※本記事は、東洋製罐グループホールディングスの有価証券報告書(第113期、自 2025年4月1日 至 2026年3月31日、2026年6月23日提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. 東洋製罐グループホールディングスってどんな会社?
金属、プラスチック、紙、ガラスといった多彩な素材で包装容器を提供する総合容器メーカーです。
■(1) 会社概要
1917年に東洋製罐として創立され、1934年に東洋鋼鈑を設立しました。1949年に東京証券取引所へ株式を上場しています。2013年には持株会社体制へ移行し、現在の東洋製罐グループホールディングスへ商号を変更しました。2017年にはプラスチックボトル・キャップ事業を承継する新会社を設立しています。
同社グループは、連結従業員数19,067名、単体533名で事業を展開しています。筆頭株主は学校法人の東洋食品工業短期大学であり、第2位は資産管理業務を行う信託銀行、第3位は公益財団法人の東洋食品研究所が名を連ねています。創業以来培ってきた技術を活かし、人々の生活に欠かせない製品を提供しています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 学校法人東洋食品工業短期大学 | 11.12% |
| 日本マスタートラスト信託銀行(信託口) | 10.21% |
| 公益財団法人東洋食品研究所 | 8.29% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性10名、女性3名の計13名で構成され、女性役員比率は23.1%です。取締役社長(代表取締役)は中村琢司氏が務めています。取締役9名のうち社外取締役は4名です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 中村琢司 | 取締役社長(代表取締役)グループリスク・コンプライアンス委員長最高技術責任者およびグループ技術開発機能統轄 | 東洋鋼鈑に入社後、同社技術企画部長などを経て2019年に東洋製罐グループホールディングス執行役員に就任。最高技術責任者などを歴任し、2025年より代表取締役社長などを務める。 |
| 大塚一男 | 取締役会長グループサステナビリティ委員長 | 1983年に同社入社。海外事業部長や特別顧問などを経て、2018年に代表取締役社長に就任。2022年よりグループサステナビリティ委員長、2025年より取締役会長を務める。 |
| 副島正和 | 取締役専務執行役員最高財務責任者および経営戦略機能統轄兼IRおよびグループ調達戦略管掌 | 1988年同社入社。経理部長や経営企画部長などを経て2017年に取締役に就任。常務執行役員などを経て、2026年より取締役専務執行役員、最高財務責任者などを務める。 |
| 室橋和夫 | 取締役常務執行役員人事・人材開発・グループサステナビリティおよびグループリスク・コンプライアンス管掌 | 1986年同社入社。生産本部静岡工場長や人事部長などを経て2017年に取締役に就任。2020年より常務執行役員を務め、2026年より人事・人材開発などを管掌する。 |
| 小笠原宏喜 | 取締役常務執行役員総務・法務・ITおよびグループ情報管理管掌 | 1988年同社入社。総務部長などを経て2017年に執行役員、2018年に取締役に就任。2020年より常務執行役員を務め、2026年より総務・法務・ITなどを管掌する。 |
社外取締役は、谷口真美(広島大学大学院社会科学研究科などを経て早稲田大学商学学術院教授)、小黒健三(PwCアドバイザリーなどを経てやまとパートナーズ代表取締役)、種岡瑞穂(住友商事などを経てグレンゲス・ジャパン代表取締役社長)、池川喜洋(三菱化成工業などを経て三菱ケミカル取締役)です。
2. 事業内容
同社グループは、「包装容器事業」「エンジニアリング・充填・物流事業」「鋼板関連事業」「機能材料関連事業」「不動産関連事業」および「その他」事業を展開しています。
**包装容器事業**
金属、プラスチック、紙、ガラスを主原料とする多彩な包装容器を製造・販売しています。飲料や食品、日用品向けなど幅広い分野の顧客に製品を提供しており、環境に配慮した素材や容器の開発にも取り組んでいます。
収益は、取引先への容器の販売代金として得ています。事業の運営は、主に東洋製罐、日本クロージャー、東罐興業、東洋ガラスなどの子会社が各素材の特性に応じた製品開発や製造を担って展開しています。
**エンジニアリング・充填・物流事業**
包装容器の製造に関連する機械設備の製造販売のほか、飲料やエアゾール製品、一般充填品の受託製造を行っています。また、貨物自動車運送業や倉庫業など、容器に関わる物流サービスも一貫して提供しています。
収益は、機械設備の販売代金や製品の受託充填手数料、物流サービスの運送料や保管料などから得ています。運営は主に、東洋製罐グループエンジニアリング、東洋エアゾール工業、東洋メビウスなどが担当しています。
**鋼板関連事業**
各種鋼板および鋼板を加工した製品の製造販売を行っています。食缶や18リットル缶などの容器向け材料に加え、自動車部品や建築・家電向けの内装材、車載用二次電池材といった産業用材料も顧客に提供しています。
収益は、これらの鋼板や加工品の販売代金として顧客から得ています。同事業の運営は、主に東洋鋼鈑や鋼鈑商事などの子会社が主体となって行っており、国内外の多様な産業ニーズに対応しています。
**機能材料関連事業**
磁気ディスク用のアルミ基板や光学用機能フィルムのほか、釉薬、顔料、ゲルコート、微量要素肥料といった機能性材料の製造販売を行っています。データセンターやディスプレイ市場の顧客などに製品を提供しています。
収益は、各機能材料の販売代金として得ています。事業の運営は、主に東洋鋼鈑やTOMATECといった子会社が担っており、独自の技術を活かした高付加価値な素材の開発・提供を進めています。
**不動産関連事業**
保有する不動産の有効活用を目的として、オフィスビルや商業施設などの不動産賃貸事業を展開しています。立地や資産価値を活かした施設運営を行い、安定的な収益基盤の構築を図っています。
収益は、入居するテナント企業や施設利用者からの賃貸料として受け取っています。事業の運営は、主に東洋製罐グループホールディングス自身および子会社の東罐共栄などが担当しています。
**その他**
自動車用のプレス金型や機械器具、硬質合金、農業用資材製品などの製造販売を行っているほか、石油製品の販売や損害保険の代理業も手掛けています。幅広い産業分野に向けて多様なサービスを提供しています。
収益は、製品の販売代金や保険契約に伴う手数料などから得ています。事業の運営は、富士テクニカ宮津、鋼鈑工業、東罐興産などの子会社が各専門分野におけるサービスを担って展開しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5年間の業績を見ると、売上高は8,216億円から9,632億円へと順調に拡大しています。経常利益は2023年3月期に原材料価格高騰等の影響で138億円まで落ち込んだものの、その後は価格改定の進展などにより回復し、2026年3月期には583億円と大幅な増益を達成しています。
| 項目 | 2022年3月期 | 2023年3月期 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 8,216億円 | 9,060億円 | 9,507億円 | 9,225億円 | 9,632億円 |
| 経常利益 | 457億円 | 138億円 | 387億円 | 372億円 | 583億円 |
| 利益率(%) | 5.6% | 1.5% | 4.1% | 4.0% | 6.0% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 222億円 | 79億円 | 86億円 | 25億円 | 221億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期の利益状況を見ると、売上高の増加にともなって売上総利益も1,225億円から1,405億円へと拡大し、売上総利益率は13.3%から14.6%へと改善しています。営業利益も343億円から520億円へ増加し、収益性の向上が確認できます。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 9,225億円 | 9,632億円 |
| 売上総利益 | 1,225億円 | 1,405億円 |
| 売上総利益率(%) | 13.3% | 14.6% |
| 営業利益 | 343億円 | 520億円 |
| 営業利益率(%) | 3.7% | 5.4% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が290億円(構成比33%)、研究開発費が163億円(同18%)を占めています。
■(3) セグメント収益
セグメント別の売上を見ると、主力である包装容器事業が6,023億円と全体の過半を占めており、安定した規模を維持しています。また、エンジニアリング・充填・物流事業は前期の1,464億円から1,793億円へと大きく成長しており、全体の増収を牽引する要因となっています。
| 区分 | 売上(2025年3月期) | 売上(2026年3月期) |
|---|---|---|
| 包装容器事業 | 6,024億円 | 6,023億円 |
| エンジニアリング・充填・物流事業 | 1,464億円 | 1,793億円 |
| 鋼板関連事業 | 900億円 | 915億円 |
| 機能材料関連事業 | 519億円 | 578億円 |
| 不動産関連事業 | 81億円 | 83億円 |
| その他 | 237億円 | 240億円 |
| 連結(合計) | 9,225億円 | 9,632億円 |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
営業CFは890億円のプラス、投資CFは206億円のマイナス、財務CFは661億円のマイナスとなっており、営業利益で借入返済を行い、投資も手元資金で賄う優良企業の状態です。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 941億円 | 890億円 |
| 投資CF | -511億円 | -206億円 |
| 財務CF | -188億円 | -661億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は8.1%で市場平均を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は56.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「常に新しい価値を創造し、持続可能な社会の実現を希求して、人類の幸福に貢献します」という経営理念を掲げています。包装容器の枠を超えた斬新な技術と商品を提供し、世界中の人々の安心で豊かな暮らしを支える基盤(くらしのプラットフォーム)となることを目指しています。
■(2) 企業文化
日々の業務において「品格を重んじ、あらゆる事に日々公明正大に努める」こと、そして「一人ひとりの力を最大限に発揮し、自己の成長と共に社会の繁栄に努める」という信条を大切にしています。多様な価値観を認め合い、社会課題の解決に向けてグループ一体となって挑戦し続けることを重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、2030年度を最終年度とする「中期経営計画2030」を策定し、持続的な成長に向けた数値目標を設定しています。また、新たな株主還元方針としてDOE(株主資本配当率)4%を導入し、継続的な資本効率の向上を図っています。
* ROE:8%以上
* EBITDA:1,300億円
* 認定製品・サービスの売上高比率:50%以上
■(4) 成長戦略と重点施策
長期経営ビジョンに基づき、「食と健康」「快適な生活」「環境・資源・エネルギー」の3分野での価値創造を戦略の柱としています。既存の成熟事業から成長事業領域への経営資源のシフトを進めるとともに、不採算事業の再構築や適正な売価転嫁を推し進め、事業ポートフォリオの最適化による収益力強化を図っています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は、既存事業の維持・継続を担う人材に加え、新たな仕組みの構築や新規事業を創出できる「グループ人材」の確保と育成を推進しています。働きがい(エンゲージメント)と生産性の向上を図るため、グループ一括採用による意識醸成や、会社の枠を超えた人事ローテーションなど、グループ内の人材流動化を進めています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均とほぼ同じ水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 42.3歳 | 16.9年 | 7,573,087円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.9% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 88.9% |
| 男女賃金差異(正規) | 90.9% |
| 男女賃金差異(非正規) | 90.8% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性採用比率(26.3%)、エンゲージメント(51.2)、中核人材のグループ他社経験比率(57.9%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
**(1) 生産コストの変動**
原材料価格やエネルギー費用、物流費・人件費などの生産コストが経済状況や国際情勢の変化によって変動するリスクです。価格転嫁や生産性向上を進めているものの、十分に対応できない場合は収益性が低下する可能性があります。
**(2) 容器市場の競争激化**
主力とする包装容器市場において、競合他社との価格競争や、取引先企業による容器の自社製造拡大が進むリスクです。これにより、製品の価格下落や販売シェアの低下が生じる懸念があり、高付加価値製品による差別化で対応しています。
**(3) 環境規制による影響**
循環経済への移行に伴い、海洋プラスチックごみ問題などを背景とした包装容器に対する規制が強化されるリスクです。代替素材への転換や軽量化への対応が不十分な場合、製品の製造・販売に支障をきたし、業績に影響を及ぼす恐れがあります。



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