パソナグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

パソナグループ 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

パソナグループは東京証券取引所プライム市場に上場し、BPOソリューション、人材派遣、人材紹介、地方創生などの事業を広く展開する企業です。直近の業績トレンドでは、BPO事業の大型案件ピークアウト等により売上高は微減となりましたが、利益率の改善により営業赤字幅は縮小し、経常利益は黒字転換を果たしました。


※本記事は、株式会社パソナグループの有価証券報告書(第19期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月14日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. パソナグループってどんな会社?


人材派遣・BPO事業を中心とするHR事業と、地域活性化を目指す地方創生事業を多角的に展開しています。

(1) 会社概要


1976年に人材派遣事業を主業務としてテンポラリーセンターの前身が設立されました。1993年に社名をパソナに変更し、2003年に東証一部へ上場しました。その後、2007年の持株会社化によるパソナグループの設立や、各種M&Aを通じてBPOや地方創生等の領域へ事業を拡大し成長を続けています。

現在の連結従業員数は9,028名、単体では795名体制です。大株主については、筆頭株主は創業者の南部靖之氏で、第2位は関連会社である南部エンタープライズ、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
南部靖之 38.93%
南部エンタープライズ 8.79%
日本マスタートラスト信託銀行(信託口) 7.29%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役会長CEOは若本博隆氏、代表取締役社長COOは中尾慎太郎氏が務めています。社外取締役比率は40.0%です。

氏名 役職 主な経歴
若本博隆 代表取締役会長CEO 1984年埼玉銀行入行。1989年テンポラリーセンター入社。パソナ取締役などを経て、2025年8月より現職。
中尾慎太郎 代表取締役社長COO 1998年パソナ入社。同社代表取締役社長や当社常務執行役員などを経て、2025年8月より現職。
深澤旬子 取締役副社長執行役員Pasona Way総本部長兼社会貢献室担当 1981年テンポラリーセンター入社。パソナハートフル代表取締役社長などを経て、2024年8月より現職。
山本絹子 取締役副社長執行役員NATUREVERSE総本部長 1979年マンパワーセンター入社。ニジゲンノモリ代表取締役社長などを経て、2024年8月より現職。
南部真希也 取締役副社長執行役員グローバル戦略総本部長兼国際業務本部長 2008年三菱商事入社。2013年パソナ入社。同社取締役などを経て、2025年8月より現職。
野村和史 取締役(常勤監査等委員) 1977年マンパワーセンター入社。パソナ常務執行役員やエヌエスパーソネルサービス代表取締役会長などを経て、2019年8月より現職。


社外取締役は、舩橋晴雄(元証券取引等監視委員会事務局長)、古川一夫(元日立製作所代表執行役執行役社長)、宮田亮平(元文部科学省文化庁長官)、跡見裕(元杏林大学学長)です。

2. 事業内容


同社グループは、HRソリューション領域などの5つの報告セグメントを中心に事業を展開しています。

(1) BPOソリューション(委託・請負)、エキスパートソリューション(人材派遣)


同社グループの中核であり、総務や経理、人事などの業務受託やコンタクトセンター運営を行うBPOと、各種専門職から事務職までの人材派遣サービスを提供しています。一般企業や官公庁、自治体などが主な顧客です。

収益は、顧客企業や自治体などからの業務委託費や派遣料金として受け取ります。当該事業の運営は、主にパソナやビーウィズなどが担当しており、プロ人材によるコンサルティング事業も展開しています。

(2) キャリアソリューション(人材紹介、再就職支援)


企業の中途採用活動を支援する人材紹介事業と、企業の人事戦略に基づく退職者・退職予定者の転身を支援する再就職支援事業を提供しています。採用を希望する企業や構造改革を進める企業が主な顧客です。

収益は、求職者が入社した際の人材紹介手数料や、再就職支援サービスの提供に対する業務委託費として顧客企業から受け取ります。当該事業の運営は、主にパソナが担当しています。

(3) グローバルソリューション(海外人材サービス)


海外展開を行う企業を対象に、人材紹介、人材派遣、業務請負、給与計算、教育・研修など、フルラインの人材関連サービスをグローバルに提供しています。日系企業や現地法人が主な顧客です。

収益は、人材紹介手数料や派遣料金、BPO業務の受託費として顧客から受け取ります。当該事業の運営は、米国、台湾、インドネシア、タイなどの海外子会社が各地域で担当しています。

(4) ライフソリューション(子育て支援、ライフサポート等)


認可・認証保育所や企業内保育施設、学童保育施設の運営をはじめ、家事代行などのライフサポート事業、デイサービスや訪問介護などの介護事業を提供しています。個人利用者や自治体、一般企業が主な顧客です。

収益は、施設の運営委託費、保育サービスや家事代行、介護サービスの利用料として、自治体、企業、個人からそれぞれ受け取ります。当該事業の運営は、主にパソナフォスターやパソナライフケアが担当しています。

(5) 地方創生・観光ソリューション


地域に新たな産業と雇用を創出するため、地域の特産品を活用した飲食事業やアミューズメント事業、宿泊事業、観光促進や企業誘致に関する事業を提供しています。観光客や地域住民が主な顧客です。

収益は、レストラン等の飲食代、アトラクション等の施設利用料、宿泊料などとして一般の利用者から受け取ります。当該事業の運営は、主にパソナふるさとインキュベーションやニジゲンノモリなどが担当しています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5年間の業績を見ると、売上高は3,000億円から3,700億円の規模で推移しています。経常利益は一時大きく伸びたものの、直近では減益基調にあり、当期はわずかに黒字を確保しました。当期利益は2期連続でマイナスとなっています。

項目 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期 2026年5月期
売上高 3,661億円 3,726億円 3,567億円 3,092億円 3,085億円
経常利益 225億円 154億円 72億円 -5億円 1億円
利益率(%) 6.1% 4.1% 2.0% -0.1% 0.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 86億円 61億円 959億円 -87億円 -34億円

(2) 損益計算書


売上高はほぼ横ばいですが、高付加価値サービスの提供等により売上総利益が増加し、売上総利益率は上昇しました。一方でIT関連費用などの営業費用も増加したため、営業利益は引き続き赤字となっています。

項目 2025年5月期 2026年5月期
売上高 3,092億円 3,085億円
売上総利益 680億円 703億円
売上総利益率(%) 22.0% 22.8%
営業利益 -12億円 -11億円
営業利益率(%) -0.4% -0.4%


販売費及び一般管理費のうち、従業員給与及び賞与等が311億円(構成比44%)、賃借料が59億円(同8%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力のBPO・エキスパートソリューションは堅調に売上を維持しており、利益率も改善しています。地方創生・観光ソリューションは増収となったものの赤字が続いています。ライフソリューションは増収増益で黒字転換しました。

区分 売上(2025年5月期) 売上(2026年5月期) 利益(2025年5月期) 利益(2026年5月期) 利益率
BPO・エキスパートソリューション 2,693億円 2,662億円 98億円 100億円 3.8%
キャリアソリューション 145億円 140億円 50億円 42億円 30.0%
グローバルソリューション 111億円 117億円 4億円 3億円 2.3%
ライフソリューション 81億円 92億円 -0億円 5億円 5.4%
地方創生・観光ソリューション 62億円 74億円 -19億円 -15億円 -20.3%
調整額 -44億円 -49億円 -145億円 -146億円 -
連結(合計) 3,092億円 3,085億円 -12億円 -11億円 -0.4%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社のキャッシュ・フローは、営業活動でプラス、投資活動でマイナス、財務活動でプラスとなっており、営業CFと資金調達によって事業拡大のための投資を行う「積極型」のパターンに該当します。

項目 2025年5月期 2026年5月期
営業CF 43億円 29億円
投資CF -476億円 -273億円
財務CF -151億円 1億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-2.6%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は53.9%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、創業以来「社会の問題点を解決する」という明確な企業理念を掲げています。誰もが自由に好きな仕事を選択でき、働く機会を得られることを目指し、人々の心豊かな生活を創造する「ライフプロデュース」の実現を社会的な使命としています。

(2) 企業文化


同社は、経営トップから従業員まで全役職員が「Pasona Way」を行動指針として共有しています。時代とともに変化する社会問題に果敢に挑み、社会的良識をもって健全な企業活動を展開することを重視しており、ダイバーシティを推進する文化が根付いています。

(3) 経営計画・目標


2026年5月期から2030年5月期を対象期間とする5ヵ年の中期VISION「PASONA GROUP VISION 2030」を策定し、持続的な企業成長と企業価値の向上を目指しています。

* 売上高4,000億円
* 経常利益率5%
* ROE8%以上
* PBR1倍超

(4) 成長戦略と重点施策


これまでの事業ノウハウを礎に、人々の健康や社会のWell-beingを実現する「NATUREVERSE(ネイチャーバース)」の構築を成長戦略として掲げています。専門領域でのBPO事業の拡大や新たなWell-being産業の創造により、収益構造の改革と事業成長を推進します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は「自分の未来は自分で創る」という人材育成方針のもと、従業員の自律的なキャリア構築を支援しています。重点戦略として「未来をともに創る人財の発掘」「新たな価値を生み出す人財の育成」「多様な人財が活躍できる環境づくり」を掲げ、能力発揮を後押しする制度を整備しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年5月期 35.9歳 9.2年 6,497,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 57.4%
男性育児休業取得率 72.7%
男女賃金差異(全労働者) 83.6%
男女賃金差異(正規雇用) 84.4%
男女賃金差異(非正規雇用) 72.9%

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 個人情報及び機密情報の管理


同社グループは、派遣スタッフや求職者、顧客企業等の個人情報や機密情報を大量に保有しています。不測の事態により情報漏洩が発生した場合、損害賠償請求や社会的信用の失墜を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) システム障害及びサイバー攻撃


事業運営はコンピュータシステムや通信ネットワークに大きく依存しており、サイバー攻撃や自然災害等でシステムが停止した場合、サービスの提供が滞り、同社グループに対する信頼性が低下するリスクがあります。

(3) 事業投資及び企業買収


新たな成長戦略に伴う事業投資やM&Aを行う中で、市場環境の変化や買収先企業の業績が計画通りに進捗しない場合、固定資産やのれんの減損損失が発生し、財政状態や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(4) 地方創生・観光ソリューションにおける施設運営


地方創生事業では大規模な商業施設を運営していますが、天候や災害による集客減、人材確保の遅れ、関連法令の変更などにより収益が計画を下回った場合、減損損失や追加投資の負担が生じるリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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