※本記事は、日本エンタープライズの有価証券報告書(第38期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月27日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 日本エンタープライズってどんな会社?
コンテンツサービスやシステム開発など、自社IPとITソリューションを提供する企業です。
■(1) 会社概要
日本エンタープライズは1989年5月に設立されました。1997年に携帯電話等の販売や音声コンテンツサービスを開始し、2001年には大阪証券取引所ナスダック・ジャパン市場に上場を果たしました。その後、2014年に東京証券取引所市場第一部へ指定され、現在は持株会社体制への移行に向けた組織再編を進めています。
現在の同社グループは、連結で225名、単体で70名の従業員を擁しています。筆頭株主は創業者であり代表取締役会長兼社長を務める植田勝典氏で、第2位はプラントフィル、第3位は個人の小松秀輝氏となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 植田 勝典 | 28.79% |
| プラントフィル | 25.04% |
| 小松 秀輝 | 1.34% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役会長兼社長は植田勝典氏が務めており、社外取締役比率は40.0%となっています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 植田 勝典 | 代表取締役会長兼社長 | 1985年トヨタ自動車入社。1989年同社設立、代表取締役社長就任。その後、関係各社の取締役や代表取締役を歴任。2024年に同社代表取締役会長、2025年より現職。 |
| 田中 勝 | 専務取締役管理本部長 | 1990年オーテック入社などを経て、2001年同社入社。総務企画部長などを経て2005年取締役就任。常務取締役管理本部長などを歴任し、2024年より現職。 |
| 杉山 浩一 | 取締役営業本部長兼グループ技術管掌(社長特命担当) | 1994年エスシーシー入社。2000年同社入社。2001年取締役就任。常務取締役、代表取締役社長を経て、2025年より現職。 |
社外取締役は、福田正(元角川アスキー総合研究所代表取締役会長)、岩田明子(元日本放送協会解説主幹)です。
2. 事業内容
同社グループは、「クリエーション事業」および「ソリューション事業」を展開しています。
■クリエーション事業
スマートフォン向けアプリを提供する「コンテンツサービス」、法人向けキッティング支援や交通情報などの「ビジネスサポートサービス」、太陽光発電による「再生可能エネルギー」を展開しています。新しいライフスタイルの創造を目指し、一般消費者と法人顧客の両方を対象としています。
一般ユーザーからのアプリ利用料や、法人からの支援サービス利用料などを主な収益源としています。事業の運営は、日本エンタープライズ、および交通情報サービスやスマート・コミュニティ・サポートなどのグループ子会社が行っています。
■ソリューション事業
法人向けにシステム受託開発や運用保守を行う「システム開発サービス」、高度IT人材による「業務支援サービス」、端末周辺商材の販売等を行う「その他サービス」を提供しています。企業のIT化やデジタルトランスフォーメーション(DX)推進を支援しています。
法人顧客からのシステム開発・運用に係る受託費用や人材支援の対価、各種商材の販売代金などを収益源としています。事業の運営は日本エンタープライズや、フォー・クオリアなどのグループ各社が担っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は40億円台で堅調に推移していますが、利益面は変動が見られます。一時は減益となりましたが、直近の事業年度では主力事業の収益力向上やコスト見直しなどにより、経常利益および当期利益において増益を達成し、回復傾向にあります。
| 項目 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 40億円 | 42億円 | 47億円 | 44億円 | 45億円 |
| 経常利益 | 1.5億円 | 1.9億円 | 2.8億円 | 0.9億円 | 1.1億円 |
| 利益率(%) | 3.8% | 4.5% | 5.9% | 2.0% | 2.4% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 4.8億円 | 0.3億円 | 1.2億円 | -0.3億円 | 0.3億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で微増となりましたが、売上原価の増加により売上総利益および同利益率は低下しました。一方で、販売費及び一般管理費を低減したことにより、営業利益および営業利益率は前年度を上回る結果となっています。
| 項目 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 44億円 | 45億円 |
| 売上総利益 | 16億円 | 15億円 |
| 売上総利益率(%) | 36.9% | 34.6% |
| 営業利益 | 0.7億円 | 0.8億円 |
| 営業利益率(%) | 1.5% | 1.8% |
販売費及び一般管理費のうち、給与及び賞与手当が5.4億円(構成比37.0%)、役員報酬が3.1億円(同21.4%)を占めています。また、同社単体の売上原価においては、外注費が5.8億円(構成比46.0%)、その他経費が3.8億円(同30.1%)となっています。
■(3) セグメント収益
クリエーション事業では、法人向けキッティング支援の大幅な伸長やコミュニケーションサービスの増加により増収となりました。一方、ソリューション事業では、生成AI導入等の需要があるものの復調途上のためシステム開発サービスが減収となり、全体として横ばいに推移しています。
| 区分 | 売上(2025年5月期) | 売上(2026年5月期) |
|---|---|---|
| クリエーション事業 | 18億円 | 18億円 |
| ソリューション事業 | 26億円 | 26億円 |
| 連結(合計) | 44億円 | 45億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業活動で生み出した資金で借入の返済や投資を行っている「健全型」です。
| 項目 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 1.6億円 | 2.9億円 |
| 投資CF | -4.4億円 | -0.8億円 |
| 財務CF | -2.9億円 | -1.3億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は1.4%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は83.7%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「世の中に驚きと感動を提供し、社会全体に役立つ企業であり続ける」ことをパーパス(目的)として掲げています。また、「世の中をもっと便利に、楽しく、快適に」するITソリューションの提供を経営方針とし、「21世紀を代表する社会をより良い方向に変える会社でありたい」という経営ビジョンのもと、社会に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社グループは、企業の存立にはコンプライアンスの徹底が不可欠であるとの認識のもと、全ての役職員が公正で高い倫理観に基づいて行動し、社会から信頼される経営体制の確立を重視しています。また、「経営理念(綱領・信条・五精神)」、「日エン経営原則」、「私たちの行動規範」を定め、朝礼での唱和や社内研修などを通じて全役職員への周知徹底を図り、行動様式として定着させています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、安定的な収益の確保と成長投資への活用、継続的な配当の実現を目指し、収益体質の維持・強化に努めています。重視している経営指標として以下の数値目標を掲げています。
* 売上高経常利益率:10%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社グループは、持続的な成長に向けて、既存事業の深化に加え、外部企業とのアライアンス強化や業務提携、M&Aを積極的に推進し、事業領域の拡大を図っています。また、企業価値の最大化を目指して持株会社体制への移行を進めており、グループ全体の経営管理の高度化や経営資源の最適配分、機動的な事業運営を通じて、新規事業の創出とグループシナジーの最大化に取り組んでいます。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、多様なスキルとバックグラウンドを持つ人材が継続的に成長し、自らの価値を高めることを重視しています。性別や年齢、国籍等にとらわれない採用活動で多様性を確保するとともに、能力や実績を重視した公正な評価と管理職登用を行っています。また、ワークライフバランスに配慮した支援制度の整備や、資格取得支援、教育研修などの成長機会の提供を通じて、働きやすい環境づくりに努めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年5月期 | 40.7歳 | 7.9年 | 6,574,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 19.0% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 79.1% |
| 男女賃金差異(正規雇用労働者) | 82.1% |
| 男女賃金差異(パート・有期労働者) | 75.7% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) IT関連市場の競争激化
IT関連市場では、デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進を背景に新規参入企業の増加が見込まれています。同市場の急激な変化や成長の不確実性により、同社グループが提供するサービスにおいて優位性を維持できない場合や、競合企業との競争が激化した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) サービスの陳腐化
同社グループが提供するサービスは、技術革新や利用ニーズの変化の影響を受けやすいため、ライフサイクルが必ずしも長いとは言えません。新技術への対応遅れや、ユーザーニーズと乖離したサービスを提供したことによって既存サービスの陳腐化を招いた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) プラットフォーム運営事業者との取引依存
コンテンツサービスにおいて、同社グループは各移動体通信事業者やプラットフォーム運営事業者などを通じて一般ユーザーにコンテンツを提供しています。事業者側の提供条件や事業戦略の変更などの事由により、良好な取引関係の維持や取引条件の継続が困難になった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。



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