メディカルネット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

メディカルネット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

メディカルネットは東京証券取引所グロース市場に上場し、歯科医療業界向けのメディア・プラットフォーム事業や医療機関経営支援事業を展開する企業です。直近の業績では、既存事業の効率化や歯科器材販売等の拡大により、前期の赤字から黒字転換を果たし、持続的な増収増益のトレンドを生み出しています。


※本記事は、メディカルネットの有価証券報告書(第25期、自 2025年6月1日 至 2026年5月31日、2026年8月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. メディカルネットってどんな会社?


歯科分野に特化したポータルサイト運営やマーケティング支援を通じ、歯科医療プラットフォームを展開する企業です。

(1) 会社概要


同社は2001年に日本メディカルネットコミュニケーションズとして設立され、メディア・プラットフォーム事業やHP制作事業を開始しました。2010年には東京証券取引所マザーズ市場(現グロース市場)へ上場を果たしています。2016年に現在のメディカルネットに商号変更し、近年はタイでの歯科医院運営や国内外での積極的なM&Aによる事業拡大を推進しています。

同社グループの従業員数は連結で290名、単体で135名体制です。大株主の構成を見ると、筆頭株主は創業者で代表取締役会長CEOを務める平川大氏です。第2位は創業メンバーで代表取締役社長COOの平川裕司氏、第3位は同じく創業メンバーで取締役の早川竜介氏となっており、経営陣が上位を占めています。

氏名 持株比率
平川大 9.58%
平川裕司 8.47%
早川竜介 6.43%

(2) 経営陣


同社の役員は男性7名、女性2名の計9名で構成され、女性役員比率は22.0%です。代表取締役会長CEOに平川大氏、代表取締役社長COOに平川裕司氏が就任しています。社外取締役比率は40%(取締役5名中2名)です。

氏名 役職 主な経歴
平川大 代表取締役会長CEOビジネスディベロップメント本部担当 ジュピターテレコムや日本ヒューレット・パッカード等を経て、2005年に同社へ入社。2012年に代表取締役社長、2016年より現職。
平川裕司 代表取締役社長COO管理本部担当 1992年に大都サービスへ入社後、2001年に同社設立に参画し取締役に就任。2016年より現職。
早川竜介 取締役コンテンツ事業部、エンジニアリング本部担当 1999年にリュウ・メディカルセンター・グループを設立。2006年に同社取締役に就任し、2022年より現職。


社外取締役は、加藤浩晃(アイリス取締役副社長)、菅原草子(弁護士・エスディーテック監査役)です。

2. 事業内容


同社グループは、「メディア・プラットフォーム事業」「医療機関経営支援事業」「医療BtoB事業」「クラウドインテグレーション事業」および「その他」事業を展開しています。

メディア・プラットフォーム事業

「インプラントネット」など、生活者が自費の歯科治療を行う歯科医院を探すためのポータルサイトやキュレーションサイトを運営しています。歯科情報やヘルスケア情報の提供を通じ、口腔まわりから健康な社会の実現を目指しています。
収益は主に、インターネットサイトへの広告掲載を希望する歯科医院などからの期間保証型の広告掲載料から得ています。運営は主にメディカルネットが行っています。

医療機関経営支援事業

歯科医院やエステサロン等を対象に、SEOやリスティング広告の運用代行などのWebマーケティング、HP制作、歯科医院の開業・経営支援、さらにはタイでの歯科医院運営や国内外での歯科器材販売等を行っています。
収益は、顧客からのマーケティング支援に対する定額料金や成果報酬、歯科医院での診療報酬、歯科器材や医薬品等の販売代金から得ています。メディカルネットやオカムラ等の複数社が運営しています。

医療BtoB事業

歯科医療従事者のための総合情報サイト「Dentwave」の運営を中心に、歯科関連企業向けのリサーチやオンラインイベント、コンベンションの運営受託、マーケティングのコンサルティングなど、多様なサービスを提供しています。
収益は、歯科関連企業からの広告掲載料、ソリューション提供に伴う定額利用料、調査料、コンベンション受託料などから得ています。運営は主にメディカルネットが行っています。

クラウドインテグレーション事業

タイ国内において、小売業、製造業、病院向けにPOSシステムの開発、導入、メンテナンスサービスを行っています。タイ国内の歯科クリニックのIT化促進や歯科プラットフォームの構築を目指しています。
収益は、システム開発に伴うライセンス販売の純額代金、および契約に基づくメンテナンス等の定額サービス利用料から得ています。運営はタイの現地子会社であるAVision Co., Ltd.が行っています。

その他

経理や人事総務等の管理業務を受託する管理業務受託事業を展開しています。
収益は、受託した管理業務に伴うサービス提供の対価として得ています。運営は主にメディカルネットが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は37億円から67億円へと持続的な増収傾向にあります。利益面では先行投資や一時的な要因により赤字を計上した期もありましたが、直近の期では既存事業の拡大や経営効率化の効果により、経常利益が3億円、当期利益が1億円となり、大幅な黒字転換と増益を果たしています。

項目 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期 2026年5月期
売上高 37億円 45億円 53億円 61億円 67億円
経常利益 4億円 4億円 3億円 1億円 3億円
利益率(%) 12.0% 9.6% 6.1% 2.2% 4.0%
当期利益(親会社所有者帰属) 2億円 2億円 0.8億円 -0.7億円 0.8億円

(2) 損益計算書


売上高は前期の61億円から当期は67億円へと増加し、売上総利益も20億円を維持しています。これに伴い、営業利益は1億円から2億円へと倍増し、営業利益率も1.6%から2.8%へと着実な収益性の改善が見られます。

項目 2025年5月期 2026年5月期
売上高 61億円 67億円
売上総利益 20億円 20億円
売上総利益率(%) 32.3% 29.7%
営業利益 1億円 2億円
営業利益率(%) 1.6% 2.8%


販売費及び一般管理費(18億円)のうち、給料手当が7億円(構成比38%)、役員報酬が2億円(同11%)、支払手数料が2億円(同9%)を占めています。

(3) セグメント収益


主力の医療機関経営支援事業が売上高52億円を稼ぎ出し、全体の成長を力強く牽引しています。メディア・プラットフォーム事業は売上高10億円と堅調に推移し、医療BtoB事業やタイでのクラウドインテグレーション事業もそれぞれ売上を伸ばしています。

区分 売上(2025年5月期) 売上(2026年5月期)
メディア・プラットフォーム事業 11億円 10億円
医療機関経営支援事業 44億円 52億円
医療BtoB事業 2億円 2億円
クラウドインテグレーション事業 4億円 4億円
未病・予防プラットフォーム事業 0.4億円 -
その他 0.0億円 0.0億円
連結(合計) 61億円 67億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


営業CF、投資CF、財務CFがすべてプラスとなっており、営業利益と資金調達を組み合わせながら事業転換や新たな投資に向けた資金を確保する局面(再建・転換型)にあります。

項目 2025年5月期 2026年5月期
営業CF -0.8億円 1.0億円
投資CF -2.6億円 0.9億円
財務CF 2.2億円 2.9億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.4%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は43.6%で市場平均をやや上回る水準となっています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


「インターネットを活用し 健康と生活の質を向上させることにより 笑顔を増やします。」を経営理念に掲げています。口腔まわりから健康な社会をつくり、人々が健康で豊かな人生を歩めるよう、生活者や事業者向けに革新的なサービスを提供し続け、国内外でトップ企業を目指しています。

(2) 企業文化


同社は、より良い歯科医療環境の実現を目指し、インターネットを活用したサービスの提供にとどまらず、歯科医療を取り巻くあらゆる需要に対して課題解決を行う姿勢を重視しています。人々の健康寿命を延ばし、日本のみならず世界中の人々の笑顔を増やしていくことを自らの使命と位置づけています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは、企業の持続的な成長性を重視しており、「売上高の対前期増加率」を最も重要な経営指標として設定しています。事業領域の拡張や新たな事業の創出を通じた多角的な収益確保により、トップラインの持続的な伸長を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


主力である歯科医療プラットフォームにおいて、事業領域の拡張やサービス向上により経営基盤を安定化させ、クラウドインテグレーション事業とのシナジー創出や新たな事業展開に注力します。また、成長戦略としてM&Aを推進し、歯科分野での顧客網を活用した他分野への展開や、タイを中心とした海外での先進歯科医療の普及を図ります。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


事業拡大に伴い、優秀な人材の確保と社員の能力向上が不可欠と考えています。即戦力となる中途採用に加え、将来を担う人材の確保や組織の活性化を目的とした新卒採用を推進しています。また、外国籍人材やジェンダー平等に配慮した採用活動を行い、多様な人材が活躍できる職場環境の整備を進めています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2026年5月期 37.0歳 5.5年 5,317,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は法令に基づく公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社はサステナビリティのセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(47.4%)、女性管理職比率(30.5%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) インターネット広告市場の動向

同社は歯科医療業界を中心に事業を展開しているため、景況感の変化や新たなイノベーションの創出によりインターネット広告市場が縮小したり、歯科医院等の広告意欲が減退した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 外部検索エンジンの影響

同社のポータルサイトへの集客は、主にYahoo!やGoogleの検索エンジンを経由しています。検索エンジンの上位表示方針の変更や、AIによる概要表示の普及により各サイトへの流入が減少し、集客効果が低下するリスクがあります。

(3) 企業買収(M&A)に伴うリスク

M&Aを成長のための有効な手段として推進していますが、多額の資金需要が発生する可能性があるほか、買収後の事業環境の急変などにより当初期待した投資効果が得られない場合や、のれんの減損損失が発生するリスクがあります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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