※本記事は、株式会社ビックカメラ の有価証券報告書(第45期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月19日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. ビックカメラってどんな会社?
カメラや家電製品等の販売を行う「ビックカメラ」を中核に、グループで「コジマ」「ソフマップ」等を展開する大手家電量販店です。
■(1) 会社概要
同社は1980年に東京都豊島区で設立され、カメラ等の販売を開始しました。2006年にソフマップを子会社化、2012年にコジマを子会社化し、事業基盤を拡大しました。2006年にジャスダック証券取引所へ上場し、2008年には東京証券取引所市場第一部へ上場しました。2021年にはソフマップが「じゃんぱら」を子会社化するなど、グループ再編を進めています。
2025年8月31日現在、グループ全体の従業員数は12,039名、単体では4,912名です。筆頭株主は管理信託受託者である信託銀行で、第2位は資産管理業務を行うカストディ銀行です。第3位も信託銀行ですが、有価証券報告書の記載によると、上位株主の一部は創業者である新井隆二氏が委託した信託財産となっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| 管理信託 (A001) 受託者 SMBC信託銀行 | 9.17% |
| 日本カストディ銀行 (信託口) | 8.45% |
| みずほ信託銀行有価証券管理信託0700026 | 7.39% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性12名、女性3名の計15名で構成され、女性役員比率は20.0%です。代表取締役社長社長執行役員は秋保徹氏です。社外取締役比率は46.7%です。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 秋保 徹 | 代表取締役社長社長執行役員 | 1997年同社入社。EC事業本部長、商品本部長、マーケティング本部長などを歴任し、2022年9月より現職。 |
| 中川 景樹 | 取締役専務執行役員事業創造本部長 | 1998年富士銀行(現みずほ銀行)入行。ラネット代表取締役社長、同社経営企画本部長などを経て、2025年9月より現職。 |
| 溝口 貴治 | 取締役常務執行役員ロジスティックス本部長 | 1993年同社入社。店舗店長、物流部長、ビックロジサービス代表取締役社長などを経て、2025年9月より現職。 |
| 根本 奈智香 | 取締役執行役員総務人事本部長 | 1997年同社入社。人事部担当部長、サステナビリティ推進部長、人財開発部長などを経て、2025年9月より現職。 |
| 安部 徹 | 取締役 | 2005年同社入社。経営企画本部長、広報・IR部長、経理財務本部長などを歴任し、2025年9月より現職。 |
| 田村 英二 | 取締役 | 1983年リクルート入社。2010年同社入社。人事部長、総務本部長、経営企画本部長などを歴任し、2025年9月より現職。 |
| 中澤 裕二 | 取締役 | 1995年コジマ入社。同社営業企画・管理部長などを経て、2020年11月よりコジマ代表取締役社長社長執行役員(現任)。 |
| 大塚 典子 | 取締役(常勤監査等委員) | 1991年同社入社。内部監査室長、内部統制室長などを経て、2018年常勤監査役就任。2020年11月より現職。 |
社外取締役は、利光剛(弁護士)、徳田潔(元日本経済新聞社専務)、中村勝(元三井住友銀行部長)、小笠原倫明(元総務事務次官)、岸本裕紀子(著述業)、砂山晃一(元みずほ銀行執行役員)、南繁芳(元群馬銀行常務)です。
2. 事業内容
同社グループは、「物品販売事業」、「BSデジタル放送事業」および「その他」事業を展開しています。
■物品販売事業
カメラ、家電製品、PC、携帯電話、玩具、酒類、医薬品などの物品販売を行っています。主な顧客は一般消費者です。「ビックカメラ」ブランドでの都市型駅前大型店のほか、子会社のコジマによる郊外型店舗、ソフマップによるPC・デジタル機器専門店、じゃんぱらによる中古デジタル機器販売店などを全国に展開しています。
収益は主に顧客への商品販売代金です。運営は、同社が「ビックカメラ」各店およびECサイト「ビックカメラ.com」等を担当し、子会社のコジマが「コジマ×ビックカメラ」等を、ソフマップが「ソフマップ」等を、じゃんぱらが「じゃんぱら」等を運営しています。また、ラネット等が携帯電話販売代理店を運営しています。
■BSデジタル放送事業
BSデジタルハイビジョン放送による無料放送事業を行っています。視聴者に対して番組を提供するとともに、スポンサー企業に対して広告枠を提供しています。
収益は主にスポンサー企業からのタイム収入(番組提供料)やスポット収入(CM放映料)等の広告収入です。運営は、連結子会社の日本BS放送が行っています。
■その他
ケーブルテレビ放送事業、不動産賃貸、物流業務、広告代理店業務などを行っています。
収益は、ケーブルテレビの視聴料、テナントからの賃貸料、グループ内外からの物流業務受託料、広告媒体の手数料などです。運営は、豊島ケーブルネットワーク(CATV)、ビックロジサービス(物流)、東京計画(広告・不動産)などの連結子会社が行っています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
直近5期間の業績を見ると、売上高は増加傾向にあり、第45期には過去最高となる9,745億円を達成しました。経常利益も第43期以降回復基調にあり、第45期には319億円と高い水準を記録しています。当期利益についても、第43期の赤字から回復し、第45期には175億円まで拡大するなど、全体として増収増益の好調なトレンドにあります。
| 項目 | 2021年8月期 | 2022年8月期 | 2023年8月期 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 8,341億円 | 7,924億円 | 8,156億円 | 9,226億円 | 9,745億円 |
| 経常利益 | 216億円 | 208億円 | 166億円 | 267億円 | 319億円 |
| 利益率(%) | 2.6% | 2.6% | 2.0% | 2.9% | 3.3% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 88億円 | 58億円 | 29億円 | 139億円 | 175億円 |
■(2) 損益計算書
直近2期間の比較では、売上高の増加に伴い売上総利益も順調に伸長しています。売上総利益率は26.4%から26.7%へとわずかに改善しました。営業利益率は2.6%から3.1%へ上昇しており、増収効果に加えて収益性も向上していることが読み取れます。
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 9,226億円 | 9,745億円 |
| 売上総利益 | 2,436億円 | 2,605億円 |
| 売上総利益率(%) | 26.4% | 26.7% |
| 営業利益 | 244億円 | 303億円 |
| 営業利益率(%) | 2.6% | 3.1% |
販売費及び一般管理費のうち、給料及び手当が479億円(構成比20.8%)、地代家賃が381億円(同16.5%)を占めています。売上原価については、商品仕入によるものが大半を占めています。
■(3) セグメント収益
主力の物品販売事業は、スマートフォン等の情報通信機器や家庭電化商品が好調で増収となり、利益も大幅に増加しました。一方、BSデジタル放送事業は、放送外収入が増加したもののタイム収入等の減少により減収減益となりました。全社的には物品販売事業の好調が業績拡大を牽引しています。
| 区分 | 売上(2024年8月期) | 売上(2025年8月期) | 利益(2024年8月期) | 利益(2025年8月期) | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| 物品販売事業 | 9,097億円 | 9,620億円 | 245億円 | 298億円 | 3.1% |
| BSデジタル放送事業 | 113億円 | 110億円 | 21億円 | 20億円 | 18.5% |
| その他 | 16億円 | 15億円 | 0億円 | 0億円 | 2.7% |
| 調整額 | 0億円 | 0億円 | 1億円 | 0億円 | - |
| 連結(合計) | 9,226億円 | 9,745億円 | 267億円 | 319億円 | 3.3% |
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
本業の稼ぎは投資・財務の流出の82%をカバーしており、不足分(54億円)は手元資金等で補っています。本業・投資・返済がバランスよく機能しており、攻守の均衡が取れた状態です。安定志向からチャレンジ志向まで幅広く対応できる状態で、自身のキャリア方針に合わせて判断しやすいフェーズです。
なお、同社は在庫を多く抱える事業を主力としているため、営業CFの減少は棚卸資産(商品・販売用不動産等)の増加(事業拡大)に起因している可能性があり、必ずしも業績悪化を意味するものではありません。
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 420億円 | 254億円 |
| 投資CF | -301億円 | -148億円 |
| 財務CF | -237億円 | -160億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は10.9%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は34.2%で市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、パーパスとして「“お客様喜ばせ業”をつなぎ、期待を超える」を掲げています。このパーパスを中核に据え、顧客、取引先、株主、地域社会、従業員などすべてのステークホルダーに喜んでもらうことを追求し、期待を超える新たな価値の創出を目指しています。
■(2) 企業文化
「人を大切にし、人を成長の原動力とする」という考えのもと、従業員の「ハートに火をつける活動」を重視しています。お客様喜ばせ業としての使命感や志から生まれる熱意(内発的動機付け)こそが、主体的な行動と提供価値の向上につながると考えており、従業員の多様な個性を尊重し、働きがいと働きやすさを両立する環境づくりに取り組んでいます。
■(3) 経営計画・目標
2029年8月期を最終年度とする中期経営計画「Vision 2029」を策定し、サーキュラーエコノミー型事業モデルの基盤構築を目指しています。
* 売上高:1兆1,000億円
* 営業利益:400億円
* ROE:10.5%
■(4) 成長戦略と重点施策
「顧客基盤の拡充と経営基盤の強化」を掲げ、店舗・売場の進化、都市型・ターミナル駅前店舗の新規開拓、EC事業でのリピーター増加、法人事業やインバウンド対応の強化、買取・リユース事業の拡大などに取り組む方針です。また、個社の強みを活かしたグループ経営の実現や、従業員の自主性と挑戦を後押しする制度・環境への進化も推進します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
「人的資本経営」「健康経営」「人権尊重」を人財戦略の三本柱としています。特に人的資本経営では、企業理念への共感、個人の権限委譲、多様な能力に着目した制度設計などを通じて、従業員が仕事に誇りと情熱を持ち、働きがいと働きやすさを実感できる環境を整備することで、自走する人財の育成を目指しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はプライム市場の平均を大きく下回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年8月期 | 37.0歳 | 13.0年 | 5,602,047円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 9.9% |
| 男性育児休業取得率 | 79.4% |
| 男女賃金差異(全労働者) | 70.1% |
| 男女賃金差異(正規) | 83.0% |
| 男女賃金差異(非正規) | 102.4% |
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、仕事適応感数値(77.6%)、ワークエンゲージメント(45%)、eNPS(-60%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 出店政策について
採算性を重視しつつ主要ターミナル駅前等へ積極的に出店する方針ですが、条件に見合う物件が確保できず計画に変更が生じた場合、業績に影響する可能性があります。また、店舗が首都圏・関東地方に集中しているため、当該地域での災害等により運営に支障が出た場合や、多くの店舗が賃借物件であるため貸主の事情等により継続使用が困難になった場合もリスクとなります。
■(2) 季節的要因について
家庭電化商品の中にはエアコン等の季節商品が含まれており、冷夏や暖冬などの異常気象によりこれらの需要が著しく低下した場合、財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。
■(3) 競合について
価格競争に加え、品揃えやサービス、人材育成等で差別化を図っていますが、同業他社との競争が更に激化した場合には、業績に影響が及ぶ可能性があります。
■(4) 商品仕入及び在庫管理について
取引先との関係変化や部材不足等により商品供給が不安定になった場合、仕入に支障をきたす恐れがあります。また、異常気象等により需要が想定を下回り在庫過剰となった場合も、業績に影響を与える可能性があります。



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