京進 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

京進 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

京進は東証スタンダード市場に上場し、学習塾、語学関連、保育・介護事業を展開する企業です。直近の決算では、日本語教育事業の新規留学生の受け入れ増や介護関連のM&Aが寄与し、売上高は堅調に増加しました。また、拠点の大規模化やコスト構造の最適化による収益力強化が進み、増収増益を達成しています。


※本記事は、株式会社京進の有価証券報告書(第46期、自 2025年6月1日 至 2026年2月28日、2026年5月25日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 京進ってどんな会社?


学習塾、語学教育、保育・介護など、人の一生を支援する多様なサービスを展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は1975年に京都進学教室として創設され、1981年に設立されました。1999年に株式を上場し、2004年から個別指導教室のフランチャイズ展開を開始しました。その後、2009年に日本語教育事業、2011年に保育事業、2017年に介護事業へと順次参入し、事業領域を拡大しています。2022年には東証スタンダード市場へ移行しました。

現在の同社グループは、連結従業員数2,195名、単体従業員数783名の体制で事業を運営しています。筆頭株主はTCKホールディングスで、第2位および第3位にはそれぞれ取引先持株会と社員持株会が名を連ねており、安定的な株主構成となっています。

氏名 持株比率
TCKホールディングス 36.57%
京進取引先持株会 4.83%
京進社員持株会 3.48%

(2) 経営陣


同社の役員は男性9名、女性2名の計11名で構成され、女性役員比率は18.0%です。代表取締役社長は立木康之氏が務めています。社外取締役比率は27.3%です。

氏名 役職 主な経歴
立木康之 取締役社長(代表取締役) 2003年同社入社。英会話事業部部長、幼児教育事業部部長、第三運営本部長、専務取締役などを経て、2022年より現職。
松本敏照 専務取締役兼京進これから研究所所長 2004年同社入社。FC事業部部長、総務本部長兼経営企画部長、管理本部長などを経て、2025年より現職。
樽井みどり 取締役執行役員人財組織本部長兼人事部長 1988年同社入社。経営企画部長、第一運営本部長、人事・情報本部長などを経て、2026年より現職。
上坊孝次 取締役執行役員第三運営本部長兼国際人材交流事業部部長 1991年同社入社。第二小中部長、第一運営本部長、京進ランゲージアカデミー代表取締役などを経て、2023年より現職。
関隆彦 取締役執行役員第一運営本部長 1993年同社入社。第一小中部長、保育事業部部長などを経て、2025年より現職。広州京進等の取締役を兼務。
青松武志 取締役執行役員第二運営本部長兼個別指導部長 2002年同社入社。個別指導部長、HOPPAやビーフェアの代表取締役などを経て、2023年より現職。
田中亨 取締役執行役員第四運営本部長 2003年同社入社。小中部長、第一運営本部長などを経て、2025年より現職。エメラルドの郷等の代表取締役を兼務。
松原博之 取締役執行役員経営管理本部長兼財務部長 2019年同社入社。経理部長、経営企画部長、管理本部長などを経て、2026年より現職。


社外取締役は、市原洋晴(YH代表取締役)、竹内由起(元彦惣・竹内法律事務所入所・弁護士)、山田洋平(山田松香木店取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「学習塾事業」「語学関連事業」「保育・介護事業」の3つの報告セグメントを展開しています。

(1) 学習塾事業


小学生から高校生までを対象とした「京進の中学・高校受験 TOPΣ」「京進の大学受験 TOPΣ」などの集合学習指導や、個別指導「スクール・ワン」、幼児対象の小学校受験指導を展開しています。

顧客から受領する授業料や講習費用などが主な収益源です。運営は同社が行うほか、海外での日本人子女向け学習塾はKyoshin GmbHや広州京進言語技能信息咨詢等が運営しています。また、フランチャイズ展開による事業基盤の拡大も進めています。

(2) 語学関連事業


外国人留学生を対象とした「京進の日本語学校 KLA」や、幼児向け英会話「UNIVERSAL CAMPUS」、海外での語学・専門学校、外国人材の就業支援などを提供しています。

留学生や受講生からの授業料が主な収益源です。運営は同社のほか、京進ランゲージアカデミーやコペル・インターナショナルなどの子会社が行っています。海外拠点としてオーストラリアなどで専門学校や語学学校も運営しています。

(3) 保育・介護事業


0〜5歳児を対象とする知育特化の「京進のほいくえん HOPPA」や小学生向けの民間学童保育、高齢者を対象とする住宅・介護施設、訪問介護、配食サービス等を提供しています。

施設利用者からの利用料や国・自治体からの給付金が主な収益源です。運営はHOPPAやビーフェア、エメラルドの郷、優空、リンクハートなどの子会社が担っており、介護領域では積極的なM&Aを通じて事業を拡大しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


売上高は長らく堅調に推移してきましたが、当期は決算期変更に伴う9ヶ月間の変則決算となっています。利益面では過去に一時的な赤字を計上した時期がありましたが、直近ではコスト構造の最適化や不採算拠点の統廃合が進み、利益率が改善して黒字基調へと回復しています。

項目 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期 2026年2月期
売上高 239億円 254億円 261億円 265億円 203億円
経常利益 3.7億円 3.9億円 8.4億円 3.4億円 4.7億円
利益率(%) 1.5% 1.5% 3.2% 1.3% 2.3%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.1億円 -8.9億円 -3.6億円 0.9億円 0.7億円

(2) 損益計算書


当期は9ヶ月間の変則決算であるため単純比較はできませんが、利益率の改善傾向が見て取れます。売上総利益率は20.5%と前期並みを維持する一方で、構造改革による販管費の抑制が進んだことで営業利益率は向上しています。

項目 2025年5月期 2026年2月期
売上高 265億円 203億円
売上総利益 54億円 42億円
売上総利益率(%) 20.3% 20.5%
営業利益 5.1億円 4.8億円
営業利益率(%) 1.9% 2.4%


販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が11億円(構成比31.3%)、支払手数料が5.1億円(同13.8%)、広告宣伝費が3.6億円(同9.9%)を占めています。また、売上原価の多くは、人件費が93億円(構成比57.9%)、経費が55億円(同33.8%)を占めており、対人サービス主体の労働集約型ビジネスの特徴が表れています。

(3) セグメント収益


学習塾事業は少子化の影響を受けつつも、不採算校舎の統廃合や成長エリアへの集中出店が奏功し利益率が改善しています。一方で、保育・介護事業はM&A効果や既存施設の高稼働により、グループ全体の売上を牽引する主力事業に成長しています。

区分 売上(2025年5月期) 売上(2026年2月期) 利益(2025年5月期) 利益(2026年2月期) 利益率
学習塾事業 98億円 77億円 12億円 13億円 17.2%
語学関連事業 43億円 33億円 0.8億円 0.3億円 0.8%
保育・介護事業 123億円 92億円 8.5億円 3.0億円 3.3%
連結(合計) 265億円 203億円 5.1億円 4.8億円 2.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


当期のキャッシュ・フローは、本業がマイナスですが将来の成長に向けた借入で投資を継続する「勝負型」の状況です。ただし、当期の営業CFのマイナスは決算期変更による変則決算(例年収入が増加する春期が含まれないこと)が主な要因です。

項目 2025年5月期 2026年2月期
営業CF 15億円 -1.8億円
投資CF -4.2億円 -9.2億円
財務CF -5.7億円 2.4億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.8%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は17.7%であり、いずれもスタンダード市場の平均を下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「私たちは、全従業員の物心両面の豊かさを追求するとともに、日本と世界の教育・文化の向上、社会の進歩と善良化に貢献します」という経営理念を掲げています。また、「ステキな大人が増える未来をつくる」というグループビジョンの実現を目指し、学びの力で人々の人生の質を高める一生支援企業としてのポジションを追求しています。

(2) 企業文化


「私たちは、常に創意工夫をし、絶えざる革新を心がけます」という社是を掲げています。また、「ひとりひとりを大切にします」「高い志を持ち、仕事を通じて成長します」「常に感動づくりを心がけます」という3つの原則を行動指針としており、変化する環境に対応しながら全てのステークホルダーへの貢献を重視する文化があります。

(3) 経営計画・目標


経営指標として、各事業における顧客数、売上高、営業利益を重視しています。中長期的な目標として、単なる規模の拡大ではなく、抜本的に収益構造の見直しを進めることで、顧客数および売上高の成長と同時に、営業利益率や経常利益率の向上を追求しています。

(4) 成長戦略と重点施策


既存事業の強化と新規事業の創出を進め、DXや生成AIへの積極的な投資により従来の労働集約型ビジネスからの脱却を図ります。学習塾事業では不採算教室の統廃合やAIを活用したハイブリッド型指導で高付加価値化を進め、そこで生み出した安定的な資金を成長性の高い介護事業や日本語教育、保育事業へ重点的に投資する方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「人」こそが最大の資源であると考え、人的資本投資を重視しています。個人の自立を促す「リーチング」、経営者マインドを醸成する「アメーバ経営」、組織の質を高める「経営品質向上活動」を成長の3本柱と位置づけています。また、元生徒や自社で教育した外国人材を採用する独自の自立型採用基盤を確立し、組織力の強化を図っています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年2月期 39.0歳 11.5年 5,016,954円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 22.7%
男性育児休業取得率 90.0%
男女賃金差異(全労働者) 62.3%
男女賃金差異(正規雇用) 81.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 84.9%


また、同社は「指標及び目標」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、有給取得日数(13.1日)、ES調査の成長実感(52.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 安全・安心に関するリスク

顧客や従業員の安全確保を最重要視し、防犯システムの導入や衛生管理を徹底しています。しかし、予期せぬ事故やトラブル、情報漏洩等が発生した場合、社会的信用の失墜による顧客離れや損害賠償、安全対策コストの急増により、業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

(2) 法的規制に関するリスク

保育事業や介護事業は国の補助金制度や介護保険法、日本語教育事業は入国管理局の基準など、法規制の動向に強く影響を受けます。予期せぬ法改定や出入国管理の厳格化、介護報酬単価の引き下げ等が行われた場合、対応コストの増加や収益減少を招くリスクがあります。

(3) 労働集約型ビジネスにおける人材不足リスク

教育、保育、介護の各事業は「人」が提供価値を左右する労働集約型ビジネスであり、有資格者を含む人材の確保が不可欠です。急速な少子高齢化による採用競争の激化で人材不足が深刻化した場合、採用・人件費の高騰や人員不足によるサービスの低下が生じる可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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