※本記事は、グロースエクスパートナーズ株式会社の有価証券報告書(第18期、自 2024年9月1日 至 2025年8月31日、2025年11月26日 提出)の公開情報に基づき作成しています。会計基準は Japan GAAP です。
1. グロースエクスパートナーズってどんな会社?
大手企業の組織とITの変革を支援するエンタープライズDX事業を展開し、顧客の自走型DX組織の実現を推進しています。
■(1) 会社概要
2008年7月に設立され、企業向けにITを活用した事業変革を支援するサービスを開始しました。2009年11月にはニプロや三越伊勢丹システム・ソリューションズと資本業務提携を結び、支援体制を強化しています。2018年11月に持株会社体制へ移行し、2024年9月に東京証券取引所グロース市場へ上場しました。
従業員数は連結で246名、単体で29名体制です。筆頭株主は代表取締役社長の渡邉伸一氏の資産管理会社であるWatanabe&Partnersで、第2位は渡邉伸一氏個人、第3位は資本・業務提携先であるニプロとなっています。
| 氏名 | 持株比率 |
|---|---|
| Watanabe&Partners | 34.53% |
| 渡邉伸一 | 21.42% |
| ニプロ | 3.90% |
■(2) 経営陣
同社の役員は男性11名、女性1名の計12名で構成され、女性役員比率は8.3%です。代表取締役社長の渡邉伸一氏が経営を牽引しています。取締役12名のうち、社外取締役は5名で構成されています。
| 氏名 | 役職 | 主な経歴 |
|---|---|---|
| 渡邉伸一 | 代表取締役社長 | 2008年7月同社設立より代表取締役社長。コムデック代表取締役社長、GxP代表取締役等を経て現職。 |
| 河西健太郎 | 取締役コーポレート統括本部長 | 1987年4月野村證券入社。ディー・ブレイン証券取締役、GxP代表取締役等を経て、2023年11月より現職。 |
| 鈴木雄介 | 取締役コンサルティング事業統括 | 1997年4月イセタン・データー・センター入社。2008年8月同社入社。グロース・アーキテクチャ&チームス代表取締役等を経て、2023年11月より現職。 |
| 鎌田悟 | 取締役営業企画統括 | 1991年4月日商エレクトロニクス入社。2014年12月同社入社。GxP代表取締役等を経て、2023年11月より現職。 |
社外取締役は、浦田努(元三越伊勢丹ホールディングス常務執行役員)、黒崎守峰(アイティーファーム代表取締役)、井熊実(元SBI証券執行役員)、永松昌一(元野村ホールディングス代表執行役副社長)、曽我野麻理(元アマゾンジャパン戦略人事・労務担当部長)です。
2. 事業内容
同社グループは、「エンタープライズDX事業」の単一セグメントで事業を展開しています。
■DX推進支援事業
大手企業を中心とした顧客向けのDX支援コンサルティング、システム企画・開発・運用サービスを提供しています。出島型アプローチやデータ駆動型プラットフォームに関する強みを活かし、各業界のリーディングカンパニーに伴走しています。
収益は、顧客メンバーと合同チームで行うアジャイル開発やコンサルティングサービスを通じて得ています。運営は主にグロース・アーキテクチャ&チームスがDXコンサルティングを、GxPがシステム企画・開発・運用を担当しています。
■DX支援プロダクト・サービス事業
組織変革やDX人材育成の教育サービス、顧客自らDXソリューションを開発できる自社および他社のプロダクトを提供し、自走型DX組織の実現を支援しています。人的リソースに依存しないスケーラブルな事業展開を目指しています。
収益は、教育メニューの提供や、データ駆動型プラットフォームを実現するシステム基盤などのライセンス販売を通じて得ています。運営は主にグロース・アーキテクチャ&チームスが教育メニューを、GxPがDXテクノロジーアセットの提供を担当しています。
■デジタルサービス共創事業
顧客とともにデジタルサービスを共同開発し、顧客の製品・サービスを利用するユーザーや業界全体のDXを支援しています。同社単体ではアプローチできない顧客層にDX支援サービスを提供し、新たな価値創出に取り組んでいます。
収益は、共同開発したサービスの利用料や、顧客の事業成長に応じたレベニューシェア等から得ています。医療機器管理のソフトウェア開発等の実績があり、運営は主にGxPが担当しています。
3. 業績・財務状況
同社の連結業績をデータで分析します。
■(1) 業績推移
過去5期の業績推移を見ると、売上高は一貫して拡大を続けており、順調な成長軌道を描いています。利益面においても、一時的な変動はあるものの直近では増益基調が鮮明であり、利益率も着実に改善を遂げています。
| 項目 | 2021年8月期 | 2022年8月期 | 2023年8月期 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 6.1億円 | 32.9億円 | 37.4億円 | 44.2億円 | 50.9億円 |
| 経常利益 | 1.9億円 | 3.1億円 | 4.0億円 | 6.1億円 | 8.7億円 |
| 利益率(%) | 30.2% | 9.5% | 10.6% | 13.8% | 17.1% |
| 当期利益(親会社所有者帰属) | 0.9億円 | 1.0億円 | 0.5億円 | 1.1億円 | 1.6億円 |
■(2) 損益計算書
直近の損益状況を見ると、増収効果に加えて事業ポートフォリオの見直しによる売上総利益率の改善が進み、各段階で増益を達成しています。販売費および一般管理費の増加を吸収し、本業の収益性も向上しています。
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 売上高 | 44.2億円 | 50.9億円 |
| 売上総利益 | 19.5億円 | 23.4億円 |
| 売上総利益率(%) | 44.1% | 46.0% |
| 営業利益 | 6.0億円 | 7.7億円 |
| 営業利益率(%) | 13.6% | 15.2% |
販売費及び一般管理費のうち、給料手当が4.4億円(構成比28.0%)、支払手数料が2.4億円(同15.4%)、役員報酬が2.4億円(同15.4%)を占めています。一方、売上原価は27.5億円であり、売上原価合計に対する構成比として全体の54.0%を占めています。
■(4) キャッシュ・フローと財務指標
同社のキャッシュ・フローは、営業CF、投資CF、財務CFがすべてプラスとなる「再建・転換型」の傾向を示しており、営業利益や資金調達を活用して事業展開のための投資を行う局面にあることが伺えます。
| 項目 | 2024年8月期 | 2025年8月期 |
|---|---|---|
| 営業CF | 5.5億円 | 5.6億円 |
| 投資CF | -0.2億円 | 0.0億円 |
| 財務CF | -0.8億円 | 3.7億円 |
企業の収益力を測るROE(自己資本利益率)は22.7%、財務の安定性・安全性を測る自己資本比率は71.4%で、いずれも市場平均を上回っています。
4. 経営方針・戦略
同社が掲げる経営理念と、それを実現するための企業文化、および今後の具体的な成長戦略について解説します。
■(1) 経営理念
同社グループは、「A Company for Imagination & Innovation 常に変化と成長を続け顧客と社会に革新をもたらす知的創造企業」を企業理念に掲げています。ITを駆使して顧客企業の価値を創造することをミッションとし、エンタープライズ企業の新たな価値創出と日本経済全体の再成長に貢献することを目指しています。
■(2) 企業文化
同社は、ステークホルダーとともに成長する企業であることを目指し、多様な個性やバックグラウンドを持つ人材が能力を最大限に発揮できる文化を重視しています。社員一人ひとりが主体的に学び続ける「プロフェッショナル」として成長し、チームで協調して働くために必要なマインドセットを形成する環境を整えています。
■(3) 経営計画・目標
同社グループは、提供する価値の大きさを示す「売上高」、収益性を示す「営業利益」、パートナーとしての評価を示す「顧客維持率」に加え、グローバルな支援体制の進捗を示す「海外出身人財比率」を重要な経営指標と位置づけています。将来的に海外出身人財比率を40%以上とすることを目指すとともに、以下の目標を掲げています。
・売上高500億円
■(4) 成長戦略と重点施策
既存事業においては、エンタープライズ顧客基盤の拡大とサービス提供力の向上に取り組んでいます。マーケティングや営業企画力を強化して新規顧客を開拓し、既存顧客とは出島型アプローチなどの展開により取引金額を拡大します。また、中長期的には共創型事業を拡大し、データ駆動型プラットフォームの業界内展開などを通じてスケーラブルな成長を目指します。
5. 働く環境
同社の人材戦略と、給与水準や働きやすさに関する指標を解説します。
■(1) 人材戦略・方針
同社グループは、グローバルDX人材の育成と確保を成長力の源泉と位置づけています。年齢や性別、国籍にとらわれず多様な人材を積極的に採用し、独自の研修プログラムを通じてIT未経験からでも活躍できる環境を整備しています。社員が自己成長や社内プロジェクトに業務時間の約10%を充てることを推奨し、学び続ける組織づくりを推進しています。
■(2) 給与水準・報酬設計
同社(単体)従業員の平均年間給与はグロース市場の平均をやや上回る水準です。
| 項目 | 平均年齢 | 平均勤続年数 | 平均年間給与 |
|---|---|---|---|
| 2025年8月期 | 39.4歳 | 6.2年 | 6,863,000円 |
※平均年間給与は賞与及び基準外賃金を含みます。
■(3) 人的資本開示
同社は以下のような人的資本・多様性の開示を行っています。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 女性管理職比率 | 23.5% |
| 男性育児休業取得率 | - |
| 男女賃金差異(全従業員) | - |
| 男女賃金差異(正規雇用) | - |
| 男女賃金差異(非正規雇用) | - |
※同社および連結子会社は「女性活躍推進法」等による公表義務の対象ではないため、有報には一部の項目の記載がありません。
また、同社は「サステナビリティ」等のセクションにおいて、法定開示以外の指標も掲載しています。例えば、海外出身人財比率(19.1%)、直近5年の新卒定着率(97.0%)などです。
6. 事業等のリスク
事業環境やシステムに関連する主なリスク要因を概観します。
■(1) 人材の確保および育成
顧客企業の組織・ITに関するコンサルティングや開発を行うため、高度な専門知識と経験を持つ人材の確保と定着が不可欠です。人材確保が計画どおりに進まない場合や優秀な人材が流出した場合、競争力の低下や事業推進上の制約につながり、同社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(2) 情報セキュリティ
業務運営上、顧客企業の戦略や機密情報に接する機会が多く、提供するシステムも顧客の機密情報を取り扱います。不正アクセスやコンピュータウイルスによる情報漏洩、改ざんなどの被害が生じた場合、信用低下や損害賠償責任の発生を通じて、同社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
■(3) 品質管理およびプロジェクト管理
DX推進支援事業におけるシステム開発において、契約当初の納期や見積もりどおりにプロジェクトを完遂できない場合や、導入後に不具合が発生するリスクがあります。これらの問題解消に伴う追加費用の発生や損害賠償請求などにより、案件の採算が悪化し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
■(4) 内部統制および内部管理体制
事業規模の急速な拡大に伴い、内部管理体制の構築が追いつかず、コーポレート・ガバナンスが有効に機能しなくなるリスクがあります。これにより財務報告の信頼性に不備が生じ、法令違反や社内規定の逸脱が起きた場合、同社グループの業績および財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。



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