※本記事は、東海東京フィナンシャル・ホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第113期、自 2024年4月1日 至 2025年3月31日、2025年06月24日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東海東京フィナンシャル・ホールディングスってどんな会社?
東海東京フィナンシャル・ホールディングスは、中部地方を地盤とする総合金融グループです。対面証券に加え、地銀との提携合弁やデジタル領域を強化しています。
■(1) 会社概要
1929年に前身の高山商店として設立され、2000年に東海丸万証券との合併により東海東京証券が発足しました。2009年に持株会社体制へ移行し、現社名に変更しています。その後、2010年にトヨタファイナンシャルサービス証券、2019年に髙木証券と合併し、2021年にはエース証券を完全子会社化(翌年合併)するなど、積極的なM&Aにより事業基盤を拡大してきました。
同グループの連結従業員数は2,658名、単体では143名です。筆頭株主は資産管理業務を行う日本マスタートラスト信託銀行で、第2位はメガバンクの三菱UFJ銀行です。また、日本カストディ銀行が第3位となっており、金融機関や信託口が主要株主として名を連ねています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 14.71% |
| 三菱UFJ銀行 | 4.11% |
| 日本カストディ銀行(信託口) | 3.92% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.2%です。代表取締役社長は佐藤昌孝氏が務めています。社外取締役比率は55.6%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 石田 建昭 | 代表取締役会長 | 1968年東海銀行入行。欧州東海銀行頭取などを経て2004年同社入社。2005年社長、2006年社長CEOに就任。2021年より現職。 |
| 佐藤 昌孝 | 代表取締役社長 | 1983年東海銀行入行。三菱東京UFJ銀行小牧支社長などを経て2010年東海東京証券入社。2021年同社社長、2024年8月より現職。 |
| 北川 尚子 | 取締役 | 1990年丸万証券入社。東海東京証券執行役員、髙木証券副社長、東海東京証券社長などを歴任。2024年6月より現職。 |
| 大野 哲嗣 | 取締役(監査等委員) | 1983年丸万証券入社。東海東京証券執行役員財務部長、同社常務執行役員などを経て、2020年6月より現職。 |
社外取締役は、中山恒博(元メリルリンチ日本証券会長)、宮沢和正(ソラミツ社長)、山崎穣一(元東海財務局長・農林中央金庫監事)、池田綾子(弁護士)、太田克彦(元新日鉄住金副社長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「投資・金融サービス業」という単一セグメントにおいて、証券ビジネスを中心とした幅広い金融サービスを展開しています。
**投資・金融サービス事業**
国内外のネットワークを活用し、個人・法人顧客に対して有価証券の売買、引受け、募集・売出し等の金融商品取引業務を提供しています。対面営業を主体とするリテール業務に加え、地方銀行との提携による合弁証券会社の運営や、スマホ専業のCHEER証券を通じたデジタル金融サービスも展開しています。
主な収益源は、顧客からの株式等の売買委託手数料、投資信託の販売手数料や信託報酬、引受手数料などです。運営は、中核子会社である東海東京証券を中心に、CHEER証券、丸八証券などのグループ各社が行っています。また、海外現地法人を通じてグローバルな金融サービスも提供しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
2021年3月期から2025年3月期までの業績推移を見ると、営業収益(売上高に相当)は市場環境の影響を受け変動しており、直近の2025年3月期は前期比で減少しました。利益面では、2023年3月期に大きく落ち込みましたが、その後回復傾向にあります。2025年3月期は経常減益となったものの、特別利益の計上等により当期純利益は増益となりました。
| 項目 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上収益(または売上高) | - | 810億円 | 734億円 | 892億円 | 863億円 |
| 経常利益 | 125億円 | 130億円 | 63億円 | 184億円 | 151億円 |
| 利益率(%) | - | 16.0% | 8.6% | 20.6% | 17.5% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 91億円 | 132億円 | 20億円 | 102億円 | 110億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の業績を比較すると、営業収益は前期の892億円から863億円へと減少しました。これは主に株式委託手数料の減少によるものです。一方、金融収益は増加しました。コスト面では、販売費及び一般管理費はほぼ横ばいでしたが、営業収益の減少に伴い営業利益は153億円から117億円へ減少しました。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 892億円 | 863億円 |
| 売上総利益 | - | - |
| 売上総利益率(%) | - | - |
| 営業利益 | 153億円 | 117億円 |
| 営業利益率(%) | 17.2% | 13.6% |
販売費及び一般管理費のうち、人件費が329億円(構成比46%)、取引関係費が145億円(同20%)を占めています。
■(3) セグメント収益
※同社は単一セグメントのため、本項目の記載は省略します。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社は営業活動によるキャッシュ・フローがプラス、投資活動によるキャッシュ・フローがマイナス、財務活動によるキャッシュ・フローがプラスであることから、営業で利益を出しつつ、借入等によって積極的な投資を行っている「積極型」の状況です。
| 項目 | 2024年3月期 | 2025年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 128億円 | 208億円 |
| 投資CF | -426億円 | -244億円 |
| 財務CF | -45億円 | 177億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.1%で市場平均(9.4%)を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は12.9%で市場平均(24.2%)を下回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「『誇り』と『憧れ』を感じる企業グループ」となることを目指しています。そのための行動指針として「“Social Value & Justice” comes first(社会的価値の追求・社会的正義の遂行)」を掲げ、社会正義を貫き、顧客や社会に必要とされる価値の提供を最優先する経営を行っています。
■(2) 企業文化
同社は、サステナビリティ経営を強く意識しており、環境配慮や社会的責任を果たすことを重視しています。また、変化の激しい経営環境において、「異次元の世界」への到達に挑戦する姿勢を持ち、専門性と人間性を備えた人材育成に注力しています。社員の自律的なキャリア構築を支援する風土があります。
■(3) 経営計画・目標
2022年4月より5カ年の中期経営計画「“Beyond Our Limits” ~異次元への挑戦」を推進しています。最終年度に向けたグループ全体の目標として、以下の数値を掲げています。
* ROE(自己資本利益率):12%(当期実績6.1%)
■(4) 成長戦略と重点施策
「金融力の強化」と「異次元に向けた重点施策」を基本方針としています。富裕層向けブランド「Orque d'or(オルクドール)」の確立や、準富裕層・アッパーマス層向けの「クレールシエル戦略」を推進し、安定収益基盤の拡大を図ります。また、異業種を含むパートナー(Powerful Partners)との協業や、銀行・証券代理店の展開、DXインフラを中心とした提携など、新たなビジネス機会の創出に注力しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「事業強化」と「企業の継続性・サステナビリティ」の2軸で人材戦略を展開しています。ジョブ型人事制度をベースに、専門性の高い人材の採用や、自律的なキャリア形成を支援する「ポジションチャレンジ」制度などを導入しています。また、従業員エンゲージメントの向上と、経常利益の3%を人材投資に充てることをKPIとしています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 39.2歳 | 3.4年 | 7,945,648円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 管理職に占める女性労働者の割合 | 22.0% |
| 男性労働者の育児休業取得率 | 27.3% |
| 労働者の男女の賃金の差異(全労働者) | 70.9% |
| 労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) | 76.1% |
| 労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) | 44.8% |
※「男性労働者の育児休業取得率」はcore_dataに基づき27.3%と記載していますが、HTML資料では単体で75.0%、主要子会社との合算で32.4%との記載もあります。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、従業員エンゲージメント(38.0%)、前年度の経常利益に占める教育研修費の割合(3.4%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 経済情勢及び市場変動に伴うリスク
株価、金利、為替等の変動や景気後退などの経済情勢は、手数料収入やトレーディング損益に直接的な影響を与えます。また、市場の混乱により保有する金融資産の価値が急激に変動した場合、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 法的規制に伴うリスク
金融商品取引業は、金融商品取引法等の法令や諸規則による厳格な規制を受けています。法令違反が生じた場合の業務停止処分や、自己資本規制比率が基準を下回った場合の業務制限などは、同社グループの業績や財政状態に深刻な影響を与える可能性があります。
■(3) 競争状況に伴うリスク
規制緩和による競争激化や取扱商品の多様化が進む中、他社との競合において競争力を維持できない場合、収益への悪影響が懸念されます。手数料体系の変化や新たな競合の出現など、ビジネス環境の変化に対応し続ける必要があります。



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