※本記事は、株式会社クスリのアオキホールディングスの有価証券報告書(第28期、自 2025年5月21日 至 2026年5月20日、2026年8月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. クスリのアオキホールディングスってどんな会社?
同社グループは、北信越地方を中心にドラッグストア、調剤薬局、スーパーマーケットを多店舗展開しています。
■(1) 会社概要
同社は1985年に設立され、1986年に石川県へ第1号店を出店しました。2006年に東京証券取引所市場第二部へ上場し、2011年に市場第一部銘柄へ指定されています。2016年に持株会社体制へ移行し、同社が完全親会社として上場しました。近年はスーパーマーケット事業のM&Aを積極的に推進しています。
現在の従業員数は連結で6,355名、単体で63名です。筆頭株主は香港の投資ファンドであるOASIS FUNDAMENTAL VALUE Ⅱ (HONG KONG) LIMITEDで、第2位は事業会社のイオン、第3位は資産管理会社の青木二階堂です。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| OASIS FUNDAMENTAL VALUE Ⅱ (HONG KONG) LIMITED(常任代理人 シティバンク、エヌ・エイ東京支社) | 14.08% |
| イオン | 10.23% |
| 青木二階堂 | 6.82% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性2名の計14名で構成され、女性役員比率は14.3%です。代表取締役社長は青木宏憲氏が務めています。社外取締役は6名在籍しています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 青木宏憲 | 代表取締役社長 | 大塚製薬を経て2003年にクスリのアオキ入社。営業本部長等を経て2014年より同社代表取締役社長。2016年よりクスリのアオキホールディングス代表取締役社長より現職。 |
| 飯嶋仁 | 常務取締役営業・経営戦略担当 | 2003年入社。調剤運営部長、店舗運営本部長等を歴任し、2020年取締役就任。2024年より常務取締役営業・経営戦略担当。クスリのアオキ常務取締役を兼任より現職。 |
| 青木保外志 | 取締役最高顧問 | 1976年に青木二階堂薬局を設立し監査役。1985年にクスリのアオキを設立し代表取締役専務。社長を経て2014年より同社最高顧問。2016年よりクスリのアオキホールディングス取締役最高顧問より現職。 |
| 八幡亮一 | 取締役管理部門担当 | ワールドを経て2004年にクスリのアオキ入社。管理本部長や財務企画・IR室長等を歴任し、2014年取締役。2023年よりクスリのアオキホールディングス取締役管理部門担当より現職。 |
| 榎戸要介 | 取締役 | 2004年にクスリのアオキ入社。クスリのアオキホールディングス内部統制推進室長、経営戦略室長を経て2025年に経営企画本部長。2026年より取締役兼経営企画本部長より現職。 |
社外取締役は、井上佳子(テレフレックスメディカルジャパン代表取締役副社長)、藤井大温(タイオン365代表取締役)、竹内俊昭(元花王代表取締役専務執行役員)、吉田剛(元北陸銀行取締役専務執行役員)、小澤実(バリュークリエイトパートナーズ代表取締役社長)、森岡真一(兼六法律事務所弁護士)です。
2. 事業内容
同社グループは、医薬品や化粧品などの小売業という単一セグメントで事業を展開しています。
■(1) ドラッグストア事業およびスーパーマーケット事業
同社グループは、医薬品や化粧品を核としながら、日用雑貨や食品などの生活必需品を揃えた近隣型ドラッグストアを展開しています。近年は生鮮食品を取り扱うフード部門を強化し、食品スーパーを子会社化することでスーパーマーケット事業も手掛けており、地域の顧客にワンストップショッピングの場を提供しています。
収益源は、一般消費者への医薬品、化粧品、日用品、食品の販売による代金です。同社がグループ全体の経営管理を行い、子会社のクスリのアオキが主力として店舗を運営しているほか、ナルックスやミワ商店、スポットなどが食品スーパーマーケットを運営しています。
■(2) 調剤薬局事業
セルフメディケーションと医薬分業の受け皿として、地域に密着した「かかりつけ薬局」を目指した調剤薬局を展開しています。調剤薬局はドラッグストアへの併設を基本とし、処方箋に基づく医療用医薬品の提供や、顧客の健康管理・服薬指導などの専門的な医療サービスを提供しています。
収益源は、健康保険法等に基づく調剤報酬および患者からの自己負担金です。本事業も主にクスリのアオキが運営を担い、調剤併設型ドラッグストアや調剤専門薬局、スーパーマーケット併設薬局等を通じて地域医療を支える体制を構築しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績推移を見ると、積極的な新規出店やM&Aを背景に売上高は一貫して右肩上がりで成長を続けています。経常利益も増収に伴い増加傾向にあり、安定した収益力を維持しています。当期利益は一時的な損失計上により落ち込む期があったものの、直近2期間では大幅な改善を見せ、力強い回復と成長を示しています。
| 項目 | 2022年5月期 | 2023年5月期 | 2024年5月期 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 3283億円 | 3789億円 | 4369億円 | 5015億円 | 5669億円 |
| 経常利益 | 158億円 | 191億円 | 201億円 | 275億円 | 277億円 |
| 利益率(%) | 4.8% | 5.0% | 4.6% | 5.5% | 4.9% |
| 当期利益 | 18億円 | 4億円 | -55億円 | 209億円 | 312億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の増加に伴い売上総利益も順調に拡大しており、売上総利益率も安定して推移しています。これは適切な価格設定や仕入管理が継続されていることを示しています。一方、営業利益率がわずかに低下しているのは、事業規模の急拡大や新規出店に伴う人件費、設備関連費用の増加が影響していると考えられます。
| 項目 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 5015億円 | 5669億円 |
| 売上総利益 | 1330億円 | 1495億円 |
| 売上総利益率(%) | 26.5% | 26.4% |
| 営業利益 | 266億円 | 271億円 |
| 営業利益率(%) | 5.3% | 4.8% |
販売費及び一般管理費のうち、報酬及び給料手当が413億円(構成比34%)、地代家賃が173億円(同14%)、減価償却費が145億円(同12%)を占めています。多店舗展開を支える人員確保や店舗設備への継続的な投資がコストの大部分を占める構造となっています。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業からの安定した収入を元手に、借入も活用しながら積極的な投資(店舗開発やM&A等)を行っている「積極型」のキャッシュ・フロー状況です。
| 項目 | 2025年5月期 | 2026年5月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 222億円 | 373億円 |
| 投資CF | -311億円 | -429億円 |
| 財務CF | 77億円 | 165億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は11.9%で市場平均を上回っており、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率も34.3%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「クスリのアオキは、健康と美と衛生を通じて、社会から期待される企業作りを目指します。」という理念を経営基本方針の根幹に掲げています。消費者にセルフメディケーションが求められる社会環境のなかで、地域顧客の美と健康づくりを支える日常的なサービスの提供を使命としています。
■(2) 企業文化
同社は、お客様の視点に立った店舗開発や売場づくりを徹底する文化を大切にしています。他社が真似のできないスキルやノウハウを持ったサービスを日常的に提供し、多様化する消費者の要望や欲求に的確に応えることを重視しています。この顧客第一主義の姿勢により、地域社会からの継続的な支持向上を目指しています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、2035年の設立50周年に向けた長期経営構想「50周年ビジョン」と、その実現に向けた次なる成長ステージとして「第4次中期経営計画(2026年5月期~2030年5月期)」を策定し、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指しています。
* 売上高1兆円、小売業上位20社ランクイン
* 売上高8,000億円
* 営業利益440億円
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は、既存の北信越地区でのドミナント深耕と、新規エリア(東北・関東・東海・関西・四国等)への積極的な出店によるエリア拡大を推進します。また、M&Aを活用した事業規模の拡大と組織体制の整備を進めるとともに、ドラッグストアへの調剤薬局併設を強化し、地域に密着した「かかりつけ薬局」の実現を目指します。店舗オペレーションの生産性向上や、薬剤師・登録販売者の確保と育成にも注力する方針です。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、「従業員にとって働きがいがあり、従業員とともに成長できる企業を目指す」という方針のもと、従業員を資本と捉え積極的な人材投資を行っています。各階層や職種に応じた充実した研修制度を通じて専門スキルの習得とキャリア形成を支援するとともに、多様な人材が心身ともに健康で安心して能力を発揮できる労働環境の整備を推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年5月期 | 35.6歳 | 9.6年 | 5,362,541円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 8.0% |
| 男性育児休業取得率 | 83.3% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 70.0% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 81.3% |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | 98.6% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 医薬品や調剤報酬等の法的規制
同社グループは医薬品や食品等を販売する上で様々な法的規制を受けており、薬価基準の引き下げや調剤報酬の改定が行われた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。また、販売規制の緩和により他業種の参入が進み競争が激化した際にも、事業展開にマイナスの影響が生じるリスクがあります。
■(2) 薬剤師・登録販売者の確保
調剤薬局を併設した「かかりつけ薬局」の展開を推進する同社にとって、薬剤師や登録販売者の確保は極めて重要です。法令に基づく有資格者の配置義務を満たすため、積極的な採用や社内育成に取り組んでいますが、必要な人材を十分に確保できない場合、新規出店や店舗運営に支障をきたす可能性があります。
■(3) 店舗開発とドミナント形成の遅延
新規エリアへの出店において、物件確保の状況や同業他社との競争激化により、計画通りの出店ができないリスクがあります。特に新たな商圏では、一定の店舗密度に達するまでドミナント戦略による広告宣伝費等のコスト抑制効果が得られないため、ドミナント形成に時間を要した場合、収益性を圧迫する懸念があります。



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