94% |
| JP MORGAN CHASE BANK 380752(常任代理人 みずほ銀行決済営業部) | 5.12% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性3名の計15名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長CEOは浅古有寿氏が務めており、役員全体に対する社外取締役の比率は33.3%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 浅古 有寿 | 代表取締役社長CEO | 1986年バンダイ入社。2005年同社入社、2010年取締役。2025年4月より現職。 |
| 桃井 信彦 | 取締役副社長グループ戦略担当(CW360) | 1991年ソニー入社。2001年バンダイ入社。2022年同社取締役。2025年4月より現職。 |
| 川口 勝 | 取締役会長 | 1983年バンダイ入社。2015年同社代表取締役社長。2021年同社代表取締役社長兼エンターテインメントユニット統括。2025年4月より現職。 |
| 辻 隆志 | 取締役CFO、経営企画本部長 | 1990年バンダイ入社。2007年同社入社。2025年4月同社執行役員。2025年6月より現職。 |
| 藤田 訓子 | 取締役CIO、CISO、CSO(チーフサステナビリティオフィサー)、グループ管理本部長 | 1997年バンダイ入社。2023年同社執行役員。2025年6月より現職。 |
| 竹中 一博 | 取締役トイホビーユニット担当 | 1987年バンダイ入社。2021年同社執行役員。2025年4月より現職。 |
| 宇田川 南欧 | 取締役デジタルユニット担当 | 1994年バンダイ入社。2023年同社執行役員。2025年4月より現職。 |
| 浅沼 誠 | 取締役映像音楽ユニット担当 | 1986年ネットワーク入社。2019年同社執行役員。2025年4月より現職。 |
| 川﨑 寛 | 取締役アミューズメントユニット担当 | 1987年バンダイ入社。2021年同社執行役員。2025年2月よりバンダイナムコエクスペリエンス代表取締役社長。2021年6月より現職。 |
| 金子 秀 | 取締役(常勤監査等委員) | 1987年大倉商事入社。1998年ナムコ入社。2022年同社執行役員。2024年6月より現職。 |
社外取締役は、島田俊夫(元シーエーシー代表取締役会長)、川名浩一(元日揮代表取締役社長)、篠田徹(元太田昭和監査法人公認会計士)、桑原聡子(外苑法律事務所パートナー)、小宮孝之(KEYコンサルティング代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「トイホビー事業」「デジタル事業」「映像音楽事業」「アミューズメント事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) トイホビー事業
主に玩具、カプセルトイ、カード、菓子・食品、アパレル、生活用品、プラモデル、景品、文具などの販売を行っています。幅広い年齢層をターゲットに、多彩なIPを活用した商品を国内のみならずグローバル市場に向けて提供しているのが特徴です。
収益源は、商品の販売代金です。国内の顧客や海外の販売代理店に商品を引き渡した時点で収益を認識します。事業の運営は主にバンダイ、BANDAI SPIRITS、メガハウスなどの子会社が行っています。
■(2) デジタル事業
家庭用ゲーム、スマートフォン向けネットワークコンテンツの販売や配信、エンターテインメントコンテンツの制作などを展開しています。多様なプラットフォームに対応したゲームタイトルを企画・開発し、世界中のゲームファンに提供しています。
収益源は、家庭用ゲームのソフト販売代金やネットワークコンテンツのアイテム課金収入などです。ライセンス供与によるロイヤルティ収入も得ています。運営はバンダイナムコエンターテインメント、バンダイナムコスタジオなどが担当しています。
■(3) 映像音楽事業
アニメーションなどの映像・音楽コンテンツの企画・製作・運用をはじめ、著作権や版権の管理、アーティストの発掘・育成、ライブエンターテインメントの開催などを行っています。IPの創出から映像配信、イベントまで幅広く手掛けています。
収益源は、映画の配給収入、映像・音楽コンテンツの販売代金、ライセンス供与によるロイヤルティ、ライブイベントのチケット収入などです。運営はバンダイナムコフィルムワークス、バンダイナムコミュージックライブなどの子会社が行っています。
■(4) アミューズメント事業
アミューズメント機器の企画・開発・生産・販売のほか、テーマパークやインドアプレイグラウンドを含むアミューズメント施設の企画・運営を行っています。IPを活用した体験型施設などを通じて、顧客にリアルなエンターテインメントを提供します。
収益源は、アミューズメント機器の販売代金や、アミューズメント施設におけるユーザーからのプレー料金などです。運営はバンダイナムコアミューズメント、バンダイナムコエクスペリエンスなどの子会社が担当しています。
■(5) その他
報告セグメントに含まれない事業として、グループ各社に向けた物流事業や管理業務などのサポート関連事業を行っています。グループ全体の効率的な事業運営を支える縁の下の力持ちとしての役割を担っています。
収益源は、グループ各社に対する物流サービスの提供や業務支援による対価などです。運営はバンダイロジパル、ロジパルエクスプレス、バンダイナムコビジネスアークなどの子会社が担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の売上高は右肩上がりで成長を続けており、1兆3,000億円規模にまで拡大しています。経常利益も一時的な落ち込みを経て近年は回復し、2,000億円を超える水準に到達しました。利益率も安定して15%前後を維持しており、力強い成長と高収益体質を両立しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 8,893億円 | 9,901億円 | 1,0502億円 | 12,415億円 | 13,482億円 |
| 経常利益 | 1,336億円 | 1,280億円 | 1,042億円 | 1,865億円 | 2,019億円 |
| 利益率(%) | 15.0% | 12.9% | 9.9% | 15.0% | 15.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 370億円 | 323億円 | 771億円 | 649億円 | 615億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い、売上総利益および営業利益も順調に拡大しています。売上総利益率は約39%、営業利益率も約14%と安定した水準を保っており、増収効果がしっかりと利益に結びつく健全な収益構造となっています。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 12,415億円 | 13,482億円 |
| 売上総利益 | 4,952億円 | 5,312億円 |
| 売上総利益率(%) | 39.9% | 39.4% |
| 営業利益 | 1,802億円 | 1,895億円 |
| 営業利益率(%) | 14.5% | 14.1% |
販売費及び一般管理費のうち、広告宣伝費が826億円(構成比24%)、役員報酬及び給料手当が811億円(同24%)、研究開発費が360億円(同11%)を占めています。
■(3) セグメント収益
トイホビー事業はハイターゲット層向け商品やカード商材が好調で大幅な増収増益となりました。アミューズメント事業も施設運営が好調で利益を伸ばしています。一方、デジタル事業は新作タイトルがヒットしたものの、前年同期とのタイトル編成の違いにより減益となりました。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) | 利益(2025年3月期) | 利益(2026年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| トイホビー事業 | 5,748億円 | 6,462億円 | 1,022億円 | 1,269億円 | 19.6% |
| デジタル事業 | 4,501億円 | 4,707億円 | 685億円 | 567億円 | 12.0% |
| 映像音楽事業 | 756億円 | 733億円 | 118億円 | 122億円 | 16.6% |
| アミューズメント事業 | 1,343億円 | 1,518億円 | 84億円 | 101億円 | 6.7% |
| その他 | 66億円 | 63億円 | 17億円 | 28億円 | 44.4% |
| 調整額 | - | - | △124億円 | △192億円 | - |
| 連結(合計) | 12,415億円 | 13,482億円 | 1,802億円 | 1,895億円 | 14.1% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業を示す「健全型」のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1,873億円 | 1,647億円 |
| 投資CF | △620億円 | △412億円 |
| 財務CF | △773億円 | △830億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.0%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は72.3%であり、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
「パーパス“Fun for All into the Future”」のもと、バンダイナムコと世界中のIPファン、あらゆるパートナー、株主、グループ社員、社会と常に向き合い、広く、深く、複雑につながる姿を目指しています。「夢・遊び・感動」を通じて心の豊かさでつながる未来をともに創造することを存在意義として掲げています。
■(2) 企業文化
「同魂異才」の企業集団であることを重視しています。様々な才能や個性、価値観を持つ多様な人材が生き生きと活躍できる環境づくりを推進しており、性別や年齢、国籍などにこだわらず人材の確保と登用を行っています。社会の一員としてサステナビリティ文化を醸成し、持続可能な社会の実現に取り組む姿勢も特徴です。
■(3) 経営計画・目標
2025年4月より3カ年の中期計画を推進しており、「さらなる事業規模の拡大」「新たな事業の柱の獲得」「長期利益を生み出す体制構築」を共通テーマとしています。中長期ビジョン「Connect with Fans」を掲げ、2028年3月期に向けた以下の具体的な計数目標を設定しています。
・売上高 14,500億円
・営業利益 2,000億円
・海外売上比率 50%以上
・営業利益率 継続的に12%以上
・エクイティスプレッド 継続的に5%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
IP軸戦略をさらに強力に推進するため、「いいものつくる」「もっとひろげる」「そだてつづける」「みがきふかめる」の4つのキーテーマと「アライアンス強化」「多彩な人材の活用」に取り組んでいます。新設した「CW360」部門を通じて外部パートナーとのアライアンスを強化し、蓄積したデータを活用したマーケティングや海外市場での事業拡大を推進しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
事業のグローバル化を見据え、地域やユニットの壁を超えた「ALL BANDAI NAMCO」の一体感醸成とグローバル人材の育成を重要視しています。グループ横断研修と事業軸での専門育成を両輪で進め、事業を横断したローテーション人事も積極的に行っています。多様な働き方に対応するため、フレックスタイム制や裁量労働制などの制度整備を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 44.6歳 | 16.7年 | 9,838,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 25.8% |
| 男性育児休業取得率 | 91.3% |
| 男女賃金差異(全従業員) | 79.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 80.8% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 86.3% |
また、同社は「人的資本」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性従業員の育児休業からの復職率(97.4%)、年次有給休暇の取得率(77.4%)、健康診断の受診率(99.8%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) IPの創出・育成、展開に伴うリスク
特定のIPへの依存や市場の急速な変化、IPビジネスにおける競争激化がリスクとして挙げられます。知的財産の侵害によるIP価値の毀損や、商品・サービスの品質不具合が生じた場合、グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。対策として、多彩なIPポートフォリオの確立や品質管理体制の強化を進めています。
■(2) グローバル市場でのカテゴリー・エリア拡大に伴うリスク
海外でのビジネスモデルの模倣や競争激化、各地域の法令・文化・顧客嗜好への対応が課題です。各国の法規制の変更や地政学的リスクに適切に対応できない場合、事業展開に支障をきたす恐れがあります。これに対し、各地域におけるガバナンス体制の強化や現地発のIP展開を推進しています。
■(3) デジタル事業における開発期間の長期化と投資額の上昇
プラットフォームの多様化や技術の進化に伴い、ゲームタイトルの開発期間の長期化や投資額の上昇がリスクとなっています。期待通りのヒットに恵まれない場合、収益性が悪化する可能性があります。最適なタイトルポートフォリオの構築や、クオリティ重視の開発体制強化によりリスクの低減を図っています。



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