※本記事は、株式会社アイスタイル の有価証券報告書(第26期、自 2024年7月1日 至 2025年6月30日、2025年9月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. アイスタイルってどんな会社?
美容系総合ポータルサイト「@cosme」を運営し、ネットとリアルを融合した美容関連サービスを提供する企業です。
■(1) 会社概要
1999年に有限会社アイ・スタイルとして設立され、コスメ情報ポータルサイト「@cosme」をオープンしました。2002年にEC事業、2007年に店舗事業を開始し、2012年に東証マザーズへ上場、同年東証一部へ市場変更しました。その後、海外展開を本格化し、2020年には旗艦店「@cosme TOKYO」をオープンしています。
連結従業員数は1,210名、単体従業員数は539名です。大株主構成は、筆頭株主と第2位が資産管理業務を行う外国銀行および信託銀行であり、第3位は代表取締役会長の資産管理会社である株式会社ワイとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| STATE STREET BANK AND TRUST COMPANY 505001 (常任代理人 株式会社みずほ銀行決済営業部) | 11.44% |
| 日本マスタートラスト信託銀行株式会社(信託口) | 11.20% |
| ワイ | 9.80% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性7名、女性3名の計10名で構成され、女性役員比率は30.0%です。代表取締役会長CEOは吉松徹郎氏です。社外取締役比率は30.0%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 吉松 徹郎 | 代表取締役会長CEO | 1996年アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)入社。1999年同社設立代表取締役社長。2022年9月より現職。 |
| 遠藤 宗 | 代表取締役社長COO | 1996年ヤナセ入社、船井総合研究所等を経て2012年同社入社。連結子会社社長等を歴任し2022年9月より現職。 |
| 菅原 敬 | 取締役副会長CFO | 1996年アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)入社。アーサー・D・リトル等を経て2001年同社取締役。2022年9月より現職。 |
| 山田 メユミ | 取締役 | 1995年香栄興業入社。1999年同社設立代表取締役。2009年12月より現職。 |
社外取締役は、那珂通雅(ボードウォーク・キャピタル代表)、宇佐美進典(CARTA ZERO代表)、鹿子木光(元ジースターインターナショナル代表)です。
2. 事業内容
同社グループは、「マーケティング支援事業」「リテール事業」「グローバル事業」および「その他」事業を展開しています。
■(1) マーケティング支援事業
コスメ・美容の総合サイト「@cosme」を基盤とし、化粧品ブランド向けに広告ソリューションやデータ活用サービスを提供しています。
収益は主に化粧品ブランド等のクライアントから受け取る広告掲載料やデータ活用サービスの利用料です。運営は主にアイスタイル、株式会社ISパートナーズ、株式会社メディア・グローブ等が行っています。
■(2) リテール事業
国内において、化粧品ECサイト「@cosme SHOPPING」および化粧品専門店「@cosme STORE」等を展開し、化粧品の販売を行っています。
収益は主に一般消費者に対する化粧品の販売代金です。運営は主に株式会社アイスタイルリテールが行っています。
■(3) グローバル事業
日本国外において、ECサイト運営、化粧品の卸売、実店舗運営、メディア運営などのサービスを展開しています。
収益は主に海外の小売店や消費者に対する化粧品の販売代金や、現地クライアントからのサービス利用料です。運営は株式会社アイスタイルトレーディングおよび各国の現地法人が行っています。
■(4) その他事業
美容部員の派遣を行う人材サービスや、ユーザー向けの有料会員サービス(BtoC課金)、投資育成事業などを展開しています。
収益は主に人材派遣に伴う派遣料、ユーザーからの月額利用料などです。運営は株式会社アイスタイルキャリア等が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は300億円規模から約690億円へと継続的に拡大しています。利益面では、赤字の時期もありましたが、直近2期間においては黒字化し、利益額および利益率ともに大きく改善する傾向にあります。
| 項目 | 2021年6月期 | 2022年6月期 | 2023年6月期 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 310億円 | 344億円 | 429億円 | 561億円 | 688億円 |
| 経常利益 | -8.0億円 | -5.9億円 | 4.1億円 | 17億円 | 33億円 |
| 利益率(%) | -2.6% | -1.7% | 1.0% | 3.1% | 4.8% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 3.8億円 | -5.7億円 | 2.8億円 | 12億円 | 23億円 |
■(2) 損益計算書
売上高の大幅な増加に伴い、売上総利益も順調に拡大しています。営業利益率も改善傾向にあり、収益性が向上しています。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 561億円 | 688億円 |
| 売上総利益 | 246億円 | 296億円 |
| 売上総利益率(%) | 43.9% | 43.1% |
| 営業利益 | 19億円 | 32億円 |
| 営業利益率(%) | 3.5% | 4.6% |
販売費及び一般管理費のうち、給与手当が55億円(構成比21%)、賃借料が49億円(同19%)、支払手数料が37億円(同14%)を占めています。
■(3) セグメント収益
全セグメントにおいて増収を達成しており、特に主力の「リテール事業」が大きく成長し全体を牽引しています。「マーケティング支援事業」は高い利益率を維持し大幅な増益となりました。「グローバル事業」は赤字が継続していますが、赤字幅は縮小しています。
| 区分 | 売上(2024年6月期) | 売上(2025年6月期) | 利益(2024年6月期) | 利益(2025年6月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| マーケティング支援事業 | 83億円 | 97億円 | 16億円 | 28億円 | 29.2% |
| リテール事業 | 421億円 | 535億円 | 26億円 | 31億円 | 5.8% |
| グローバル事業 | 39億円 | 42億円 | -2.1億円 | -1.8億円 | -4.2% |
| その他事業 | 17億円 | 15億円 | 2.5億円 | 1.9億円 | 12.7% |
| 調整額 | - | - | -24億円 | -28億円 | - |
| 連結(合計) | 561億円 | 688億円 | 19億円 | 32億円 | 4.6% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のCFパターンは「積極型」です。本業で稼いだ現金を元手にしつつ、さらに資金調達を行って成長投資に充てている状況です。
| 項目 | 2024年6月期 | 2025年6月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 33億円 | 31億円 |
| 投資CF | -46億円 | -27億円 |
| 財務CF | 1.6億円 | 10億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は17.3%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は46.0%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社は「生活者中心の市場の創造」をビジョンに掲げ、市場に最適な仕組みや価値観(style)を創造し続けることを目指しています。特定の企業やブランドではなく、生活者の視点に立った市場を形成することで、すべてのステークホルダーにとって有益な仕組みを作ることを経営の基本方針としています。
■(2) 企業文化
同社は「Beautyの世界をアップデートしながら、多くの人を幸せにしよう」というミッションのもと、バリューとして「共創」を掲げています。従業員が互いに挑戦と成長を促し合い、多様な視点を持つ人材が協力して新しい価値を生み出す文化の醸成を重視しています。
■(3) 経営計画・目標
同社は、中期事業目標として以下の数値を掲げています。リテール事業の拡大を通じてユーザー接点とデータを増やし、それらをマーケティング支援事業で収益化することで目標達成を目指しています。
* 連結売上高:1,000億円
* 連結営業利益:80億円
■(4) 成長戦略と重点施策
同社は「プラットフォームの強化と拡大」を最優先課題とし、データ活用の深化や顧客基盤の拡大、開発体制の強化に取り組んでいます。また、化粧品以外のインナーケア・エイジングケアなどを含む「より幅広いBEAUTY領域」への事業拡大や、収益改善を最優先とした「海外戦略の再構築」を推進し、持続的な成長を目指しています。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社は「成長意欲の高い人に選ばれ続ける会社になる」ことをテーマに、従業員の挑戦と成長を促す環境づくりを進めています。具体的には、自ら手を挙げて役割を担うハンズアップ制度の導入や、多様で柔軟な働き方の推進を通じて、一人ひとりのパフォーマンスを最大化させることを目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均をやや下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年6月期 | 35.7歳 | 5.5年 | 6,830,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 52.6% |
| 男性育児休業取得率 | 100.0% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 71.6% |
| 男女賃金差異(正規雇用) | 72.4% |
| 男女賃金差異(非正規) | 130.6% |
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) インターネット市場について
インターネット市場は中長期的に成長が続くと考えられますが、新たな法的規制の導入や予期せぬ要因により市場動向に大きな変化が生じた場合、事業展開や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 技術革新への対応について
インターネット分野の技術革新は急速であり、AIやIoT等の新技術への対応が求められます。予期しない技術革新への対応費用が発生する可能性や、適切な対応ができず競争力が低下した場合、事業展開や経営成績に影響を与える可能性があります。
■(3) 美容関連市場について
同社は美容関連市場を主たる領域としています。化粧品市場は比較的景気変動の影響を受けにくいとされますが、生活様式の変化などにより当該市場の動向が大きく変わった場合、事業展開や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。



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