日本エンタープライズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

日本エンタープライズ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場。スマートフォン向けアプリ等のコンテンツサービスや、法人向けシステム開発、キッティング支援等のソリューション事業を展開しています。2025年5月期は、月額コンテンツの会員獲得に向けた広告投資やシステム開発の復調遅れ等が響き、売上高44億円、経常利益0.9億円と減収減益となりました。


※本記事は、日本エンタープライズ株式会社 の有価証券報告書(第37期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. 日本エンタープライズってどんな会社?


モバイルコンテンツ配信や法人向けシステム開発、キッティング支援等を展開する独立系IT企業です。

(1) 会社概要


1989年に設立され、1997年にモバイルコンテンツサービスを開始しました。2001年のナスダック・ジャパン上場を経て、2007年に東証二部、2014年に東証一部へ指定替えとなりました。事業拡大に伴い、2011年に交通情報サービス株式会社を子会社化(後に吸収合併)、2015年に太陽光発電事業を行う山口再エネ・ファクトリー(現スマート・コミュニティ・サポート)を設立、2016年に豊洲市場の電子商取引を行ういなせりを設立するなど、多角化を進めています。

連結従業員数は230名、単体では74名です。筆頭株主は創業者の植田勝典氏で、第2位はプラントフィルです。

氏名 持株比率
植田 勝典 28.88%
プラントフィル 25.04%
金室 貴久 1.40%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性1名の計8名で構成され、女性役員比率は12.5%です。代表取締役会長兼社長は植田勝典氏です。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
植田 勝典 代表取締役会長兼社長 トヨタ自動車、松下電器産業を経て同社設立。社長、会長を歴任し2025年6月より現職。
田中 勝 専務取締役管理本部長 オーテック、三貴等を経て同社入社。総務企画部長、常務取締役等を歴任し現職。
杉山 浩一 取締役コーポレート営業本部長兼グループ技術管掌(社長特命担当) エスシーシー等を経て同社入社。営業本部技術部長、代表取締役社長等を歴任し現職。


社外取締役は、福田正(元KADOKAWA代表取締役専務)、岩田明子(元NHK政治部記者兼解説委員)です。

2. 事業内容


同社グループは、「クリエーション事業」および「ソリューション事業」を展開しています。

(1) クリエーション事業


一般消費者向けにスマートフォンアプリ(ゲーム、電子書籍、交通情報等)を提供する「コンテンツサービス」や、法人向けにキッティング支援、交通情報提供、EC・ASPサービス等を行う「ビジネスサポートサービス」、太陽光発電による「再生可能エネルギー」を展開しています。

収益は、消費者からのコンテンツ利用料(月額・定額等)、法人からの業務支援対価、および売電収入等が主となります。運営は、同社をはじめ、いなせり、スマート・コミュニティ・サポート、and One等が行っています。

(2) ソリューション事業


法人顧客向けにアプリ開発、WEB構築、サーバ構築、運用監視等を行う「システム開発サービス」や、高度IT人材による常駐型支援を行う「業務支援サービス」、端末周辺商材の販売等を行う「その他サービス」を提供しています。

収益は、顧客企業からのシステム開発受託費、業務支援委託費、および商品販売代金等が主となります。運営は、同社をはじめ、ダイブ、フォー・クオリア、会津ラボ、プロモート、アップデートサポート等が行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2025年5月期の売上高は44億円で前期比減収となりました。利益面では、経常利益が0.9億円、当期純利益が0.2億円となり、いずれも前期から大きく減少しています。売上高は40億円台で推移していますが、利益率は低下傾向にあり、収益性の改善が課題となっています。

項目 2021年5月期 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期
売上高 43.5億円 40.2億円 42.1億円 47.0億円 44.4億円
経常利益 3.6億円 1.5億円 1.9億円 2.8億円 0.9億円
利益率(%) 8.2% 3.8% 4.5% 5.9% 2.0%
当期利益(親会社所有者帰属) -0.1億円 4.8億円 0.3億円 1.2億円 -0.3億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の減少に伴い売上総利益が縮小しています。一方で販売費及び一般管理費が増加したため、営業利益率は前期の5.6%から1.5%へと低下しました。コスト構造の変化により、本業の収益力が圧迫されている状況がうかがえます。

項目 2024年5月期 2025年5月期
売上高 47.0億円 44.4億円
売上総利益 17.2億円 16.4億円
売上総利益率(%) 36.7% 36.9%
営業利益 2.6億円 0.7億円
営業利益率(%) 5.6% 1.5%


販売費及び一般管理費のうち、給与及び賞与手当が5.5億円(構成比35.1%)、役員報酬が3.1億円(同20.0%)を占めています。

(3) セグメント収益


クリエーション事業は増収となったものの、広告宣伝費等の増加により減益となりました。ソリューション事業はシステム開発サービスの復調遅れ等が影響し、減収減益となっています。両セグメントともに利益率が低下しており、特にソリューション事業の減益幅が大きくなっています。

区分 売上(2024年5月期) 売上(2025年5月期) 利益(2024年5月期) 利益(2025年5月期) 利益率
クリエーション事業 18億円 18億円 5億円 4億円 20.5%
ソリューション事業 29億円 26億円 4億円 3億円 10.4%
連結(合計) 47億円 44億円 3億円 1億円 1.5%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、営業活動により資金を創出し、その一部を将来の成長に向けた投資に充て、残りを株主への還元に活用する方針です。

営業活動では、利益創出に加えて、売掛金の回収が進んだことで資金が増加しました。投資活動では、事業拡大に向けたソフトウェア開発や有価証券への投資を行ったため、資金の減少となりました。財務活動では、株主への配当実施や借入金の返済により、資金が減少しました。

項目 2024年5月期 2025年5月期
営業CF 2.7億円 1.6億円
投資CF -0.7億円 -4.4億円
財務CF -1.1億円 -2.9億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、生成発展と新しい喜びや価値創造を通じて、「21世紀を代表する社会をより良い方向に変える会社」を目指すことを経営方針としています。事業活動を通じて社会全体に役立つサービスを創出・提供し続けることを基本としています。

(2) 企業文化


企画力・技術力・営業力の練磨と蓄積により、「お客様満足NO.1企業」を目指し、安定性のある強固な企業基盤の確立を図ることを基本方針としています。また、企業の社会的責任(CSR)を包含したESG(環境・社会・企業統治)に配慮した取り組みを推進しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、安定的な収益確保と将来の成長投資、継続的な配当を行うことができる収益体質の維持・強化を目指しています。その達成状況を判断する客観的な指標として、以下の数値目標を掲げています。

* 売上高経常利益率:10%以上

(4) 成長戦略と重点施策


既存事業の深化に加え、新たな価値創造に向けた事業領域の拡大を重要課題としています。クリエーション事業では既存コンテンツの認知度向上や新規タイトルの投入、ソリューション事業ではDX推進に伴うニーズへの対応や高度IT人材による業務支援を強化し、M&Aやアライアンスも活用して企業価値向上を図る方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


性別、年齢、国籍等にとらわれない採用活動で多様性を確保するとともに、能力や実績を重視した管理職登用や公正な人事評価を行っています。また、従業員の専門性を高めるための教育研修や、心身の健康サポート、ワークライフバランスに配慮した各種支援制度の整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均をやや上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年5月期 41.1歳 7.4年 6,693,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
管理職に占める女性労働者の割合 21.7%
男性労働者の育児休業取得率 100.0%
労働者の男女の賃金の差異(全労働者) 73.2%
労働者の男女の賃金の差異(正規雇用) 75.8%
労働者の男女の賃金の差異(非正規雇用) 67.5%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競合について


DX推進を背景にIT関連市場への新規参入や既存企業の事業拡大が続いており、競争が激化しています。同社グループが提供するサービスにおいて優位性を維持できない場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) システムダウンについて


通信ネットワークによるサービス提供を行っているため、自然災害や事故によるデータセンターの障害、一時的なアクセス集中によるサーバ停止、サイバー攻撃等がリスクとなります。これらによりサービスが停止した場合、事業に影響を及ぼす可能性があります。

(3) 事業者・プラットフォームとの取引


コンテンツサービスにおいて、移動体通信事業者やプラットフォーム運営事業者を通じてサービスを提供しています。これらの事業者の方針変更や取引条件の変更、取引停止等が生じた場合、安定的な事業継続が困難になり、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 個人情報の流出について


サービス提供に伴い一般ユーザーの個人情報を扱うため、不正アクセス等による情報流出のリスクが存在します。万が一流出事故が発生した場合、損害賠償請求や社会的信用の失墜により、経営成績や財政状態に影響を与える可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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