中北製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

中北製作所 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

中北製作所は東京証券取引所スタンダード市場に上場し、船舶用や発電プラント用の自動調節弁、バタフライ弁、遠隔操作装置の製造および販売を主力事業とします。近年の業績は売上高が増加傾向にあり、当期は需要拡大を受けて大幅な増収増益を達成しました。一方、純利益は前期から概ね横ばいの水準で着地しています。


※本記事は、株式会社中北製作所の有価証券報告書(第100期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 中北製作所ってどんな会社?


船舶やプラント向けバルブなどの製造・販売を手掛ける老舗の流体制御機器メーカーです。

(1) 会社概要


1930年に自動調節弁の製造を開始し、1937年に中北製作所として設立されました。1960年代に工場拡張のため大東市へ進出し、1970年代に生産および本社組織を同市へ集約しています。1971年に株式上場を果たし、近年では韓国企業の株式取得や現地法人の設立、中国での現地法人設立など、積極的な海外展開を進めています。

従業員数は連結で511名、単体で389名体制で事業を運営しています。筆頭株主はミヤキタコーポレーションで、第2位および第3位以降には創業家などの個人株主が名を連ねています。

氏名 持株比率
ミヤキタコーポレーション 12.67%
中北健一 7.58%
宮田彰久 3.28%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。
代表取締役社長は宮田彰久氏が務めています。
社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
宮田彰久 代表取締役社長経営企画本部長兼営業本部長兼技術本部管掌 2007年同社入社。生産管理部や資材調達部次長、経営企画室長等を歴任し、2019年より現職。
池田昭彦 取締役副会長 1980年同社入社。技術部長や営業本部長、専務取締役等を歴任し、2023年より現職。
由上晃規 取締役執行役員営業本部副本部長兼東京営業所長 2002年同社入社。総務部長などを経て、2023年より現職。
中尾敏昭 取締役執行役員生産本部長 1989年同社入社。技術部長や技術本部計装設計部長等を経て、2025年より現職。
三竹雅之 取締役執行役員管理本部長兼経理部長 2017年同社入社。総務部次長や経営企画本部経理部長等を経て、2025年より現職。


社外取締役は、大井成夫(元京都銀行常務取締役)、福田あやこ(福田法律事務所所長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「バルブ及び遠隔操作装置製造・販売事業」の単一セグメントで事業を展開しています。

主として船舶用や発電プラント用などに用いられる自動調節弁、バタフライ弁、遠隔操作装置などの製造・販売を行っています。すべて顧客の仕様に基づく受注生産を基本としており、多品種少量生産によって顧客ごとの細かなニーズに対応しています。

収益源として、造船会社や海運会社、プラントメーカー等から製品の販売代金やメンテナンス費用を受け取ります。国内では主に中北製作所が製造・販売を行い、海外では連結子会社のACE VALVE CO., LTD.などが製造・販売を担っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


近年の業績は、造船業界における次世代燃料船を含む新造船需要の改善などを背景に拡大基調にあります。とくに直近では、売上高および経常利益ともに前期を上回る大幅な増収増益を記録しました。利益率も改善傾向にあり、収益力の強化が進んでいます。

項目 2025年5月期 2026年5月期
売上高 238億円 293億円
経常利益 14億円 23億円
利益率(%) 6.1% 7.7%
当期利益(親会社所有者帰属) 17億円 17億円

(2) 損益計算書


売上高の拡大に伴い、売上総利益および営業利益ともに前期を上回る水準で推移しています。営業利益率も改善しており、堅調な収益構造を維持しています。

項目 2025年5月期 2026年5月期
売上高 238億円 293億円
売上総利益 41億円 48億円
売上総利益率(%) 17.4% 16.5%
営業利益 12億円 16億円
営業利益率(%) 4.9% 5.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が8億円(構成比26%)、運賃及び荷造費が6億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


同社グループはバルブ及び遠隔操作装置製造・販売事業の単一セグメントであるため、品種別の売上高を記載します。主力製品であるバタフライ弁が大きく伸びており、全体の売上増を牽引しています。また、自動調節弁や遠隔操作装置も堅調に推移し、すべての品目で前期を上回る売上高を計上しました。

区分 売上(2025年5月期) 売上(2026年5月期)
自動調節弁 86億円 97億円
バタフライ弁 99億円 136億円
遠隔操作装置 53億円 59億円
連結(合計) 238億円 293億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


中北製作所のキャッシュ・フローは「勝負型」です。本業からの収入は一時的にマイナスですが、借入などによって資金を調達し、将来の成長に向けた設備投資などを積極的に継続しています。

項目 2025年5月期 2026年5月期
営業CF -25億円 -3億円
投資CF 22億円 -19億円
財務CF 10億円 16億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は6.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は70.7%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社は「進取発展」を社是として掲げています。長年にわたって培った技術と経験を基盤に、新技術へのたゆまぬ研鑽とより合理性を求めたものづくりへの飽くなき努力を重ね、「バルブを中心とした流体制御の総合メーカー」として時代の要求を先取りできる企業体質づくりを目指しています。

(2) 企業文化


同社は、企業理念としてお客様ひいては社会に信頼される「ものづくり企業」であり続けることを重視しています。「進取発展」のフロンティア・スピリットを伝統として守りつつ、多様な人材が活躍し、自ら学び成長できる自律型人材の育成を推進し、新しい課題に果敢に挑戦する風土が根付いています。

(3) 経営計画・目標


同社は、経営環境が絶えず変化するなかで経営の基本方針に則った経営基盤を確保するため、財務の健全性・安定性、収益性の向上を目指しています。具体的な目標として売上高営業利益率の向上を掲げ、生産性向上と原価低減への不断の努力を継続することで業績目標の確実な達成に取り組んでいます。

(4) 成長戦略と重点施策


同社は、加速する時代の変化に対応するため、「挑戦」をテーマに掲げ、顧客の声を形にする製品開発に加え、新しい技術開発にも取り組んでいます。今後の注力領域として、以下の重点施策を掲げています。

・M&A、協業を含む攻めの投資促進と海外展開の強化
・顧客情報管理による提案型営業活動、国内外アフターサービス体制の強化
・脱炭素に寄与する製品開発と販売促進、データを活用したコト売り事業の創出
・DX、マスカスタマイゼーション生産体制の構築による生産性向上
・多様な人材の確保および育成、技能伝承

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、企業の競争力の源泉は人材であるとの基本認識のもと、多様な人材が能力を最大限に発揮し自ら成長できる「自律型人材」の育成を目指しています。公平な能力開発やキャリアアップの機会を提供し、教育体系の充実を図るほか、安全を最優先とし仕事と生活の調和を目指す社内環境の整備に取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年5月期 43.5歳 16.0年 6,629,398円

※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 2.3%
男性育児休業取得率 63.6%
男女賃金差異(全労働者) 79.4%
男女賃金差異(正規雇用労働者) 83.2%
男女賃金差異(パート・有期労働者) 82.2%


また、同社は「サステナビリティに関する考え方及び取組」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、教育研修(外部)受講者数(195名)、教育研修(外部)受講時間(1,650.5時間)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 受注先業界の動向


同社グループの製品はすべて受注生産であり、主要な受注先は造船業界および電力業界をはじめとするプラント業界です。そのため、これらの受注先業界の動向や景気変動によって、同社の業績が大きな影響を受けるリスクがあります。

(2) 品質保証とクレーム対応


同社はISO9001に基づく品質マネジメントシステムを構築し、万全の品質保証体制で各種バルブや遠隔操作装置を製造・販売しています。しかし、万一製品の欠陥に基づくクレーム事故が発生した場合、業績および社会的評価に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3) 大規模な自然災害


同社グループの国内生産拠点は本社のある大阪府に集中しています。地震や風水害などの大規模な自然災害が発生した場合、操業停止や操業度低下によって生産能力が低下し、業績等に大きな影響を及ぼすリスクがあります。

(4) 人材の確保・育成


同社の操業には各種資格や技能を有する人材の確保が不可欠です。少子高齢化による労働人口の減少により、必要な人員体制の確保や技能伝承が計画通りに進まない場合、業績や事業の継続に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。