メディカルネット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

メディカルネット 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証グロース上場のメディカルネットは、歯科医療分野に特化したメディア運営や経営支援を行う企業です。当連結会計年度の業績は、M&Aや海外事業の拡大により売上高が前期比15.7%増の61億円と伸長しましたが、先行投資や一部事業の減損損失等が響き、親会社株主に帰属する当期純損失68百万円の最終赤字となりました。


※本記事は、株式会社メディカルネット の有価証券報告書(第24期、自 2024年6月1日 至 2025年5月31日、2025年8月27日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. メディカルネットってどんな会社?


歯科医療分野に特化したポータルサイト運営を主軸に、Webマーケティング支援や歯科医院経営支援などを展開する企業です。

(1) 会社概要


2001年6月に設立され、歯科治療に関するポータルサイト運営やHP制作事業を開始しました。2010年12月に東証マザーズ(現グロース市場)へ上場を果たしています。2016年12月には現在の社名である「メディカルネット」へ商号を変更しました。近年は事業領域の拡大を進めており、2018年12月にオカムラを連結子会社化して歯科商社事業へ参入したほか、2024年3月にはAVision Co., Ltd.を連結子会社化し、クラウドインテグレーション事業を開始しています。

同社グループは連結従業員数296名、単体従業員数134名の体制で運営されています。大株主の構成は、筆頭株主が代表取締役会長CEOの平川大氏、第2位が代表取締役社長COOの平川裕司氏、第3位が取締役の早川竜介氏となっており、創業メンバーおよび経営陣が主要株主として名を連ねています。

氏名 持株比率
平川 大 10.15%
平川 裕司 8.97%
早川 竜介 6.81%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性2名の計10名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役会長CEOは平川大氏、代表取締役社長COOは平川裕司氏が務めています。なお、社外取締役比率は20.0%です。

氏名 役職 主な経歴
平川 大 代表取締役会長CEOビジネスディベロップメント本部担当 日本ヒューレット・パッカード等を経て2005年同社入社。2012年社長就任後、2016年より現職。
平川 裕司 代表取締役社長COO管理本部担当 大都小揚(現大都サービス)を経て2001年同社設立時に取締役就任。2016年より現職。
早川 竜介 取締役コンテンツ事業部、エンジニアリング本部担当 1999年リュウ・メディカルセンター・グループ設立。2006年同社取締役就任、2022年より現職。
石井 貴久 取締役メディカルプラットフォーム事業部担当 アイジーエス代表取締役、ガイドデント代表取締役を経て、2016年同社取締役就任。2017年より現職。


社外取締役は、加藤浩晃(アイリス取締役副社長・医師)、菅原草子(BACeLL法律会計事務所パートナー弁護士)です。

2. 事業内容


同社グループは、「メディア・プラットフォーム事業」、「医療機関経営支援事業」、「医療BtoB事業」、「クラウドインテグレーション事業」、「未病・予防プラットフォーム事業」および「その他」事業を展開しています。

メディア・プラットフォーム事業

生活者に有益な歯科情報やヘルスケア情報を提供するため、「インプラントネット」「矯正歯科ネット」などの歯科治療特化型ポータルサイトを運営しています。生活者が歯科医院を検索・比較できるサービスを提供し、歯科医療情報の非対称性解消を目指しています。

主な収益源は、ポータルサイトへの広告掲載料であり、期間保証型の広告サービスを提供して歯科医院等の顧客から料金を受け取っています。運営は主にメディカルネットが行っています。

医療機関経営支援事業

歯科医院等の経営を支援するため、Webマーケティング(SEO・リスティング広告運用代行)、HP制作・メンテナンス、歯科商社事業(器材・薬品販売)、海外での歯科医院運営、不動産販売などを展開しています。

WebマーケティングやHP制作ではサービス提供の対価を、歯科商社事業や不動産販売では商品・物件の販売代金を顧客から受け取っています。また、歯科医院運営では患者からの診療報酬が収益となります。運営はメディカルネット、オカムラ、Medical Net Thailand Co., Ltd.などが行っています。

医療BtoB事業

歯科医療従事者向けの総合情報サイト「Dentwave」を運営し、会員基盤を活用した広告ソリューションやリサーチ、オンラインイベント運営などを提供しています。製薬会社や歯科関連企業が主な顧客です。

収益は、サイトへの広告掲載料、マーケティングソリューション提供料、リサーチ調査料、コンベンション運営受託料などから構成されています。運営は主にメディカルネットが行っています。

クラウドインテグレーション事業

タイ国内において、小売業、製造業、病院向けにPOSシステムの開発・導入・メンテナンスサービスを提供しています。

収益源は、システム開発(カスタマイズ)費用、ライセンス販売の手数料、導入後のメンテナンスサービス料などです。運営はAVision Co., Ltd.が行っています。

未病・予防プラットフォーム事業

生活者や医療機関に対して、受託臨床検査サービスなどを提供しています。

検査結果の報告に基づく検査料などが収益源となります。当連結会計年度においては、主にミルテルが運営を行っていましたが、同社株式は2025年3月に譲渡されています。

その他

上記セグメントに含まれない事業として、経理・人事総務等の管理業務受託事業などを行っています。

管理業務の受託料などが収益源となります。運営は主にメディカルネットが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績を見ると、売上高は一貫して増加傾向にあり、事業規模の拡大が続いています。一方、利益面では、2023年5月期までは安定して黒字を計上していましたが、直近2期間においては利益率が低下傾向にあり、当期は最終赤字に転じています。積極的な投資や事業拡大に伴うコスト増が利益を圧迫している状況がうかがえます。

項目 2021年5月期 2022年5月期 2023年5月期 2024年5月期 2025年5月期
売上高 29億円 37億円 45億円 53億円 61億円
経常利益 3.4億円 4.5億円 4.3億円 3.2億円 1.3億円
利益率(%) 11.6% 12.0% 9.6% 6.1% 2.2%
当期利益(親会社所有者帰属) 1.3億円 3.8億円 1.2億円 0.1億円 -0.7億円

(2) 損益計算書


直近2期間の損益構成を比較すると、売上高は増加しているものの、売上原価および販売費及び一般管理費の増加率が売上高の伸びを上回っています。これにより、売上総利益率はやや低下し、営業利益率は大幅に低下しました。事業拡大に伴う投資やコスト負担が先行している構造が見て取れます。

項目 2024年5月期 2025年5月期
売上高 53億円 61億円
売上総利益 18億円 20億円
売上総利益率(%) 35.1% 32.3%
営業利益 3.0億円 1.0億円
営業利益率(%) 5.7% 1.6%


販売費及び一般管理費のうち、給料手当が7億円(構成比35%)、役員報酬が2億円(同10%)を占めています。売上原価は売上高の67.7%を占めています。

(3) セグメント収益


当期のセグメント別業績を見ると、主力の医療機関経営支援事業が増収を牽引しましたが、メディア・プラットフォーム事業は減収減益となりました。新規のクラウドインテグレーション事業は大幅な増収で黒字化に寄与しています。一方、未病・予防プラットフォーム事業は赤字幅が拡大しました。

区分 売上(2024年5月期) 売上(2025年5月期) 利益(2024年5月期) 利益(2025年5月期) 利益率
メディア・プラットフォーム事業 11億円 11億円 6億円 5億円 50.0%
医療機関経営支援事業 39億円 44億円 2億円 2億円 4.3%
医療BtoB事業 2億円 2億円 0.2億円 -0.1億円 -8.8%
クラウドインテグレーション事業 0.5億円 4億円 -0.1億円 0.3億円 9.1%
未病・予防プラットフォーム事業 0.3億円 0.4億円 -0.7億円 -2億円 -376.5%
その他 0.0億円 0.0億円 0.0億円 0.0億円 100.0%
調整額 -0.0億円 -0.0億円 -5億円 -5億円 -
連結(合計) 53億円 61億円 3億円 1億円 1.6%

(4) キャッシュ・フローと財務指標

項目 2024年5月期 2025年5月期
営業CF 1.2億円 -0.8億円
投資CF -2.9億円 -2.6億円
財務CF 1.4億円 2.2億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は-3.8%で市場平均を下回り、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は42.1%で市場平均(グロース市場非製造業平均43.3%)をわずかに下回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「インターネットを活用し 健康と生活の質を向上させることにより 笑顔を増やします。」を経営理念として掲げています。口腔ケアから全身の未病・予防に資するサービスを提供し、歯科医療プラットフォームビジネス等において国内外のトップ企業を目指すとともに、人々の健康寿命延伸に貢献することを使命としています。

(2) 企業文化


同社は、全従業員がグループで働くことに誇りと価値を感じ、自身の成長を果たせる組織を目指しています。従業員一人ひとりが個々の能力を最大限に発揮し、多様な人材が活躍できる職場環境の整備を進めています。また、ミッション・ビジョン・バリューに共感した仲間を採用し、事業を通じて自己成長と社会貢献を実現することを重視しています。

(3) 経営計画・目標


同社グループは成長性を重視しており、「売上高の対前期増加率」を重要な経営指標として掲げています。具体的な数値目標としては、売上高の持続的な拡大を目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


主力事業であるメディア・プラットフォーム事業の拡張やサービス向上により経営基盤を安定化させつつ、クラウドインテグレーション事業とのシナジー創出や新規事業の展開に注力しています。また、成長戦略としてM&Aを積極的に推進し、歯科医療業界のリーディングカンパニーを目指すとともに、タイをはじめとする海外市場での事業拡大を図っています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、ミッション・ビジョン・バリューに共感し、事業を通じて自己成長と社会貢献ができる人材の確保に努めています。職種を問わず、外国籍人材やジェンダー平等に配慮した多様な人材の採用を推進しており、即戦力となる中途採用に加え、将来を担う人材確保のための新卒採用も行っています。また、働きやすい職場環境の整備にも注力しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年5月期 36.3歳 4.9年 5,231,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社および連結子会社は公表義務の対象ではないため、有報には本項の記載がありません。

また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性社員比率(48.5%)、女性管理職比率(27.1%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 競合との競争環境

インターネット広告市場やWebマーケティング分野は競争が激しく、多数の競合が存在します。優れた競合事業者の登場や新サービスの出現により同社グループの競争力が低下した場合、事業や業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

(2) インターネット広告市場の動向

事業はインターネット広告市場の動向に影響を受けます。景況感の変化により市場が縮小した場合や、主要顧客である歯科医院等の広告意欲が減退した場合、同社グループの業績に影響が出る可能性があります。

(3) 検索エンジンへの依存

メディア・プラットフォーム事業の集客やSEOサービスは、Google等の検索エンジンの結果に大きく依存しています。検索エンジンのアルゴリズムや表示方針に変更があった場合、サイトへの流入減やサービス品質への影響が生じる可能性があります。

(4) システム障害のリスク

事業運営においてコンピュータシステムへの依存度が高く、アクセス集中による過負荷、サイバー攻撃、自然災害等によりシステム障害が発生した場合、事業活動の停止や信頼性の低下を招き、業績に影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。