クスリのアオキホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

クスリのアオキホールディングス 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

同社は東証プライム市場に上場し、北信越地方を地盤にドラッグストア及び調剤薬局チェーンを展開する企業です。M&Aを積極的に活用し、生鮮食品の取り扱い強化や調剤併設店の拡大を推進しています。直近の業績は売上高5015億円、経常利益275億円で、大幅な増収増益を達成しました。


※本記事は、株式会社クスリのアオキホールディングス の有価証券報告書(第27期、自 2024年5月21日 至 2025年5月20日、2025年8月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. クスリのアオキホールディングスってどんな会社?


北信越を中心に全国へ展開するドラッグストアチェーンです。食品スーパーのM&Aにより生鮮食品を強化しています。

(1) 会社概要


1869年に薬種商として創業し、1985年にクスリのアオキを設立しました。2006年の東証二部上場を経て、2011年に東証一部へ指定替えとなりました。2016年に持株会社体制へ移行し、現社名となりました。その後はナルックス、フクヤなどのスーパーマーケットを相次いで子会社化し、2025年にはグループ店舗数が1,000店を突破しています。

連結従業員数は5,627名、単体従業員数は59名です。筆頭株主は事業会社であるイオンで、第2位および第3位は創業家一族の資産管理会社です。

氏名 持株比率
イオン 9.34%
青木二階堂 6.41%
臨川書屋 6.41%

(2) 経営陣


同社の役員は男性11名、女性3名、計14名で構成され、女性役員比率は21.4%です。代表取締役社長は青木宏憲氏で、社外取締役比率は42.9%です。

氏名 役職 主な経歴
青木 宏憲 代表取締役社長 1996年大塚製薬入社。2003年クスリのアオキ入社。営業本部長などを経て、2014年同社代表取締役社長。2016年クスリのアオキホールディングス代表取締役社長より現職。
青木 孝憲 取締役副社長 1997年東京エレクトロン入社。大塚製薬を経て2008年クスリのアオキ入社。開発本部長などを歴任し、2021年同社取締役副社長より現職。
青木 保外志 取締役最高顧問 1976年青木二階堂薬局設立監査役。1985年クスリのアオキ設立時代表取締役専務。社長を経て2014年より取締役最高顧問。2016年より現職。
飯嶋 仁 常務取締役営業・経営戦略担当 2003年クスリのアオキ入社。店舗運営本部長兼調剤事業部長などを経て2024年常務取締役営業・経営戦略担当より現職。
八幡 亮一 取締役管理部門担当 1989年ワールド入社。2004年クスリのアオキ入社。管理本部長、財務企画・IR室長などを歴任し、2023年取締役管理部門担当より現職。


社外取締役は、岡田元也(イオン取締役兼代表執行役会長)、柳田直樹(柳田国際法律事務所パートナー弁護士)、井上佳子(テレフレックスメディカルジャパン代表取締役副社長)、藤井大温(タイオンホールディングス代表取締役社長)、竹内俊昭(元花王代表取締役専務執行役員)、木下玲子(アドミラルキャピタル代表取締役)です。

2. 事業内容


同社グループは、医薬品・化粧品・日用雑貨・食品、調剤薬局等の「近隣型小売業」を展開しています。

事業内容は単一セグメントですが、取り扱い商品は「ヘルス」「ビューティ」「ライフ」「フード」「調剤」に分類されています。ドラッグストアに調剤薬局を併設した「かかりつけ薬局」としての機能に加え、生鮮食品を含む食品スーパーの機能を融合させた店舗展開が特徴です。売場面積は150坪から500坪の範囲で、出店地域の環境に応じて展開しています。

主な収益源は一般消費者への商品販売および調剤報酬です。運営は持株会社である同社のほか、中核子会社のクスリのアオキ、およびM&Aによりグループ入りしたナルックス、フクヤ、ハッピーテラダなどの事業会社が各エリアで店舗運営を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高・利益ともに拡大傾向にあります。特に直近の2025年5月期は、M&Aによる店舗網の拡大や食品部門の強化が寄与し、売上高が5,000億円を突破しました。経常利益も過去最高水準に達しており、利益率も改善傾向にあります。

項目 2021年5月期 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期
売上高 3,059億円 3,283億円 3,789億円 4,369億円 5,015億円
経常利益 173億円 158億円 191億円 201億円 275億円
利益率(%) 5.7% 4.8% 5.0% 4.6% 5.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 18億円 18億円 4億円 -55億円 209億円

(2) 損益計算書


売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益、営業利益ともに伸長しています。営業利益率は前年の4.3%から5.3%へと1.0ポイント改善しており、増収効果が利益面にも波及していることが読み取れます。

項目 2024年5月期 2025年5月期
売上高 4,369億円 5,015億円
売上総利益 1,181億円 1,330億円
売上総利益率(%) 27.0% 26.5%
営業利益 186億円 266億円
営業利益率(%) 4.3% 5.3%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が346億円(構成比32%)、地代家賃が154億円(同15%)、減価償却費が125億円(同12%)を占めています。店舗網の拡大に伴い、人件費や店舗関連費用が主要なコスト要因となっています。

(3) セグメント収益


同社は「近隣型小売業」の単一セグメントですが、積極的な出店とM&Aにより全社売上高は前期比で大幅に増加しました。特にフード部門の売上が全体の約半数を占めるまでに成長しています。

区分 売上(2024年5月期) 売上(2025年5月期)
近隣型小売業(全社) 4,369億円 5,015億円
連結(合計) 4,369億円 5,015億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標

同社は、新規出店等による積極的な設備投資を進めつつ、財務活動を通じて資金調達を行っています。

営業活動では、利益を生み出す一方で、売上債権や棚卸資産の増加が資金流出の要因となりました。投資活動では、主に新規出店に伴う有形固定資産の取得に多額の資金を使用しました。財務活動では、株式発行や借入により資金を得ましたが、借入金の返済や自己株式の取得も行われました。

項目 2024年5月期 2025年5月期
営業CF 269億円 222億円
投資CF -211億円 -311億円
財務CF 3億円 77億円

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「健康と美と衛生を通じて社会から期待される企業作りを目指すこと」を経営理念として掲げています。この理念に基づき、医薬品や化粧品を核としながら、日用雑貨や食品などの生活必需品を加えた利便性の高いドラッグストア事業を展開し、地域社会への貢献を目指しています。

(2) 企業文化


地域のお客様の美や健康づくりのために、他社が真似できないスキルやノウハウを持ったサービスを日常的に提供することを重視しています。多様化する消費者の要望に的確に応えることで支持向上を目指し、お客様視点に立った店舗開発や売り場づくりを積極的に推進する文化があります。

(3) 経営計画・目標


前中期経営計画「Vision2026」において掲げていた売上高5,000億円の目標を2025年5月期に達成しました。今後は売上高および利益の確保を念頭に、持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指し、2027年5月期を初年度とする新たな中期経営計画の策定を進める方針です。

(4) 成長戦略と重点施策


北信越地区のドミナント深耕に加え、東北、関東、東海、関西、四国などの新規エリアへの進出によるドミナントエリアの拡大を推進しています。また、ドラッグストアへの調剤薬局併設を進め、地域の「かかりつけ薬局」としての機能を強化するほか、M&Aを活用した事業規模の拡大や、店舗運営の生産性向上に向けたシステム整備に取り組んでいます。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


地域に密着した「かかりつけ薬局」を目指し、薬剤師の確保と登録販売者の養成を重要課題と位置づけています。薬学部生へのリクルート活動や中途採用を積極的に行うほか、eラーニングや社内研修などの教育体系を構築しています。また、多様な人材の登用を推進し、従業員が能力を発揮できる職場環境の整備に努めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年5月期 35.4歳 8.3年 5,260,477円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.8%
男性育児休業取得率 59.0%
男女賃金差異(全労働者) 66.7%
男女賃金差異(正規) 80.9%
男女賃金差異(非正規) 97.9%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、指導監督的立場にある女性管理者比率(25.1%)、GHG排出量Scope1(11,436t-CO2)、GHG排出量Scope2(139,000t-CO2)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 法的規制及び制度変更に関するリスク


医薬品医療機器等法や食品衛生法などの許認可事業であるため、法令違反による許可取り消し等のリスクがあります。また、薬価基準の改定による薬価引き下げや、調剤報酬点数の引き下げが行われた場合、薬剤収入や技術料収入が減少し、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) 有資格者の確保に関するリスク


店舗展開において薬剤師や登録販売者の配置が義務付けられており、これらの人材確保が重要な課題です。採用競争の激化などにより十分な人材を確保できない場合、新規出店計画の遅延や店舗運営に支障をきたし、成長戦略に影響を与える可能性があります。

(3) 事業展開及び競争環境に関するリスク


新規エリアへの出店において、物件確保の難航や競合他社との競争によりドミナント形成が遅れる可能性があります。また、M&Aや異業種参入による競争激化、個人情報の漏洩、調剤過誤、食品衛生問題、大規模災害の発生なども業績に影響を与える要因として認識されています。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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