※本記事は、東洋製罐グループホールディングス株式会社 の有価証券報告書(第111期、自 2023年4月1日 至 2024年3月31日、2024年6月21日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東洋製罐グループホールディングスってどんな会社?
金属、プラスチック、紙、ガラス等あらゆる素材の容器を手掛ける国内最大手の総合容器メーカーグループです。
■(1) 会社概要
1917年に東洋製罐として創立し、1949年に東京証券取引所へ上場しました。2013年に持株会社体制へ移行し、現商号へ変更するとともにグループ経営管理を除く事業を事業会社へ承継しました。2018年には東洋鋼鈑を完全子会社化するなど、グループ再編を通じて経営基盤の強化を進めています。
同社グループの連結従業員数は19,673名、単体では491名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は創業者に関連する学校法人東洋食品工業短期大学、第3位は公益財団法人東洋食品研究所となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 12.22% |
| 学校法人東洋食品工業短期大学 | 9.48% |
| 公益財団法人東洋食品研究所 | 7.18% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性3名(社外含む)の計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。代表取締役社長は大塚一男氏が務めています。社外取締役比率は44.4%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 大塚 一男 | 取締役社長(代表取締役)グループサステナビリティ委員長グループリスク・コンプライアンス委員長 | 1983年入社。生産本部品質保証部長、海外事業部長、経営企画部長等を経て、2016年東洋製罐代表取締役社長。2018年6月より現職。 |
| 副島 正和 | 取締役専務執行役員経営戦略機能統轄兼経理・財務管掌およびIR・グループ調達戦略担当 | 1988年入社。経理部長、経営企画部長を経て、2017年取締役。経営戦略機能統轄等を歴任し、2024年4月より現職。 |
| 中村 琢司 | 取締役専務執行役員グループ技術開発機能統轄イノベーション推進担当 | 1988年東洋鋼鈑入社。同社技術研究所長等を経て、2019年同社執行役員。2020年取締役。2024年4月より現職。 |
| 室橋 和夫 | 取締役常務執行役員人事・人材開発・グループサステナビリティおよびグループリスク・コンプライアンス担当 | 1986年入社。人事部長等を経て2017年取締役。2023年4月より人事・人材開発・グループサステナビリティ等を担当。 |
| 小笠原 宏喜 | 取締役常務執行役員総務・法務・情報システムおよびグループ情報管理担当 | 1988年入社。総務部長を経て2018年取締役。2024年4月より総務・法務・情報システムおよびグループ情報管理を担当。 |
社外取締役は、谷口真美(早稲田大学商学学術院教授)、小黒健三(やまと監査法人代表社員)、種岡瑞穂(元株式会社UACJ代表取締役専務執行役員)、池川喜洋(元三菱ケミカル代表取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「包装容器事業」「エンジニアリング・充填・物流事業」「鋼板関連事業」「機能材料関連事業」「不動産関連事業」および「その他」事業を展開しています。
■包装容器事業
金属、プラスチック、紙、ガラスを主原料とする各種容器の製造販売を行っています。飲料用缶やペットボトル、食品用紙容器、ガラスびんなど、生活に身近な包装容器を幅広く提供しています。
製品の販売対価として収益を得ています。運営は、金属製品・プラスチック製品を東洋製罐、日本クロージャーなどが、紙製品を東罐興業、日本トーカンパッケージなどが、ガラス製品を東洋ガラスなどがそれぞれ行っています。
■エンジニアリング・充填・物流事業
包装容器関連機械設備の製造販売、飲料やエアゾール製品等の受託充填、および貨物自動車運送や倉庫業を行っています。容器製造の技術を活かした機械販売や、顧客ブランド製品の受託製造(OEM/ODM)を展開しています。
機械設備の販売代金、充填加工料、運送料・保管料等を収益源としています。エンジニアリング事業は東洋製罐グループエンジニアリングなど、充填事業は東洋エアゾール工業など、物流事業は東洋メビウスなどが運営しています。
■鋼板関連事業
鋼板および鋼板の加工品の製造販売を行っています。缶用材料としての表面処理鋼板や、電気・電子部品用材料などを提供しています。
製品の販売対価として収益を得ています。運営は主に東洋鋼鈑が行っています。
■機能材料関連事業
磁気ディスク用アルミ基板、光学用機能フィルム、釉薬、顔料、ゲルコート、微量要素肥料などの機能材料の製造販売を行っています。
製品の販売対価として収益を得ています。運営は東洋鋼鈑、東洋ガラス、TOMATECなどが担当しています。
■不動産関連事業
オフィスビルや商業施設などの賃貸事業を行っています。グループが保有する不動産の有効活用を図っています。
テナントからの賃貸料収入を収益源としています。運営は同社および東罐共栄などが担当しています。
■その他
自動車用プレス金型、機械器具、硬質合金、農業用資材製品などの製造販売、石油製品の販売、損害保険代理業などを行っています。
製品販売やサービス提供の対価として収益を得ています。運営は連結子会社および関連会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、特に2024年3月期は過去最高水準となっています。利益面では、原材料価格高騰の影響等により一時的に利益率が低下した時期もありましたが、2024年3月期は価格転嫁の進展等により大幅な増益となり、回復基調にあります。
| 項目 | 2020年3月期 | 2021年3月期 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 7,908億円 | 7,487億円 | 8,216億円 | 9,060億円 | 9,507億円 |
| 経常利益 | 284億円 | 273億円 | 457億円 | 138億円 | 387億円 |
| 利益率(%) | 3.6% | 3.6% | 5.6% | 1.5% | 4.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 114億円 | 78億円 | 222億円 | 79億円 | 231億円 |
■(2) 損益計算書
売上高は前期比で増加し、売上総利益率も改善しています。これは価格転嫁の浸透や為替の影響などが寄与したためです。営業利益率は大きく改善しており、収益性が向上しています。
| 項目 | 2023年3月期 | 2024年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 9,060億円 | 9,507億円 |
| 売上総利益 | 8,653億円 | 1,187億円 |
| 売上総利益率(%) | 9.6% | 12.5% |
| 営業利益 | 74億円 | 339億円 |
| 営業利益率(%) | 0.8% | 3.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が275億円(構成比32%)、研究開発費が164億円(同19%)を占めています。
■(3) セグメント収益
包装容器事業は売上・利益ともに全体を牽引しており、価格転嫁の効果により大幅な増益となりました。鋼板関連事業も増収増益で好調です。一方、機能材料関連事業は需要低迷の影響で減収減益となりました。エンジニアリング・充填・物流事業は堅調に推移しています。
| 区分 | 売上(2023年3月期) | 売上(2024年3月期) | 利益(2023年3月期) | 利益(2024年3月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 包装容器事業 | 5,444億円 | 5,884億円 | -108億円 | 145億円 | 2.5% |
| エンジニアリング・充填・物流事業 | 1,984億円 | 2,037億円 | 88億円 | 94億円 | 4.6% |
| 鋼板関連事業 | 865億円 | 879億円 | 47億円 | 73億円 | 8.3% |
| 機能材料関連事業 | 457億円 | 393億円 | 20億円 | 0.3億円 | 0.1% |
| 不動産関連事業 | 77億円 | 79億円 | 43億円 | 46億円 | 58.0% |
| その他 | 233億円 | 235億円 | 5億円 | 11億円 | 4.7% |
| 調整額 | - | - | -20億円 | -30億円 | - |
| 連結(合計) | 9,060億円 | 9,507億円 | 74億円 | 339億円 | 3.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFはプラス、投資CFはマイナス、財務CFはマイナスで、本業で稼いだ資金を投資と借入返済や株主還元に充てている「健全型」のキャッシュ・フロー状態です。
| 項目 | 2023年3月期 | 2024年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | -189億円 | 646億円 |
| 投資CF | -570億円 | -524億円 |
| 財務CF | 415億円 | -278億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は3.5%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.4%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「常に新しい価値を創造し、持続可能な社会の実現を希求して、人類の幸福に貢献します。」という経営理念を掲げています。創業以来100年以上にわたり培ってきた素材開発と加工技術を軸に、人々の暮らしをより豊かにし、環境にやさしい仕組みを広げ、さらなる発展と進化を目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、「品格を重んじ、あらゆる事に日々公明正大に努めます。」「一人ひとりの力を最大限に発揮し、自己の成長と共に社会の繁栄に努めます。」という信条を掲げています。また、「世界中の人に必要とされる斬新で革新的な技術と商品を提供するグループ」を目指すビジョンとして持っています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、「中期経営計画2025」および「資本収益性向上に向けた取り組み2027」を推進しています。2025年度には収益性向上を最優先とし、2027年度には株主資本コストを上回るROEの達成を目指しています。
* 2025年度目標:売上高8,500億円(据え置き)、営業利益500億円、EBITDA1,100億円、ROE5%
* 2027年度目標:ROE8%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「長期経営ビジョン2050『未来をつつむ』」の実現に向け、事業ポートフォリオの最適化と資本効率の向上を両輪で進めています。国内包装容器事業では適正な売価転嫁と拠点の再構築を進める一方、成長分野への経営資源投入を加速させています。
* 売価転嫁の推進:原材料・エネルギー価格等のコストアップ分を適正に転嫁
* 成長分野への投資:車載用二次電池材、海外飲料充填事業等への設備投資強化
* 株主還元の強化:自己株式取得と配当による総還元性向の向上
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、既存事業の維持と新規事業での収益拡大を実現するため、グループ人事ポリシーに基づき人材マネジメントを推進しています。働きがい(エンゲージメント)と生産性の向上を図るとともに、製造部門の人材確保のための環境整備や、多様な知見を持つ人材のキャリア採用強化に取り組んでいます。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2024年3月期 | 42.1歳 | 16.0年 | 7,274,131円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 6.7% |
| 男性育児休業取得率 | 101.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 96.4% |
| 男女賃金差異(正規) | 96.7% |
| 男女賃金差異(非正規) | 79.0% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率(17.5%)、男女の平均継続勤務年数の差異(3.1年)、10事業年度前およびその前後の事業年度に採用された労働者の男女別継続雇用割合(総合60.5%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 生産コストの変動
原材料やエネルギー価格、人件費、物流費などの生産コストが変動した場合、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、原材料価格に連動した売価設定の仕組み導入や、コストアップ分の売価転嫁、コストダウンの推進に努めていますが、その進捗によっては収益性が低下する懸念があります。
■(2) 原材料の調達
国内外の粗原料を含む原材料の調達において、国際情勢の悪化や自然災害、設備トラブル等による物流混乱が生じ、調達が困難になった場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。これに対し、日頃より購入先情報を収集し、調達先を分散するなどして安定調達の実現に努めています。
■(3) 環境リスク
製造工程での環境負荷低減への取り組みによるコスト増加や、プラスチック製品削減の世論の高まりが、同社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。これに対し、「環境配慮型製品・サービスの開発と提供」をマテリアリティの一つとし、プラスチック製容器の軽量化や代替素材への転換等を推進しています。



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