中北製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

中北製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東京証券取引所(スタンダード市場)に上場し、船舶用や発電プラント用の自動調節弁、バタフライ弁、遠隔操作装置の製造販売を行う流体制御の総合メーカーです。第99期より連結決算を開始し、韓国企業の買収効果などで業容を拡大させています。単体業績は増収増益基調を維持しています。


※本記事は、株式会社中北製作所 の有価証券報告書(第99期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 中北製作所ってどんな会社?


同社は、船舶や発電所などのインフラ設備に不可欠な「バルブ」や「遠隔操作装置」を主力とする流体制御機器メーカーです。

(1) 会社概要


1930年に中北辨造氏が自動調節弁の製造を開始し、1937年に株式会社中北製作所を設立しました。1971年に大阪証券取引所市場第二部に上場し、2013年の現物市場統合により東京証券取引所市場第二部へ上場しました。その後、2024年12月に韓国のバルブメーカーであるACE VALVE CO., LTD.を子会社化し、グローバル展開を加速させています。

2025年5月31日現在の従業員数は連結463名、単体368名です。筆頭株主は資産管理会社と思われるミヤキタコーポレーションで、第2位は個人株主の中北健一氏、第3位は社長の宮田彰久氏となっており、創業家や経営陣が主要株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
ミヤキタコーポレーション 12.67%
中北健一 7.58%
宮田彰久 3.28%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長は宮田彰久氏が務めています。社外取締役比率は28.6%です。

氏名 役職 主な経歴
宮田彰久 代表取締役社長経営企画本部長兼営業本部長兼技術本部管掌 2007年入社。生産管理、資材調達、営業、技術開発等の各部門を経て、2019年より現職。
池田昭彦 取締役副会長 1980年入社。技術部長、営業本部長、専務取締役などを歴任し、2023年より現職。
由上晃規 取締役執行役員営業本部副本部長兼東京営業所長 2002年入社。営業部次長、総務部長などを経て、2023年より現職。
中尾敏昭 取締役執行役員生産本部長 1989年入社。技術部長、技術本部計装設計部長を経て、2025年より現職。
三竹雅之 取締役執行役員管理本部長兼経理部長 2017年入社。総務部次長、経営企画本部経理部長を経て、2025年より現職。


社外取締役は、大井成夫(元京都銀行常務取締役)、福田あやこ(福田法律事務所所長・弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「バルブ及び遠隔操作装置製造・販売事業」および「その他」事業を展開しています。

(1) 自動調節弁事業


船舶のエンジン周りや荷役システム、発電プラントなどで使用される自力式・他力式の調節弁、安全弁、原子力プラント用バルブなどを提供しています。流体の圧力、温度、流量などを自動的に制御する重要機器であり、造船会社や電力会社、プラントメーカーなどが主な顧客です。

収益は、顧客への製品販売およびメンテナンス部品の供給から得ています。運営は主に同社が行っていますが、2024年12月に子会社化した韓国のACE VALVE CO., LTD.も各種バルブの製造販売を手掛けており、製品ラインナップの拡充に寄与しています。

(2) バタフライ弁事業


配管内の流体制御を行うバタフライ弁、特にLNG(液化天然ガス)運搬船などで使用される超低温用バタフライ弁や遠隔操作バタフライ弁などを提供しています。大型船舶や各種プラント設備において、流路の開閉や流量調整を行うために不可欠な製品群です。

収益は製品の販売代金です。同社はLNG船向けなどの高付加価値製品に強みを持ち、ACE VALVE CO., LTD.との連携により、汎用品から特殊品まで幅広いニーズに対応できる体制を構築しています。運営は同社およびACE VALVE CO., LTD.が行っています。

(3) 遠隔操作装置事業


船舶の荷役(積み下ろし)やバラスト水(船体のバランスを保つための海水)の注排水を遠隔で制御・監視するシステムや、タンク内の液面レベルを計測・警報する装置を提供しています。船舶の運航効率や安全性を支えるシステム製品です。

収益は、造船所等へのシステム納入やアフターサービスから得ています。バルブ単体だけでなく、それらを統合的に制御するシステム全体を提供することで、顧客の課題解決を支援しています。運営は主に同社が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


第99期より連結財務諸表を作成しているため、過去の連結数値との比較はありません。当期の連結売上高は約238億円、経常利益は約15億円となりました。単体業績で見ると、売上高は前期比で増加しており、造船業界における新造船需要の改善や、発電プラント等の陸用関連での営業活動が奏功しています。

項目 2025年5月期
売上高 238億円
経常利益 15億円
利益率(%) 6.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 17億円

(2) 損益計算書


当期より連結決算を開始しています。売上高は約238億円、売上総利益は約41億円となり、売上総利益率は17.4%でした。営業利益は約12億円を確保しています。特別利益として投資有価証券売却益を計上したことなどにより、親会社株主に帰属する当期純利益は約17億円となりました。

項目 2025年5月期
売上高 238億円
売上総利益 41億円
売上総利益率(%) 17.4%
営業利益 12億円
営業利益率(%) 4.9%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が7.0億円(構成比23.6%)、運賃及び荷造費が4.9億円(同16.4%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社グループは単一セグメントですが、主要製品別の売上状況を分析します。バタフライ弁が最も多く売上全体の約4割を占め、次いで自動調節弁、遠隔操作装置の順となっています。造船業界の活況を背景に、各品種とも堅調に推移しています。

区分 売上(2025年5月期)
自動調節弁 86億円
バタフライ弁 99億円
遠隔操作装置 53億円
連結(合計) 238億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

中北製作所グループは、事業運営に必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としています。

営業活動によるキャッシュ・フローは、主に材料購入費や製造・販売管理費といった営業費用を賄うために活用されています。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資に充てられています。財務活動によるキャッシュ・フローは、自己資金や金融機関からの借入によって、これらの資金需要を調達しています。

項目 2025年5月期
営業CF -25億円
投資CF 22億円
財務CF 10億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「進取発展」を社是とし、「新技術」へのたゆまぬ研鑽と合理性を求めた「ものづくり」への飽くなき努力を通じて、「バルブを中心とした流体制御の総合メーカー」として時代の要求を先取りできる企業体質づくりに邁進することを基本方針としています。長年培った技術と経験を基盤に、社会に貢献することを目指しています。

(2) 企業文化


「今を守りながら、新しいことにもチャレンジする」という「挑戦」をテーマに掲げています。創業以来の「進取発展」の精神のもと、顧客の声をカタチにする製品開発に磨きをかけつつ、新しい技術開発にも挑戦し、顧客に新しい価値や便益を提案する企業を目指しています。現状に満足せず、変革を恐れない姿勢を重視しています。

(3) 経営計画・目標


生産性向上と原価低減への努力を継続し、財務の健全性・安定性の確保と収益性の向上を目指しています。第99期においては、以下の目標数値を掲げていました。

* 売上高:220億円
* 営業利益:13億円
* 経常利益:16億円
* 親会社株主に帰属する当期純利益:17.8億円

(4) 成長戦略と重点施策


「挑戦」をテーマに、M&Aや協業を含む攻めの投資と海外展開の強化に取り組んでいます。また、顧客関係管理による提案型営業やアフターサービス体制の強化、脱炭素に寄与する製品開発(液体水素用バルブ等)、DXやマスカスタマイゼーションによる生産性向上、多様な人材の確保・育成を重点施策として推進しています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


多様な人材の活用が新たな価値創造につながると考え、能力開発およびキャリアアップの機会を公平に提供し、自ら学び成長する自律型人材の育成を目指しています。「進取発展(果敢に挑戦する)」「顧客起点(愚直に実践する)」「SQCDの徹底向上(ブランド力を高める)」をあるべき人材像とし、OJTや階層別研修等を通じて育成を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年5月期 43.9歳 16.7年 6,428,690円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.7%
男性育児休業取得率 85.7%
男女賃金差異(全労働者) 77.1%
男女賃金差異(正規雇用) 79.3%
男女賃金差異(非正規雇用) 63.3%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、教育研修(外部)受講者数(104名)、採用人数(男性21名、女性11名)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 受注先業界の動向


同社グループの製品はすべて受注生産であり、造船業界や電力・プラント業界が主要な顧客です。そのため、海運市況や新造船需要、設備投資動向などの外部環境の変化が、業績に直接的な影響を及ぼす可能性があります。特に脱炭素化への対応遅れなどは、将来的な受注機会の喪失につながるリスクがあります。

(2) 製品の品質問題とクレーム


ISO9001に基づく品質マネジメントシステムを構築し、万全の品質保証体制で事業を行っていますが、万が一製品に欠陥が生じ、クレームや事故が発生した場合には、改修費用等の発生に加え、社会的信用の低下により業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 保有株式の価格変動リスク


同社グループは取引関係の維持・強化などを目的として株式を保有しています。株式市場の動向により、保有株式の時価が著しく下落した場合には、評価損の計上が必要となり、業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。定期的に保有の合理性を検証していますが、市場リスクは排除できません。

(4) 自然災害による操業停止リスク


国内生産拠点が大阪府に集中しているため、当該地域で大規模な地震や風水害等の自然災害が発生した場合、工場の操業停止や生産能力の低下を招く可能性があります。防災対策やデータバックアップ等は進めていますが、想定を超える災害時には業績に重大な影響が出るおそれがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。