セラク 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

セラク 転職ガイド:有価証券報告書等から読み解く会社の実態

東証スタンダード上場企業です。ITインフラ構築やクラウドシステムの運用支援を行うデジタルインテグレーション事業を主力とし、農業IoTなどの自社サービスも展開しています。独自の教育モデルによる未経験者のIT人材化に強みを持ち、直近の業績は売上高・各利益段階ともに過去最高を更新し、増収増益となりました。


※本記事は、株式会社セラク の有価証券報告書(第38期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月20日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。

1. セラクってどんな会社?


教育型人材創出モデルを強みに、ITインフラ構築からDX支援、農業IoTまで幅広く展開する独立系SIerです。

(1) 会社概要


1987年に設立され、2002年にネットワークソリューション事業を開始しました。2014年に農業IoTサービス「みどりクラウド」を発表し、2016年に東証マザーズへ上場。その後、2017年に東証一部へ市場変更しました。近年では、2023年にChatGPT活用支援サービス「NewtonX」をリリースするなど、先端技術領域への展開を進めています。

連結従業員数は3,276名(単体3,081名)です。筆頭株主は創業者で代表取締役の宮崎龍己氏、第2位は専務取締役の宮崎浩美氏、第3位は宮崎龍己氏が代表取締役を務める株式会社宮崎です。

氏名 持株比率
宮崎 龍己 35.73%
宮崎 浩美 8.30%
株式会社宮崎 7.12%

(2) 経営陣


同社の役員は男性8名、女性0名の計8名で構成され、女性役員比率は0.0%です。代表取締役は宮崎龍己氏が務めています。社外取締役比率は25.0%です。

氏名 役職 主な経歴
宮崎 龍己 代表取締役 1980年株式会社マーク入社。1987年12月に同社を設立し代表取締役に就任。株式会社セラクCCC等の子会社代表取締役も兼任し、グループ全体の経営を牽引する。1957年生まれ。
宮崎 浩美 専務取締役上席執行役員 1987年東ソー株式会社入社。1994年同社入社。経営管理本部長、営業本部長などを歴任し、2025年9月より現職。
小関 智春 常務取締役上席執行役員 1999年株式会社グローアップ入社。2000年同社入社。ネットワークソリューション事業部長、技術本部長などを経て、2025年9月より現職。


社外取締役は、西村光治(弁護士法人松尾綜合法律事務所弁護士)、山崎直昭(元協同乳業株式会社代表取締役社長)です。

2. 事業内容


同社グループは、「デジタルインテグレーション事業」「みどりクラウド事業」「機械設計エンジニアリング事業」を展開しています。

(1) デジタルインテグレーション事業


ITインフラの設計・構築・運用保守を行うSI領域と、クラウドシステムの定着化支援やカスタマーサクセスを提供するDX領域を展開しています。企業のITシステム構築やクラウド化支援、サイバーセキュリティ対策などを幅広く手がけ、特に24時間365日体制の運用サポートに強みを持ちます。

主な収益は、顧客企業に対するシステムの構築・運用・保守サービスの提供対価や、クラウドシステムの定着化支援にかかるサービス料です。運営は主にセラク、および子会社のセラクビジネスソリューションズ、セラクCCC、AND Thinkが行っています。

(2) みどりクラウド事業


農業・畜産・水産分野のDX化を支援するプラットフォームサービスです。施設園芸農家向けの「みどりクラウド」、畜産向けの「ファームクラウド」、青果流通を効率化する「みどりクラウド らくらく出荷」などを提供し、一次産業の生産性向上や流通合理化を支援しています。

収益は、IoT端末「みどりボックス」の販売代金や、クラウドサービス「みどりクラウド」等の利用料、ソリューションサービスの提供対価から構成されています。運営は主にセラクが行っています。

(3) 機械設計エンジニアリング事業


製造業や通信建設分野に向けて、ハードウェア領域の技術支援を行っています。具体的には、3DCADを用いた機械・金型の設計受託や技術者派遣、実験・性能検査などの品質管理、通信建設・情報通信分野への技術提供などを手がけています。

収益は、顧客企業に対する技術提供(派遣および請負)の対価として得ています。運営は主にセラク、および子会社のセラクビジネスソリューションズが行っています。

3. 業績・財務状況


同社の連結業績をデータで分析します。

(1) 業績推移


直近5期間の業績は、売上高、経常利益ともに右肩上がりの成長を続けています。毎期安定して増収を達成しており、利益面でも高い水準を維持しています。利益率は10%前後で推移しており、規模の拡大と収益性の維持を両立していることが読み取れます。

項目 2021年8月期 2022年8月期 2023年8月期 2024年8月期 2025年8月期
売上高 153億円 179億円 209億円 222億円 248億円
経常利益 18億円 14億円 22億円 23億円 26億円
利益率(%) 12.0% 8.0% 10.3% 10.4% 10.5%
当期利益(親会社所有者帰属) 11億円 10億円 13億円 13億円 14億円

(2) 損益計算書


直近2期間を比較すると、売上高の増加に伴い売上総利益、営業利益ともに増加しています。売上総利益率はほぼ横ばいで推移しており、原価管理が適切に行われていることがうかがえます。販管費も増加していますが、売上の伸びがそれを上回っており、結果として営業利益率も安定しています。

項目 2024年8月期 2025年8月期
売上高 222億円 248億円
売上総利益 57億円 65億円
売上総利益率(%) 25.7% 26.1%
営業利益 23億円 26億円
営業利益率(%) 10.2% 10.3%


販売費及び一般管理費のうち、給与手当が15億円(構成比38%)、採用費が3億円(同8%)を占めています。売上原価についても労務費や外注費などの人的コストが主な構成要素となっています。

(3) セグメント収益


デジタルインテグレーション事業が売上の大半を占め、利益面でも全社の収益を牽引しています。機械設計エンジニアリング事業は黒字を維持していますが、みどりクラウド事業は先行投資等の影響により営業損失となっています。主力のデジタルインテグレーション事業が順調に拡大し、全社の増収増益に寄与しました。

区分 売上(2024年8月期) 売上(2025年8月期) 利益(2024年8月期) 利益(2025年8月期) 利益率
デジタルインテグレーション 213億円 239億円 23億円 26億円 10.9%
みどりクラウド 2億円 2億円 -1億円 -1億円 -50.5%
機械設計エンジニアリング 6億円 7億円 0.4億円 0.4億円 5.6%
その他 - - - - -
調整額 -1億円 -1億円 0.2億円 0.2億円 -
連結(合計) 222億円 248億円 23億円 26億円 10.3%

(4) キャッシュ・フローと財務指標


同社は「健全型」です。本業で稼いだキャッシュ(営業CF)の範囲内で、将来への投資(投資CF)や借入金の返済・株主還元(財務CF)を行っており、財務的に安定した状態と言えます。

項目 2024年8月期 2025年8月期
営業CF 14億円 21億円
投資CF -4億円 -7億円
財務CF -9億円 -6億円


企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は20.6%で市場平均を上回る一方、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は66.6%で市場平均を上回っています。

4. 経営方針・戦略


同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。

(1) 経営理念


同社グループは、「IT技術教育(人材育成)によりビジネスを創造し、社会の発展に貢献する」ことを経営方針として掲げています。採用力と教育体制によりIT人材を創出し、顧客のプロジェクト支援やノウハウの社会還元を通じて、エンジニアのスキルアップや付加価値創出を行う企業として社会の発展に努めています。

(2) 企業文化


同社は、「永続的に発展する企業を目指す」「変化にチャレンジする」「世の為人の為に、貢献する」「社員の幸福を追求する」という4つの経営理念を掲げています。IT技術教育を通じて人材を育成し、顧客や社会に貢献すると同時に、従業員の成長と幸福を重視する姿勢が表れています。

(3) 経営計画・目標


同社は、事業の収益力を示す「売上高経常利益率」を中長期的な経営指標として重視しています。技術革新の速い業界において、最先端の研究開発や成長投資を継続しながら、収益性を確保することを目指しています。

(4) 成長戦略と重点施策


技術力の高いエンジニアの確保と稼働率向上が将来の業績の鍵であると認識し、人材採用・育成、PM育成、営業強化、新規事業開発、CSR活動の5点を重要課題としています。特に、高難度の技術研修によるサービス品質向上や、大規模プロジェクトを牽引できるプロジェクトマネジャーの育成、DXソリューションの提案力強化に注力しています。また、農業IoT「みどりクラウド」やAI分野の「NewtonX」などの拡大を図り、新たな事業の柱の構築を進めています。

5. 働く環境


同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。

(1) 人材戦略・方針


「企業としての永続的な発展」と「社員の幸福の追求」のため、「主体的に学び、となりの人と共に成長し続ける人材」の育成を目指しています。独自の教育プログラムにより未経験者を早期にエンジニア化するリスキリングを推進しつつ、高付加価値人材への育成にも注力しています。また、多様な人材が活躍できる環境整備や健康経営にも取り組んでいます。

(2) 給与水準・報酬設計


同社(単体)従業員の平均年間給与はスタンダード市場の平均を大きく下回る水準です。

項目 平均年齢 平均勤続年数 平均年間給与
2025年8月期 31.8歳 5.0年 4,100,000円


※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。

(3) 人的資本開示


同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。

項目 数値
女性管理職比率 8.3%
男性育児休業取得率 75.4%
男女賃金差異(全労働者) 85.4%
男女賃金差異(正規雇用) 85.6%
男女賃金差異(非正規雇用) 38.7%


また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、障がい者雇用率(2.53%)、年次有給取得率(83.9%)などです。

6. 事業等のリスク


事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。

(1) 景気動向及び業界動向の変動による影響


同社グループのサービスは、顧客企業のIT投資動向の影響を受けます。経済情勢の変化により顧客が投資抑制策をとった場合など、事業環境が悪化することで経営成績に悪影響が生じる可能性があります。

(2) 経営者への依存に関するリスク


創業者である代表取締役宮崎龍己氏は、経営方針や事業戦略の決定、ビジネスモデル構築において重要な役割を果たしています。同社では権限委譲や組織強化を進めていますが、現時点では同氏の経営手腕に依存する部分が大きく、同氏の業務執行が困難になった場合、事業展開や業績に影響が及ぶ可能性があります。

(3) 人材の確保及び育成


事業基盤の拡充には優秀なエンジニアの確保と育成が不可欠です。IT業界の人材不足が続く中、教育制度の充実などを行っていますが、退職者の増加や採用不振により必要な人材を確保できない場合、事業成長や業績に影響を与える可能性があります。

(4) 個人情報を含めた情報管理体制


システム開発や運用において、顧客の機密情報や個人情報を取り扱っています。情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の取得など管理体制を強化していますが、万が一情報の外部流出が発生した場合には、社会的信用の失墜や損害賠償等により、経営成績に多大な悪影響が及ぶ可能性があります。

この記事の執筆者

上場企業の有価証券報告書から、事業内容・業績推移・平均年収などの客観的データを抽出。求人票の裏側にある「企業のリアル」を、転職志望者の視点で分かりやすく解説します。


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