パソナグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

パソナグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場の人材サービス大手です。BPO、人材派遣、人材紹介などのHR事業に加え、地方創生事業を展開しています。当期はベネフィット・ワンの株式売却に伴いアウトソーシングセグメントを廃止した影響や、地方創生事業の先行投資等により、減収となり営業損失・経常損失を計上しました。


※本記事は、株式会社パソナグループ の有価証券報告書(第18期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. パソナグループってどんな会社?


総合人材サービスのパイオニアです。人材派遣・紹介やBPOに加え、淡路島などでの地方創生事業に注力しています。

(1) 会社概要


1976年に人材派遣事業を行う株式会社テンポラリーセンターとして創業し、2003年に東証一部へ上場しました。2007年に純粋持株会社体制へ移行し、現商号に変更しています。2024年には子会社であったベネフィット・ワンの全株式を売却し、現在は人材関連事業と地方創生事業を中核に据えた事業ポートフォリオへの転換を進めています。

連結従業員数は8,894名、単体従業員数は880名です。筆頭株主は創業者の南部靖之氏で、第2位は創業家の資産管理会社である南部エンタープライズです。第3位は資産管理業務を行う信託銀行が名を連ねており、創業家が安定的な持株比率を維持しています。

氏名 持株比率
南部 靖之 37.45%
南部エンタープライズ 9.48%
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 7.97%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.0%です。代表取締役社長CEOは若本博隆氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。

氏名 役職 主な経歴
若本 博隆 代表取締役社長CEO 1984年埼玉銀行入行。2007年同社取締役、2021年取締役副社長執行役員COOを経て、2025年6月より現職。
深澤 旬子 取締役副社長執行役員Pasona Way総本部長兼社会貢献室担当 1974年三井東圧化学入社。電通を経て1981年同社グループ入社。2018年取締役副社長執行役員Pasona Way本部長などを経て、2024年8月より現職。
山本 絹子 取締役副社長執行役員NATUREVERSE総本部長 1979年同社グループ入社。ニジゲンノモリ代表取締役社長などを歴任し、2017年同社取締役副社長執行役員。2024年8月より現職。
南 部 真 希 也 取締役常務執行役員グローバル戦略総本部長兼国際業務本部長 2008年三菱商事入社。2013年パソナ入社。パソナ取締役常務執行役員などを経て、2025年6月より現職。
野村 和史 取締役(常勤監査等委員) 1977年同社グループ入社。パソナ常務執行役員、エヌエスパーソネルサービス代表取締役社長などを経て、2019年8月より現職。


社外取締役は、舩橋晴雄(シリウス・インスティテュート代表取締役)、古川一夫(元日立製作所社長)、宮田亮平(元文化庁長官)、跡見裕(元杏林大学学長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「BPOソリューション、エキスパートソリューション」、「キャリアソリューション」、「グローバルソリューション」、「ライフソリューション」および「地方創生・観光ソリューション」事業を展開しています。

(1) BPOソリューション、エキスパートソリューション


総務・経理等の事務処理やコンタクトセンター運営を請け負うBPO事業と、事務職や専門職などを企業へ派遣する人材派遣事業を行っています。企業の業務効率化や人材不足の解消を支援しており、DX推進支援や専門人材による顧問コンサルティングなども提供しています。

収益は、顧客企業から受け取る業務委託料や人材派遣料金等です。運営は主に株式会社パソナ、ビーウィズ、パソナ日本総務部、パソナHSなどが担っています。BPOでは自社設備を活用した受託や顧客内でのオンサイト受託を行い、派遣では派遣スタッフと雇用契約を結び派遣先へサービスを提供しています。

(2) キャリアソリューション


転職希望者と求人企業をマッチングする人材紹介事業と、企業の退職予定者に対して再就職や独立を支援する再就職支援事業を展開しています。ハイキャリア層や専門職の紹介に強みを持ち、再就職支援ではキャリアカウンセリングや求人開拓を通じて利用者の次の進路決定をサポートしています。

収益は、人材紹介における求人企業からの紹介手数料や、再就職支援における契約企業からの委託料等です。運営は主に株式会社パソナが行っています。人材紹介は入社決定時に成果報酬が発生し、再就職支援は支援留置期間に応じた定額収入を得るモデルです。

(3) グローバルソリューション


海外において、日系企業や現地企業に対し、人材紹介、人材派遣、BPO(給与計算等)、教育・研修などの人材サービスを総合的に提供しています。北米、アジア地域を中心に拠点を展開し、グローバル人材の採用や人事労務課題の解決を支援しています。

収益は、顧客企業から受け取る紹介手数料、派遣料金、業務委託料等です。運営は、Pasona N A, Inc.(米国)、Pasona Asia Co., Limited(香港)など、各国の現地法人が行っています。国ごとの労働法制や商習慣に合わせたサービス展開を行っています。

(4) ライフソリューション


認可・認証保育所や企業内保育施設の運営、学童クラブの運営などの子育て支援事業と、訪問介護やデイサービスなどの介護事業、家事代行サービスを行っています。働く人々の仕事と生活の両立を支援するインフラとしての役割を担っています。

収益は、自治体や利用者から受け取る保育料、介護報酬、サービス利用料等です。運営は主に株式会社パソナフォスター(子育て支援)、株式会社パソナライフケア(介護・家事代行)が行っています。自治体からの受託事業も多く含まれます。

(5) 地方創生・観光ソリューション


兵庫県淡路島をはじめとする地域において、アニメパーク「ニジゲンノモリ」や飲食施設、宿泊施設などを運営し、観光客誘致による地域活性化に取り組んでいます。また、地元特産品を活用した商品開発や、地域課題解決に取り組む人材の育成・誘致も行っています。

収益は、一般顧客からの施設利用料、飲食代、宿泊料、物販収入等です。運営は、株式会社ニジゲンノモリ、株式会社パソナ農援隊、株式会社awajishima resortなどが各施設やプロジェクト単位で行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は2023年5月期をピークに減少傾向にあります。特に当期は、連結子会社であったベネフィット・ワンの株式売却に伴うアウトソーシングセグメントの廃止が大きく響き、前期比で減収となりました。利益面では、経常損益および当期純損益ともに赤字に転落しています。

項目 2021年5月期 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期
売上高 3,345億円 3,661億円 3,726億円 3,567億円 3,092億円
経常利益 204億円 225億円 154億円 72億円 -5億円
利益率(%) 6.1% 6.1% 4.1% 2.0% -0.1%
当期利益(親会社所有者帰属) 68億円 86億円 61億円 959億円 -87億円

(2) 損益計算書


前期と比較すると、売上高の減少に伴い売上総利益が縮小しました。販売費及び一般管理費は減少したものの、売上総利益の減少幅を補えず、営業損失を計上しています。

項目 2024年5月期 2025年5月期
売上高 3,567億円 3,092億円
売上総利益 848億円 680億円
売上総利益率(%) 23.8% 22.0%
営業利益 68億円 -12億円
営業利益率(%) 1.9% -0.4%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与及び賞与等が305億円(構成比44%)、賃借料が56億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のBPO・エキスパートソリューションは、大型案件のピークアウト等により減収減益となりました。一方、キャリアソリューションやグローバルソリューションは増収増益と堅調です。地方創生・観光ソリューションは増収となったものの、依然として営業損失が続いています。

区分 売上(2024年5月期) 売上(2025年5月期) 利益(2024年5月期) 利益(2025年5月期) 利益率
BPOソリューション、エキスパートソリューション 2,816億円 2,693億円 116億円 98億円 3.6%
キャリアソリューション 130億円 145億円 40億円 50億円 34.8%
グローバルソリューション 108億円 111億円 3億円 4億円 3.6%
ライフソリューション 72億円 81億円 1億円 -0.3億円 -0.3%
地方創生・観光ソリューション 57億円 62億円 -27億円 -19億円 -30.8%
アウトソーシング 384億円 - 76億円 - -
調整額 -54億円 - -142億円 -145億円 -
連結(合計) 3,567億円 3,092億円 68億円 -12億円 -0.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

本業の稼ぎのカバレッジは7%にとどまり、不足する584億円は外部調達や手元現金で補填している「健全型(投資フェーズ)」です。前期の大規模な資産売却(投資CFプラス)で得た資金を原資に、当期は積極的な再投資に転じています。単年のカバレッジ率だけでなく、2期通じた「売却→再投資」のサイクルとして読む必要があります。事業ポートフォリオの入れ替えを経て次のフェーズへ向かっている段階であり、変化の多い環境に対応できる人材や、再編プロセスへの関与に関心がある方に向いているフェーズです。

項目 2024年5月期 2025年5月期
営業CF 74億円 43億円
投資CF 943億円 -476億円
財務CF -129億円 -151億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-6.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は50.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「社会の問題点を解決する」という企業理念を掲げています。仕事を通じて「人を活かす」こと、すなわち人々の心豊かな生活を創造する「ライフプロデュース」を役割と定めています。誰もが自由に好きな仕事を選択し、それぞれのライフスタイルに合わせた働き方ができる社会、会社と個人が対等な関係で結ばれ才能を活かせる社会、ダイバーシティが推進され一人ひとりが夢と誇りを持って活躍できる機会を創造し続けることを使命としています。

(2) 企業文化


同社は「Pasona Way」を行動指針として共有し、創業の精神を継承しています。これは「社会のために」「働く人々のために」「お客様のために」「共に働く仲間のために」「株主の皆様のために」という5つの視点から構成され、高い志と使命感、ベンチャー精神を持って果敢に挑戦することを重視しています。また、社員一人ひとりが社会のために何ができるかを考え、自律的に行動することを推奨する文化があります。

(3) 経営計画・目標


同社は、2026年5月期から始まる5ヵ年を「PASONA GROUP VISION 2030」と位置付けています。収益構造の改革及び新たな事業成長に向けた成長戦略により、持続的な企業成長と企業価値向上を目指しています。

* 売上高4,000億円
* 経常利益率5%
* ROE8%以上
* PBR1倍超

(4) 成長戦略と重点施策


創業50年を迎え、次の50年に向けて「Well-being産業」の創造を目指しています。具体的には、既存の事業領域においては高付加価値サービスの提供による収益力強化と収益構造改革に取り組みます。また、人々の「からだの健康・こころの健康・社会の健康」が実現した「NATUREVERSE(ネイチャーバース)」な世界の実現を目指し、これまで培ったノウハウやネットワークを活かして、健康を支える新たな産業を創造し、事業成長につなげていく方針です。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「自分の未来は自分で創る」という方針のもと、従業員が高い志と使命感を持ち、果敢に挑戦し続けることができる環境整備を進めています。「PASONA GROUP VISION 2030」に基づき、「未来をともに創る人財の発掘」「新たな価値を生み出す人財の育成」「多様な人財が活躍できる環境づくり」を人財戦略の柱としています。複線的なキャリア構築を支援する「ハイブリッドキャリアプログラム」や、社内ベンチャー制度などを通じ、自律的なキャリア形成を支援しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年5月期 34.9歳 7.7年 6,289,000円


※平均年間給与は、入社1年以上の従業員を対象に、賞与及び基準外賃金を含めて算出しております。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 55.7%
男性育児休業取得率 91.7%
男女賃金差異(全労働者) 85.6%
男女賃金差異(正規雇用) 84.8%
男女賃金差異(非正規雇用) 82.8%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、DX人材育成数(12,461名)、従業員一人当たりの平均研修時間(59.2時間)、男性の育児休業平均取得日数(86.1日)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 景気動向等のマクロ環境の影響


同社グループの事業は、国内外の景気変動や技術革新、労働関連法令の規制等の影響を受けます。市場環境や雇用情勢、顧客需要が急激に変化した場合、各事業の業績や収益構造に影響を受ける可能性があります。長期的には国内人口減少による人手不足や市場縮小も懸念されます。

(2) 官公庁等との事業認可・契約関係及び労働法令対応


BPO事業では官公庁等からの受託業務が増加しており、関連法規違反や不適正な運営が生じた場合、社会的信用の毀損や入札停止処分を受ける可能性があります。また、主力の人材派遣・紹介事業は許認可事業であり、重大な法令違反等により許可の取消しや事業停止命令を受けた場合、事業継続が困難になる可能性があります。

(3) 地方創生・観光ソリューション事業について


地方創生・観光ソリューション事業では複数の商業施設を運営しており、現在営業損失が継続しています。新規施設の開設には多額の資金負担と固定的費用が生じ、利用者数が計画に達するまでの期間は利益を圧迫する傾向があります。また、天候、災害、パンデミック等の影響や、集客施策の不十分さにより収益が計画を下回る可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


関連記事

パソナグループの転職研究 2026年5月期2Q決算に見るキャリア機会

パソナグループの2026年5月期2Q決算は、BPOの高付加価値化と地方創生事業の24.8%増収が光る内容でした。先行投資による営業赤字の一方、万博関連収益が寄与し経常利益は大幅増。「なぜ今パソナなのか?」、社会課題解決へシフトする同社で転職希望者が担える新たな役割を整理します。