アルバック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

 アルバック 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証プライム上場のアルバックは、真空技術を核とした製造装置および材料等の開発・製造・販売を行う真空総合メーカーです。半導体や電子部品、ディスプレイ製造装置などを主力としています。第121期の連結業績は、売上高2,512億円で前期比減収、営業利益265億円で同減益となりました。


※本記事は、株式会社アルバック の有価証券報告書(第121期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. アルバックってどんな会社?


真空技術を基盤とし、半導体やディスプレイ製造装置、真空ポンプ等のコンポーネント、高機能材料をグローバルに提供する企業です。

(1) 会社概要


同社は1952年に日本真空技術として創業し、1961年に真空冶金事業を開始しました。2001年に現社名へ変更し、2004年には東京証券取引所市場第一部に上場しました。2010年にアルバックマテリアルを吸収合併するなどグループ再編を進め、2022年の市場区分見直しに伴いプライム市場へ移行しました。

同社の従業員数は連結6,132名、単体1,648名です。筆頭株主は資産管理業務を行う信託銀行で、第2位は生命保険会社、第3位は資産管理業務を行う信託銀行です。

氏名 持株比率
日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) 13.02%
日本生命保険相互会社 6.57%
日本カストディ銀行(信託口、信託口4、年金特金口、信託E口、信託B口、信託A口、年金信託口) 6.37%

(2) 経営陣


同社の役員は男性10名、女性1名の計11名で構成され、女性役員比率は9.1%です。代表取締役社長 CEOは岩下節生氏が務めています。社外取締役比率は約36.4%です。

氏名 役職 主な経歴
岩下 節生 代表取締役社長CEO 1984年同社入社。中国現地法人の董事長等を歴任し、2017年代表取締役執行役員社長に就任。2025年7月より現職。
青木 貞男 専務取締役 CFO管理本部長経営戦略・管理部門・コンプライアンス担当 第一勧業銀行(現みずほ銀行)出身。フォーラムエンジニアリング常務取締役を経て2016年同社入社。財務部長等を歴任し2025年7月より現職。
島田 鉄也 専務取締役 CSO生産本部長兼CS事業本部長事業戦略・生産部門担当アルバックテクノ株式会社・アルバック販売株式会社代表取締役社長 1995年同社入社。電子機器事業部長、アルバックテクノ代表取締役社長等を歴任。2025年9月より現職。


社外取締役は、西啓介(ニッセイ信用保証代表取締役社長)、内田憲男(元トプコン代表取締役社長)、石田耕三(元堀場製作所代表取締役副会長)、中島好美(元アメリカン・エキスプレス・ジャパン代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「真空機器事業」および「真空応用事業」を展開しています。

(1) 真空機器事業


半導体・電子部品製造装置、ディスプレイ・エネルギー関連製造装置、コンポーネント、一般産業用装置を提供しています。主な製品にはスパッタリング装置、真空蒸着装置、真空ポンプ、真空計、真空熱処理炉などがあり、スマートフォンや自動車などの最終製品を構成する部品製造に利用されています。

装置や機器の販売および保守サービス等から収益を得ています。運営は主に同社が行うほか、アルバックテクノ、アルバック機工、ULVAC KOREA, Ltd.などの国内外の子会社が製造・販売・サービスを担っています。

(2) 真空応用事業


真空技術の周辺技術を基盤とし、スパッタリングターゲット材料などの材料や、表面分析装置、マスクブランクスなどを提供しています。高性能化する半導体や電子部品、ディスプレイなどに不可欠な先端材料や分析機器を扱っています。

製品の販売から収益を得ています。運営は同社に加え、アルバック・ファイ、アルバック成膜、愛発科電子材料(蘇州)有限公司などの子会社が製造・販売を行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


2021年6月期から2025年6月期までの業績を見ると、売上高は2024年6月期まで増加傾向にありましたが、直近の2025年6月期は減少に転じました。経常利益も同様の傾向を示し、2022年6月期に322億円の高水準を記録した後、増減を繰り返しています。当期利益は100億円台後半から200億円台前半で推移しています。

項目 2021年6月期 2022年6月期 2023年6月期 2024年6月期 2025年6月期
売上高 1,830億円 2,413億円 2,275億円 2,611億円 2,512億円
経常利益 180億円 322億円 229億円 298億円 286億円
利益率(%) 9.8% 13.3% 10.1% 11.4% 11.4%
当期利益(親会社所有者帰属) 130億円 187億円 123億円 144億円 141億円

(2) 損益計算書


売上高は前期比で減少しましたが、売上原価率の改善により売上総利益率は微増しました。一方で販売費及び一般管理費が増加したため、営業利益および営業利益率は低下しています。

項目 2024年6月期 2025年6月期
売上高 2,611億円 2,512億円
売上総利益 807億円 799億円
売上総利益率(%) 30.9% 31.8%
営業利益 298億円 265億円
営業利益率(%) 11.4% 10.6%


販売費及び一般管理費のうち、研究開発費が126億円(構成比24%)、従業員給料が89億円(同17%)を占めています。

(3) セグメント収益


真空機器事業は、半導体・電子部品製造装置の一部で投資が堅調だったものの、パワーデバイスやEVバッテリー関連の投資減速等の影響を受け減収となりました。一方、真空応用事業は、材料や表面分析機器等の好調により増収となりました。

区分 売上(2024年6月期) 売上(2025年6月期)
真空機器事業 2,123億円 1,991億円
真空応用事業 488億円 521億円
連結(合計) 2,611億円 2,512億円

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は、営業活動で得た資金の範囲内で投資活動と財務活動(借入返済や配当支払)を行っており、財務体質の健全化を進めながら投資も継続する「健全型」のキャッシュ・フロー状態にあります。

項目 2024年6月期 2025年6月期
営業CF 172億円 348億円
投資CF -195億円 -108億円
財務CF -28億円 -142億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は7.5%で市場平均(プライム9.4%)を下回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は59.6%で市場平均(プライム製造業46.8%)を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「互いに協力・連携し、真空技術及びその周辺技術を総合利用することにより、産業と科学の発展に貢献することを目指す」という経営基本理念を掲げています。この理念のもと、装置、材料、成膜加工、分析、カスタマーサポートといった幅広い事業領域でシナジー効果を発揮し、グローバルな事業展開を目指しています。

(2) 企業文化


同社は「Vision2032」として「未来につながる可能性の場であり続ける」を策定し、創業時から受け継がれてきた企業文化や価値観を未来志向に変換しています。自由闊達な組織風土を形成し、真空技術をコアとしたイノベーションの創出や共創の推進、多様な人財の育成と活躍推進に取り組んでいます。

(3) 経営計画・目標


2026年6月期から2031年6月期までの新中長期経営計画「バリューアッププラン」を策定しています。半導体電子中心の事業ポートフォリオへの見直しを加速させ、高成長・高収益性の実現と企業価値の向上を目指しています。

* 2031年6月期 売上高:3,600億円
* 2031年6月期 営業利益:790億円
* 2031年6月期 ROE:16%

(4) 成長戦略と重点施策


成長戦略として、半導体電子への注力を加速し、重要顧客のプロセス認定獲得や新工程獲得によるシェア拡大を図ります。また、事業間シナジーを活用した量産ライン向け分析検査装置の投入や、M&A等を活用したビジネス拡大を推進します。あわせて、事業改革による低採算事業の縮小や生産改革によるモジュラーデザインの推進なども実施します。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


同社は、グローバルに活躍できる人財の育成を強化するため、働きがいのある職場環境や人事諸制度の整備、教育機会の創出に努めています。ダイバーシティを尊重し、インクルージョンを推進することでイノベーションを創出し、従業員エンゲージメントを高めるとともに、次世代リーダーとなる中核人財の育成プログラムを再構築しています。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく上回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年6月期 44.6歳 17.5年 8,881,993円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 5.5%
男性育児休業取得率 69.6%
男女賃金差異(全労働者) 63.1%
男女賃金差異(正規雇用) 83.0%
男女賃金差異(非正規雇用) 56.2%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、女性管理職比率(10.9%(2025年6月期))などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 市場変動による影響


半導体や電子部品、FPD等の分野における市況変動に伴い、顧客の設備投資の大幅縮小や財政状態の悪化が生じた場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。特に新中長期経営計画で注力する半導体市場は技術革新が速く、景気変動の影響を受けやすいため、需要の急激な変動がリスクとなります。

(2) 研究開発による影響


最先端技術を使用した新製品を市場に投入し続けるために積極的な研究開発投資を行っていますが、開発の著しい遅延により新製品の市場投入が遅れた場合、競争力が低下し、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3) グローバルな競争環境の影響


海外売上高比率が高く、世界各地で事業を展開していますが、グローバルな競合他社との価格競争や技術競争が激化しています。このような競争環境において競争力を維持できない場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。

(4) 人財の確保に関する影響


グローバルな事業環境の中で成長を続けるためには人財の確保が最重要課題です。事業の成長に必要な人財を継続的に確保できない場合、競争力の低下を招き、業績に悪影響を及ぼす可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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